第126回 NYの新名所・High Line「高架線道路公園」オープン

実現するのか、夢の話なのか。ずっと追い続けてきたHigh Lineが6月10日に一般公開になり、オープン最初の日曜日である6月14日に行ってきました。 ミートパッキングエリアは混雑しており、最初の入り口のあるGansevoort通りには長い行列が出来ていましたが、案外スムースに進んでいるので見てみると、係の人が次々に腕輪の紙テープを渡し、これを付けた人は上って良いと言う事でした。数の統計にもなっていたようです。階段を上がって、出来上がった高架線上の公園から見るニューヨークの風景は、今まで知ってるものとはまた違った目線で、とても新鮮な景色でした。 High Lineの残された線路の間を上手に使って植えられた緑もとても自然で、実用的でこそありませんが、Friend of High Line(FHL)グループの自然体のアイディアが生き、素敵な都会のオアシスになっています。   私も2004年のコンペの発表会を見に行ったり、2006年の鍬入れ式に参加したり、待ちに待っていたので、とてもわくわくしながら地上30Feet(9.14m)の新しい公園散歩道を歩いていたところ、High LineオープンのニュースでTVインタヴューされていたFriend of High LineのJoshuaが、混雑の中、ニコニコしながら歩いて見てまわっているのに出くわし、思わず、おめでとうと握手をしてしまいました。 この一般公開では、22Blockが最初の区間として公開され、通常朝7時から10時までオープンしています。階段はGansevoort通り、W16th, W18th. W20th ストリートにあり、そのうち14と16通りのはエレベーターでも上がれるようになっています。 http://thehighline.org/ ダウンタウンの最初の入り口の階段を上がると、まず新しいスタンダード・ホテルに目を奪われます。この建物の中を通り抜けると、すぐの東側に14丁目のミートパッキング・エリアのメイン・ストリートを見渡すことが出来ます。いつも現代アートやデザインのオークションをしているオークション・ハウス、PHILLIPS de Puryの4階のGalleryも目の前に見えます。 反対側のハドソン・リバーでは、別の日の夕方出かけた際に、夕焼けを撮る事が出来ました。 建築家チームのディラー・スコフィディオ+レンフロ(Diller Scofidio+Renfro)がコンペを勝ちとり、このHigh Lineのデザインを担当。10年かかったプロジェクトで、オープン最初の週には70,000人の来場(またはビジター)を記録したそうです。2010年には20ストリートから30ストリートが続いてオープンを予定しています。今後もより一層すばらしい公共施設、緑の公園をめざし、次の30年で個人の寄付を$4ミリオン、投資家、CITYからは$900ミリオンを予定しており、プロジェクトは続きます。 線路を活かしたディテールがあちこち伺えるデザインは、水回りが考えられていたり、木の大きなベンチを線路の上で動かす事ができたり、また10番街の真上では正面から劇場のように道路を見下ろせる一角があったりして、作ったものを見せるのではなく、自然の都会の生活をゆっくり休んで見るのも良いのでは? と言われているように感じました。     High Lineの近辺には、著名建築家のビルやコンドミニアムなどが続々と建築中ですが、まず目に入るのは、18丁目のウエスト側の話題のフランク・ゲリー(Frank Gehry)のIAC(Inter Active Corp)のビル、そして、その隣りには建設中のジョン・ヌベル(Jean Nouvel)のNouvel Chelseaが見えます。2012年オープン予定とされるレンゾ・ピアノ(Renzo Piano)のWhitney Museumダウンタウンも今から話題になっています。 大手投資不動産会社のコンドミニアムも建築ラッシュで、この近辺が、今ニューヨークで最もホットな場所のようです。 東側にはエンパイヤーステート・ビルディングも見え、現在はここまで20丁目の出口が出来ています。 High Lineのオープンと時を同じくして話題になっている、スタンダード・ホテル。 High Lineにまたがって突然現れたようなこのスタンダード・ホテル、そのホテルからのHigh Lineの眺めも是非みたいと、中を見学させてもらいました。 まだ全館オープンではありませんが、ミートパッキング・エリアのイベントの要望に合わせて、建設中のまま、昨年12月に一部がオープン。話題を呼ぶきっかけとなったのが、春のファッション・ウイークや、ICFF国際家具ショーのオフ・サイト・イベント、そして、このHigh Lineのオープニングです。 開発業者のAndré Balazsがオーナーで、ハリウッドとロス、そしてマイアミにも同じ名前のホテルを持っており、若いセレブに今、人気のホテルとのこと。 4つ目の、ニューヨーク初進出であるスタンダード・ホテルは、建築をTodd Schliemann of Polshek Partnershipが、デザインをニューヨークのインテリア・デザイナーRoman and Williamsが担当。入り口、ロビーを通り、エレベーターの中にはVideoの動画が映し出されており、上り下りのエンターテインメントを見せてくれます。今現在は12階までということで、その角部屋の東側と西側のスウイートの部屋を見せてもらいました。どの部屋も天井から床までガラスで、カーテンを閉めないと宙に浮いているようです。寝ぼけてべッドから落ちたら、都会の真ん中かハドソンリバーの中にいるのでは、と夢に見そうな、怖いくらい素晴らしい眺めです。 バスルームもトイレも同じ状況で、周りに何もないので、解放感を独占できますが、私はカーテンを引くのをお薦めしたいです。 各ドアに部屋のナンバーが大きくデザインされていて、まだ見ることが出来なかったトップ・フロアの18階にはダイニング、パーティー・ルーム、スパなど素晴らしい眺めの豪華な施設が出来る予定との事。一階のグリルが最近オープンし、人気のようです。337ルームのこのホテル、目下建築続行のままなので、割安との事。 最新のニューヨークを体験するにはもってこいかもしれません。 ※表示あるものを除き、写真は全て海老原嘉子撮影

