第152回 BMW・グッゲンハイムによる新たな試み BMW Guggenheim Lab

 2011年8月3日に、NYマンハッタンのイーストビレッジよりダウンタウンに位置するノリータの空地に、移動式のBMW Guggenheim Lab(ビーエムダブリュー グッゲンハイム ラボ)がオープンしました。関係者をはじめ多くの人々の感心が寄せられています。このラボは、BMWとグッゲンハイム財団による文化事業の一つで、世界9都市を6年間に渡って3回ずつ巡回します。各都市でそれぞれの課題に基づいたテーマを掲げ、これからの都市のありかたに挑戦、その重要性を認識させ、各都市で持続可能な解決策を生み出すことを目的にしています。 【写真1】 ファースト・パーク(Houdson st.2nd Av)に突如現れたこの黒い囲いの空間は、日本人建築家の塚本由晴さんと貝島桃代さんのユニット、アトリエ・ワン(Atelier Bow-Wow)が設計を手がけています。骨組みにカーボンファイバーを使用した初の試みとなっている上、オープンスペースで、さまざまな特別プログラムのニーズに対応できる「移動式道具箱」として考えられています。この道具箱の外壁は2層の半透明のメッシュになっており、モアレ効果を引き出し、光り輝いてみえます。プログラムに応じて道具箱の小箱が動き、空間に様々な変化が生まれるように計画されています。 【写真2】 【写真3】 【写真4】 【写真5】 【写真6】 【写真7】 【写真8】 【写真9】 【写真10】 【写真11】 【写真12】 【写真13】 【写真14】 【写真15】 【写真16】  その道具箱の中では、このラボの内容となるロールプレイングゲーム“Urbanology”が行われています。会場はもとよりオンラインでも参加できるようになっており、会場ではチェスのような駒を使ってゲームが行われます。都市の変革、教育、住宅、医療、持続可能性、インフラなどのテーマが盛り込まれており、参加者はそれぞれの課題にYES, NOで答え、その統計が都市の形に変化を与え、新しい一面を発見することになる仕組みです。 【写真17】    ラボ内では、ウィリアムズバーグで人気のレストラン“Roberta’s”が運営するカフェが併設されており、オープンエアーで軽食がとれるようになっています。このラボは10月16日まで開催されますが、その間100を超えるワークショップ、ディスカッション、上映会、ツアーなど盛りだくさんのイベントが用意されています。昼と夜では異なる景色になり、いろいろな使い方による変化を見るためには何度か足を運ぶ必要がありそうです。 【写真18】  オープンに先駆け8月2日に行われたプレスレビューには、世界中から集まった専門分野のプレスも多くみかけました。次の開催地となるドイツ、その次のインドのムンバイ等の関係者も来られていました。設計されたアトリエ・ワンの貝島桃代さんとお話することができました。Guggenheim Labとのコラボ、場所の幾度かの変更など気苦労も多かったようですが、一番懸念されていた近隣住民の方々の反応が良かったので、本当にうれしいと笑顔でおっしゃっていたのが印象的でした。 【写真19】 【写真20】 【写真21】 【写真22】 【写真23】 【写真24】 【写真25】 【写真26】 【写真27】 名称  BMW Guggenheim Lab       住所 Houston St at 2nd Ave, New York     会期 2011年8月3日-10月16日     時間 毎週水曜-日曜日     入場費 日によって異なる     http://bmwguggenheimlab.org/whats-happening/calendar?reset=1  

第141回 ニューヨーク交通博物館(The New York Transit Museum)

