第120回 アジア現代アートフェアー・ニューヨーク(ACAF)

第2回アジア現代アートフェアー・ニューヨーク(ACAF)がニューヨークのピア92(52丁目 / 12番街)で2008年11月7日(金曜日)から10日(月曜日)迄開催されました。 現代アジアの芸術の最も重要な展示会で、ニューヨークで唯一の国際的な美術展示会として今回2回目となるACAFに、昨年の成功から期待と興味が高まりました。一般公開に先駆け、6日にはプレス・プレヴュー、Vip Partyがあり、いろいろな趣向がこらされて、注目を浴びました。今回は15カ国から70以上の国際的なギャラリーが参加。中国、日本、韓国、インド、バングラデシュ、フィリピン、シンガポール、ベトナム等のアーティストによるによるさまざまな現代の作品が展示されました。絵画、彫刻、写真、紙の作品、ビデオ、およびインストール他をはじめてアメリカで発表される作品が多く見られました。 6日のオープニング・ナイト・プレヴューでは、受賞デザイナーのAngel Changのファッション・ショーが行われたり、Yibin Tianの北朝鮮兵士を装った大勢の兵士達のパフォーマンスの動きや、山下画廊の茶会のはじまりを知らせる拍子木の行列などが、何度か展覧会会場を沸かせ、アジアをアピールしていました。 北京のYibin Tianの写真とパフォーマンスは、彼が北朝鮮を尋ねた時の厳しい規制で写真を撮る事が出来なかった強い印象を、自国にも捻って訴えているという作品だそうです。 もう一つ話題だったのは大きなケージに入った真っ赤な鳥で、韓国の女性作家、Ran Hwangの作品『Dreaming for Joy』で、赤いボタンと金属のピンを壁に鳥の形にインストールしたものですが、抑圧からの開放の夢との事、人気を集め注目されていました。 山下画廊の日本画家・手塚雄二氏の大きな屏風の作品は、黒い畳みを敷いた本物日本の会場設営、京都の裏千家・今日庵・金澤宗維氏のお手前と道具、脇役も揃ってすばらしい会場になっていて、来場者も身を引き締めて観ていました。 東京とチェルシーにある一穂堂ギャラリーから、CHICARA(永田力)のLiquid Chromeのオートバイも、ファインアートの中で異種な感じもあり、人気を呼んでいました。 2つのスペシャル展覧会:Dr. Charles Merewetherのキューレートによるカザフスタン、トルコ、およびジョージア等のアートからの選ばれた作品展、そして、キューレーター・Feng Boyiの「MyBone, Flesh,and Skin」は中央アジアと中東の国からの人体に関連する現代の中国人のアーティストと彫刻を奥の会場を広く使って展示されていました。 各Galleryの展示ブースの他に、スポット・ライトとしての招待作家の作品ブースが6カ所あり、知人のNYのPierre Sernet氏のゲリラTeaの写真と、2畳間の木枠も展示されていました。 他にもアジアの現代の芸術に関連する問題をテーマに、毎日公開討論会や講演、主な館長、美術史家、コレクター、ジャーナリスト、芸術ディーラー、および芸術家がパネラーで企画を行っていたようです。 アジアの現代アートの要求は、最近すごい勢いで成長していて、暮れのマイアミ・バーゼルにもアジアン・セクションが出来たりと、高く昇り続けているように見えますが、宣伝や投資家達の不況の波に潰されないよう、足を地につけて、歴史と本物指向でがんばってほしいと思いました。 ※表示あるものを除き、写真は全て海老原嘉子撮影

第119回 セントラル・パークに出現したザハ・デザインのシャネル移動美術館

10月20日に、あの噂の「シャネル・コンテンポラリー・エアーコンテナ」がついに香港、東京の次の着陸地、ニューヨークはセントラルパークへやって来ました。この宇宙から舞い降りて来たような白いコンテナは、2年間に世界6都市を訪れる移動式美術館(モバイルアート)で、シャネルのアートディレクター、カール・ラガーフェルドのコミッションにより、建築家ザハ・ハディッドがデザインしたものです。 ココ・シャネルのキルト・ハンドバッグ“2.55”の50周年を祝うため、世界から選ばれた20組のアーティストが、このバッグのそれぞれのインスピレーションをもとに制作したといわれる作品が、展示されています。 オープニングパーティーは昼にも開催していましたが、夜に出席するチャンスにめぐまれ、セントラルパーク内のラムジー・プレイ・フィールドに招待状をもっていくと、厳重なゲストリストのチェックがあり、中へ入っていくと、そこには多数のカメラマンが立ち並び、セレブリティーが到着するシャッターチャンスを待っていました。 暗闇に光っているザハのこのモバイル美術館は、まさにUFOのようでした。招待客も行列待ちで美術館の中へ入るのですが、お洒落なオーディオセット、MP3を付けてくれます。フランス女優、ジャンヌ・モローの深い声が、突然現実から遮断し、これから体験する事になるアートの世界を語り、誘い込みます。 進み始めると、台湾アーティストのマイケル・リンによる、赤がベースのカラフルなタイル・モザイクで敷き詰められた床が出迎えてくれます。天井からは、ロリス・チェッキーニ(イタリア)のクリスタルの彫刻インスタレーションが目を引きます。 さらに進むと階段へつながっていて、大きな容器の中を上から覗く形になっているのが、日本のアーティストの1人、束芋によるビデオインスタレーション。井戸の中から巨大で怪しげな昆虫のような映像が浮き出てきます。 その他、ブルー・ノージズ(ロシア)による作品は、段ボールを覗くと裸の人間達が中でシャネルのバッグの追いかけっこする、というこれまた映像のインスタレーションが仕掛けてあります。オノ・ヨーコの作品は“Wish Tree”で願い事を書き掛けて、これが最後の作品で終わりになります。 コンテンポラリー・アートということですが、あまり主旨はつかめず、全体的にボリューム感があまりなくて、あっという間に終ってしまった、という感じがしました。次々に来場する、シャネルを身にまとうゲストらを観察する方に気を取られてしまったせいかもしれません。 その中でも、やはり当人の、カール・ラガーフェルド、ザハ・ハディッドが登場すると場が盛り上がりました。 美術館を出ると、もうそこはセントラルパークがパーティー会場になっています。パーティー屋内会場ができていて、中ではライブが行われ、皆酔い踊っていて、終わりの時間が表記されていないインビテーションでしたが、有名雑誌の元モデル、美女美男はもちろん、ファッション関係者で華麗そのもの。ケータリングもとても格好良く、モデルへの気配りなのか、ヘルシーなシーフード中心。座っていると、シャンパンはボトルでどんどん置かれていき…、多いに盛り上がりました。ニューヨークの夜はまさに尽きません。野外なので、トイレは仮設ですが、お洒落な空間になっていて、そこにはやはりシャネルの香りがする気配りも…。久々に派手なパーティーで、やはりファッション業界、NYのセレブの華麗なる夜を味わう一夜でした。 ※表示あるものを除き、写真は全て海老原嘉子撮影