第94回 昨年SOHOにオープンした、話題の2つのフラッグシップストア

フラッグシップストアUNIQLO SOHO オープン ユニクロが、マンハッタンのファッション発信地SOHOに最初のグローバル・フラッグシップストア(旗艦店)を開きました。場所は、546 Broadway、Prince とSpring通りの間にあります。 2006年11月9日のオープニングは、3300平方メートルという巨大なストアー・スペースで、地下の一部を除く全館を使って行われました。最近NY一番のエンターテイメントとして、料理の鉄人 森本シェフが、長い刀のような包丁を使ってまぐろ1本をさばき、お寿司にしたりパンの上に乗せたりして、次から次と招待客にサーブしました。また、酒樽を割ってマス酒を振る舞うなど、今のニューヨーカーが求める日本を見せていました。 パーティーでも商品が買えるようになっており、超満員の招待客らは、おみやげの木箱入りカシミヤ・スカーフを手に、もう一度ゆっくり来店したいと満足して帰って行ったようです。 このオープニングに費やした費用は莫大で、翌日10日のストアー開店日にはマイケル・ブルーンバーグ・ニューヨーク市長がテープを切るという力の入れよう。NY市の経済活性化を期待しての応援のようです。 このスペースはSOHOの中で2番目に大きく、白が基調の3階建てで明るい雰囲気。通りを歩いているとガラス越しに、キチンとたたまれた色の揃ったカシミヤ・セーターが、カラー・グラディエーションのごとく見えて、つい吸い込まれそうな雰囲気です。 クリエイティブ・ディレクターは佐藤可士和、インテリア・デザイナーは片山正通、アートディレクターはNYのマーカス・キールステン、インターフェースを中村勇吾等が担当しました。日本のユニクロとは違ったスタイリッシュな新しいブランド・イメージを作り上げようという意気込みが感じられます。 昨年12月のBroadwayは、暖冬のせいか買い物客でごったかえし、歩道にも溢れるほどで、ユニクロの真っ赤なロゴ入りショッピング・バッグを持った人達が沢山目に付きました。 日本からのNY訪問者の中には、日本では見ることができない日本語のユニクロのロゴを珍しがり写真を撮っている人もいました。不思議な現象ですが、よく外国人が、日本語の入ったものを買おうとしても、そのようなものがあまりないと言ってましたが、ユニクロのロゴはNYで見れるというわけです。 米国には、ユニクロSOHO店の他に3つの店舗と2つのTemporaryストアーがあります。一つはEdison、ニュージャージー(NJ)のMenlo Park MallのUNIQLO、Rockaway、NJ のRockaway TownsquareのUNIQLO、Freehold、NJのFreehold Raceway MallのUNIQLO、そして、ロックフェラーセンター・プラザ内のTemporaryストアーとアップタウン・ウエストサイドの79/80丁目BroadwayのTemporaryストアーを展開しています。 ユニクロSOHOでうたっている「現代の日本」「機能美」「ベーシックを売る」そして、「ニューヨークでグローバルな最高級品を手頃な価格で」の一番の売れ筋は、モンゴル産のカシミヤを100パーセント使用したカシミヤセーターだそうです。次がSOHO店だけのオリジナル、「今の東京」と題してアーティストに依頼して作ったTシャツだそうです。 現代の日本の小売文化であるユニークな接待等の快い経験を、どこまで顧客に提供出来るか、これから、アメリカの従業員達に対する教育が鍵だと思いました。あちこちで不器用そうにみえる従業員が、買い物客が乱雑にした商品を、片端から教え込まれた、たたみ方で丁寧にそろえていくのを見ると嬉しくなり、良い習慣はどんどん世界中に広めてほしいと思いました。 日本での安いというイメージとは違い、今の日本ブランドを目指しているようで、ニューヨーカーの求めるお洒落で、気安く、思ったより手頃な価格が受けそうです。お隣のブロックにはBloomingdale、斜め前にはOld Navyのある競争のはげしいファッション発信地、この新鮮な日本のアパレルUNIQLOのこれからが期待されます。 Longchamp ロンシャン・フラッグシップストア ロンシャン・ストアー132 Spring St GreeneとWoosterの間、SOHOに、時間をかけた内装で昨年5月にオープンしたのがパリの高級バッグ・アクセサリーで有名なロンシャン・ストアーです。 あまり大きくありませんが、3階建て全てを使ったこのビルがフラッグシップ・ロンシャン・ストアーです。 この思い切ったフォルムで話題になり、あらゆる雑誌、機内誌で取り上げられ、昨年中、話題になっていました。 階段のベ二ヤと金属のつなぎ、階段に必要な手すりを透明で布が垂れ下がったような形で表しているPET樹脂ガラスなど、技術的にも大変な作業で、内装工事に1年以上かかってしまったそうです。 最近の話題はJeremy Scottデザインの腕にかけるお洒落な新製品ハンドバッグで、これをモデルのKate Mossをつかってキャンペーンしています。 ハンドバッグよりもインテリアを観に立ち寄る人も多いのに、店員の気持ちよい対応はお店の品格を表しているようです。 ※表示あるものを除き、写真は全て海老原嘉子撮影