 1900年に地下鉄が出来てから、今年で110周年を迎えました。 ニューヨーク・トランジット・ミュージアムは、Brooklyn Heightsの使われなくなった地下鉄の駅を博物館としてそのまま利用しているので、入館する時は本物の地下鉄に乗るような感覚がします。本物の地下鉄の電車が時代別にいくつも並んでいて、自由に、乗ったり、降りたり、座ったりすることができます。子供や電車好きの人達にはたまらなく嬉しい空間です。 ニューヨーク・トランジット・ミュージアムは、市内の主要な文化機関として公共交通機関の歴史をテーマにする最大の博物館です。博物館の展示会、ツアー、教育プログラム等を通じて、ニューヨークのメトロポリタン地域の開発方針を探ります。公共交通機関の社会、文化と技術の歴史を扱うワークショップを行っています。 ミュージアムの建物は、創業から四半世紀以上経つ歴史的なもので、1936年のブルックリンハイツ工業地帯の地下鉄駅の建物として人気を得ています。保管地域の大規模な公共交通機関ネットワーク、グランドセントラルターミナル駅にある別館のミュージアムを共有し、そのパブリックプログラムを通じて活気に満ちた地域および国際的なオーディエンスをわかした歴史があります。 ミュージアムのギャラリーでは、1900~1925年の頃の鉄鋼、ストーン、そのバックボーンのニューヨーク市はどのような街であったか、その約100年の地下鉄システムを構築する物語、昔の地下鉄システムから最近の高度でインタラクティブな展示までを詳述しています。地下鉄だけでなく、ニューヨーク市の興味深いトロリーやバスを見たり、乗ったりすることができます。また、このミュージアムでは年齢に応じたワークショップが行われ、コンピュータのリソースセンターとしても活躍しています。 様々な種類の地下鉄システムの歴史を、コレクション別や年代別に分けて見せ、建設中の写真、歴史的な関連の出来事も時代に沿ってビデオを用いた展示を行っています。   【1】New York Transit Museum 外観 【2】Museumに入る改札まで。(写真2~5) 【3】 【 4 】 【 5 】 【 6 】 展示されている古い改札口 【 7 】 入ったフロアーの全景 【 8 】地下展示会場への階段 【 9 】1894、1900年当時の写真と実物と一部展示 【 10 】 1922、1925、1932年当時の写真と実物と一部展示 【 11 】 1939、1946、1968年当時の写真と実物と一部展示 【 12 】 1988、1983、1992年当時の写真 【 13 】 昔の改札 【 14 】 現在の改札 【 15 】 トークンの変遷 1984年から1994年のメトロカードになるまで。 【 16 】 1980、1983、1992年とトークン入れの機械の変化 【 17 】 メトロカードのデザイン展示、1994年~1999年   展示会コレクションでは、様々な種類の地下鉄システムが歴史の中で使用された代表的な例を用いて展示されています。例えば、運賃の変化やその回収法、回転ドアのデザイン機能、利用可能なコインとトークン(切符)が時代と共に変化する様子、現在の地下鉄の回転ドアの操作などを、グラフィック・デザインで見る事ができます。トークンの50年の歴史では、最初の紙のトークンから、94年に初めてメトロ・カードになるまでが展示されています。 ニューヨークの硬い岩の下のトンネリングと空気ドリル、電動工具の変化など道具や技術の進化がわかる展示もあります。他には、1950年代まで人種差別のあったアフリカ系アメリカ人が、公共のバスのどこにでも座れるという権利を、エリザベス・ジェニングス・グラハム女史が勝ち取った(1830-1901)話や、1900年に始まったスモークレス(無煙電車)の研究、様々な燃料の起源からその後の環境への影響、有害な排出量の削減など、興味深い内容が幅広く展示されています。 ミュージアムのコレクションでハイライトされている台車50機種以上の詳細な機能や作業車の骨の折れる描写は、George TF Rahilly Trolley博士とバス・スタディ・センターの台車愛好者によって作成されたそうです。 このミュージアムは、ほんとうにユニークな体験を楽しむ事ができます。特別にミュージアムレンタルをしており、年齢に応じた体験型ワークショップや、パーティースペースレンタルでの個人や企業のイベント、子供の誕生日パーティなどにも会場を提供します。 ミュージアムの特別イベントコーディネーターもいて、招待状からパーティーのフード、お持ち帰りパーティーバッグの相談にものってくれます。 ユニークな方法で博物館運営基金を集めているニューヨーク市の、最も特別な場所の一つです。

