第130回 Slash: Paper Under The Knife「紙を斬る:ナイフを下に」

10月7日から2010年4月4日まで、MAD Museumの企画・素材・行程をテーマにしたシリーズ展の第3弾として、Slash: Paper Under The Knife「紙を斬る:ナイフを下(もと)に」が開催されています。MADの第1回の「ニッティング」、第2回の「レース・刺繍」に続くもので、第3回の紙をテーマのこの展覧会はナイフ、レーザー、新テクノロジー等を駆使し、イタリア、ドイツ、オーストリア、日本、中国、カナダ他16カ国のアーティスト52人が挑戦した紙の作品の展示です。紙がこの何年か大変注目されていて、今回MAD Museumが取り上げた作品の一部を紹介すると、まずロビーにはAndrea MastrovitoのColumbus Circleを意識した「Columbus’s Ship」を天井から展示した作品(写真1)があり、海の波が紙で表現された天井にまず目をうばわれます。3階にはChris Gilmourの「Triumph of Good and Evil」があり、イタリアで街中にある銅像を見ながら、段ボール箱のリサイクルで糊付しながらイタリアで作りあげた作品で、すでにNY市のコレクターが自分の館に飾るために買い上げた2メートル以上ある大きな作品(写真2)です。Andreas Kocks PaperworkはドイツのミューヘンとNYで制作していて、水彩で黒く塗った紙を切って、空間に合わせ重ねて構成していく作品(写真3、4)が迫力でせまり、Tom Friedmanの朝食のオートミールで有名なQuakerの箱35個を切り裂き、ラベルを水に付けてはがして用意し、コンピュータでのばした画像を見本にまた原型の円柱の箱に貼りなおしたというユーモアが際立つ細く長い彫刻の作品(写真5)もあります。紙を切って、こんなにも表現豊かな沢山の作品に、日本にももっと違う紙を見せたい夢がひろがりました。6階のワークショップのフロアーでは、12月5日2時から、女子美同窓会NY支部の有志2、3人がデザイナーの太田恵子さんを中心に、クリスマス・ラッピングとホリディ・カード制作のワークショップをする事が決まりました。はじめての日本人によるワークショップで今後、日本からの匠の技を見せるきっかけになればと願っています。 http://www.madmuseum.org/DO/Calendar/200912/think%20global.aspx 【 1 】 ロビーにAndrea MastrovitoのColumbus Circleを意識した「Columbus’s Ship」を天井から展示した作品 【 2 】 Chris Gilmour「Triumph of Good and Evil」 段ボール箱のリサイクルで糊付した銅像の紙作品 【 3 】Andreas Kocks Paperwork PHOTO CREDIT: Christoph Knoch 【 4 】Andreas Kocks Paperwork 【 5 】Tom Friedman「Quaker Oats」2009 Photo: Justin Kemp 【 6 】Ferry Staverman, Exhibition a Space Odesey in 2007, Weekendgallery Photo:

第129回 NYのArt & Fashion シーズンのはじまり。

ニューヨークは、毎年、夏のバケーションから、レーバーデイ(今年は9月7日)が過ぎると、とたんに秋の行事が動きはじめます。今年のアートシーンのはじまりは、9月2週目の木曜日である10日。シーズン最初のオープニングで、沢山のギャラリーで同時にパーティーが行われました。アートシーンがソーホーからチェルシーに移ってから久しく、この混雑は何事かと思うようなオープニング・シーンに出くわしました。 【 1 】 チェルシー25,26,27丁目ギャラリーが一斉にオープンした通りの賑わい。(写真1、2) 【 2 】 【 3 】Tria Gallery, (531 W. 25th St.) 【 4 】Doosan Gallery New York (533 W. 25th St.)(写真4、5) 【 5 】 【 6 】Doosan Gallery New York Artist- Myeongbeom Kim solo show “ONE”(写真6、7) 【 7 】 【 8 】Stux Gallery 前の混雑(25st.) この不景気に…と思うような、道を横切れないほどの混雑ぶりで、どうしてこんなに人気なのだろう、と同行した友人と首をかしげつつ、ウェストサイド川沿いに近い、27丁目、26丁目、25丁目の10番街と11番街の間に、軒なみ並ぶギャラリーのはしごをしました。 まず初めの、25丁目のチェルシー・アート・タワー1階のMarlborough Gallery(写真9~14)は超満員で、ペーパーマッシェのような素材でつくられた大きな花「A New Beginning」のWill Rymanとおめでとうの挨拶を交わしました。この通りは「Gagosian Gallery」等もある通りで、大変な人気でした。韓国のギャラリーのパワーも素晴らしく、大きなスペースを贅沢に使ったギャラリー続出でした。その一つ、「Arario Gallery」ではOsang Gwonという作家の、写真のプリントを一度分解したものをまた貼付けて人体をつくっている彫刻の展覧会がありました(写真15~18)。並びの26丁目の、銀座にもある「一穂堂ギャラリー」では、青木良太の陶器の作品展が開催されており、内田繁が内装を手掛けた茶室の前にも、青木良太の別の作品が並べてありました。(写真19、20) 【 9 】 チェルシー・アート・タワーとMarlborough Gsllrty(写真9~13) 【 10 】 【 11 】 【

