第42回: 変わりゆくSoHoで注目の新ショップの紹介 (2002/11/13)


 

変わりゆくSoHo

この1、2年のSoHoの変動は目をみはるようで、NYのトレンドの店が全部移動してきた感がありました。しかし、昨年の9月11日以降、“for rent”の看板が増えて、1ブロックに3軒位の貸店舗が続出。どうなるかと思っていましたが、ここへきて、新しいショップの出店や改築工事もあちこちで行われ、新たな動きが見えてきています。

 

貸店舗が続出

長く続いたCanal Jean Co. 今年で店じまいして、この後、ブルーミングデールSoHoが進出するという

Crate & Barrel SoHoが18ヶ月かけて改築するというアナウンス・パーティーは11月14日に行われる予定

新しくオープンするショップ

Green Streetでも大きな工事が2件続けて行われている

ドイツの家具会社(USM)のビル全体工事はまだ継続して行われている

 

Apple ストアー


最近よく場所を聞かれるのがAppleのストアー (Map5) で、SoHoへ来る目的のひとつのようです。Prince StreetとGreene Streetの角の元郵便局だったビルを、郵便局の名前がついたままで使っています。中央のガラス階段が舞台のようで、四方の広いテーブルに乗った新製品をさわるのが皆の目的。2階にはレクチャー・プレゼン用のシアターもあり、相談室、アクセサリーショップなど、マニアにはたまらないお店のようです。AppleストアーからGreene Street を南に行くとすぐに『Hunting World 』、隣に『Louis Vuitton 』 と続きます。


<< 郵便局の名前がついたままのAppleストアー外観

 

 

多くの人が行き交うショップ中央のガラス階段

Apple Store

Apple Store

Apple Store

Apple Store

Apple Store

アクセサリーショップ

レクチャー・プレゼン用シアター

Hunting World

Louis Vuitton

 

ジュエリー・ストアー D’FLY


つい最近できて話題を呼んでいるのが、D’FLYというジュエリー・ストアー。台湾人の若いデザイナーJeff Shiがオーナーでドイツの建築事務所3deluxeと組んで作ったハイテクのしかけいっぱいのストアーです。Greene StreetのBroom StreetとGrand Streetの間にあります。
ガラスの什器はバキュームシステム(空気圧)で上下に動きます。リモコンで操作するのですが、空気のシューという音を立ててスムースです。奥にある鏡もリモコンで上下します。入り口にある斜めのソファ-は、NASAで使われたという座ると人体にそった形になるフォームを使用。奥には鏡の反射を利用して奥行きあるように見せたBamboo Garden(竹の庭)があって、自然の環境もとり入れています。取り扱っている商品もドイツのNiessing、スイスのMeister、ベルギーなど国際的で、すっきりしたデザイナーものです。

 

外観

入り口のスペース

リモコンで上下するガラスの什器

中央と左右に並ぶケースが、リモコンで上下するガラスの什器

D’FLYで扱っているジュウリー

鏡の向こうに見えるのはBamboo Garden

Bamboo Gardenから見た店内の様子

座ると人体の形になるフォームを使用したソファ

 

目のはなせない Crosby Street


SoHoでも少し裏通りと思っていたCrosby Streetも目のはなせない通りになっていて、11月6日にはGrand StreetとHoward Streetの間に、オートバイのVESPAのショールームがオープン。店の外側をライトアップした華やかなレセプションで、今までにない雰囲気に賑わっていました。このCrosby Streetの南の突き当たりがジュエリー・デザイナーのTed Muehlingのストアー・スタジオ。北上すると、Sprimg Street の角には『MoMA Soho』 があり、そしてSpring StreetとPrince Streetの間には、今流行の『アパートメント・ストアー』 があります。

 

VESPAのショールームオープンのレセプション

VESPAのショールームオープンのレセプション

AX

Prada

ARMANI CASA

ARMANI CASA

MONT BLANC

Adidas

 

SoHo今昔


私が住み始めた1974年頃には、まだ昔ながらの倉庫と工場の方が多い地域でした。60年代中頃グリニッジ・ビレッジのアーティストが大きな絵を描くのに必要なアトリエとして、倉庫の一部を借り、ロフトベッド(高い天井を利用して、高床式のようにして寝るスペースをつくったもので、壁やドアがなく、床が上がっているだけのもの。下はアトリエの続きのフロアー。)をつくって、住み始めたのがロフト住まいの始まりでした。

もちろんロフトですので、そのままではトイレもキッチンもなく、自分で作るか、前の住人の作った設備を買うか($2,000前後)します。1,500~3,000平方フィート(200~350平米)を借りるのに、場所とコンディションにもよりましたが、月$200-500位でした。
倉庫なのでNYの規制により本来は人が住めない建物なのですが、ロフト住まいのパイオニア達の嘆願で、NY市はAIR(Artist in Residence)という法を作り、アーティストとしての資格を認めれば居住を許可したのが60年代後半。その頃には、何人かで各フロアーを買い取り、ビル全部をアーティスト達が持つような物件も珍しくなくなりました。

そこへ、大きな絵を飾る為のスペースが必要になったMadison Avenueのギャラリーが次々と移動してきてオープン。それを見に来るコレクター達の為に、オシャレなレストランやストアーができはじめたのが70年代後半から80年代初期で、この地区が‘SoHo’として一般に知られるようになった時期です。

1983年に私がデザインのギャラリー『Gallery 91』 を開けた時は、皆に珍しがられ「デザインをなぜギャラリーで見せるのか?」等の質問攻めにあったほどでしたが。その後、序々にアートギャラリーのSoHoから、ブティックや家具のヴィジュアル・マーチャンダイズの商業空間が増えはじめました。高級ブランドが全てSoHoに出店し、プラダ、ルイヴィトン、フェラガモ、シャネル等々、9/11前の2001年8月頃は地価もストアー(1階)の貸店舗が、1,500~3,000平方フィート(200~350平米)で、月$2万前後。住居でも、月$4,000前後と価値が上がり、SoHoのピークでした。

そこへ昨年の9/11があって「いったいどうなるのか」といった感じでしたが、店仕舞い世代交代などで、貸店舗が増えたところに、新しいビジネスが取って変わって大型の店を開き始め、SoHoはなにやらショッピング・センター化しているようです。

動きが早いのもNYの特徴で、今回ご紹介する最新MAPも、2ヶ月後には多分いくつか変わっていることと思います。アートシーンから大きく変わるSoHo。コンピュータストアー、オートバイ、Greene Streetの少し北にはデザインストアーで有名だった『AD-HOC』が『Adidusスニーカーストアー』に変わって店開きしましたし、『NIKE』もGreene Streetに近々進出するそうです。このSoHoシーンの変わり様を、SoHoの中で、びっくりしながら見ている今日この頃です。


※表示あるものを除き、写真は全て海老原嘉子撮影