第140回 NYの地下鉄に見るパブリック・アート

1980年代、老朽化していたニューヨークの地下鉄を再生させるため、MTA(The Metropolitan Transportation Authority)が設備改良プログラムを開始。その一環として、地下鉄や駅にアートを持ち込むプロジェクトが作られました。 MTAのリーダーは、建設プロセスの一部に、アートが魅力的なリハビリテーションになると提案。ニューヨーク市民のリーダーとプロの芸術家が同意し、「パーセント・フォー・アート条例(※1)」と同様の制度を導入しました。それによって、いろいろな委員会より彼らの名声と支持を得る事になり、歴史的な保存と一般の芸術運動が公共政策に影響し始めました。そして、ニューヨーク市が専用のプログラムを作り、地下鉄アートのプログラムを設立。様々な技術の改造と共に、交通機関や多くの駅が修復され、駅にアートを増やしていくことにつながっていきました。作品は、地下鉄システムの中で簡単に維持できる耐久性のある材料を必要とし、セラミックタイル、モザイク、銅、ガラス等でつくられています。駅内の要素をデザインし、物理的な修復と注目に重要な役割を演じます。また、アートワークだけでなく、ゲートや地下鉄の車両、チケット販売機などのデザインも含まれています。 プログラムは創設者の信条に忠実に実施されており、地下鉄は快適な環境、ユーザー向けの設計、材料は最高レベルである事などが原則になっているそうです。100年以上前に始められたプログラムの高い基準が支持され、現在でもそれに従い作品が選ばれています。 アーティストの選出は、「Calls For Artists」を出しアーティストを勧誘し、5人のパネリストから成る選考委員による投票で行います。議決権を持つパネリストは、近隣の博物館と文化的な機関の代表者が2人、アーティストが1人、Transit代表のためのアートとプロジェクトの建築家です。作品設置駅の市民代表は、顧問として招待されます。 アーティストから提出された資料を基に議論を重ね、最終候補者を選出。最終的な提案を概説し、アーティストを選出します。委任するまでにパネルは2回行われるそうです。 毎日何気なく行き来している地下鉄ですが、意識して見渡すと本当に沢山のアートで溢れおり、その質の高さはミュージアム・レベルです。しかも、美術館やオークションに出てくるような有名なアーティストの作品もあり、さすが国際都市ニューヨーク、と感心してしまいます。 MTAのアートが関わっているのは、地下鉄、ロングアイランド鉄道、メトロノース鉄道、道路、橋梁などです。NYの地下鉄は、1、2、3、4、5、6、7、A、B、C、D、E、F、G、J、L、M、N、Q、R、S、Z線と、番号とアルファベットで呼ばれます。 それらに名前をつけ、「レキシントン・アベニューライン」、「ブロードウェイ・ライン、「シックス・アベニューライン」、「エイス・アベニューライン」と呼んだり、地図上の色名で呼んだりと、人によってまちまちですが、日本よりは分かりやすいと思います。乗車するには、プリペイド乗車券のメトロカードを購入します。何より料金がお得で、改札口を出ない限りどこまで乗っても料金は均一です。ただ、日本のような時間の正確さは保証されず、毎週末起こる路線の勝手な変更は(工事中等で)ほんとうに辟易します。その代わりにアートで楽しむ、という事なのかもしれません。 地下鉄L線は14丁目を横切ります。最近の新しい地下鉄のほとんどは、日本人デザイナー・宇田川信学氏がデザインしています。その内部と路線マップデザインがこちら。 【 写真 5 】   ※1:パーセント・フォー・アート条例 公共事業の実施にさいし、建設工事費の1パーセント前後を美術作品のために費やすことを義務づけたもの。1959年にフィラデルフィア市が制定し、その後、全米に波及した。  【 1 】 ユニクロ車両 UNIQLOのタイムズ・スクエアー店オープンを記念して、42丁目のシャトル・トレインがUNIQLOロゴで包まれました。MTAではアートを一緒にしたこのようなサービスも行っています。 【 2 】 ターゲット車両 1月に116th Streetイースト・ハーレムにオープンしたTargetストアーを記念して、ターゲット色でデザインされた6番線の全車両。広告料も弾んだようで、話題になっています。ラッキーだと、このような楽しい地下鉄にめぐりあえます。地下鉄110周年記念でいろいろなイベントも行われています。(写真2~4) 【 3 】 【 4 】 【 5 】 地下鉄L線。日本人デザイナー・宇田川信学デザインの地下鉄内部。 写真を見ながら、ダウンタウンからアップタウンに移動してみます。 まずは、ブロードウエイ・ラインと呼ばれるR、W、N、Q線のCanal St.(カナルストリート)鈍行と急行の乗り換え正面の館内。ビング・リー(Bing Lee)によるセラミック・タイルの紋柄のようなモザイク模様が展示されています。 【 写真 6~7 】 【 6 】 Canal St.(カナルストリート)R、W、N、Q線。 ビング・リー(Bing Lee)によるセラミック・タイルよる紋柄のようなモザイク模様。(写真2~3)Photo:from MTAart 【 7 】 Photo:from MTAart 同じCanal St.(カナルストリート)でも、A、C、E線8thアベニューラインの駅には、ウォルターマーティンとパロマムニョス(Walter Martin and Paloma Muñoz)による作品があります。いろいろなポーズをした174匹のカラスが、プラットホームを上がって改札の柵に群っている銅彫刻です。 【 写真 8~12 】 【 8 】 Canal St.(カナルストリート)A、C,E線。ウォルターマーティンとパロマムニョス(Walter Martin and

第139回 National Design Triennial: Why Design Now?