第128回 NY恒例の夏期Accent on Design

NY恒例、8月のインターナショナル・ギフト・ショー「Accent on Design」が、今回は8月16日~20日にジャビッツ・コンベンション・センターで開催されました。今年は天気にも恵まれ、初日2日目の会場は結構混み合い、前回の冬の時期より回復したように思えたのですが、全体的にはオーダーの数が少ないなど、まだアメリカの景気は回復せず、今回も忍耐のショーとなりました。作年同様「Accent on Design」へのアプローチとエントランス・ロビーには、今年も注目される「Sustainability」の特別展示スペースが設けられ、主催者側が選んだ175の点の環境にやさしい、これからの社会を考えたギフト、パーソナルケアー商品から家庭用品などのプロダクトが展示されました。この展示を見てブースを尋ねる人達も多く、展示参加者には大きな助けになっているようです。「Accent on Design」のTOPが変わり、ドロシー・ベルシャウ(NYIGFディレクターとGLM副社長)は「25年間 『Accent on Design』 は、ギフトとライフスタイルの現代のデザイン製品規格をつくりあげてきました。」「そして今回の 『Accent on Design』 賞を受賞した3つの会社とそれらの製品は、混雑している今の業界の中でも『Accent on Design』を特徴付けるエネルギーと巧みさを例示し、輝いています。」と言っています。 【 1 】 慣例になった北コンコースの「サスティナビリティー」展示風景(写真1~4) 【 2 】 【 3 】「サスティナビリティー」上からの全景 【 4 】 【 5 】Accent on Design上からの全景(写真5~7) 【 6 】 【 7 】 【 8 】Accent on Designn会場の入ったすぐの景色、作年迄の ALESSIが降りて、Jonathan Adlerが移動し正面に展示。 【 9 】Accent on Design 賞の発表パネル アワードの選考委員は革新、機能、独創性を評価基準で判断し、今年は以下3社を選びました。□最優秀プロダクト賞は、ブルックリンの「Desu Design」のドアーノッカーで、コートハンガーがミニマルの彫刻としても認識されました。□もう一つのベスト・プロダクトデザインは「Design House Stockholm」(スエーデン)の昔ながらのファミリーチェアーが受賞。新しくて美しいどこにでもある伝統的なスウェーデン人のstickbackチェアー。□Best Overall Collectionを受賞したのは、ブルックリンの「neo-Rtility」。アプローチと共にさまざまな実用的な範囲のカテゴリを提供する、管理選択における素晴らしさが認められました。このboothには日本では知られている「IDEA」が初めて出展しています。 【 10 】 【 11 】 【 12 】もう一つの最優秀プロダクト賞はDesign House