第118回 Art+Design Fair

20~21世紀のアートとデザインを集めた、年に1度の国際Art+Design Fairが、今年もニューヨーク、パーク・アベニューArmoryで、10月3日から8日まで開催されました。 1999年発足の、フェアーの中では歴史の浅いショーですが、ロンドンのHaughton Internationalがオーガナイズして、著名作家達と老舗Galleryが41社が出展していていました。多くの国際商品見本市がある中、特徴づける事が難しくなってきていますが、このショーは、世界中で20世紀と現代アート・デザインのコレクターの増加を見越して、特にこの人達の求めるものを集めています。広い会場設定で雰囲気も良く、他のショーと同じ出展者も少し違って見えます。優雅な雰囲気の会場で展示即売されていて、来場者を満足させているように見受けられました。 オープニングのギャラ・パーティーは The Bard Graduate Center(BGC)の育英事業のための資金集めのパーティーが行われました。このThe Bard Graduate Center: for Studies in the Decorative Arts, Design and Culture(通称BGC)は、ウェストの86丁目にあります。1993年に創設の文化装飾的な応用芸術の歴史を学びながら、MA, Ph.Dの取得出来る学校で、タウンハウスのBGC Galleryでは常に装飾アート・デザインの展覧会が催されています。 今回は特別展示として、BGC Galleryが2010年に企画している「Knoll テキスタイルの歴史展」の一部を「Art+Design Fair」で展示紹介しました。Proenza Schoulerコレクションになり、モダン・インテリア・アワード受賞のNYのデザイナー・チーム、ファッションのジャック・マッカラック(Jack McCollough)とラザロ・ヘルナンデス(Lazaro Hernandez)が、最新のKnollテキスタイルをデザインしていますが、今回の展示には歴史展と同時に、学生達のリサーチの他、このインテリア・テキスタイルを使って、ファッションのコート・ジャケットをデザイン展示していました。 今年、フェアの出展者は世界中から集まっています。20世紀クラシックと言われるアートとデザイン・ジュエリーなどのヨーロッパ、アメリカのディーラーに加えて、新しくレバノン(Lebanon)、シリアのダマスク(Damascus, Syria)、アントワープ(Antwerp)と幅広い層が出品していました。 会場の所々に大きな壷に生けられた緑のインストレーションはロンドンのLavendrs BlueのMarian+Victoriaの制作との事、壷はMaison Gerard社の展示で、デンマークで生まれ、1979年に萩で学び、1986年から1987年まで日本に住んでいたという作家、Per Weissの作品。 Waxler Galleryで展示している日本の竹かと思わせるMatthias Pliessniのベンチは、蒸気で曲げた樫の木の細かい細工で目にとまりました。ここに1985年にGallery 91でプロトタイプで発表したThomas Huckerの椅子が、スイスの梨の木素材で新たに制作され展示されていて、シンプルなランプと共に健在ぶりを発揮しており、懐かしい作品に会えた感じでした。 Dai Ichi Artsの中島晴美の作品と、韓国のCaroline YiCahengの細かい蝶の陶器を植え込ませた着物の形の作品も、皆の目を引いていました。 他には、80年始めからコンテンポラリー・アート・ジュエリーの作家を集めてプロモートしているCharon Kransen Arts。日本人作家、韓国人作家の作品も増えてきていて、彼がジュエリーのアートー・シーンのひとつを作っているように思いました。 海外でも評判の良い日本の作品群、陶器、竹などは、ここでも海外のディーラーの目利きによって選ばれ、育てられているのを感じました。 ジャパン・ソサエティー(JS)のJSギャラリーにて、2009年1月11日まで『New Bamboo ~竹の新世界~』展が開催されています。 伝統的な竹篭と機能性などの日本の竹工芸の素晴らしさは古くから認められていましたが、最近になってアートとして日本以外でのコレターが増えはじめ、竹工芸を取り巻く環境が変わってきているようです。 今回のJSギャラリーの展示は従来の一連の竹芸展とは異なり、日本でも見る事の出来ない、世界で初めての大掛かりで新しい方向性を国際的に示す、竹の『New Bamboo ~竹の新世界~』展です。この展覧会はJSギャラリー・ディレクター、ジョー・アール監修により、幅広い年齢層の作家23名の約90点を紹介、細部に至るまで計算されたコンピューター・デザインを駆使した華奢な細工や泥の塊のような重量感のある作品、独創性のある彫刻的な作品などで、これからの竹の将来に夢を感じさせる展覧会です。 竹芸品は16世紀以前には芸術品としては認識されておらず、実用的な竹篭が数千年にわたって作られてきて、竹工芸家が作品に自身の名を記すようになったのは1870年以降のことだそうです。 そして次世代の作家の作品を幅広く集めた、この『New Bamboo』展では、竹の従来の限界を超えた、単なる日本人の美意識ではない様々な価値観が混合しています。主に熱心なアメリカの収集家に支持されて、竹芸は技能と革新の黄金時代に移行しているようです。 『New Bamboo』展は、JS1階のロビーから始まります。池の中に作られた川名哲紀(1945‐ 勅使河原蒼風に師事した)の作品は、JSがこの展覧会の為に制作を依頼し、茶室の原点である囲いに着想を得て創作されたもので、『囲い』と名づけられています。その川名の作品に呼応したアメリカ人作家スティブン・タラスニックの作品がロビーを飾り、竹という素材を介して国境を超えた対話を繰り広げています。 展覧会はギャラリー内へと続き、『器から彫刻へ』『各地の巨匠たち』『個々の表現』『新たな行方』という4セクションに分かれて展開していきます。 『器から彫刻へ』の第1のセクションでは、本間一秋(1930‐)とその息子・本間秀昭(1959‐)の作品で始まります。 『各地の巨匠たち』セクションでは、伝統的な竹工芸界に身を置く作家の作品を取り上げ、八子鳳堂(1940‐)の内面世界を表現する作風を追求しています。割れた竹の独特の美しさを用いた大作です。 第3のセクション『個々の表現』では従来の竹彫刻の限界を押し広げている二人の作家に焦点を絞っています。竹編みの家に生まれた池田巌(1940年‐)の、つやのある漆を何層も塗った竹の幹を打ち砕き、偶然の成り行きに任せた彫刻作品と、植松竹邑(1947年‐)のファイバーアートを思わせる、自由な発想でいて、技術的な完璧さを出す作品。本展では、クラーク日本美術・文化研究センター(カリフォルニア州ハンフォード)が近年収集した植松の代表作が初公開されています。 最後のセクションの『新たな行方』では、川島茂雄(1958‐)の、小さな作品にも竹を凧糸で縛る手法を用いて、繊細に見える興味深い作品や、長倉健一(1952‐)の竹の特質を生かし、驚くほどの技法で竹を制御することで人間の顔・体の形を表現した作品、長い間アメリカの工芸界に身をおいた米沢二郎(1950‐)の作品、最年配の本田聖流(しょうりゅう)(1951‐)による未完成の花篭を熱湯で柔らかくし、練って形にしたというへびの様な細い作品。そして、六角形に編んだ薄く切った竹から連続した不思議で象徴的な形の作品の森上仁(1955‐)等、23名の作品が展示されています。 この展覧会から、日本が最近流行語にしているジャパン・ブランドとかクール・ジャパンの本当の意味は、こういう「日本的であること」に斬新性が見出されて、世界で受け入れられる本物の、このような作品群を言うのでは、と感じます。また、このような作品の課題を与え、育ててくれているのが、日本でなくアメリカのコレクターだというのも考えさせられました。 ※表示あるものを除き、写真は全て海老原嘉子撮影