2010年5月14日から2011年1月9日の期間、クーパー・ヒューイット・ナショナル・デザイン美術館にて、「Why Design Now?」と題した「ナショナル・デザイン・トリエンナーレ」シリーズの第4回目が開催されています。展示作品は、人類と環境との問題を掲げるデザイナーらによるもので、分野は、建築、工業デザイン、ファッション、グラフィック、ニューメデイア、そしてランドスケープなど多岐に渡ります。 クーパー・ヒューイットのキューレーターたちによって企画されたこのトリエンナーレは、世界の問題を解決するために、国際的な協力の必要性、そのデザインとのつながりの反映を、初めてグローバルな域へと到達させたものとなっています。   この展示会のタイトル「Why Design Now? - なぜ今デザイン?」は、 「なぜ、今日の最も差迫った問題を解決するのに、デザインを考えることが必要不可欠なのか」、「何が、クリエイティブな思考家、創作家、問題解決者らをこの重要な発見の道へと駆り立てるのか」、そして、「なぜ、ビジネスリーダー、ポリシーメーカー、消費者そして市民がデザインの価値を認識するべきなのか」を探る問いかけなのです。 デザインにみられる主な発展を、次の8つのテーマに分けて紹介しています。 「エネルギー」「モビリティ」「コミュニティー」「素材」「繁栄」「健康」「コミュニケーション」「簡素性」   2000年に始まったこのトリエンナーレは、画期的で、前進的な思考のデザインを求めています。今回は、44カ国から134のプロジェクトが展示されています。実行委員のチームは、デザイナーやデザインオフィスを合意の元に選んだり、“Trove wallpapers and Etsy”の例のように、専用のウェブサイトを通じて一般から選んだりしています。   展示会では、iPodタッチを無料で借り、デザイナーのインタビューやビデオ記録、解説などを楽しむことができます。早速、試してみましたが、新しい試みの機械による問題は免れないようで、使い手の戸惑いと機械の故障はつきものということのようです。   【 1 】 Cooper Hewit 外観 【 2 】 Cooper Hewit 外観のグラプィック(写真2~5) 【 3 】 【 4 】 【 5 】   【 6 】 Reception Party会場(館内屋外庭園)(写真6、7) 【 7 】 【 8 】 Simplicity コーナーの展示風景 【9】 「NENDO」佐藤大のCabbage Chair 右側のロールが開かれる前。 【 10 】 有機栽培綿と水性無害にインクでプリントされたスカーフ。エコロジーコンセプトの作品。 【 11】Reception Partyで談笑するデザイナー, Stephano Diaz 【 12 】 絹(Row SilkトKibiso)と綿でできたテキスタイル作品。「NUNO」 【 13】 Solpix

第135回 NY Art Week : マンハッタン街中でにぎわったアートウイーク

  今年で12回目を迎えるThe Armory Showが3月2日から7日まで、Piers 92と94を会場に開催されました。5日間で6万人という集客数は過去最大となり、売上総金額も過去最高となりました。また、この期間アカデミー賞が開催されていたこともあり、俳優、モデル、デザイナーなどが目につき、華やかな街の様子でした。 The Armory Showの他にもミッドタウン34丁目では「VOLTA」、リンカーンセンターの敷地内のテントで毎年行われる「Scoop」、ダウンタウンでは「PULSE,」、そして、今年は28丁目のウェストサイドのイベント会場を使って、初めての「Korean Art」が開かれました。こちらは自前のシャトル・バスで他会場とをつなげ、ビッグ・イベントの旗揚げとなりました。 【 1 】 Armory ア-トショー入り口 【 2 】Armory ワークショップ講演の一つ 【 3 】Armory 会場風景(写真3~5) 【 4 】 【 5 】 【 6 】Jim Dine Alan Cristea Gallery London 【 7 】julianOpie Allan Cristea Gallery 【 8 】CarlosCruzDiez 【 9 】Chagall Gallery Thomos(Munich) 【 10 】AndyWarhol Gallery Thomas     今年のThe Armory Showは天候にも恵まれ、どのブースも満員の大盛況ぶりでした。著名なギャラリーも数多く名を連ね、オークションハウスにも出る程の名画が展示され、見応えがありました。 アムステルダムから出展のUpstream Galleryは、オープン日開始35分で個展の作家作品が完売したそうです。また、Lower East Sideから初めて出展したギャラリーでも、2時間で作品を完売したとのこと。全体の90%のギャラリーが最終日までに作品を売り切り、不況を感じさせないNYのアートビジネス事情を実感しました。 【 11 】SamFrancis. Gallery Thomas 【