第127回 ブリキのアメ車:田中翼コレクション

7月9日から8月16日まで、ジャパン・ソサエティー(JS)ギャラリーは、第二次世界大戦後の作られた日本製ブリキ模型自動車の展覧会「ブリキのアメ車:田中翼コレクション」を開催しています。これまで未公開だった田中翼コレクションの秘蔵品を集めたこの展覧会は、ちょうど皮肉にもアメリカ車の相次ぐ倒産などのタイミングですが、アメ車の黄金期をミニチュア世界で再現していて、コレクターや懐かしがる熱心な観客からは、良い反省の勉強になるはずという言葉も交えて、好評でした。 私自身もその時代、車狂でいろいろな車を乗り回したり、レースに出場した経過から、とても興味のある展覧会でした。     JSギャラリー・ディレクターのJoe Earie氏の企画で、「黄金時代のデトロイト産自動車の小さなパーツまで精巧に再現した玩具の車は、日本の産業界が軍需から平和時代の生産へと移行する助けになりました。また、当時の貧しい日本のみならず、新しい富裕国となったアメリカでの美しいものに対する欲望を満たす役目を果たしたのです」 「占領下日本製」と表示されたキャデラックからはじまるこの展覧会、戦後日本における玩具産業の創始期に製造された初歩的で小型な作品から、高級志向のアメリカ市場向けに作られた後期の精巧な作品まで、多岐にわたる70点の乗り物が展示されています。 セダン型自動車、オープンカー、ステーションワゴン、配送用ワゴン、バス、トレーラー、レーシングカーほか、1950~60年代にアメリカ人の心をとらえたモーターショーの出品車(コンセプトカー)なども含まれています。その他当時のブリキ玩具産業で製造された幅広い製品を網羅するため、ジェット機、ヘリコプター、快速艇なども数点展示されています。 ブリキの語源はオランダ語のBLIKに由来するそうです。この展覧会では作り手と日本の製造業の背景にもふれています。玩具業マルサン商店が、製造工程が模索段階であったブリキ玩具産業に早くから参画し、創意工夫に富んだ第一人者的立場となり、業界で初めてプレス加工したブリキに座席用布地の模様を石版印刷することを発案、より実物に近い仕上げを実現したそうです。また、アサヒ玩具製造による全長40cmの「1962年型クライスラー・インペリアル」は本展のハイライトの一つで、日本製ブリキ車のコレクター間では大変な価値で垂涎の的になっているそうです。 「ブリキのアメ車」展は60年代中頃までの日本製のブリキ模型自動車に焦点をあてていますが、これ以降は到来したプラスティックとのシェア争いに敗れ、ブリキ玩具業者のおよそ12社が5~10年という瞬く間に倒産したそうです。 コレクターの田中翼氏は1944年東京生まれ、16才頃からアンティーク収集に興味を持ち、玩具、ポスター、着物など幅広くコレクションしていて、海外のほうが知られているのではと思われますが、以前The Bard Graduate CenterのWearing PROPAGANDA展でも、彼の着物コレクションの一部が展示されました。 この展覧会のオープニングには、JSで日本人はじめてとなる、元NY日本領事館大使だった櫻井元篤理事やスタッフ一同は浴衣の夏衣装で出迎えてくださり、リフレッシュしたJSのイメージでした。 日本で行われるとしたら、デパートの催事展になると思うので、ここまですばらしくまとめるJSのJoe Earie氏の日本通に感心し、田中氏も幸せ者だと思いました。 ニューヨーク近代美術館(MoMA)で、ロン・アラッドの米国、最初の回顧展「Ron Arad:No Discipline」が、8月2日から始まり、2009年10月19日まで開催されます。 1951年イスラエル生まれのイギリス人のロン・アラッドは、現存するデザイナーの中で、今日最もパワフル。フォーム、設計、テクノロジー、素材に対するその既成概念を打ち破る、大胆なアプローチで際立っていますが、その作品は工業デザイン、彫刻、建築そしてミックス・メディアのインスタレーションにも及んでいます。鉄鋼、アルミニウム、青銅からターモ・プラスティック、クリスタル、光ファイバーそしてLEDまで、あらゆる種類の材料を駆使した弛み無い彼の実験と、これまでの固定概念の家具、掛け椅子やロッキングチェアから、電気スタンドやシャンデリアなどへの彼の新たな解釈、過去30年間の建築家/デザイナー/芸術家としての概念が、彼をコンテンポラリー・デザインの先駆者に伸しあげたのです。 この展覧会ではデザイン・オブジェと建築模型を含む約140点の作品と60点のビデオを展示しています。 ほとんどの展示作品は、彼自身のデザインによるインスタレーション、「ボーダーのないケイジ」と名付けられた巨大な構造の中で展示されています。コルテン・スティールとステンレスで施されているこの設計は、モマ特別展示会場6階の全長を使い尽くした、38.5メーター、高さ5メーターもの大胆な創りで、今までに見た事のない展示空間をつくりだしています。この展覧会のキューレーター、MoMA建築とデザイン部門のパオラ・アントネリは次の様に述べています。 「デザイナーはクリエーターですが、すべてをこなすのは一人では無理、彼はあらゆるマテリアルに挑戦、工場や作り手と協力し良く話しを聞きます。そして今までにない概念で挑戦し、フレキシブルに対応する事の出来る素晴らしいデザイナー。アラッドは一貫性というものに対し重きを置かず、偶像破壊的な事で知られていますが、彼は今日のデザインの全貌をはっきりとさせ、既成の型にとらわれない突然変異的デザイン~内部と表面に始まり、インタフェースから家具、靴まで、近代デザインの枠を超えるような柔軟性のある~を試行する世代に影響を与えているのです。」 Frontieと#768 「ボーダーのないケイジ」は、アラッドのデザインを、マイケル・カステヤーナと共に設計し、ロベルト・トラバリアの指示のもと、イタリアのマルツォラティ・ロンチェッティによって制作、設置されました。その構造は、ひねった輪のような形の中に、240のステンレスで仕切られた正方形の枠が、展示台として使われる仕組みになっています。片面は、半透明の弾力性のある膜として機能する灰色のガーゼの織物で全体が覆われ、裏側の作品もシルエットで見えるようになっています。この織物は、Maharam社というテキスタイルの会社から寄贈され、この展示会のスポンサーでもあるジーンズの製造社、Notifyによって縫製されたそうです。このインスタレーションのあちらこちらに設置されたモニターでは、最新技術を駆使したアニメーションで、彼の作品と生産過程、建築プロジェクトを見る事ができ、観客の目を引きつけ、作品をより理解できるように工夫されています。 この展示会オープニング・パーティーには、超満員の人出。さすがはMoMA、キューレーターのパオラ、そしてロン・アラッド自身も姿を見せ、この不景気を吹き飛ばすような、桁外れのインスタレーションと彼の相変わらずの個性と盛大な個展に、暑さを吹き飛ばされた思いで楽しみました。  