第116回 Accent on Design

NY恒例のイベント、インターナショナル・ギフト・ショー、Accent on Designが 8月17日~21日まで、ジャビッツ・コンベンション・センターで開催されました。今年は天気にも恵まれ、初日、2日目とも好調で、入場者数もかなりのように見受けられましたが、水曜日、最終日の木曜は閑散としてしまい、いつものように5日は長いという声がしきりでした 作年同様、Accent on Designへのアプローチと、エントランス・ロビーには、注目される「Sustainability」の展示スペースが設けられ、主催者側が選んだ、130社からに及ぶ、環境にやさしい、これからの社会を考えたプロダクト、パーソナルケアー商品から家庭用品などが展示され、この展示を見てブースを尋ねる、関心のある人達も多く見受けられました。 Accent on Designのプレス・ロビーでは、新しく出展した国の為のプレス・レセプション等も行われていました。企画側もいろいろプロモーションを考え、前回から新しく出来たコーナー、次世代を担うデザイナーの発表の場「A+」のブースのプロモーションも盛んにされていました。 今年のAccent on Design賞の受賞者は、Best Collectionには、オハイオ州の会社Wabnitz Editionx。Best New Product Designにはカリフォルニアから出展したArtecnicaのWirePod。(カリフォルニアから出展) Best ブース Presentationの賞は東京から出展のSållbo design、オーナー・デザイナーのSally Kubo-Starrはミネソタ育ちの2世で、東京にスタジオをもっているというデザイナー。英語力をフルにいかしての出展です。もう一つのBest ブース Presentationの賞は、コンクリートでシンプルにまとめたNYのデザイナーJ.Foldのブースに与えられました。 今回のAcccent on Designでは、個人作家、日系人、アジアの人達のブースが、いくつか新しく出展されていて新鮮に感じました。板茂氏の夫人、板雅子さんのジュエリーと妹さんのバッグも「acrylic」という名のブースで出展、コレクターに人気を呼んでいました。 Gallery 91のブースでは、今回新しい価格の高めの作品を試みましたが、やはりアメリカ市場では、コレクター以外は価格の制限があり、高い日本製品のものは大量のバイヤーには繋がらないようでした。 Accent on Design以外のブースで頑張っていたのは、RISD卒の日本人カップルのMorihata International社。日本から選んだデザイン・グッズをきれいに見せていました。 もう一つは、XCIDIA Inc. エクシディア。以前貿易会社にいた方が独立、自力でジェトロでないやり方で見せると頑張り、建築家による見事なプレゼンテーションブースでした。しかし中身の商品がマッチしてるのかが良く見えてこない商品群で、これからが期待されます。 フエリッシモで展示されるBig in Japan Cool in New Yorkの展示会場を使って、Accent on Design Awardを祝うパーティーが8月18日の6時半から行われました。 Accent on Design の「Japan (c) 」の出展にあわせてのアプローチがあったようですが、Jabitから56丁目のフエリッシモまでのシャトル・バスも出て、GLMの重役他、Accentの会場から大勢の人がパーティー会場に流れ、日本から来たフエリッシモの社長に出迎えて頂き、なごやかなパーティーでした。見慣れた日本製品や新しいクール商品を眺めたり触ったりして、人々も楽しんでいました。 展覧会は9月15日からはじまります。 http://www.japan-c.com/press/sept15/ 次回のAccent on Designは1月25日~29日です。 ※表示あるものを除き、写真は全て海老原嘉子撮影

第115回 メトロポリタン美術館のデザイン・コレクション

メトロポリタン美術館の広さには、何度行っても迷ってしまうほどですが、それぞれWigやGalleryの名前を覚えるとわかりやすいようです。 5月から新しい展示やWigがオープンしたので、取材を行いました。 「モダンデザインの名作たち」 メトロポリタン美術館の、20世紀以降だけでも400点を超える膨大なコレクションの中から、現代デザインの傑作を代表する作品が選ばれ、5月から1階のモダン・アート展示場内の「The Helen And Milton A Kimmel man Gallery」Lila Acheson Wallace Wingで展示されています。 古くはマッキントッシュ、ヨーゼフ・ホフマン、ミース・ファン・デル・ローエ、ブロイヤー、E・サーリネン、ヨーゼフ・アルバート、Eva Zeisel、チャールズ・イームズ、イサム・ノグチ、マイケルグレーブス、エットーレ・ソットサスといった巨匠から、現役のガエターノ・ペッシェ、ザハ・ハディド、アレッサンドロ・メンディーニと岡山伸也の共作の花瓶等、最近コレクションに加えられた作品まで。