第134回 MoMAのパーマネント・コレクション「Action Design over Time」展

  新しく入れ替わったMoMAのパーマネント・コレクションの「Action Design Over Time」と題した展示が、2月5日からMoMAの3階で始まりました。それに合わせて「A+D Circleメンバー」募集を兼ねたキューレターツアーも行われました。 A+D Circleとは普通のメンバーシップとは別に、MoMAの建築・デザイン愛好家のためのメンバーシップで、さまざまなシンポジウムやキューレターツアー、建築事務所などへのツアー、話題になっている建物のガイド付きツアーなどが常時行われるというものです。   今回のパーマネントコレクションに追加された作品は、MoMAらしく今の時代を反映し、過去にあり得なかったような、映像や素材、新しいテクノロジーが増えています。 オーガナイズをしたのは、シニア・キューレーターのPaola AntonelliをはじめとするPatricia Juncosa-VecchieriniとKate CarmodyやMoMA 建築・デザイン部のアシスタント・キューレーターで、コンテンポラリー・コレクションの中から85点を選び、展示しています。   入って右手がモダンのセクションで最近のコレクションを。中央が家具、奥の壁には映像や素材などをメインに展示しています。展示作品は、現代のアートやデザインの傾向にもある、自然の進化や環境の変化を受け入れており、表現方法も自由で、現代をより深く理解してもらおうとしています。   展示対象のオブジェのいくつかは、その瞬間の静の部分で見せていますが、制作過程や人々との関係のプロセスなど時代を反映し、そこで止まっている美の物体として捉えています。例えば、インゴマウラーの、壊れた食器で作られたシャンデリア(1994) 【 写真 4、5 】 や、Libertiny Studioの「Honeycomb Vase」などがあります。「Honeycomb Vase」は、4万匹のミツバチが1週間かかってつくった花瓶です。 【 写真 20 】 【 1 】 入って右手のモダンセクション(写真1~3) 【 2 】 【 3 】 【 4 】左手の作品はStack D:A&D Shay Alkalay, Israeli、上からはインゴ・マーラのシャンデリア 【 5 】吉岡徳仁:Honet-Pop Armchair(写真5、6) 【 6 】 【 7 】Corallo Armchair Steel:Campanaブラザー、ブラジル 【 8 】シンデレラ・テーブルD:Jeroen Verhoeven, Dutch 【 9 】 Cabbegeチェア:nendo 【 10 】CoReFab#116_25 D

第132回 SOHO MEWS

SOHOのグランド・ホテルの前に出来た新しいコンドミニアム「SOHO MEWS」は、建築家・ Gwathmey SiegelとLandscape ArchitectのPeter Walkerよって建てられ、ウェスト・ブロードウェイとウースター通りまでの2つの建物を中庭を作ってつなげ、タウンハウス・ペンタハウス、そしてロフトの良さを活かした住居として建てられました。 建築家・Gwathmey Siegel社は、国際的な大きなプロジェクトを手がけていますが、パートナーCharles Gwathmeyが、71才で亡くなったという知らせが入りました。NYのコンドミニアムが今迄の短期、少数旅行者用から、家族での長期滞在者向けに、建てられているのが最近の傾向で、今回の2つのプロジェクトにも見られると思います。 そして、普通の不動産セールスとは違い、雑誌社と組むという、なかなかおしゃれで上手な方法で、この不景気でも話題になっています。 【 1 】 SOHO MEWS 玄関 【 2 】ロビー 【 3 】SOHO MEWS コンドミニアム・ショーケース・ルーム(写真3、4) 【 4 】 【 5 】2つのビルをつなぐ中庭 【 6 】ESQUIRE誌のプロジェクト『バチュラー・ペンタハウス』(写真6~9) 【 7 】  【 8 】提供:ESQUIREマガジン 【 9 】 【 10 】デジタル・インタラクティヴ・プールテーブル(写真10、11) Todays Newsで動きが見えます。>リンク参照 【 11 】 雑誌社が選んだインテリア・デザイナーが、映画をテーマにデザインした部屋です。ESQUIRE誌のプロジェクトは7回目。「バチュラーペンタハウス」と云うテーマで、贅沢なペンタハウスをつくりあげました。2つのペンタハウスを一緒にした大きな部屋、デジタル・プールテーブルのあるリビング・ルーム。9200SQの所に11ルームと9バスルーム、2つのファイヤープレース、2つのスパ。レコーディング・ルームはミキシングやレコーディングが出来、そのまま放送も出来るというものです。 ここでは色々なイベントが行われ、ニュースや雑誌でも取り上げられました。フィルム・フェスティバルの基金集めイベント等も開催されました。 【 12 】 ESQUIREマガジンのプロジェクト『バチュラー・ペンタハウス』(写真12~25) 【 13 】 【 14 】 【 15 】 【 16 】 【 17

