国際美術工芸品・高級クラフトの展示会・SOFA
6月2日~5日、パークアヴェニューのアーモリーにて、第8回目の国際美術工芸品・高級クラフトの展示会・SOFA(スカラプチャー・オブジェクト・ファンクショナル・アート)が行なわれました。毎年オープニングには、アメリカン・クラフト美術館主催の基金集めのギャラパーティが開催されます。会場内にはおしゃれなケータリングが出て、オークションもあり、飲んだり、つまんだりしながら鑑賞できます。世界中から集まったディーラー、Museum、ギャラリー、コレクター等が、Museumでは買うことができない、手に入らないレベルの一品もの、アンティークからコンテンポラリー家具、ジュエリー、ファインアートまで、質の高い作品を鑑賞しながら買っていきます。
→ SOFA 公式HP
→ SOFA New York 2004のリポート
→ SOFA New York 2003のリポート
SOFAはMark Lyman社長とディレクターのAnne Meszkoがオーガナイズしており、他のMuseumにも協力を得て、特別展示やレクチャー・シリーズの講演など、盛りだくさんのプログラムを用意していました。
毎回、日本の陶芸家やファイバーアート、ジュエリー・デザイナーの名前が増えており、全体の品質を上げているように感じました。NYではSOFAの会期中、クラフト・アンティック・ウィークとして、あちこちでショーが催されるようになりました。その中でSOFAは、ブランド化の傾向が見え始め、発掘する作家や作品のおもしろみがなくなり、高すぎる、の声も聞こえていました。
チェゼン夫妻のコレクション展 Dual Vision
5月26日からMAD(Museum Of Arts & Design)にて、シモナ、ジェローム・チェゼン夫妻のコレクション展、初のプレミアショーDual Visionが開催されています。このDual Vision展は、チェゼン夫妻のコレクション98点に及ぶ世界中の近・現代芸術のマスターピース、絵画、ドローイング、具象から抽象ガラス彫刻や絵画、セラミック・ブロンズ・繊維・ミックスメディア等の3次元の作品も包含し、20世紀を代表するアーティスト達の作品によって構成されています。
今回、この展覧会で展示された作品の中から50点に及ぶ陶芸、ガラス作品がMADに寄贈されました。展覧会は9月11日まで開催され、この芸術コレクションは20世紀最大の個人芸術コレクションの一つとして数えられるであろう、と云われています。
ウィリアム・モリスなど、超有名な作家の作品群
夫妻のコレクションには、ロバート・アーネサン、デール・チフリ、スタニソロフ・リベンスキー、ウィリアム・モーリス、メアリー・シャファー、リノ・タグリアペネトラ、といった超有名な作家の作品群が含まれています。
○ ガラス : デール・チフリー、ハーヴェイ・リトルトン、クラウス・モヘ、アーウィン/エイシュ、リノ・タグリアペネトラ、ウィリアム・モリス、メアリー・シェーファーのグラス作品。
○ 絵画 : ジーン・デュビュッフェ、ロバート・マザーウェル、ロイ・リヒテンシュタイン、ハンス・ホフマン、ラリー・リバース、リチャード・ポセッダート、アレキサンダー・カルダーニの絵画群。
○ 陶芸 : 粘度やブロンズによるロバート/アーネソン、アレキサンダー・アーチペンコ、サー・アンソニー・カロ、ジャック・リップチッツ、ルーディ-・オーショ、アキコ・タカモリ、サージェイ・イスポフ等の彫刻群。
シモナ、ジェローム・チャゼン御夫妻の実際のコレクションは、『約500点の絵画、ドローイング、ガラス彫刻、土、金属の約200点以上の近・現代作家の作品を包含している。コレクションの範囲は、コレクターの最も興味をそそる人間の身体を賞賛した具象作品から、力強い幾何学的な抽象作品まで幅広く、卓越したクオリティー、広範囲に及ぶ、様々なジャンルを超越した作品を包含し、境界線を超えた、多種多様な分野のプライベートコレクション』
とPress Releaseに書かれています。
MADのチーフキュレーターのデヴィッド・マクファーデン氏は、「この展覧会では、20世紀芸術作家の多種多様な視点から作り上げられた重要な大作郡を一挙に観覧出来る、というとてもユニークな展覧会です。ここでは、普段絶対に同じコンテクストの下に比較される事の無い作品を一緒に観覧する事が出来ます。また、個々作品特有の視覚的、本能的なクオリティーに感謝出来る場を提供してくれる展覧会です」と述べています。
「絵画も彫刻も、クラフトと呼ばれるものは全て同様のクリエイティブな精神の賜物」
講演会での説明によると、夫妻のコレクション蒐集は、40年前、結婚祝いのお金を記念にと、ロイ・リヒテンシュタインの木版画リトグラフ購入した事がきっかけで始まったそうです。その事によって、MUSEUMのコレクター・サークルに参加、1970年代後半から1980年代には現代のガラスアートへと没頭し、アメリカン・スタジオ・ガラスムーヴメントに先導されて、ハーヴェイ・リトルトンとデール・チフリの作品を知り、益々ガラス作品への関心が高まっていったそうです。それに加えて様々な作家達との交流が生まれ現在も続いており、チェゼンコレクションには、約270点ものガラス作品が含まれているそうです。
ジェローム・チェゼンは、「絵画も彫刻も、クラフトと呼ばれるものは全て同様のクリエイティブな精神の賜物で、全ての作品が調和してこそはじめて作品はハッピーなのです。私達は、広範囲に渡る素材から想像されたこれらの美しい作品を包含するこの展覧会を通して、芸術へ対する信条を伝える事はとても大切であると思っています。」と述べていました。
夫妻は、コレクターであり博愛主義者でもある他に、MADの重要なボードメンバー、コロンバスサークルに移転される新MADの発展支部の議長でもあります。
今回の展覧会からは、いつもいろいろな展覧会を見て、自分の好みや一環したクオリティーで、単純に物事を判断していたのが、アメリカの良い意味での若さ、幅の広さ、寛容さというものが違う価値観を生んでいて、MUSEUMやアートを支えているのだという事を学びました。
※表示あるものを除き、写真は全て海老原嘉子撮影