家具、メタルワーク、ガラス、陶器、テキスタイル、ジュエリー、オブジェ、スケッチ等が展示されています。 残念ながら写真を撮れなかったのですが、メトロポリタン美術館がハイライトとしている作品が、1934年のフランスの遠洋定期船「ノルマンディー号」の一等サロンのために作られたという記念碑的Jean Dupasのギルト・ガラスの大壁画です。 メトロポリタンならではの所蔵作品が公開展示されていて、この夏休みに現代デザイン史を一望する事ができます。 もう一つは「Classic / Fantastic」 同じ1階のモダン・アート、Lila Acheson Wallace Wing展示場内で、昨年12月から展示されています。現代のデザイン収集からほんの一部の選択作品75点とメトロポリタンが収集した家具、金属加工、陶器、ガラス、織物と図面のうち、半分は「Classic」、古典主義で過去の規則と伝統との関連のある作品。残り半分は「Fantastic」、ファンタジーのロマンチックでシュールな作品を展示しています。 秩序と無秩序。理屈と感情、制限と過剰、連続性と目新しさ:そのような対立する衝撃は、文明が始まって以来デザインを導いてきました。 確かに展示会場には伝統工芸的作品に混じって、ライラ・マシモ・ビグネリ、マイケル・グレーブス等の作品が見られ、中央にはピンクの倉俣史郎の花瓶が輝いて凛と展示されていました。この対立的組合せのコレクションの展示では、最新技術を駆使して生まれてくる異なるアプローチを並置し、これからの時代のデザイン哲学を問いかけているそうです。 2008年9月27日、ミュージアム・オブ・アーツ・アンド・デザインが、53丁目のMOMAの前からコロンバスサークルに移動して、新しくオープンします。 以下Museumのプレス・リリースからの抜粋の一部を紹介します。 Museum of Art & Designは、1942年にアメリカクラフト界の最大の後援者、Aileen Osborn Webbによって設立されたAmerican Craftsmen’s Councilが中心となって、1956年にThe Museum of Contemporary Craftsとして出発しました。当初は工業製品の普及によって失われてゆきつつあるアメリカのクラフトおよびクラフトマンシップの再評価、保存、研究をその使命とし、その後、1986年にRoche-Dinkelooがデザインした53丁目の場所にAmerican Craft Museumとして移転し、2000年から名称をMuseum of Art & Designと改め、それに伴い、当初のアメリカ国内を対象にした活動から、広く世界に目を向け、工芸、美術、建築、インテリア、ファッション、ニューテクノロジー、デザイン、パフォーミングアートなども、その研究対象とするようになりました。 現在まで560の企画展覧会と、75の公共教育を目的としたプログラムを実施してきました。2007年には、石川県の漆工芸家たちによるワークショップが開催され、日本の伝統工芸の美しさと技術の高さに注目が集まりました。米国内唯一のクラフト専門の美術館として、ミッドセンチュリーから現在に至る2,000を超えるコレクションも高い評価を受け、過去10年に渡り、ミュージアム・オブ・アーツ・アンド・デザインは、年間310,000人の来館者が訪れています。 Museum of Art & Designは2008年9月、急速に増加する来館者とさらなる発展のため、コロンバスサークルへの新規移転をすることになりました。新美術館の展示面積は今までの施設の3倍のスペースで54,000平方フィートの美術館になります。現代ジュエリーのために画期的な新しいギャラリーとセンターを設置したり、アーティストのためのアトリエも併設され、製作過程を見学できるのもこの美術館の大きな魅力の一つになります。アメリカ人建築家Brad Cloepfi設計の建物は、国際的なクラフト専門美術館にふさわしく、ドイツで製作され、オランダで色づけされたセラミックタイルで被われています。繊細な乳白色のグラデーションで彩られた外観は光線によって、色が変化し、近隣のタイムワーナービルディング、トランプホテルとともに、ランドマーク的存在となることは間違いありません。 Gluckman Mayer Architectsが手がけたことでも話題の9階にあるレストランは、ニューヨークの象徴的であるセントラルパークとブロードウェイを一望することができます。充実した施設と、4つの地下鉄のライン、7つのバスの運行路の交差するコロンバスサークルに位置するこの新美術館は年間50万人の来館者が見込まれています。Museum of Art & Designは既に高い評価を得ている日本の伝統工芸はもちろん、アートやデザインの作品、優れた人材の紹介、発掘の場として、ニューヨークでの拠点となるだけでなく、世界への発信基地としてますます重要性も増していくことでしょう。 ※表示あるものを除き、写真は全て海老原嘉子撮影