第86回 ニューヨーク・モーターショーとオフ・サイトのカー・イベント

ニューヨーク・モーターショー ニューヨークで毎年行なわれるニューヨーク・モーターショーは、大変な賑わいで人気ですが、他のトレードショーとは違ったエンターテイメント的要素やテクノロジーにしのぎを削っていて、それぞれお金のかけ方も違う様です。 今回、プレス・コンフェレンスを午前中だけ見るチャンスがありました。基調講演は人気者のNISSANのC・ゴーン氏。その後は、トヨタが別の会場でLexusのコンセプト・カー「LS600 HL」を劇的にご披露し話題を集めていました。 展示会場の中でも日本、アジア勢に活気を感じ、他はあまり元気がないように見受けられました。 これまで気が付かなかったのですが、ニューヨーク・モーターショーのオフ・サイトでいくつもイベントがあることを知り、取材へ行ってきました。 Lexus 豪華なケータリングパーティー 4月7日はチェルシーのDia Art Centerで、John Chamberlain(車のボディーの金属を素材にした彫刻で有名なアーティスト)の作品の中で、Lexusのパーティーが行われました。 氷で作られたキャビア・ルームと最高のケータリングでスペースも素晴らしく、車のプロモーションのパーティーだけではもったいない程の文化イベントでした。招待客に、NYのミュージアムやギャラリー、文化人達がいて欲しいと思いました。 Lexus、フォルクスワーゲンのイベント 4月11日には、もうひとつ、Lexusの豪華なケータリングのパーティーが、今流行の大きなイベント会場、SKY Light Galleryで行なわれました。こちらも、プロモーション・パーティーのひとつのようですが、ニューヨークの文化人を交えての文化イベントにまで発展していないのが惜しい気がしました。 同じ日、ミッドタウンのイベント・スペース・メトロポリタン・パビリオンでフォルクスワーゲンのイベントがありましたが、こちらは若いニューヨーカーを相手に盛り上がっていました。 HONDA、メルセデス・ベンツのイベント その次の週、4月20日には、今度はHONDAがSKY Light Galleryで、若手ミュージシャンをサポートするイベントを行い、沸きかえっていました。その日は、SKY Light Galleryの向かい側のスペースでも若いヒップホップのミュージシャンを後援するメルセデス・ベンツのイベントがありました。 ゲストは、とてもベンツを買いそうに見えなかったのですが、税金対策なのか、様々な人種を入れなければならない社会貢献制度の実行なのか、NYでこんなに車のオフ・サイト・イベントがあるとは知らなかったため、様々な経験ができました。 High Line高架橋の緑地公園化の鍬入れ式 ウエストサイド・スタジアム倒壊プロジェクト同様、夢で終わるかも、という懸念を吹き飛ばし、4月10日、High Line高架橋の緑地公園化の鍬入れ式典が行われました。2004年、コンペで緑地公園化案が決定してから、いよいよその実現の第一歩を踏み出しました。 レールを外し雑草を抜いたHigh Lineの一部は、翌日までのぐずついた天気で泥濘状態になり、完成させるのに苦労した、と関係者が言っていました。式典当日には、砂利がひかれ皆が上がれるように綺麗になっていました。 High Lineの歴史は、第64回のリポートで紹介しましたが、High Lineは、ウエスト・チェルシーの今現在最もファッショナブルな、ミートパッキングエリア上の花が咲き誇る自然地区として、開発が進められて来ました。ことに、ラドルフ・W・ジュリアーニ前ニューヨーク市長とチェルシーの地主達が、コンクリートが落ちて危険だからとHigh Lineの倒壊を訴えた際、逆にこの区画された自然地区をニューヨーク中が猛烈に大切にし始めました。それをきっかけに、緑の点在する地区の保護を目的にフレンズ・オブ・High Lineグループが誕生したのです。アーティスト、高額寄付者、映画俳優・女優、そして政治家までもが、この全く実用的ではないアイディアに賛同し、フレンズ・オブ・High Lineのメンバーに加わっています。 式典にはデザイナーや上院議員、俳優が参加 今回の式典には、デザイナーのダイアン・フォン・ファステンバーグ、バリー・ディラー、俳優ケビン・ベーコン、エドワード・ノートン、上院議員のヒラリー・クリントン、チャールズ・シューマー、そして、マイケル・ブルーンバーグニューヨーク市長が結集しました。式典の後、12丁目のHigh Lineまでのブロックにもテントの会場が設置され、郊外の自然の雰囲気をイメージしたケータリングで一般客の為の式典やパーティーも行なわれました。撮影台が設けられていて、High Lineを背景に、工事に参加したポーズで写真を撮ってくれるフリーのコーナー(→写真はこちら)や、高架線路に繁殖した芝生を鉢に移したものを持ち帰れるようになっていたりと、記念日となりました。 俳優のエドワード・ノートンは次のように述べています。「実際に自然が生まれるだけの長い間、放置されていたのが、その事を足がかりに、誰も注意を払わなかった場所を緑の美しいスペースとして、開発する事になるとは、とても素晴しい事。High Line開発のアイディアはすばらしい、大好きです。」・・・私はこれにまったく同感しました。 未来型の第2のセントラルパークを目指して 2008年完成予定の、ディラー・スコフィディオ+レンフロ、ファーム・フィールド・オペレーション、といった豪華な建築家陣によるHigh Line公園計画は、野生の緑を残しつつ、様々な角度から洗練し丹念にデザインされ、透明の通路や、商業用のスペース等もデザインに含まれているそうで、未来型の第2のセントラルパークが出来るのではと、今から楽しみです。 ※表示あるものを除き、写真は全て海老原嘉子撮影