第125回 ニューヨーク国際現代家具見本市21回目

今年で21回目を迎える「ニューヨーク国際現代家具見本市(ICFF)が5月16日~19日まで、NYのジェイコブ・ジャビッツセンター(Jacob k. Javits Convention Center)で行われました。正味14,500平方メートルの会場が、23,500人のインテリアデザイナー、建築家、小売業者、デザイナー、メーカー、卸売業者等でにぎわいます。 出展者は550で、ジャンルは現代の家具、椅子、カーペットと床、照明、屋外の家具、壁関係アクセサリー、織物と台所関係…と幅広く、住宅向きで商業的な内装のための商品など全てをカバーしています。この期間、「ニューヨーク・デザイン・ウィーク」と名付けられていて、ソーホー、ミートパッキング地区、アップタウンからブルックリンまでデザインショップが参加して、新作発表などのイベントが毎日行われる、年々大変なデザインのお祭りなのです。 今年のスタートを切ったのは、事務所を移転して、新居のオープニングをかねたマテリアル・コネクション(60 マディソン街 Madison Ave)のパーティーでした。【 写真 1~10 】 2階のライブラリー・ショールームには、フィリップ・スタルクも講演の合間をぬって顔を出したりし、大物デザイナーらを多く見かけました。 そしてJacob k. Javits Convention Centerは、今年は34カ国、慣例の団体ではオーストリア(Austrian Trade Commission) イギリス( British European Design Group (BEDG), ベルギー Design in Brussels (Belgium), ポルトガル、Furniture Association of Portugal, アメリカ、Furniture New York, The Furniture Society (U.S.), German Design Council), イタリア( i Saloni WorldWide (Italy), IDSA New York (Industrial Designers Society of America), ノルウェイ(Inside Norway), スペイン( Interiors from Spain), 日本(Japan External Trade Organization),(JETRO), スコットランド、Scottish Development International Scotland),