第114回 SOFA New York 2008

第11回 SOFA ニューヨーク(Sculpture Objects & Functional Art)がパーク・アヴェニューのArmoryで5月28日から6月1日まで開催されました。 5月28日のオープニングナイト・パーティーはArmoryで行われたアートフェアーのなかでも過去最大の2,600人で埋め尽くされ、大変な混雑と活気にみちていました。SOFA合計入場者は、16,100人にのぼり最高の売り上げを得たそうです。 「最近の現代アート・工芸のオークションの急増と同時に、市場の過熱状態で今回のオープニングナイトでは、少しあっけにとられるような買付けが行われ、興奮状態が目にとまりました。」と、SOFAの創始者であり、評判が高いパーム・ビーチ・フェアなどを所有しプロデュースしているマーク・ライマン(dmg Art & Antiquesの副社長でもある)が語っています。「ディーラーやコレクターが、週末を通し床が見えなくなるほど集まり、国内や海外からもかなりの数の新しいコレクター達が来ていたのではないか」と話していました。 ロンドンを拠点にした名祖のギャラリー、エイドリアン・サスーンは「フェアは驚くほど成功した、本当に素晴らしかった。オープニングナイトに155,000ドルのAqua-Poesyを含む鈴木ヒロシ(ロンドン在住)が手掛けた銀と金のほとんどが売れた」との事、最も大きな作品のケイト・マローンの陶製Succulent Mother Gourdは、57,000ドルで売れたとか。アメリカの金融界からのクライアントは最大で最高の物を買いたがる」と述べているそうです。 オープニングナイトプレビューの間に近代美術館とロサンゼルス現代美術館、アメリカ国内および国際的にすばらしい美術館12館以上の収集部門の人達が、このプレビューで買付けをしたそうです。 展示は67Boothの主要な国際的なギャラリーで、作家にはジョージ・ナカシマ、ピーター・ボーコス、デール・チフリ、Lino・タリアピエトラ、ウェンデル・キャッスル、レノア・トーニーとアンソニー・カロのような一流のアーティストやこれから有名になりそうな新世代の新進のアーティストによる、陶器、ガラス、金属、木、テキスタイル等の優秀作品を展示されました。日本、イタリア、イギリス、フランス、カナダ、デンマーク、韓国、アルゼンチン、ニュージーランド、トルコと米国を含む11カ国のギャラリーが、デザイン、装飾と現代アートの架け橋となる芸術性の高い作品を出展しました。 何世紀も続いた豊かな伝統に基づくベニスのまばゆい現代ガラス・アート、彫刻的な日本の陶器、スカンジナビアの銀細工師による素晴らしい深みのある容器、近代主義の現代家具そして最もアバンギャルドなヨーロッパ他の国のアートジュエリー等も展示されました。 SOFA Lecture Seriesが、同時に開催され、他にもVIPプログラムで、コレクターの館への特別ツアーや美術館のキューレター主導の舞台裏ツアー等の催しがプランされてこのフェアを高めました。 オープニングナイトをのぞいて、皆が言うように本当に歩けない混雑ぶりで、アメリカ経済低迷と言われながら、どうなっているのかこの熱狂と活気にびっくりしました。 ※表示あるものを除き、写真は全て海老原嘉子撮影