第84回 チェルシー10番街に出現した安藤忠雄デザインのレストラン「MORIMOTO」

安藤忠雄デザインのレストラン「MORIMOTO」 続々と新しいお店が出現しているミートパッキング地区のチェルシーにまた、話題のレストランが1月31日に開店しました。ニューヨークでもお馴染みになってきたTV番組「料理の鉄人」のモリモト(森本正治シェフ)がニューヨークで初めての第一号店を開きました。 13,000スクエア・フィートのスペースをデザインしたのは安藤忠雄氏。安藤氏の実物のデザインを見れる、ニューヨークで初めてのインテリア作品です。目をひくのは、天井は砂のガーデンのイメージで作ったという、固めた布地で出来た波打つ白地。壁もこの柔らかいうねりでできており、天井に対して床は黒地で、だんだん上に向かって白くなるグラデーションになっています。このグラデーションがモリモトの名刺等のカラーにも使用されています。 もう一人はプロダクト・デザイナーで世界的に活躍しているRoss Lovegroveで、安藤忠雄氏のイメージを入れてデザインしたという椅子や、彼の有名な自然型のウォーター・ボトルを17,400本使って作られたクリスタルの“光の間仕切り”も壮観です。 このプロジェクトのクリエイティヴ・ディレクター、プロデューサーを務めたのはニューヨークのGOTODESIGN GROUPのステファニー後藤氏です。後藤氏はコーネル大学を卒業後、Rafael Vinolyの後David Rockwellにいて独立した日本女性です。地下のバーも木の葉が埋め込まれた透明アクリルのカウンターがあったり、トイレの奥の壁には四季の花が延々と続く仕掛けのパフォーマンスだったり、お料理だけでなく、盛り沢山のエンターテイメントが含まれていて、ニューヨーカーを楽しませそうです。 オーナーのステファン・スターは、フィラデルフィアにいくつかのレストランを経営しています。フィラデルフィアのモリモトは、Karim Rashidのデザインです。「いつかニューヨークに・・・」という2人の夢が、今回実ったそうです。 入口には営業時に、縦122フィート、幅14フィートもある世界で一番大きい真っ赤なのれんが下がります。 オープン時はちょうどファッション・ウィークで、ニューヨークのレストランは毎晩ファッション・ショー後の貸し切り接待パーティーの会場となります。モリモトは話題のレストランとして、NY Timesでも大きく取り上げられました。 今、ニューヨークの西の外れ、10番街が開拓され、大型レストランが次々と出現しており、まだ寒いニューヨークにホットな話題を提供してくれています。 「CC+for MoMA」 デンマーク・クラフト・コレクション ソーホー MoMAデザイン・ストアーが、デンマーク・クラフト・コレクションの特設コーナーを設け、そのお披露目パーティーがあり、NYのデザイン関係者が一同に集まりました。デンマーク・クラフトの中からMoMAが選定した商品を「CC+for MoMA」と銘打って、デンマーク領事館の後押しもあり、MoMAデザイン・ストアーで売り出そうというものです。 デンマーク・クラフトは1999年にデンマークの文化庁の後押しで出来た独立組織で、25~30人のクラフトマンの作品を、今までと違った方法で世界に出そうとしているようです。日本と同じようなクラフトの状況を感じますが、スマートなNY進出です。 出席したデザイナーや関係者が一段と背が高く、見上げる人の多いのが目につきました。マリメッコが今年から卸しを始めたので、MOMAなどのあちこちの店で特徴のある大きな花柄を見かけます。 今年は久しぶりに、スカンジナビア旋風になるのかもしれないと感じました。 ※表示あるものを除き、写真は全て海老原嘉子撮影

