この展示会は、テキスタイルの最初の技術と言われるフェルト、古代から存在する素材で、この2、3年大変人気のあるマテリアルでもあるフェルトを「ファッションするフェルト」と題してまとめたもので、3月6日から9月7日までCooper-Hewitt National Design Museumで開催されています。
フェルトの画期的な様々な新しい手法、ファッション、建築、プロダクトデザインそして装飾にわたる分野の70点以上の作品が展示されています。

展覧会はCooper-Hewitt National Design Museumがコレクションとして保存していた作品も多く、フェルトの歴史を取り上げる作品から始まり、ハンドメイドの画期的変化を捉え、使い捨てのウールとフェルトの再利用という近年のテーマ、サステナビリティーに絡んだ作品、またGaetano PesceからTom Dixonまで建築家やデザイナーたちの、幅広く網羅された最新のフェルトに至るまでを紹介するかたちになっています。手芸、クラフトになりがちな素材の展覧会が、ハーバート大学建築科教授の森俊子氏の展示設営で、すっきりとまとめられています。

【 1 】 "friezes", Kathryn Walter
【 1 】 “friezes”, Kathryn Walter
【 2 】 第一室、展示風景(写真2~4)
【 2 】 第一室、展示風景(写真2~4)
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【 5 】 D: Ursula Suter
【 5 】 D: Ursula Suter
【 6 】 molo design社による"Felt rocks"のインスタレーション Photo: molo
【 6 】 molo design社による”Felt rocks”のインスタレーション Photo: molo
【 7 】 20世紀初期のダルビッシュ帽、 テキスタイル美術館
【 7 】 20世紀初期のダルビッシュ帽、 テキスタイル美術館
【 8 】 Brigit Daamen、ネックレス3点
【 8 】 Brigit Daamen、ネックレス3点
【 9 】 19世紀後期中国の毛氈マット Photo: Matt Flynn
【 9 】 19世紀後期中国の毛氈マット Photo: Matt Flynn
【 10 】 Louis Campbell の椅子、"Bless You" Photo: Erik Brahl
【 10 】 Louis Campbell の椅子、”Bless You” Photo: Erik Brahl
【 11 】 Andrea Zittel の"A-Z Personal Uniforms"シリーズより
【 11 】 Andrea Zittel の”A-Z Personal Uniforms”シリーズより
【 12 】 Andrea Zittel "A-Z Fiber Forms"  Photo: Kentaro Takioka
【 12 】 Andrea Zittel “A-Z Fiber Forms”  Photo: Kentaro Takioka
【 13 】 アフガニスタンの乗馬のサドルパッド、American Museum of Natural History所有
【 13 】 アフガニスタンの乗馬のサドルパッド、American Museum of Natural History所有
【 14 】 フェルトのタペストリーと容器、Jorie Johnson(写真14~16)
【 14 】 フェルトのタペストリーと容器、Jorie Johnson(写真14~16)
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【 17 】 Soren Ulrik Petersen、ゆりかご(写真17~18)
【 17 】 Soren Ulrik Petersen、ゆりかご(写真17~18)
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【 19 】 "Carnet de Voyage Imaginaire", Françoise Hoffmann
【 19 】 “Carnet de Voyage Imaginaire”, Françoise Hoffmann
【 20 】 Christine Birkleデザインのドレス Photo: Christine Birkle
【 20 】 Christine Birkleデザインのドレス Photo: Christine Birkle
【 21 】 Christine Birkleデザインのドレス
【 21 】 Christine Birkleデザインのドレス

展示会のハイライトは、今日のフェルト工芸を代表する2人の作家の作品で、一つは旧カーネギー邸だったこの美術館の温室ドームを、ジャニス・アーノルドが手掛けた、シルク・オーガンディーにレースのようにフェルトを組み込み、創作された布でドームを覆い尽くしたインスタレーションです。ジャニス・アーノルドは遊牧民のテント式移動住居、ユルト(テント)に魅せられた宮殿「ユルト宮殿」を創り上げました。
もう一人のオランダのデザイナー Jongstraは、彼女自身の飼育する羊の毛を使った、手製の毛の長いフェルトでよく知られていますが、この展示では大きな異なる半円スペースを創っています。

館長のPaul Warwick Thompson 氏は次のように語っています。「フェルトは遊牧文化において何千年もの間、重要な役割を果たしてきました。この展示会ではその原点を探り、今日に至るまでを緻密に紹介しています。また従来のものから、非伝統的なフェルトの長年にわたる使い方、の両面からみることによって、そのユニークな性質にスポットライトを当て、古代の素材の現代の姿を広範囲にわたって展示しています。」