第113回 ジャパン・ソサエティー(JS)の年次晩餐会

ジャパン・ソサエティー(JS)は、1907年(明治40年)にニューヨークに設立された米国の民間非営利団体で、全米唯一の規模を誇る日米交流団体として、100年間に渡って両国間の相互理解と友好関係を促進するため、多岐に渡る活動を続け2007年に創立100周年を迎えました。その活動範囲は、政治・経済、芸術・文化、日本語教育など幅広い分野にまたがる各種事業や人物交流などを通じて、グローバルな視点から日本理解を促すと同時に、日米関係を深く考察する機会を提供しています。現在、JSは日米の個人・法人会員をはじめ、政財界のリーダー、アーティスト、教育関係者、学生など様々な参加者を対象に年間100件以上のプログラムを提供している団体です。 JSの2008年度アニュアル・ディナー年次晩餐会が、6月12日グランドハイアットホテルにて催されました。去年は100周年ということもあり、今年の倍の1000人の盛大な晩餐会だったそうですが、今年も600人の政財界の方々がブラック・タイで参加しました。 NYの日系企業が名を連ねて、ひとテーブルにつき1,5000~75,000ドルを寄付して出席する姿は、他の美術や文化系の催しでは、あまり見ることがなく、さすが米国政財界のリーダーがBoardに多いJSならではだと思いました。 司会進行はレナード・ロペート氏(WNYC『The Leonard Lopate Show』)。ジャパンソサエティー会長ジェームス・マクドナルド氏(Rockefeller & Co.会長兼CEO)の挨拶の後、JSの副議長を努めるトヨタ・モーター・ノース・アメリカ社長・早川茂氏が、本年の基調講演をする、Citi Group会長のウィンフリード・ビショッフ卿を紹介し、講演がはじまりました。Citi Groupが見る日本社会の大切さや可能性について、日本が同銀行の国際成長戦略において最も重要なマーケットであり、日本においてのCiti Groupの31支社や傘下にある110グループの日興ホールディングズでは96%が日本人を採用しており、今後どのように発展させるか等の展望を話されました。 ディナーの後はジャパン・ソサエティー賞授与式です。ジャパン・ソサエティー賞は、ジャパン・ソサエティー(JS)が日米間の相互理解の向上に寄与した日本人・米国人の功績を賞賛することを目的に1984年に設立された賞で、2008年度は、米ハワイ州上院議員のダニエル・イノウエ氏と映画監督・俳優のクリント・イーストウッド氏に贈られ、授与式とスピーチが行われました。 ダニエル・イノウエ氏は、自らの立場から、日米間の様々な困難や懐かしい話を、クリント・イーストウッド氏は、画面いっぱいのビデオメッセ-ジで、映画『硫黄島からの手紙』の思い出話を交え、日本との関わりを語られました。 最後のエンターテイメントは、ヒップホップダンサーの蛯名健一によるパフォーマンス(共演:上野隆博)。アポロシアターTV版コンテストで7回連続優勝、史上唯一の2冠王というだけあって、その新しい日本を感じさせる迫力のパフォーマンスに、会場の政財界の人々は感嘆し、この選択をしたJSのセンスに、今後大きな期待が持たれました。 本晩餐会への寄付金1億円は、JSの主催する様々な文化・芸術プログラム活動に対する助成金として活用され、日米交流のさらなる発展に役立てるそうです。 JSは、70年代の能、歌舞伎紹介、黒沢映画ブーム、そして、この5、6年のアニメや日本食、日本酒の紹介と、日本文化へ多大なる貢献をしています。これからの、伝統を含めた日本の将来を、今後どう広めて行くか、日本も本気で考え協力すべき時期という感じがしました。 ※表示あるものを除き、写真は全て海老原嘉子撮影

第112回 ICFF(国際現代家具見本市)