第82回 屋外世界最大のクリスタル・シャンデリアと室内最大のスター・イルミネーション飾り

屋外世界最大のクリスタル・シャンデリア 毎年、ニューヨークのホリデーシーズンに57丁目と5番街ティファニー前の交差点に高く浮くクリスタル・シャンデリアは、ロックフェラーのクリスマスツリーと同じくらい、欠かせないものです。これがデザイナーのIngo Maurerによる、というのは意外と知られていないのではないでしょうか。今年で2回目の、Ingo Maurerによる世界最大のクリスタル・スノー・フレ-クが、11月28日から点灯されました。 点灯式はグラミー賞受賞者であるミュ-ジシャンのQuincy Jonesによって行われ、それと共に、UNICEFがWaldorf-Astoriaホテルにて2年目となるクリスタル・スノーフレーク・ボールを開催し盛大に祝いました。 この仕事は昨年に続きUNICEFからの依頼で、子供達の希望、平和と思いやりの気持ちを込めたIngo Maurerのチャリティーによる新作で、ステンレス鋼製のクリスタル・プリズム照明になっています。 総重量1,500kg、総電力7,520ワット 今回のUNICEFクリスタル・スノーフレークは、総重量1,500kg(3,300ポンド以上)、直径7メートル(23フィート)で、昨年と比較すると約40%も大きいスノーフレークとのことです。2004年、Ingo Maurerとスタッフは、Baccarat社製造の16,000ものクリスタルをフレームに取り付ける作業を行ったということです。総電力7,520ワットの光は、16のハロゲンのスポットと、84のハロゲン・スポット、そして、24のストロボスコープ及び300の鉛のブリンカーによって作り出されました。 Ingo Maurerは次のように述べています。 「昨年私は、UNICEFからニュ-ヨークのホリデーシーズンの象徴としてのこの照明の再デザインの依頼を受けました。それは私達の大きな喜びであり、そして驚きでした。私は、救助構成で非営利であるUNICEFの、このような仕事を継続出来ることにほんとうに感謝しており、幸せです。昨年と同様、フランスの有名な製造業者baccaratにクリスタルを提供してもらうように提案しましたが、会社は非常に積極的に、すぐにUNICEFのためにスノーフレーク作成を開始してくれました。デザインから離れて、技術的な認識は私のチーム、私にとって最も大きなチャレンジの1つでした。私のデザインのほとんどは、One-Offsを含んで、小さなスケールの、屋内使用のためにデザインされています。私達の最初のスノークリスタルは停電することなく、180km/hの風速に破損されることも無く、強風に耐えられたことを誇りに思いました」 1回目のスノーフレークは昨年夏、Beverly Hillsの丘の上のRodeoドライブにあるRegent Beverly Wilshireホテルに取付けられたそうです。 室内最大のスター・イルミネーション飾り 今年初めて、コロンバス・サークル59丁目の新しい名所、TIME Warner Centerのロビーに室内最大のスター・イルミネーションが取り付けられ、1月8日まで楽しめました。夕方4時から夜10時まで、15分おきにスター・イルミネーションの色が音楽と共に変わり、忙しい暮れの一時、ショッピングの合間の息抜きに見とれていました。このイルミネーションのデザインは、ブルックリンのHoliday Image Incを経営しているMatthew SchwamとSteven Wilburnで、デザインと制作、設営を担当しました。 長さ14Foot(12.85m)、重さ987ポンド(447.6Kg)、8640個ものColor Ledsが設置され、優れたコントロール・システムにより1495チャンネルがプログラムされ、個々のスターが16.7Millionの色の変化を可能にしているそうです。 他に、11,304fiber optic pointsの光に156のストロボ・ライトという新しい試みもなされている12個のスター達が、ロビーを舞台にNYのホリデー・シーンを輝かせていました。 ※表示あるものを除き、写真は全て海老原嘉子撮影

