第23回: “アルミニューム・デザイン:アクセサリーからジェット機迄”展 (2001/4/11)
“アルミニューム・デザイン:アクセサリーからジェット機迄”展は、このク-パーヒュ-イット・ナショナルデザイン美術館スミソ二アン・インスティテュート(Cooper-Hewitt, National Design Museum, Smithsonian Institution)にて3月20日から7月15日まで開催されています。
ピッツバーグ(Pittsburgh)のカーネギー・ミュージアム・オブ・アート(Carnegie Museum of Art)のSarahNicholsキューレーターの企画で、2000年10月28日から2001年2月11日まで開催された展覧会の巡回展です。その後は、2002年10月から2003年の1月までモントリオール装飾美術館、フロリダのThe Wolfsonian-Florida International University、クランブルック・アート・ミュージアム、ロンドンのデザイン・ミュージアムにて行われる予定の一大展覧会です。
ク-パ-ヒュイット・ナショナルデザイン美術館では、新しい展示設計をNYのデザイン事務所モリス・佐藤(Morris/Sato)スタジオに依頼し、オリジナルの展覧会より、アルミ色を強く出した個性的なインストレーションで話題になっています。
展覧会は軽く取り扱われそうな素材の、アルミを歴史的にたどっていて、さすがMUSEUMがまとめた展覧会という印象を受けました。順を追って説明すると、1845年にアルミ素材が紹介され、1855年のパリのワールドフェアーに高級なジュエリーとしてお目見えしたのを最初に、クイーン・ヴィクトリア等フランスのパトロン達の高級な小物、ジュエリーとして、金や宝石のように好まれたとの事です。1880年代後半にはアメリカとフランスで工業生産をする事が可能になり、未来素材として様々なデザインに応用されるようになっていったようです。
オーストリア人の建築家Otto Wagner がモダンな建築の中で最初に、ファサードやインテリア・家具類までにアルミを使った、Die Zeit Building(1902年)、 そしてウイーンにPostal Saving Bank.(1904-6年)といった建物を建てました。
最初のAir Planeは1910年に、快速電車が1934年に、その同じ年にWally ByamのAirstreamというトレーラーのパーツ、そして自転車のパーツにもアルミを使う試みがなされ、アルミが現在いろいろな骨格に使われるようになった基礎をつくったようです。
カーネギー・ミュージアム・オブ・アートでは、1年以上前にアルミニュ-ム展の為の作品を収集をしていて、ちょうどMOMAの展覧会の時に預かっていた、鋳心工房の増田尚紀氏の作品が選ばれたので、そのお世話をしたのですが、その後の写真などを見ていなかったので、この展覧会がNYで、こんな形で見られる事になり、ほんとうにうれしく思いました。
そして、そのインストレーションも佐藤佳子さんで、クーパーユニオンの学生の頃、夏休みに倉俣史朗のところにいたり、その後ハーバート大を出て、学友の Michael Morris とパートナーを組み活躍しているのを、折りにふれ見ていたので、この展覧会の成功はさすがと感心しました
そして彼等のスタジオを訪ね、いろいろインストレーションの苦労話を聞き出しました。このプロジェクトをどうやって頼まれたかをうかがったところ、このク-パ-ヒュイット・ナショナルデザイン美術館は1年前の改造後に出来たパーマネントコレクション部門を改築中で、そのインストレーションの為に選ばれた7~8人のデザイナーの中で、最後まで残り、選ばれたデザイン事務所だったそうです。その後Director が変わったりといまだに実現されていないプロジェクトだそうですが、新しいディレクターになって、Museumに新しい空気をいれたいと思っているらしく、今回のアルミ展、次の展覧会も彼等の設計に決まりました。
このアルミニューム・デザイン展では、NASAのエアークラフト・スペースシップで使われる素材を直接、モリス・佐藤スタジオがコロラド州にあるパネルテック製作所(Paneltec)に交渉し、協力してもらった厚さ10.5cm(4インチ)のアルミ・ハニーコム材を展覧会場の中で間仕切りとして使っています。ハニーコムの隙間がレンズのような役割をして、反対側にいる人を中央だけ写しだす不思議な反応で、観客を驚かしていますが、この素材は展示のあちこちに使用されています。
←中央だけ反対側にいる人を写しだす不思議な間仕切り
展覧会入り口のタイトルのディスプレイに使われているのは厚さ7mm(1/4インチ)のアルミのハニーコム・パネルです。展覧会エントランスに大自然をかろやかに飛ぶ1930年代の第二時大戦時の飛行機を選び、雲が浮いていて、オプティカルイメージとプロペラ。この最初のイメージから展覧会に入っていくシーン。これがモリス・佐藤スタジオのデザイン・コンセプトだそうで、ニュージーランドの Outer Aspectがつくりました。ところがこのパネルがプレス・オ-プニング当日に着かなくて、急遽、カンをいくつもグルーガンでのり付けしたそうです。しかし、これはこれで存在感のある壁になっていて1日だけの美しい幻の壁になってしまいました。このテクニックはロタンダの休憩所でも使っていて、ここではVIDEO等を見せる為、サンスクリーンもかねて、Alcoa社からの5000個のカンがWave のあるカーブで積み重ねられたスクリーンは壮観です。このグルーガンの作業では腕が動かなくなってしまうほどの量だったようです。
アクセサリーやファッションの展示の壁になっているのはアルミナムコイルをアナダイズした、くさりですが前後左右、どちらにも限度なく続くというモリス・佐藤スタジオのオリジナルのすっきりと美しいスクリーンです。もう一つAudi Space Frameの本物を載せているパネル台もアルミ・ハニーコムを黒色にアナダイズしたもので、自慢の展示台です。
ファイバーオプティックのライトを生かしたファッション・コーナーの展示もクールです。
彼等はNewYorkの倉俣史朗展に、ファイバーオプティックのライト(SGF Asso.朝日ガラス)を豊久氏の協力で使ったインストレーションをして、1998年度北アメリカ・デザインの美術館展示大賞をとって話題になりました。その他にも、パーソンズ・スクールのインテリア部の改装デザインや昨年夏の越後妻有アートトリエンナーレ2000に光りの島というタイトルで、アーティスト:ジョディ・ピントと組んだ、ファイバーオプティックを埋め込んだライトの彫刻の共同プロジェクト等も行っています。また、これからオフ・ブロードウェイのシアター、オフィス、2年がかりのプロジェクト等も取り組んでいて、ますます活躍が期待される建築事務所です。
一つの展覧会も展示の仕方一つで、いきいき輝きをましたりするのだと感じた展覧会で、なんといってもこのアルミニュームはリサイクルができて、地球に優しい素材として、21世紀に挑戦する興味深いデザインの素材で、時期と時代のまとを得た展覧会と思いました。
“アルミニューム・デザイン:アクセサリーからジェット機迄”展 Photo Tour