世界4大家具ショーのひとつ、国際現代家具見本市(ICFF)が5月17日~20日、NYのJacob k. Javits Convention Centerで行われました。今回で20回目を迎えます。 17日~19日の10時~17時はトレード(業者)、20日の10時~16時は、一般客が入場することができます。 正味14,500平方メートルの会場が、25,000人以上のインテリアデザイナー、建築家、小売業者、デザイナー、メーカー、卸売業者や開発者でにぎわいます。 出展者は600人以上で、ジャンルは、現代の家具、椅子、カーペットと床、照明、屋外の家具、壁関係アクセサリー、織物と台所関係・・・と幅広く、住宅向きで商業的な内装のための商品など全てをカバーしています。 開催期間中、ニューヨーク市内では、ICFFに協賛しで盛り沢山のデザイン関係の催しが行われ“ニューヨーク・デザイン・ウィーク”と名付けられていますが、年々デザイン狂想曲のような大変なお祭りです。 下調べの段階でもICFFの公式ダイレクトリー図録があり、INTERNIのDesign Guide New York、METROPOLIS誌のDESIGN GUIDE NYC 08、他にもMeetPacking District Design 2008等々の小冊子に出ている展示インフォーメンションや、パーティーの開催場所、時間などを綿密に調べてプランしないと、昼間に見ることができる展示や、夜に様々な場所で行われる20以上ものパーティーは、とても見て回れません。噂を聞き出して、好評だったイベントを見つけるのもコツのようです。 毎年、同じように見える展示物の中から何か新しいものを発見しようと、皆、熱心に見て歩きます。今年は全体として、日本や北欧の良さが影響しているようなシンプルなデザイン、デリケートなデザインが目につきました。また、素材や環境問題を意識したデザインが圧倒的に多くなっています。 慣例の、ICFFが招聘したデザイン・スクールの作品は、新鮮で面白いものが多く、今年は CCA(California Collage of the Arts)、SCAD(Savannah College of Art and Design)、SVA( School of Visual Arts)、Yale Universityが出展、受賞者も出ていました。 ICFFの展示では、イタリー勢のISALONI World Wide、ICFF Studio、Materials Matter、Design Boomと大まかに別れている他に、今年はオーストリアのトレード委員会、英国ヨーロッパのデザイングループ(BEDG)、スペイン、ブリュッセル(ベルギー)、ファニチャーNY、IDSAニューヨーク(アメリカの工業デザイナー協会)、カナダの新しいデザイン、デンマークの王室の総領事から、そしてタイのトレードセンター等が各セクションに分かれて展示していました。 それ以外にも個々では、アルゼンチン、オーストラリア、ベルギー、ボツワナ、ブラジル、カナダ、中国、チェコ共和国、デンマーク、エルサルバドル、フィンランド、フランス、ジョージア、ドイツ、アイルランド、イスラエル、日本、韓国、リトアニア、マレーシア、メキシコ、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、フィリピン、ポーランド、ポルトガル、シンガポール、スウェーデン、スイス、台湾、タイ、トルコ、イギリスとアメリカ各国から出展しています。 今年もデザイン誌の編集者が審査員となって選ぶ“Editors Choice Awards”が開催されました。 ブースでは「School of Visual Arts (SVA)」、Design Schoolでは「Savannah College of Art and Design (SCAD)」がそれぞれ受賞しました。 (その他は以下ICFFのページを参照) http://www.icff.com/page/editorsawards.asp?AnID=edawards&Nid=80 IDSAは若手デザイナーのブース、デンマークの工芸のブース、テクノロジーを取り入れた商品や、環境を考えた子供やベビー用品も多く目につきました。 一番興味をそそられたのは、レクチャー用のスクリーンに使われていたパッキング用の素材を生かしたリサイクル・フェンス(写真69)や、Red Dot Award:デザインコンセプトの展示設営に使われていたペットボトルの展示台(写真70~71)です。 ICFFは、17日土曜日の朝まで公式に始まらないのですが、オフサイトでは早くも様々な行事が始まります。16日は、Metropolitan Home誌主催で、ミートパッキングのHotel Gansevoortの屋上で「Design Inspirations」というテーマでインテリア・デザイナー等によるパネル・ディスカッションがありました。(写真72)あいにくの雨でしたが、和やかにも真剣に質問をしたりと良い集まりでした。 その後は、Up TownのFelissimoで行われていたパーソンズ・スクールの、「Good