第81回 Wearing PROPAGANDA(ウエアリング・プロパガンダ)展

Wearing PROPAGANDA展 第2次世界大戦当時、身にまとうプロパガンダとしてデザインされたテキスタイルを展示するWearing PROPAGANDA(ウエアリング・プロパガンダ)展が、11月18日~2006年2月5日まで、The Bard Graduate CenterのGallery(18 West 86丁目 NY市)で開催されています。 日本、英国、米国から集められた、1931年から1945年の間にプロパガンダとしての役割を果たした衣服、スカーフ、アクセサリー130点が展示されています。 その頃の染色技術を駆使し、時代を反映したモチーフで、克明に描写されています。絽(ろ)の着物から織物まで、絹、木綿、ウール、麻などの素材になされた印刷は、シルク・スクリーンなのか写真プリントの手法も進んでいたようです。よく探し出したものだと思われる展示作品が多く見られました。 特に日本の着物の点数が多く、子供用の着物に描かれたその時代の子供の様子や、「兵隊さんありがとう」と右から書かれた文字や、男物の羽織りの裏の絵柄にも飛行機、国旗、軍隊の様子などが大胆に描かれ、歴史を垣間見る絵図が生活の中にあった事が伺えます。それに対し英国、米国の展示作品は、スカーフなど女性が着用するものに兵士の帽子やメッセージなどがデザインされているのが多く見られ、日本の子供用の着物に見られる軍隊のイメージは、文化の違いかインパクトを与えています。 展示品は日本から収集したものも多数 NYで骨董屋を経営し、プロパガンダの羽織りを身にまとった友人の宮本さんと、オープニング・パーティーに出席しました。すると、宮本さんの羽織りと同じ柄の布地が展示されており、彼女の羽織を目にしたキューレーターのジャクリーン・アトキンさんは、「本物の羽織りを探していた」と大喜びしていました。 ジャクリーン・アトキンさんはコロンビア大学で教鞭をとっている関係から、日本人生徒に協力を求め日本中あちこち捜しまわり、コレクションするのを手伝ったそうです。日本和装飾会会長の市田ひろみさん他、この展示会に貸し出した方達も、はるばる日本から出席されていました。 もし、この展覧会を日本が主催で企画すると問題になりそうなテーマですが、ジャクリーン・アトキンさんは2000年から展覧会を企画しコレクションを収集し始めましたが、米国で同時多発テロが起こった為に自粛し、開催が今に至ったとおっしゃっていました。 テンポラリーストアー (ソーホーに流行りはじめた期間限定ストアー) 毎年暮れになるとクリスマス・セールの臨時ストアーや在庫セールが出現しますが、今年はこれらとはひと味違う、本格的な店構えのおしゃれなテンポラリーストアーがいくつも出現し、目をひきました。 まず日本ではお馴染みのUNIQLOが、SOHOのど真ん中、GreenストリートのPrinceとSpringストリートの間に11月12日から来年1月末までという限定で店を構え、週末には満員になる人気振りで、SOHOをUNIQLOのショッピング・バッグをもって歩く人が目立ちました。 Wooster通りにはKODAKのOne Galleryが11月1日から27日の間オープンしていました。Galleryの会期中、広い会場内では、KODAKのフォトグラファー、Frederic LaGrangeの作品が展示されていた他、個人の持参したデジタル・カメラのメモリーカードやCDを入れるだけで、写真10枚まで無料でプリントしてくれるサービスやテクノ・ワークショップなど、毎日プログラムが組まれていました。 