第51回:  Museum Mile (2003/8/6)


 

Museum Mileの標識

メトロポリタン美術館前

 

大人も子供も楽しめるアートイベント

Museum Mile は、‘アートを支援する’という公共の意識を高める手段として、1978年に始められました。5番街の104丁目からMuseumが並んでいる1マイルの間を特別に Museum Mile と名付けたそうです。この区間には 5th Avenue のサインにMuseum Mileという道路標識もついているのですが、普段気づかずに過ごしているニューヨーカーも多いと思います。
今年で25周年を向かえるこの Museum Mile フェスティバルは、6月10日の 午後6時から9時までという、わずか3時間のイベントですが、5番街の82丁目から104丁目が人で埋め尽くされる、最大規模のアートイベントです。NY市の最も重要な文化事業として、モデル的役割を果たしているそうですが、私も参加してみたところ、いつも静かな高級住宅地の5番街が、人で埋め尽くされていることにびっくりしました。
どのMuseumも順番待ちの列が幾重にも並んでいて、各ブロックにはプログラムとして、大道芸人が出ています。ミュージックあり、ダンスあり、手品等の実演あり、そのまわりに人だかりしているのも混雑の原因のようです。
メトロポリタン美術館の前の5番街はキャンバスとなり、大人も子供もチョークで絵を描いて楽しんでいます。50,000人の人出だそうですが、アートを支援するイベントで、これだけの人が興味を持って集まる文化レベルに、改めてNYを感じました。

公式には以下の9つのMuseumが今回のMuseum Mileプログラムです。
* 104St. El Museo del Barrio
(212) 831-7272 www.elmuseo.org
* 103rdSt. Museum of the City of New York
(212) 534-1672 www.mcny.org
* 92nd St. The Jewish Museum
(212) 423-3200 www.thejewishmuseum.org
* 91s St. Cooper-Hewitt, National Design Museum, Smithsonian Institution
(212) 849-8400  www.si.edu/ndm/
* 89th St. National Academy of Design
(212) 369-4880 www.nationalacademy.org
* 88th St. Solomon R. Guggenheim Museum
(212) 423-3500 www.guggenheim.org
* 86th St. Neue Galerie New York
昨年新しく出来たMuseum
212-628-6200 www.neuegalerie.org
* 83rd St. Goethe Institut New York/German Cultural Center
(212) 439-8700 www.goethe.de/newyork/
* 82nd St. The Metropolitan Museum of Art
(212) 535-7710  www.metmuseum.org

5番街(Museum Mile)の賑わい

5番街(Museum Mile)の賑わい

89th St. National Academy of Design

91s St. Cooper-Hewitt, National Design Museum, Smithsonian Institution

86丁目「Neue Galerie New York」

Neue Galerie New York

Neue Galerie New York前での音楽会

道化メーキャップ

 

グッケンハイム美術館「from Picasso to Pollock:Classics of Modern Art」


 

グッケンハイム美術館
88th St. Solomon R. Guggenheim Museum

 

Miroのタイルの壁画も完成

グッケンハイム美術館で 7月4日から9月28日まで「from Picasso to Pollock:Classics of Modern Art」という展覧会が開かれています。
Brancusi, Calder, Chagall, Kooning, Dubuffet, Kandinsky, paul Klee, Matisse, Miro, Modigliani, Mondrian, Picasso 等々、どれも教科書に出てくる本物があって、懐かしく久しぶりに昔ながらの美術館にいるという感じを味わいました。
さらに今回の展覧会にあわせて、Miroのタイルの壁画が完成し、その序幕式が行われました。NYに住むMiroの孫娘にあたる姉妹2人が出席して行われたのも、歴史の一端に参加した気分でした。

www.guggenheim.org

Guggenheim 展覧会入り口

Miroのタイルの壁画 序幕式


左がMuseumキューレーター、赤いドレスがMiroの孫娘

展覧会会場風景

Miroのタイルの壁画 序幕式 赤とオレンジドレスがMiroの孫娘

 

ホイットニー美術館「American Effect」


 

ホイットニー美術館
The Whitney Museum of American Art

外国人アーティスト達によるアメリカがテーマ

アートのパトロンであった女性彫刻家、ガートルード・ヴァンダビルト・ホイットニーが、そのコレクションをメトロポリタン・ミュージアムに拒否された後、1931年に創立したのがホイットニー美術館です。1966年に現在の場所に話題の建築(バウハウスのマルセン・ブルエーとハミルトン・スミスの設計)で移転しました。現在は、7月3日から10月12日まで「American Effect」という展覧会が開催中です。
ホイットニー美術館はいつもアメリカン・アーティストが主でしたが、今回は外国人アーティスト達によるアメリカがテーマで、それも話題になっています。9・11以降打ちのめされたアメリカに、痛烈な皮肉を交えてのアート作品で、これらを財政的に支える企業やコレクターが反対せずにやらせてくれる太っ腹、又は説得させるキューレーター(ラリー・リンダー)のガッツにNYのすごさを感じます。
今回、会田誠「NY空爆の図」、Hisashi Tenmyouya「Tattoo Man’s Battle」、 Miwa Yanagi「My Grandmothers」など日本人アーティストも何人かデビューしています。入り口には、中国人Zhou Tiehaiの作品でジュリアーニを英雄のように見せた大きな肖像画。インスタレーションの「Nursing Home」は、アメリカンヒーロー達の老後の姿が誰にでもわかるユーモアと皮肉で楽しませてくれます。

最近、多くのアート美術館では、なつかしのコレクションで観客の入りの間違いない展覧会だったり、一方では、どうみてもスキャンダルと話題性だけで、人を集める為の展覧会をしていたりと、財政を考えての手段にしても、理解に苦しむ状況があります。Museum Mileに集まるような純粋な一般ファンが沢山いるのですから、夢のある展覧会、Museumが継続して欲しいと望むばかりです。

Hisashi Tenmyouya「Tattoo Man’s Battle」

展覧会場

       ※表示あるものを除き、写真は全て海老原嘉子撮影