第124回 SOFA NY 2009

12回目になるSOFAニューヨーク(Sculpture Objects & Functional Art)が、2009年4月16日~19日までパークアベニューのARMORYでおこなわれました。 オープニングの15日はTAX締め切りの忙しい日だったにもかかわらず、夕方からも2200人の人々で混み合いました。 恒例のMuseum Arts & DesignのBenefit(基金集め)のサイレント・オークションも会場に設けられ、カクテル・パーティーがティファニー・ルームで行われました。 ロンドンのディーラーJOANNA BIrd が「Pippin Drysdale 2009のインスタレーション1」セラミックのシリーズを$ 79,000で押さえるなど、不況の影響を感じないオープニングだったようです。 今回のSOFAの集客数は、最終日の19日までに、コレクター、キューレーター、建築家、インテリア・デザイナー、アート・アドバイサー、新しい観客などを含め、約17000人になったそうです。 今年の広報で話題になっていた、William Zimmer Galleryの Tomas Huckerのロッキング・チェアー。 彼は1985年にGallery91で、私の企画の「MADE in USA」のグループ展に参加してもらったアーティストで、その後も2度ほど出品していました。しばらく会っていない間に、国際的な家具の作家になっていて誇りに思い、久しぶりの再会を喜び合いました。彼はその後、日本の大学に通い、お茶の稽古も積んで感性を磨いていたようで、日本的繊細さ漂う作品づくりをしています。 ティファニー・ルームで行われるサロンSOFA:レクチャー・シリーズでは、Bookサイン会ほか、9つの講演が行われました。 David McFaddenのMAD Museumの今後の企画展の話、日本の焼き締めのマスター Jeff ShapiroのStudeio Potterの話、京都からの陶芸の巨匠 宮下善爾氏、その他各々聞いてみたい、勉強になりそうな講演でしたが、一部だけしか聞きに行けませんでした。 私が聴講した森じゅんこさんの講演にも、多くの方が熱心に聞き入って質問をしていました。彼女はシルバーを使って、彼女の好きでコレクションしている自然の植物や葉、茎等からワックスで型をとり、それをまた組み合わせてデリケートな形にしていったり、プロセスの関係で出来る形が器に見えたり、壷だったりする、ユニークな作品を作りあげています。ロンドンの銀の使い手、鈴木ひろし氏に助けられたという努力家で、素直で素敵なアーティスト。今後ますますグローバルな大物に発展しそうです。 今回のSOFAの売上げが気になり調べた所、Leo Kaplan Modernは$ 38,000でRichard Jolley 「2009 Still Life」を初日に売り、Chicago Habatat Galleries 『Shayna Leib glass installation」が$ 46,000 等々、エコノミーの不況も、本物を求めるコレクターには影響の無い事を証明。 オープニングの当日、Joan B. Mirvissのところでは29作品の売上げを記録、宮下善爾氏の陶芸19点を売りさばき、最終日の昼には3点を残す完売状況だったそうです。 アメリカ国内のあちこちから来た、多くの新しいコレクターや、インテリアデザイナーが買っていった、と驚きをしめしていました。 Londonのディーラー、Clare Beckも売上げを喜ぶ一人で、The venerable Adrian Sassoonでは、各アーティストの作品、特に鈴木ひろしの大きな作品や森じゅんこの作品が売れたそうです。 竹で有名なTAI Galleryでも、森上仁の作品などは直ぐに売れたという事でした。 ジュエリーのMobilia Galleryも、楠本マリコの大きなメタルの彫刻が$ 50,000でアメリカのコレクターが買い上げられる等々、心配をしていただけに喜びをあらわにしていました。 今やSOFAは、工芸の世界から抜け出て、Art Basel.と同じような舞台になりつつあり、VIPカードで著名人が出入りするVIPラウンジを会場内に設け、ウィットニ・ミュージアム、グッゲンハイム、MOMA、メトロポリタン・ミュージアムなどを相手にするアート市場になってきたようです。 SOFA http://www.sofaexpo.com/ ※表示あるものを除き、写真は全て海老原嘉子撮影