第131回 芹沢けい介-型絵染の巨匠

ジャパン・ソサエティー・ギャラリーで「芹沢銈介-型絵染の巨匠」展を2010年1月17日まで開催中です。 芹沢銈介(1895~1984) ― 1956年に人間国宝の認定された芹沢銈介の作品は染色の枠組にとらわれない比類なき美しさと表現力をたたえています。それまでの伝統的な型染は、型紙を制作する型彫師と染物師に分業化されていたのに対し、芹沢は下絵を描き型紙を彫り、糊置きをして色を挿し、水洗いをして干すという一連の工程に自ら一貫して取り組みました。芹沢はこの手法を用いて、着物や帯地のみならず、本の装幀、挿絵、軸、カレンダー、屏風、のれんへと作品の幅を広げていきます。 私自身が女子美の工芸の学生だった頃、何度かお目にかかり指導を受けた事があったので、これだけ網羅した芹沢銈介展をニューヨークで見れることに感激と感慨深い思いで、改めてその偉大な功績を学びました。 【 1 】 芹沢銈介展案内状 【 2 】第1室 【 3 】第1室 【 4 】第1室 【 5 】第2室 【 6 】第2室 【 7 】第2室 【 8 】第2室 芹沢銈介先生は1927年に柳宗悦と出会い、民芸思想に共感し、また、沖縄の紅型に接した事で、沖縄紅型の精密で明快な図案と輝く色彩に魅了され、作品に影響を与えています。第1室では、初期の植物繊維の作品や古事記からの図柄、最初の頃の「工芸」の表紙などが展示され、2室ではヨーロッパの影響を受けた動物の絵柄を型染めで表現したり、初期の「いろは」の型染め、そして3室には最初の「カレンダー」柚木紗弥郎氏制作の作品が展示されています。 【 9 】 第4室 カレンダー他 【 10 】第4室 カレンダー他 【 11 】第4室 のれん 【 12 】第4室 のれん 【 13 】第4室 のれん 【 14 】第4室 のれん 【 15 】第4室 のれん 【 16 】第4室 のれん 【 17 】第4室 のれん 【 18 】第5室 春夏秋冬 芹沢先生は日本の民芸、伝統に精通しながらも朝鮮や沖縄など他の文化から、鮮やかで明快なモチーフを使った大胆なデザインと色彩で自身の作品に反映し、技術の向上を飽くこと無く追求して行った作家だったのでしょうと、ディレクターのジョー・アール氏が言うのがうなづけます。 第4室の縄のれんと、数々の「のれん」に見る、気持ちがよいまでにすっきりと、無駄をはぶいたリズミカルに見えるデザイン。型紙掘りの制限をいかして、ここまですっきりとした表現が出来る芹沢作品のすばらしさを満喫します。第5室では春夏秋冬の文字の展示、第6室は写真のような描写の民具の屏風や現代的になった「いろは」の変化など多彩な作品が展示されています。第7室、本の装幀、第8室で着物、反物と続きます。 【 19 】 第5室 春夏秋冬 【 20

