NYの鉄道のはしり High Line

7月16日、ニューヨーク市マンハッタンにある高架線路“High Line”の利用法を提案するコンペのファイナリスト4組(ディラー・スコフィディオ+レンフロらのチーム、スティーブン・ホール、HNTBらのチーム、ザハ・ハディドらのチーム、テラグラム・チーム)による説明会が、Center for Architectureにて行われました。 公的資金によって建設されたHigh Lineは1980年以降利用されておらず、公共の場所として新しく蘇らせるためにこのコンペが開催されました。
Friends of the High Line

私はチェルシーに訪れる度、この古い高架線がなんとか使えないものかといつも見上げていたので、今回のプロジェクトにとても興味を持ち出かけました。ここで、High Lineの歴史をひもといてみたいと思います。

1847年に初めてNY市内への貨物列車のレールが引かれ、1851年から1929年にかけて市内への運搬に利用されていましたが、この貨物列車と荷馬車の衝突事故等が多発し、10番街周辺は「Dead Avenue(死の交差路)」と呼ばれるほどの事故率がありました。
この事故多発は1929年になってようやく取り上げられ、NY市、NY州、中央路線局の合意で予算をとり、35丁目からSpring Streetまでを高架線にするプロジェクト案がとられ、全長1.5マイルの貨物車を走らせるHigh Line(高架鉄道)の建設が始まりました。このHigh Lineは1934年に完成し、貨物列車は現在のジェイコブ・ジャビッツ・コンベンションセンター辺りからチェルシーのギャラリー辺りを通過し、Gansevoortストリートのミートマーケット辺りまで、一般通路に妨げられずに直接倉庫まで荷を運びこめるレールとして活躍しました。しかし、1980年に冷凍ターキーを運んだのを最後に、貨物列車は使われなくなりました。

チェルシーの高架線
チェルシーの高架線
チェルシーの高架線
チェルシーの高架線
プレゼンテーションの様子
プレゼンテーションの様子
ディラー+スコフィディオ+レンフロらのプレゼンテーション
ザハ・ハディドらのプレゼンテーション

改築案コンペに36か国から720件の応募

このHigh LineのオーナーはCSX(交通安全局)で、その鉄道下の土地はNY州、NY市そして20以上の個人がオーナーとなっています。1999年にNY市民、経営者、市民団体、アーティスト、ギャラリー・オーナーや園芸家等がHigh Lineの再利用を実現するためにFriend of High Line(FHL)を結成しました。このHigh LineはNYのウェストサイドの工業の歴史です。また、高い場所にあるのでハドソン川とNYのスカイラインを一望できるため、ここに斬新な公共の場を提供できるのではないか、とFHLの活動が始まりました。
High Lineは各国の最良の公園同様、また、それ以上に新しくオリジナルな公共の場となり、街の緑化、新たな交通手段としての利用、ポスト近代工業環境で常に変化するニーズに社交的、経済的にも対応できるものとして、廃墟交通機関の再利用のグローバルな見本になるはずというのが、FHLの主旨です。
路上からのアクセスが最終地点の両サイドからとその中間の各地点により、階段やエレベーターでのアクセスが可能なシステムをつくり、日々使われる公共の場の為に安全性とセキュリティーが最も重視されるデザインが求められる事になりました。そこで、2003年1月から7月にかけてアイディア・コンペを開催したところ、36カ国より、720件もの応募が集まりました。この間にも市へのアプローチは続けられ、2003年7月、NY市の1575万ドルの基金で、このプロジェクトのGOサインが出されました。

プレゼンテーションの様子
プレゼンテーションの様子
プレゼンテーションの様子
一般の視聴者
一般の視聴者で会場は満員に
一般の視聴者
プレゼンテーションの様子
TERRAのプレゼンテーション

最終案はフィールド・オペレーションズとディラー、スコフィディオ&レンフロのチームに決定

もともと「High Lineをデザインする」のは、現実的、または建設可能なものである必要はなく、応募者にはHigh Lineそのものから予測できない視点を得るため、前向きで力強い考えが求められました。結果、応募数720点の中から7つのアイディアが受賞しました。
FHLは、これらのプロポーザルがHigh Lineの再利用への道をより確実なものとして広まることを期待して、2004年3月、NY市と一緒になることで現実化されるデザインの制作を期待するマスタープランを立てました。
大規模な選択プロセスを通してデザインチーム4組が選出され、7月16日、ウエストヴィレッジのCenter for Architectureにて、発表会と展示会が行われました。この説明会は最近の建築関係者の講演とはひと味違った視聴者が集まり、会場は満員でした。展覧会はビデオインタビューを含め、7月16日から8月14日まで行われました。選抜された4組のデザインは、説明会、展覧会場に用意された一般投票用紙によって公平な意見を取り入れます。また、このほど最終案が発表され、フィールド・オペレーションズとディラー、スコフィディオ&レンフロのチームに決定しました。
http://www.fieldoperations.net/
http://www.archinect.com/

9月にはこのマスタープランの実現に向けて、作業が開始される予定です。

プレゼンテーションの様子

■ 最終選考に残った4組の改築案

▼ フィールド・オペレーション社、ディラー・スコフィディオ+レンフロとオラファ・エリアソンらのチームによる作品 【最終案 決定作品】

Copyright(C)2004 ; Field Operations and Diller Scofidio + Renfro with Olafur Eliasson, Piet Oudolf, and Buro Happold
Copyright(C)2004 ; Field Operations and Diller Scofidio + Renfro with Olafur Eliasson, Piet Oudolf, and Buro Happold
Copyright(C)2004 ; Field Operations and Diller Scofidio + Renfro with Olafur Eliasson, Piet Oudolf, and Buro Happold

▼ スティーブン・ホール、ハーグリーブス・アソシエート、HNTBなどのチームによる作品

Copyright(C)2004 ; Steven Holl Architects with Hargreaves Associates and HNTB
Copyright(C)2004 ; Steven Holl Architects with Hargreaves Associates and HNTB
Copyright(C)2004 ; Steven Holl Architects with Hargreaves Associates and HNTB

▼ ザハ・ハディドとバルモリ・アソシエイツ、スキドモア、オウィング&メリル・ループとスタジオ、MDAなどのチームによる作品

Copyright(C)2004 ; Zaha Hadid Architects with Balmori Associates, Skidmore, Owings & Merrill LLP, and studio MDA
Copyright(C)2004 ; Zaha Hadid Architects with Balmori Associates, Skidmore, Owings & Merrill LLP, and studio MDA

▼ マイケル・バン・バーケンバーグ・アソシエート、D.I.R.Tスタジオとベイヤー・ブラインダー・ベルなどのテラグラム・チームによる作品

Copyright(C)2004 ; TerraGRAM: Michael Van Valkenburgh Associates with D.I.R.T. Studio and Beyer Blinder Belle
Copyright(C)2004 ; TerraGRAM: Michael Van Valkenburgh Associates with D.I.R.T. Studio and Beyer Blinder Belle

※表示あるものを除き、写真は全て海老原嘉子撮影