現代の「安全なデザイン」を考える

“SAFE: Design Takes on Risk”は、MOMAが昨年11月にリオープンして以来、初めての大規模な企画展覧会で、2005年10月16日から2006年1月2日まで開催されています。
現代の日常生活において、この「安全」というタイムリーなテーマは、皆の最大の関心事の一つです。心と身体をストレスに陥りやすく危険な環境から守り、緊急時に応え、情報の明瞭性を保証し、安らぎと安全性を提供する世界中のコンテンポラリー・デザインのプロダクトやプロトタイプが300点以上が展示されています。

【 1 】 Safe展 カタログ・カバー
【 2 】 会場風景
【 3 】 剣道の面がね
【 4 】 坂茂 パルプの家(写真4~5)
【 5 】
【 6 】 D:Amdrew Oliver II 「GIANTmicrobes」ぬいぐるみになった巨大細菌(写真6~7)
【 7 】

川崎和男、深澤直人ら、日本からの出展も多数

MOMAのキューレーターは、2年以上前からこの展覧会の為に、関係者に声をかけていました。私のところにも、Gallery 91のデザイナーの中でSafe展に合う作品があったら紹介して欲しいという連絡があり、何人かのデザイナーや作品の情報を提供しました。
身近なところでは、たまたま、あるミュージアムのキューレーターが主人の剣道のデモンストレーションを見て、その面の美しさをMOMAのキューレーターに伝えたのがきっかけで、今現在、展示されています。今回は面がねの部分だけを貸してほしいという事で私が間に入り、その手配だけでも、3~4ケ月を費やすことになりました。
また、紙技の木原隆明さんからお聞きした、昨年、豊口協氏が審査し受賞した作品、紙の担架「Rescue Board (安達紙器)」もMOMAに紹介し、展示されていました。
オリジナルは1987年にGallery91で展示した作品、川崎和男さんの鋏や鉛筆削りなどが展示されており、とても懐かしく拝見しました。

こういった個人的な思い入れと興味もあり、この展覧会には大きな期待を持ち、オープニングに出かけました。オープニング・パーティーは4日間行なわれました。

【 8 】 川崎和男のX&I scissorsとScholaエンピツ刷りの展示風景(写真8~9)
【 9 】
【 10 】 深澤直人の「Sole Bag 」展示風景(写真10~11)
【 11 】
【 12 】 Karim Rashid のSafe- バンドエイド(prototype)
【 13 】 Safe 中央展示会場風景(写真13~14)
【 14 】
【 15 】 Nido (prototype) Pininfarina company design
【 16 】 Bill Burns 「Safety Gear for Small Animals」小動物の為のSafeガード」(写真16~17)
【 17 】

300点以上のありとあらゆる作品群に科学博物館のような錯覚も・・・

この展示会は、デザインのあらゆる形、商品化されたプロダクトから、建築情報まで、を網羅し、難民シェルター、地雷解除装置、ベービーストローラー、そして保護性のあるスポーツギアーなどを含んで取り上げています。
「今、「安全」ということに、今までの固定観念以上に焦点が当てられている。安全は人間が本能的に必要とするものだが、その一方で、リスク、危険は人類の推進燃料である。どんなにリスクを負っても我々は、新しいもの、今迄とは違ったもの、そしてインスピレーションを懇願する。デザイナーは、それらのリスクを負いながらも、変化と規定の中で、保護性のバランスをとるよう、訓練されている。良いデザインとは、改革や発明が、個人の用途に重点を置く事の妨げになることなく、犠牲になる事なく、安全性を与えてくれるものである。」と、カタログの中で述べられています。カタログの中のタイトルだけを取り上げても、
【Grace Under Pressure- 圧力の下の優美】
【Safety Nests – 安全な巣】
【Design for destruction – 破壊のためのデザイン】
【Material for a Safe World – 安全な世界のための材料】
と、かなりコンセプト寄りですが、300点以上のありとあらゆる作品群は、どちらかというと、サイエンスMuseumのような錯覚を感じます。あまりの巾の広さと作品量で、よくぞこんなに集めたと思う一方、それぞれを理解するのには、かなりの時間を要します。
分類別には
【Shelter – 避難所】 【Armor – 装甲】 【Property – 特性】 【Everyday – 毎日】 【Emergency – 緊急事態】 【Awareness – 意識】
に別れています。日本からかなりの作品が出展されていて、見慣れたプロダクト等、見応えのある展覧会だと思う一方、初日オープニングの招待客の多さ、製造業者からデザイナー、関係者と今までにない巾の広さに、この展覧会の広がり過ぎた内容が反映されていると思いました。

Web カタログが楽しく出来ています。 http://www.moma.org/exhibitions/2005/safe/

【 18 】 田沢ひろゆき「Rescue Board 600」
【 19 】 展示会場風景
【 20 】 James McAdam「Light Blanket」
【 21 】 宇田川信学 「Help Point Intercom for the New York City Subway」
【 22 】 津村こうすけ 「Final Home 44-pocket parka」
【 23 】 Jorg Student 「Ha-Ori Shelter」
【 24 】 オープニング・パーティー会場風景 1階を見下ろす。(写真24~25)
【 25 】
【 26 】 リチャード・メイヤー他 オープニング・パーティー
【 27 】 MOMA Safe オープニング・パーティー 風景
【 28 】 中庭も満員のオープニング・パーティー 風景(写真28~29)
【 29 】

SOHOのMoMAストアーで、キュレーターPaola AntonelliのSAFEカタログサイン会を開催

SOHOのMoMAストアーでは5時半には一般客を締め出し、6時から8時まで、MoMA建築デザインのキューレターPaola Antonelliが出した新しい本新本2冊の出版記念サイン会が行なわれました。
一つは、始まったばかりの展覧会「SAFE」のカタログ、もう一つは改築前のQUEENSで行われたデザイン展「humble masterpieces – EVERYDAY MARVELES OF DESIGN」の、サイズ18cmx18cmの真四角にまとめられたコンパクトな本です。この本は、まだどこにも出ていなく、出来たてとの事でした。
もう一冊、3年位前に出した大き目の本「Objects of Design」も並べてPaolaの出版パーティーとなり、著名デザイナー、デザイン出版関係者、友人達が大勢集まり出版を祝いました。

【 30 】 MoMAストアー ウインドー(写真30~31)
【 31 】
【 32 】 MoMA 本売り場(写真32~33)
【 33 】
【 34 】 本にサインをするPaola Antonelli(写真34~35)
【 35 】
【 36 】 本をみる人達
【 37 】 MoMAストアー全景(写真37~38)
【 38 】
【 39 】 著名デザイナー達と歓談するPaola Antonelli
【 40 】 Tucker ViemeisterとPaola Antonelli
【 41 】 出版者のスピーチ
【 42 】 Party Bar

※表示あるものを除き、写真は全て海老原嘉子撮影