第125回 ニューヨーク国際現代家具見本市21回目

今年で21回目を迎える「ニューヨーク国際現代家具見本市(ICFF)が5月16日~19日まで、NYのジェイコブ・ジャビッツセンター(Jacob k. Javits Convention Center)で行われました。正味14,500平方メートルの会場が、23,500人のインテリアデザイナー、建築家、小売業者、デザイナー、メーカー、卸売業者等でにぎわいます。 出展者は550で、ジャンルは現代の家具、椅子、カーペットと床、照明、屋外の家具、壁関係アクセサリー、織物と台所関係…と幅広く、住宅向きで商業的な内装のための商品など全てをカバーしています。この期間、「ニューヨーク・デザイン・ウィーク」と名付けられていて、ソーホー、ミートパッキング地区、アップタウンからブルックリンまでデザインショップが参加して、新作発表などのイベントが毎日行われる、年々大変なデザインのお祭りなのです。 今年のスタートを切ったのは、事務所を移転して、新居のオープニングをかねたマテリアル・コネクション(60 マディソン街 Madison Ave)のパーティーでした。【 写真 1~10 】 2階のライブラリー・ショールームには、フィリップ・スタルクも講演の合間をぬって顔を出したりし、大物デザイナーらを多く見かけました。 そしてJacob k. Javits Convention Centerは、今年は34カ国、慣例の団体ではオーストリア(Austrian Trade Commission) イギリス( British European Design Group (BEDG), ベルギー Design in Brussels (Belgium), ポルトガル、Furniture Association of Portugal, アメリカ、Furniture New York, The Furniture Society (U.S.), German Design Council), イタリア( i Saloni WorldWide (Italy), IDSA New York (Industrial Designers Society of America), ノルウェイ(Inside Norway), スペイン( Interiors from Spain), 日本(Japan External Trade Organization),(JETRO), スコットランド、Scottish Development International Scotland),

