第15回: 岐阜で行われたNYデザイナー10人展 2000/8/9


●岐阜で行われたNYデザイナー10人展

岐阜から世界への情報発信をテーマに、岐阜駅高架下にワールドデザインシティ・Gifu(アクティブG)が、7月7日オープンしました。ワールドデザインシティ・Gifuのショウルーム・ギャラリーの為に、 岐阜県の依頼により、IDNFの企画、Gallery 91の運営で、NYで活躍している最もホットなデザイナー10人の作品展をすることになり、120点余りの作品を運び込み、NYスタイルで展示準備を進めてきました。

 

 

NYデザイナー10人展ポスター

日本の展示場やギャラリーというと、いつもクギひとつ打てずに困るので、今回はそれがないように、特にお願いしました。そして、NYでは2カ月に1回は展示を変えていて、ペンキを塗り変えたり、ちょっと工夫して、まったく違うセッティングにしたりできるのですが、日本では何々工芸社やその下請け、又々そのプロデューサーまで入って、高価な設置費用になるようで、あきれます。

会場風景

会場風景

会場風景

 

NYでは一般家庭の人はもちろん、弁護士さんの高級宅でも子供部屋のペンキ塗り位は、御主人の仕事です。ですから誰でもペンキ塗りやクギが打てるので、アーティストなども手伝って、セッティングができます。(アメリカ人が不器用のように、言われていますが、お金をかけずにやろうと思う人は、何でもできるようになっていて、材料も手に入ります)

日本の棚や展示台(ペデスタルと呼びます)は、まるでそれ自身が作品のように、素晴しい材料で、画錨一つ入らないような一生ものに仕上げてしまいます。作品が引き立てばよいので、もっと気楽に釘が打てたり、穴が開けられたり、後でペンキを塗って、修正できた方がやりやすいと思うのですが、完璧主義の日本の習慣でしょうか? でも必要でないところにお金がかかりすぎるのは、考えものです。

今回はファックスのやりとりで、展示台から棚まで色々お願いして、わがままを言いながら協力して頂き、岐阜に入ってからは‘ほとんど物を置くだけ’位に助けて頂きました。それでも着いてすぐさま、NYから来たのデザイナーの一人ガストン・モティコレナは、自分の仕事の様に細々とセッティングを手伝ってくれました。それに、彼の作品の一つの「わらの椅子」が、税関にかかってNYから持ち出せなかったので、岐阜でそろえたワラを使い、その場で作りあげる作業も同時にしていました。

 

♦左、Karim Rashid のガラス器(菓子皿などのボールとしても、逆さまにすると花器になる新製品)♦中央、Karim Rashidの新作フロアーランプ、♦右、Harry Allanのワイヤー・プレート

 

 

7日のオープニングまでに、IDNFの会長、アメリカン・クラフト美術館館長、NYからもう一つ出展した「マテリアル・コネクション」の社長夫妻、他関係者、総勢12人がNYから岐阜に入り、テープカット等参加しました。思っていたよりも、大がかりで立派な施設。大勢の観客でごったがえし、見積もった数をはるかに上回る15万人の人出だったそうです。以降も、一日平均2万人以上の入りで大成功のようです。

 

 

我々のショウルーム・ギャラリーの他にも、いろいろな素材のライブラリーとしてNYのデザイナー愛用の「マテリアル・コネクション」ではNYそのままが見れますし、イタリア工房、イギリス工房、アフリカ工房、中国工房、他、インターナショナルな作家達のショップが出ていて、見応えがあります。

NYに行かなくても、こうした世界のデザインが見れるのですから、ぜひ一度、岐阜駅で途中下車することをお勧めします。NYからの12人が参加した5日間の岐阜県見学ツアーに、私も同行しました。「初めての日本」というデザイナーもいて、いろいろな反応が勉強になります。まず、日本がこんなに大きいと思っていません。ハイテクから飛騨高山の秘湯まで、奥深い日本を知ってもらったのですが、日本は本当に知られていなくて、宣伝が下手だと思いました。それなのに、どこへいっても公共の場でアナウンスがうるさく流れ、繁雑な色のポスターがべたべたと、どこにでも貼ってあり、でも、人々はとても静かなのが、不思議だそうです。たしかに外国では、うるさいのは人の会話ですから。

私も感じたのは、繁雑なポスターがたくさん目につくのに、いざ我々のスマートなポスターを貼りたいと思っても規制があったり、平らな壁がなかったり…、と釘を打てない壁と同様に不思議でした。以上岐阜滞在日記でした。

 

●2000個のオブジェ展 PART 4 「ユニバーサルデザイン」展
NYの Gallery 91では、ニューミレニアムに向けて2000個のオブジェ展、Part 4: 「ユニバーサルデザイン」展が7月25日からはじまりました。「ユニバーサル」なテーマとして、エコロジー、及びリサイクル環境にやさしいデザイン、日常に使いやすく、周りにある物をどこまで優れた使い勝手があるかを見て頂きたいと思います。

 

出品者、デザイナーの一部を紹介しますと、日本でユニバーサル・デザインとして知られているマーナ社の多数の小物が展示されています。人に優しく、赤ちゃんからお年寄の方まで使える、やわらかいシリコン素材を使用したグリップのスプーン、コップ、気配りを考えたキッチンアイテムから、リラクセーションの為の頭のマッサージャーなどの、カラフルで楽しい数々のアイテム。

その他には、竹の一輪挿し、交通標識をリサイクルしたタイルや、鈴木勝美の新しい形の漆箸、ロリーワイズナーの旅行枕、そしてステーブ・ヴイスラーの未来的なサングラスも初お目見えです。三宅道子のペーパーウエイト、ドアノブ等、思い出のガラスビンやリサイクル・ガラス・ボトルを使った作品群が出品されています。その他、益田文和のアルミのペンチ、岐阜関刃物の特殊なハサミ数種、岡本善彦のムードランプや森本尚則の自然に風化したような木のユニークなランプ、出口普子の手織り小物、安次富隆の竹のカトラリー(タケトリー)、スタンダード・デザイン社の木の表紙のノートやスポンジ・ポストカードなど。

一つ一つの作品の素材、色、手触りが違う、ユニークな経験ができます。ユニバーサルであり、日常生活に使える無限の可能性があるオブジェを250点を集めた展覧会で9月2日まで開かれます。

— 海老原嘉子