第123回 Fashioning FELT ファッションするフェルト

この展示会は、テキスタイルの最初の技術と言われるフェルト、古代から存在する素材で、この2、3年大変人気のあるマテリアルでもあるフェルトを「ファッションするフェルト」と題してまとめたもので、3月6日から9月7日までCooper-Hewitt National Design Museumで開催されています。 フェルトの画期的な様々な新しい手法、ファッション、建築、プロダクトデザインそして装飾にわたる分野の70点以上の作品が展示されています。 展覧会はCooper-Hewitt National Design Museumがコレクションとして保存していた作品も多く、フェルトの歴史を取り上げる作品から始まり、ハンドメイドの画期的変化を捉え、使い捨てのウールとフェルトの再利用という近年のテーマ、サステナビリティーに絡んだ作品、またGaetano PesceからTom Dixonまで建築家やデザイナーたちの、幅広く網羅された最新のフェルトに至るまでを紹介するかたちになっています。手芸、クラフトになりがちな素材の展覧会が、ハーバート大学建築科教授の森俊子氏の展示設営で、すっきりとまとめられています。 展示会のハイライトは、今日のフェルト工芸を代表する2人の作家の作品で、一つは旧カーネギー邸だったこの美術館の温室ドームを、ジャニス・アーノルドが手掛けた、シルク・オーガンディーにレースのようにフェルトを組み込み、創作された布でドームを覆い尽くしたインスタレーションです。ジャニス・アーノルドは遊牧民のテント式移動住居、ユルト(テント)に魅せられた宮殿「ユルト宮殿」を創り上げました。 もう一人のオランダのデザイナー Jongstraは、彼女自身の飼育する羊の毛を使った、手製の毛の長いフェルトでよく知られていますが、この展示では大きな異なる半円スペースを創っています。 館長のPaul Warwick Thompson 氏は次のように語っています。「フェルトは遊牧文化において何千年もの間、重要な役割を果たしてきました。この展示会ではその原点を探り、今日に至るまでを緻密に紹介しています。また従来のものから、非伝統的なフェルトの長年にわたる使い方、の両面からみることによって、そのユニークな性質にスポットライトを当て、古代の素材の現代の姿を広範囲にわたって展示しています。」 フェルトは再生できる原料から出来ていて、その制作行程はごく簡素なもので、全く無駄がでず、羊毛を水に浸し、繰り返し擦り、繊維を圧縮することにより、強く暖かく保湿性があり、防音、防水、耐火にも優れた繊維が出来あがる行程もVideoやパネルの展示で見る事ができます。その混合法は、羊毛の束を手で地面に激しく叩き付けるやり方から、機械で摩擦する工業フェルトまで、様々で、ただ、どの方法でも、フェルトを縮めて固めるための、強い振動と圧力が必要です。 ウールから出来ている他の繊維、編む等の機織とは違い、フェルトには繊維の内部構成というものがないので、自由自在にカスタマイズして、完成したプロダクトにする事が出来、他の素材ではみられない万能性があり、例えば、柔軟性や透明感を持たせる事も、濃密に固くすることもでき、解れのない裁断や、立体に作り上げることもできる万能布地です。 その紀元が少なくとも新石器時代(9000B.C.)に遡るといわれるフェルトは、人類の作りだした最古の布地だと言われています。中央アジアやモンゴルの遊牧民の唯一の重要な素材だったフェルトはテント、衣服をはじめ、柔軟性のある、折畳式の移動住居の、ありとあらゆるものに使われていました。その素材の多用性、また歴史を通しての技術の進化を捉えるために、この展示会では動物のわな、カーペットや羊飼のマントなども展示しています。 環境への負荷が無く、100%リサイクル可能で、様々な分野で持続可能な素材として注目されているこのフェルトは今日、デザイナーに無限の可能性を与えてくれています。 今迄に開催されていそうで、なかったフェルト展、改めて話題を呼んでいる、この夏ニューヨークで、一押しの展覧会です。 ※表示あるものを除き、写真は全て海老原嘉子撮影

第122回 Museum of Arts & Design Innovation Galleryの新しい企画

昨年9月末コロンバス・サークルにリニューアル・オープンした「Museum of Arts & Design」ですが、2階を「Innovation Gallery」と銘打って、デザイン展をショート・サークルで開催する今までのミュージアムにはない企画展を発表しました。 そのスタートに「デザイナーのキューレーターによる展覧会」第1弾で、デザイナーのカリム・ラシッドの「Totally Rad:Karim Rashid Does Radiators」(Rad:ラジエーターやラジカルをもじったカリムの言葉)が3月4日から5月17日まで行なわれています。 ミュージアムでの作品は通常一品もののプロトタイプで、なかなか手に入らないものが多く、展覧会も開催までに通常は2年から5年と時間を要しますが、カリムはこの「Innovation Gallery」に、購入しようと思えば市場ですぐ手に入る、日常の生活の必需品である暖房具、ラジエーターをデザインで見せるというショーケースの試みを提案しました。カリムは以前NY市のマンホールのフタをデザインした事もあり、通常目につかないようなところのデザインを提案をし、「世界を変える」をテーマにしています。 Antrax、Caleido、Deltacalor、Irsap、Hellos、Gruppo RagainiとRuntal社等のデザイン・インテリア・ラジエーターを、「斬新な形」、「部屋の中での重要度」、「形」、「パターンとテクスチャーの現代感覚」、「モジュール/柔軟さ」、「多用性」、「新しいテクノロジー」などを基準に、彼のセンスで30点を選び、展示設営も彼によるデザインで、今迄のMADミュージアムにはない新しいデザインの展示になっています。 NYの冬の暖房ラジエーターは、19世紀から序々に開発されているようですが、日本と違ってどのアパートも古くからのラジエーターが取り付けられていて、なんとかならないかという代物も多く、横からスチームがでたり、音がするもの等、一向に改善しているように見えません。アメリカでは家主が購入するという不動産事情があるからではないかと思われます。 日本のように個人購入するのであれば、もう少し工夫され、新しいハイテクノロジーを駆使したものが出てくるように思いますが、今回の展覧会はあくまでも、NY事情で感じた中で、アメリカのインテリアにあうラジエーター、ヒーター・システムを選んだものだと思います。 短期間での企画で新しいアイデアやデザインは新風ですが、マンハッタンの小さなアパート、日本の住居でもフィットする小型のラジエーターや、新しいテクノロジーやエネルギー・セーブを追求したものがもっと出てきてほしいと思いました。 ※表示あるものを除き、写真は全て海老原嘉子撮影