第111回 デザインとエラステック・マインド Design and the Elastic Mind

ニューヨーク近代美術館(MoMA)では2月24日から5月12日まで、デザインにおける過去6年の進化と、今後予想される次の6年に向けられたデザイン200点あまりの作品が展示され、話題になりました。 キューレーターPaola Antonelliのオーガナイズで、NYのデザイン業界、展示関係者等一同が集まり、オープニング・パーティーは、人で埋め尽くされ通路も見えないほどの混雑ぶりでした。 25年以上に渡り人々は、無線技術の進化やインターネット等による時間、空間などの劇的な変化を体験し、乗り切ってきました。Design and the Elastic Mind展は、その人間の限界や習慣、そして願望を細心に考慮した先端の科学研究と結合したデザインのオブジェクトとコンセプトを共にまとめることにより、現代においての科学とデザインの相互関係を探っています。この作品展は、デザインの最新の進歩の概観であり、そしてテクノロジー科学と社会的習慣の中で微妙で極めて重大な変化をキャッチするデザイナーの能力に重点をおいた作品展示です。 作品は世界中からのデザイナー、科学者、そしてエンジニアのチーム等により出展された原子単位から宇宙的なスケールのオブジェクト、プロトタイプやコンセプトなどの作品が展示されています。また、ウェブサイトではギャラリーで展示されていないプロジェクトを含む300以上の作品も紹介しています。 「あなたは、末期病状ですか? 蜂に聞いて下さい。」というSusana Soarsの作品(写真28)は、美しい球体の「診断ツール」。グラスの中に息を吹きかけ、蜂に判断してもらうというコンセプトで蜂は驚くべき匂いのセンスがあり、病気か排卵期であるか蜂が知らせてくれるという作品だったり、Chuck Hobermanの「変わり続ける壁」は、彫刻的な大きい動く壁で、彼の名付けた「適応建物の新世代」と言われる新作で、「皮膚」パネル部分の構造は、コンピュータによりコントロールされ、光と熱のレベルや雨などを感知して、そのスペースに対応し形を変えて行くというもの。 Rapidのマニファクチャー「3D-Printing」(写真29~32)は、VIDEOスクリーンで映し出されているのを見ると、夢の実現のような空間に太いチョークのようなもので描いたフリーハンドの形が、そのまま実在の3Dの形で、椅子や彫刻になっていくというもの。 Toma Gabzdil(Slovacデザイナー)の「蜂が作った花瓶」(写真34)は40,000匹の蜂が1週間かけて作った花瓶。あらかじめ作っておいた足場の周りに蜂が巣を作りはじめ、作り終えた後、足場を取り外した蜂の巣で作られた花瓶の作品。 一つ一つサイエンス・ミュージアムのデザイン展といった理解を超えるものも沢山ですが、未来の夢を感じさせる大規模な展覧会です。ニューヨーク・タイムズは1934年の近代美術館での「マシン・アート」展覧会と同じくらい革命的で、2004年のMOMA改装・再開以来の建築とデザインの最高のショーと讃え、我々にまた未来の夢を見させてくれたと絶賛しています。 http://www.moma.org/exhibitions/2008/elasticmind/ デンマーク生まれのアーティストOlafur Eliassonは、1995年のベニス・ビエンナーレでのデビュー以後、写真、彫刻、映像、光りのマルチ作家として、ヨーロッパ、PS1、MOMA、Paula Cooper、Guggenheimや日本でも発表している国際的に活躍するアーティストです。今回のMOMAとPS1の展覧会は彼の作品をすべて知る事のできる最初の総合的な展覧会で、4月20日から6月30日までMOMAとPS1で行われています。 MOMAの最初のフロアーでは、Marron Atriumの高い天井から吊るされた扇風機が頭に当たりそうで、人を追いかけるようにまわりながら振り子のように動いています。(写真40) 3階の会場では、Mono Bulbを使っていて歩く観客のカラーは黄色だけになり、黒の影だけ変化します。(写真41) 360度のドームの部屋は、柔らかく自然に変化するカラーを実際に自分で味わう事ができ、色の変化によって気分が変化するような気がしました。(写真44~46) レインボールームのようなプリズムで変化させていくカラーストライプの壁の展示は、素直にきれいと声を出す観客が多いのもうなづけます。(写真47~48) 光学的現象を最新のテクニックとカラーバルブ、ガラス、アルミニウム、ステンレス等を使って、シンプルで美しいアートにしてしまうのですが、科学っぽさを感じず誰にでも驚きを与え、自然の要素を採り入れたような淡い色の移り変わりで、心を癒してくれる美しい作品です。北欧で生まれ育った彼の生い立ちが反映しているのでしょう。 http://media.moma.org/subsites/2008/olafureliasson/ http://www.ps1.org ※表示あるものを除き、写真は全て海老原嘉子撮影

第110回 慣例のDIFF基金 Dining by Design

DIFFA(Design Industries Foundation Fighting AIDS)主催のビッグ・イベント「第11回 Dining by Design」が3月30日からSoHoにあるSkyLightのイベント・スペースで、3日間行われました。 ニューヨークを皮切りにカンサスシティー、ロス、ダラス、アトランタ、サンフランシスコ、シカゴ、ボストンを回り、年々大きなショーに拡がっています。 今回もインテリア・デザイナー、ファッション・デザイナー、建築家、デザイン関係のストアー等が、11×11フィートのスペースを使用してコーディネイト。総計38のテーブル・セッティングが競い合った売上金はDIFFAの基金となります。 有名なNY デザインセンター、Hewlett Packard、Crate & Barrel/CB2、NY Timesは3つのテーブルをバックアップし、Baccarat、建築のSkidmore、JC Penny他、委員長でもあるDavid Rockwell Groupは、展示中に作品の続きを編んでいるアーティストが作業しているテーブルセットを作り上げました。盛り沢山の新しいアイディア、毛糸の自然体と外側を囲んだファイバー・オプティックの細い光りのコントラストが印象的な力作でした(写真21~24)。 今年は初めての試みで資金を出資するスポンサーがつき、パーソンズ・ニュースクール・フォア・デザインがJamie Drake氏の指導で出展をし、NY大学はDavid Rockwell氏、スクール・オブ・ヴィジュアル・アートはMiles Redd氏、FITはDalzell プロダクション、プラット・インスティチュートはArpad Bakesa氏の指導のもと各デザイン学校の展示を行い、将来を担うデザイナ-の育成も目的としていました。 他にはフード界のトップらが出展し、Danielのブースではチョコレートをサーブ。話題のレストランBuddakan、Murray’s CheeseやFrench Culinary Institute、MarieBelle New York等も出展。初日から3日間11時から17時までのチケットが$45。「Table Hop & Taste」カクテルとテスティングを会場で味わいながらの一般公開を行い、31日はチケットが$150の「Cocktails by Design」と称したパーティーが19時から22時まで開かれました。 そして最終日の4月1日は18時半から23時までチケット代が$800の「Gala Dinner」が開かれ、関係者、寄付者、テーブルに関わって寄付した人々が、実際にそのテーブルに着席しディナーやダンスで盛り上がりました。 昨年度は$12Millionの基金が集まり、今年のツアーは昨年以上の基金が集まったようです。 この売上金はDIFFAの基金になり、ニューヨークのパーティー好き、テイストを理解したニューヨーカーの人気企画のひとつです。 ※表示あるものを除き、写真は全て海老原嘉子撮影