第100回 SOFA New York 2007(Sculpture Objects & Functional Art)展

国際美術工芸品フェア、SOFA(スカラプチャー・オブジェクト・ファンクショナル・アート)2007が、6月1日~3日の期間、パークアヴェニューのアーモリーで開催されました。昨年に比べ期間は短かかったのですが、来場者は金曜日は45%、土曜、日曜は20%の上昇のにぎわいだったようです。 SOFAの創立者でありディレクターのマークライマン氏は、「すばらしい来場者の数で常に混んでおり、ギャラリー売上も上がって、皆が楽しめた、記念すべき10回目のSOFAフェアになりました。」と言っていました。前夜祭には会場で、恒例のMuseum Of Arts & Designの為のギャラ・オープニング・パーティ、サイレント・オークションが行なわれ、スペシャルゲストで賑わいました。 入り口ではコンテンポラリーガラスで有名なHeller Galleryが展示を行い、今年は日本の作家や出展者も増え、SOFAが知られてきているのを感じました。 → SOFA NEW YORK 公式HP → SOFA NEW YORK 昨年のリポート → MAD 公式HP → MAD 昨年のリポート 日本人作家の作品が多数出展 NYで日本人の作家を多く扱うDaiichi Artsは、カラフルな現代陶芸作家の作品を出展していました。ブース110のChappell Galleryにもガラスや陶器の日本人作家の作品が目立ちました。ボストンからは、NY・SOFA初出展のKEIKO Galleryが、ユニークな日本人作家の作品を出展していました。Snyderman-Worksは、オリジナルの小物作品でおもしろいものを扱っています。日本人の作家は、作年は伊部京子氏、今年は山田アキラ氏の作品を展示していました。そして、招待状やカタログカバーにも写真が使われていた、アメリカでも知名度の高い陶芸の金子潤氏の作品は「Sherry leedy Contemporary Art」に展示されていました。 NYのトライベッカに店をもつ「GEN」は、織部の鈴木五郎をメインに見せて出展していました。英国在住の日本人、Junko MoriとHiroshi Suzukiの精巧な作品を見せていたのは「Clare Beck at Adrian Sassoon」。コネチカットの「Browngrotta Arts」は、熊井恭子他、沢山の日本人ファイバーアーティストを扱かっているので有名なギャラリーです。入り口近くにいつもブースを構える「Joan B. Mirviss」は、日本のギャラリーかと思ってしまうほどの日本通で、秋山陽、北村純子他の作品を扱っていてコレクターを沢山もっているようです。オーナーが日本語がうまいメルボルンの「Lesley Kehoe Galleries」では、初日の朝、作家の麻殖生素子が会場で表装をして、屏風のデモンストレーションを行ないました。皆、感心したり、質問したりと、勉強になりました。 会場ではジュエリーのブースが人気で売れていたようですが、やはり日本のアーティストが多数出展していました。初出展の大阪の八木アート「Art court Gallery」でも、日本の現代作家の作品が見ることができたので、良かったと思いました。 日本作家を特に取り上げましたが、来場者も解かってきているので、日本の良い「本物」をどんどん見せるべきだと、ますます思いました。 t 今年100周年を迎えたニューヨークのJAPAN SOCIETY NYでは今年日系人会(The Japanese American Association of New York,Inc)が100周年を向かえます。9月には大掛かりなギャラ・パーティーが予定されており、Japan Societyでも100周年の特別企画として様々なプログラムが企画されています。Japana Societyは、明治40年(1907年)の創立以来、100年にわたり民間非営利の日米交流団体として日米間の相互理解と友好関係を目的に様々な活動を続け、そして、今年創立100周年を迎えるにあたり、「創立100周年記念事業」としてニューヨークと東京にて様々な特別記念事業を開催中です。 その一環として、5月31日から6月10日までの間、日本が誇る最新技術に焦点を当てた11日間のサミット「テックエポック」を開催し、21世紀のライフスタイルを考察する「テックエポック」、デザイナーや技術者によるシンポジウム、講演会、ビジネス関連プログラム、最新ロボットのデモンストレーション、ハイテク舞台公演、学生対象ワークショップなど、様々な催しが行なわれた中の一部を今回ご紹介します。 「テックエポック」のハイライト企画で、日本が誇る最新鋭ロボットのデモンストレーションと共に、製作者によるコンセプトの紹介や、デザイナーよるロボットのデザイン、機能に関する解説などが行われました。 6日夜のプログラムでは、パロ(Paro)の解説をする柴田隆徳氏に、NYの年配の方達が真剣に聞き入っていました。次の会場でロボットFT(女性型ヒューマノイド)、クロイノ(chroino)Nのデリケートが動き、その紹介を高橋智隆氏が行なっていました。また、別の会場では愛・地球博に出展された、新しいパーソナルモビリティ・トヨタ自動車のi-unitが出現。トヨタチーム、橋本博氏の説明を行い、目の前で動くi-unitに、皆大喜びしていました。子供のプログラムは別にあったのですが、ここに来ていた少年達は真剣に質問をしたりしていました。このプログラムは20人程の小人数に分けて入れ替わるように行なわれましたが、定員以上の申し込みだったようです。 テクノロジー&デザインのシンポジウム 6月8日、9日のテクノロジー&デザインの2日間のシンポジウムは、日本発の先端技術が21世紀類の生活に与える影響と変化をテーマに、自動車、プロダクト、ロボティクス、建築技術といった日本の得意とされる分野での今後の展望と、それに影響されるライフスタイルを、デザイン、テクノロジー、機能の融合により新たに生じる可能性や、近未来社会における人間とテクノロジーの密接な関係について、各産業界のデザイナー、批評家、そして専門家を招聘し多角的に討論するプログラムでした。その中の6月8日6時半からの「ユーザーイノベーション:消費者優先のモノ作り」プログラムに参加しました。パネリストは東京電力株式会社執行役員廣瀬直己氏、トヨタ自動車東京デザイン部門部長布垣直昭氏、松下電力シニアアドバイザー、前パナソニック・デザイン社長植松豊行氏。消費者のニーズを意識した技術・商品開発や、デザイン、テクノロジー、機能の融合により新たに生じる可能性、そして近未来社会における人間とテクノロジーの密接な関係について討論しました。司会はカリム・ラカーニ氏(ハーバード大学ビジネススクールビジネスアドミニストレーション助教授)。 第2日目 2007年6月9日(土) シンポジウム2日目は、技術とデザインが人々の未来の生活スタイル、移動性、都市計画、建築学的進歩、人とのふれあいや娯楽などにいかに影響を及ぼすかを考察するというもので、参加パネリストは西山浩平氏(エレファント・デザイン社長)、柴田文江氏(工業デザイナー、デザイン・スタジオS代表)、奥山清行氏(Ken Okuyama Design社長)、松井龍哉氏(ヒューマノイドデザイナー、フラワー・ロボティクス代表)、阿部仁史氏(建築家、UCLA建築部学部長)、高橋智隆氏、柴田隆徳、ニコラス・トンプソン氏(『WIRED』誌シニア・エディター)、クリストファー・マウント氏(ニュースクール大学Exhibitions and