第121回 NY恒例の冬期Accent on Design

インターナショナル・ギフト・ショー、Accent on Designが、今回は例年より早い1月25日~29日に、ジャビッツ・コンベンション・センターで開催されました。 今年はパリのメゾン・オブジェと重なったせいもあってか、出展できないブースもあり、休憩所を増やすなどで工夫しているようでしたが、やはり不況のあおりもあり、今迄になく閑散とした会場と売行きで、出展者は皆、忍耐の期間と頑張っていました。 それでも地下に設けられている、キャンドルなど香りのする癒し系商品を扱う「Extracts」の部門はとても賑わっていたようです。不景気で外出が減る分、家の中を充実させるものが人気でした。景気に関わらず消費するものは売れるということでしょうか。 初日を除いて、天候も寒さと大雪などで厳しかった事も、更に入場者の足を遠のけることになったようです。 Accent on Design部門への入り口ロビーには、今年も 「Sustainability」の特別展示が設置され、来場者の目を楽しませていました。 例年のAccent on Design賞の今年のBest New Product Designは、コネチカットの会社Ameico、そのスエーデンのBo Designのデザインによる、壁に取り付け折畳める、場所要らずの赤ちゃんオムツ取替えテーブルに。またもうひとつは、メキシコシティーから、DFC Mexicoのカラフルなメキシコ工芸を思わせる、コンテンポラリーでポップなバッタのテーブル。 Best Collection賞はNY・ブルックリンのKiln Design Studioへ。 そしてOverall Excellence賞はAreaware(NY)の、常に若手無名デザイナ-の商品開発をしている姿勢に与えられました。 きみどり色の絨毯が敷かれている3600~4200番台の列がAccent on Designセクションです。入ってすぐに右にあるブース「A+」は、次世代を担うデザイナーの発表の場として主催者側が提供しています。 またレースのような繊細なペーパーカットによるランプシェードで人気を集めたArtecnicaの華やかなブースが目につき、その隣りでは今回、umbraのユニークなアート商品ライン「U+」のためにもう一つ別にブースを設け、白い紙を大量に重ねたすっきりとしたデザインで展示していました。 KIDIでも教えていたAaron LownがチーフデザイナーのBuilt NY Incが、会場前方に進出して、目をひくユニークなブースデザインを手掛けていました。 また昨年紹介した、RISD卒の日本人カップル、Morihata Internationalが、今年はAccentの方に出展していました。同じくアクセント部門の、板雅子さんと妹さんのバッグとジュエリーの「acrylic」もすっきりとして好評でした。 Gallery91は今回もコストを押さえる工夫をしたブースに仕上げましたが、円高の影響でどうしても価格を上げざるを得ず、日本製品を扱う方達はどこも苦労していました。オーダーが通常よりかなり減り、顧客のMUSEUMのオーダーに頼る形となりました。 他ではHAND MADE部門を覗きましたが、ドイツ・セクションは毎年品質の高い手作り工芸品を国がサポートしていて、素晴らしい見せ方をしています。どのようにビジネスにつなげているのか気になります。 地下の8600~8700列のExtracts部門は、最初にも書きましたが毎日かなりの人で賑わい、売れ行きも良かったそうです。癒し商品が時代に合っているようです。 ジャビッツ以外では、同時イベントとしてフエリッシモが、今回は1月25日~2月7日まで「unfolding」Japanブランド・エキジビション in NYとして開催していました。各商工会議所がバックアップしての盛大なオープニングは、ジャビッツから流れて来た来場者と日本からの方で超満員で、あまり見られない状態でしたが、トレード・ショーとはかけ離れた日本的展覧会でした。 改めて再度見に行きましたが、きれいな展示風景で、日本をきちんと紹介するには素晴らしい展覧会でした。しかし、一部、NYの常識を無視しての価格設定で、3月迄の予算を使う為の無駄使いに思われるものがありました。日本からの人達はどうも、展覧会とトレードショーの違いがわかってないように思います。美術館を借りて展覧会で売りたいと言ったり、ジャビツのトレードショーの中で展覧会と思って参加して、値段も付けられないで出展してたり、同じような事を毎回繰り返しており、せっかくのすばらしい日本商品を真剣に売るための努力をしてないように思えました。 次回のAccent on Designは8月15日~20日です。 ※表示あるものを除き、写真は全て海老原嘉子撮影

