第38回: デザイン界の社交家George Beylerian の Material Connexion (2002/7/10)


「マテリアル・コネクション」- ができるまで

家具会社の社長だったジョージ・ベルリアン(George Beylerian)は、早くから素材に関心を持っていてました。
いち早く1980年代初めに倉俣史郎の家具に興味をもち「ライセンスで作りたい」と相談を受け、当時、2人を引き合わせたことがありました。ですが、実現する前に自らの家具会社をSteelcases社に売ってしまい、新しい企画や展覧会を行うDesigner Partner Shipを設立しました。

その活動の一つにJeffrey Osborneと企画した「Mondo Material展」があります。
1990年に行ったこの企画。「新しい素材を扱っている日本企業に協力を頼んで欲しい」と、BeylerianとOzbornの2人から頼まれ、私も参加し、日本鋼管、藤倉化成などの協力・スポンサーを得ることができました。
この展覧会はCooper-Hewitt National Design Museumで行われ日本からのデザイナーも何人か参加していて、規格サイズの四角のボードにそれぞれが素材をコラージュしたり、おもしろく、提案した作品があつまりました。ちょうど時代もリサイクル等に動きつつあった時で、新しい試み、素材を見る展覧会として注目をあびました。

その後、MoMA がMutant Material展を行い、社会の動きとして位置づいてきて、NYの中の建築事務所もコンピューターで設計する時代に入り、いくつもの階を使っていたスペースを縮小し、個々に設備していた素材のライブラリーをまとめて、メンバーシップ制で見られる、資料室として整ったライブラリーをつくろうという構想のもとに、Material Connexionが1997年にコロンバスサークルのSteelcaseビルの4階にできました。

Material Connexionショールーム

Material Connexionショールーム

Material Connexionショールーム受付 (Photo; Gregory Beylerian)

 

当初、メンバーになるのは建築家やデザイナーと学校など、と思っていたそうですが、現在はメーカーやファッション関係企業など400社以上が会員登録をしています。
たとえばカルバン・クライン・ホームやプラダ、化粧品メーカーのエスティローダーやレブロン、ナイキのスポーツ・シューズ、リーボック、ソニー、日産自動車等。幅広い業種の企業が実際に、マテリアル・コネクションから探した素材で、新製品を開発し、発表し始めているそうです。

Material Connexionでは、年に何回か素材の教育を兼ねて、新しい展覧会が行われています。過去には、「Gaetano Pesce 素材の魔術師」展、NYの建築家25名による素材のコラージュ「New York, New York」展、魅惑のエコ素材「Glamorous Green」展、マテリアル集合体「Techno Textiles」展、張力建築「Tension in Architecture」展、マテリアル・コネクションの中から100点を選んだ「Material ColleXion」展など、バラエティに富んだ活動を残しています。MaterialConneXion.com

(ともに)ライブラリー内展示風景 (Photo; Gregory Beylerian)

ギャラリースペースのプロダクト・ショーケース

ギャラリースペースに設置されている新着素材コーナー。コレクションに入れる前のお披露目コーナーで自由に触れることが出来る。期間を過ぎた後はライブラリーに入って、メンバーのみが閲覧可能。

(ともに)ライブラリー内展示風景 (Photo; Gregory Beylerian)

ギャラリースペースのプロダクト・ショーケース、ギャラリースペースよりライブラリーを見る

2001年に、現在の場所へ引っ越して来たときにマテリアル・コネクションのスタッフが作ったオリジナル の椅子。芝はThe artificial grass – Fieldturf 、赤の素材はThe gell – TechnoGel

ライブラリー内展示風景

ギャラリースペースのプロダクト・ショーケース

ギャラリースペースのプロダクト・ショーケース

ギャラリースペースのプロダクト・ショーケース、ギャラリースペースよりライブラリーを見る(Photo; Gregory Beylerian)

 

2001年に、現在の場所へ引っ越して来たときにマテリアル・コネクションのスタッフが作ったオリジナル の椅子。芝はThe artificial grass – Fieldturf 、赤の素材はThe gell – TechnoGel

 

海外進出する -「マテリアル・コネクション」


ミラノ・サローネでの出展が大変話題になったMaterial Connexionですが、海外進出では一足先に岐阜県ワールド・デザイン・シティ「Active G」の3階スペースで「Material ColleXion」展を2000年7月に開催しています。この展覧会は、岐阜県と先月も紹介した魚住早智子さんの努力で実現しました。

NYのMaterial Connexion本部は昨年11月にチェルシーの25丁目に移動。拡大して、素材に自由に触れられるスペースとオンライン・データーベースによる素材資料調査ライブラリーを確立しました。

そこでは4月18日から「Bathe in the Possibilities of Lucite」展(写真)が行われています。著名な建築家、デザイナーが透明合成樹脂ルーサイトを使って、風呂周りのデザインに挑戦した作品が集められています。

Clodagh Design「Bathe in the Possibilities of Lucite」

 

Ali Tayar 「Bathe in the Possibilities of Lucite」

Matthew Hoey 「Bathe in the Possibilities of Lucite」

 

Matthew Hoey 「Bathe in the Possibilities of Lucite」

Ali Tayar 「Bathe in the Possibilities of Lucite」

 

「Bathe in the Possibilities of Lucite」

Alexandra Champalimaud
「Bathe in the Possibilities of Lucite」

Alexandra Champalimaud
「Bathe in the Possibilities of Lucite」

 

ミラノ・サローネ9号館サテライト会場に出展したマテリアル・コネクション、2002年4月

ミラノ・サローネ9号館サテライト会場に出展したマテリアル・コネクション、2002年4月

年のサローネでの好評をうけて、ミラノに初のMaterial Connexion チェーン店の出店が決まりました。ライセンス契約をしたのはCLAC(セントロ・レグノ・アレド・カント、Centro Legno Arredo Cantu)で、イタリア政府の協力も得て、長期的な事業計画で、より強固なMaterial Connexionを作動すべく準備中だそうで楽しみなところです。


※表示あるものを除き、写真は全て海老原嘉子撮影