【 22 】 Museum ドームを覆い尽くして創作されたJanice Arnold によるインスタレーション、"Palace Yurt"(写真22~23)
【 22 】 Museum ドームを覆い尽くして創作されたJanice Arnold によるインスタレーション、”Palace Yurt”(写真22~23)
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【 24 】 Janice Arnold によるインスタレーション、"Palace Yurt" Photo: Matt Flynn(24~25)
【 24 】 Janice Arnold によるインスタレーション、”Palace Yurt” Photo: Matt Flynn(24~25)
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【 26 】 (左)Stephanie Odegardのデザインのカーペットと(右)Herat Carpets 社のカーペット
【 26 】 (左)Stephanie Odegardのデザインのカーペットと(右)Herat Carpets 社のカーペット
【 27 】 (左)"Striations", Kathryn Walterと(右)Felt wall panelby Diller Scofidio + Renfro
【 27 】 (左)”Striations”, Kathryn Walterと(右)Felt wall panelby Diller Scofidio + Renfro
【 28 】 第2室、展示風景 "Joseph Stool"、521Design
【 28 】 第2室、展示風景 ”Joseph Stool”、521Design
【 29 】 "Relief" チェアー、Ben K. Mickus とフロアーラグ / タペストリーは"Cityscape-New York"、Monika Piatkowski
【 29 】 “Relief” チェアー、Ben K. Mickus とフロアーラグ / タペストリーは”Cityscape-New York”、Monika Piatkowski
【 30 】 タイル、Sculpturfabriken 社
【 30 】 タイル、Sculpturfabriken 社
【 31 】 Yeohlee Teng デザインのパンツ、スカートとジャケット
【 31 】 Yeohlee Teng デザインのパンツ、スカートとジャケット
【 32 】 "Spot" カーペット、Nynne Faerch と Majken Mann
【 32 】 “Spot” カーペット、Nynne Faerch と Majken Mann

フェルトは再生できる原料から出来ていて、その制作行程はごく簡素なもので、全く無駄がでず、羊毛を水に浸し、繰り返し擦り、繊維を圧縮することにより、強く暖かく保湿性があり、防音、防水、耐火にも優れた繊維が出来あがる行程もVideoやパネルの展示で見る事ができます。その混合法は、羊毛の束を手で地面に激しく叩き付けるやり方から、機械で摩擦する工業フェルトまで、様々で、ただ、どの方法でも、フェルトを縮めて固めるための、強い振動と圧力が必要です。

ウールから出来ている他の繊維、編む等の機織とは違い、フェルトには繊維の内部構成というものがないので、自由自在にカスタマイズして、完成したプロダクトにする事が出来、他の素材ではみられない万能性があり、例えば、柔軟性や透明感を持たせる事も、濃密に固くすることもでき、解れのない裁断や、立体に作り上げることもできる万能布地です。

【 33 】 切り株と裁断された切り株、Lene Frantzen と "Textile Stones" クッション、Pernelle Fagerlund、ジャケットはAlexander van Slobbe、椅子はGaetano Pesce によるもの(写真33~35)
【 33 】 切り株と裁断された切り株、Lene Frantzen と “Textile Stones” クッション、Pernelle Fagerlund、ジャケットはAlexander van Slobbe、椅子はGaetano Pesce によるもの(写真33~35)
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【 36 】 Jean Nouvel の "Skin sofa"、 LEDカーペット、壁はJanice Arnold の "Woven Wall"
【 36 】 Jean Nouvel の “Skin sofa”、 LEDカーペット、壁はJanice Arnold の “Woven Wall”
【 37 】 LAMA Concept による LEDカーペット
【 37 】 LAMA Concept による LEDカーペット
【 38 】 LAMA Conceptによる LEDカーペット、Photo: LAMA Concept,
【 38 】 LAMA Conceptによる LEDカーペット、Photo: LAMA Concept,
【 39 】 Louise Campbell の "Prince Chair"
【 39 】 Louise Campbell の “Prince Chair”
【 40 】 インタレーション"Inner Moods"、Claudy Jongstra Photo: Matt Flynn
【 40 】 インタレーション”Inner Moods”、Claudy Jongstra Photo: Matt Flynn
【 41 】 Stephanie Odegard のストライプカーペットと Texitile Museum of Canada からのカーペットと、オランダの Flocks による "Urchin"クッション
【 41 】 Stephanie Odegard のストライプカーペットと Texitile Museum of Canada からのカーペットと、オランダの Flocks による “Urchin”クッション

その紀元が少なくとも新石器時代(9000B.C.)に遡るといわれるフェルトは、人類の作りだした最古の布地だと言われています。中央アジアやモンゴルの遊牧民の唯一の重要な素材だったフェルトはテント、衣服をはじめ、柔軟性のある、折畳式の移動住居の、ありとあらゆるものに使われていました。その素材の多用性、また歴史を通しての技術の進化を捉えるために、この展示会では動物のわな、カーペットや羊飼のマントなども展示しています。

環境への負荷が無く、100%リサイクル可能で、様々な分野で持続可能な素材として注目されているこのフェルトは今日、デザイナーに無限の可能性を与えてくれています。
今迄に開催されていそうで、なかったフェルト展、改めて話題を呼んでいる、この夏ニューヨークで、一押しの展覧会です。

【 42 】 フェルト制作風景を紹介するパネル展示(写真42~46)
【 42 】 フェルト制作風景を紹介するパネル展示(写真42~46)
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【 47 】 ミュージアムショップに特別に置かれたフェルトのプロダクト(写真47~50)
【 47 】 ミュージアムショップに特別に置かれたフェルトのプロダクト(写真47~50)
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※表示あるものを除き、写真は全て海老原嘉子撮影