第120回 アジア現代アートフェアー・ニューヨーク(ACAF)

第2回アジア現代アートフェアー・ニューヨーク(ACAF)がニューヨークのピア92(52丁目 / 12番街)で2008年11月7日(金曜日)から10日(月曜日)迄開催されました。 現代アジアの芸術の最も重要な展示会で、ニューヨークで唯一の国際的な美術展示会として今回2回目となるACAFに、昨年の成功から期待と興味が高まりました。一般公開に先駆け、6日にはプレス・プレヴュー、Vip Partyがあり、いろいろな趣向がこらされて、注目を浴びました。今回は15カ国から70以上の国際的なギャラリーが参加。中国、日本、韓国、インド、バングラデシュ、フィリピン、シンガポール、ベトナム等のアーティストによるによるさまざまな現代の作品が展示されました。絵画、彫刻、写真、紙の作品、ビデオ、およびインストール他をはじめてアメリカで発表される作品が多く見られました。 6日のオープニング・ナイト・プレヴューでは、受賞デザイナーのAngel Changのファッション・ショーが行われたり、Yibin Tianの北朝鮮兵士を装った大勢の兵士達のパフォーマンスの動きや、山下画廊の茶会のはじまりを知らせる拍子木の行列などが、何度か展覧会会場を沸かせ、アジアをアピールしていました。 北京のYibin Tianの写真とパフォーマンスは、彼が北朝鮮を尋ねた時の厳しい規制で写真を撮る事が出来なかった強い印象を、自国にも捻って訴えているという作品だそうです。 もう一つ話題だったのは大きなケージに入った真っ赤な鳥で、韓国の女性作家、Ran Hwangの作品『Dreaming for Joy』で、赤いボタンと金属のピンを壁に鳥の形にインストールしたものですが、抑圧からの開放の夢との事、人気を集め注目されていました。 山下画廊の日本画家・手塚雄二氏の大きな屏風の作品は、黒い畳みを敷いた本物日本の会場設営、京都の裏千家・今日庵・金澤宗維氏のお手前と道具、脇役も揃ってすばらしい会場になっていて、来場者も身を引き締めて観ていました。 東京とチェルシーにある一穂堂ギャラリーから、CHICARA(永田力)のLiquid Chromeのオートバイも、ファインアートの中で異種な感じもあり、人気を呼んでいました。 2つのスペシャル展覧会:Dr. Charles Merewetherのキューレートによるカザフスタン、トルコ、およびジョージア等のアートからの選ばれた作品展、そして、キューレーター・Feng Boyiの「MyBone, Flesh,and Skin」は中央アジアと中東の国からの人体に関連する現代の中国人のアーティストと彫刻を奥の会場を広く使って展示されていました。 各Galleryの展示ブースの他に、スポット・ライトとしての招待作家の作品ブースが6カ所あり、知人のNYのPierre Sernet氏のゲリラTeaの写真と、2畳間の木枠も展示されていました。 他にもアジアの現代の芸術に関連する問題をテーマに、毎日公開討論会や講演、主な館長、美術史家、コレクター、ジャーナリスト、芸術ディーラー、および芸術家がパネラーで企画を行っていたようです。 アジアの現代アートの要求は、最近すごい勢いで成長していて、暮れのマイアミ・バーゼルにもアジアン・セクションが出来たりと、高く昇り続けているように見えますが、宣伝や投資家達の不況の波に潰されないよう、足を地につけて、歴史と本物指向でがんばってほしいと思いました。 ※表示あるものを除き、写真は全て海老原嘉子撮影