illy、TASCHEN、WIRESマガジンのショップ West BroadwayのBroomとSpringストリートの間にいつの間にかオープンしていたコーヒーのilly。てっきりお店を構えたのだと思っていましたが、9月15日から12月15日までの限定ストアーでした。入るとすぐ目につくシャンデリアは、デザイナーによるオリジナルコーヒーカップのコレクションで作られたものです。 UNIQLOの斜前にはアート系の出版で最近人気のTASCHENが、12月31日までテンポラリー本屋さんを開いています。TASCHENはこれまでNYに店を構えておらず、この場所を改築して春頃には本格的に開店するそうですが、その前の小手調べでしょうか、華やかなイラストで目立つストアーです。 その先GreeneストリートとHoustonストリートの角にはWIRESマガジンが、Wired Storeを11月18日から12月24日まで開いています。スニーカーからフラット・スクリーン、車まで、エレクトリック・エイジのWiredマガジン・ファンが喜びそうな商品を、カラフルな内装で展示販売しています。 TASCHENブックストアー(写真40~45)とWiredストアー(写真46~53) テントのショップUnion Squre Holiday Market 他にも取材しなかったいくつかのテンポラリー・ストアーがあり、今までになかったこの現象が流行りそうな気配を感じます。 今まで不動産屋は短く貸すのを嫌っていましたが、なかなか借り手のないスペースは長いリースの契約が決まるまで1~2ヶ月かかるので貸す事にしたり、ショップを開こうとする側も、本格的に店開きをする前に、多少高くついても、土地勘のマーケット・リサーチを兼ねてショートタイムで試してみたり在庫整理をしたりと、お互いに都合が良いのでは、と思われます。 こちらは毎年恒例の、テントのショップUnion Squre Holiday Marketが、14丁目Union Squreの地下鉄出入り口を囲むように設営されています。主にハンドメイドの商品のブースが多く、クリスマス前日までオープンします。同じエージェントによる、テントのホリデー・マーケットがコロンバス・サークルでも催されていますし、こちらも恒例の、グランド・セントラル駅内のホリデー・マーケットも、NYの慌ただしい年の瀬を感じさせる、風物詩です。 ※表示あるものを除き、写真は全て海老原嘉子撮影

第75回 New York デザイン・ウィーク

New York デザイン・ウィーク 世界4大家具ショーのひとつ、ICFF(国際現代家具見本市)が、慣例のジャビッツ・センターにて5月14日~17日まで行われました。ニューヨーク市内では協賛して盛り沢山のデザイン関係の催しが行われ、NY市長Bloomberg氏がこの期間を“ニューヨーク・デザイン・ウィーク”と名付ける程に大きくなってきました。 イタリアのミラノサローネも今年初の参加で、イタリア勢をピアー91と92にまとめ“isaloni”と名付けて展示しました。その分ICFFの会場からイタリー勢が減ったように見えました。インテリア・デザイン誌協賛のisaloniが、交通機関などの関連がうまくとれていなかったので、皆会場を探すのに苦労したようです。 Isaloni made in Italy の展示風景 (写真15~24) Samp ICFFでは、マテリアルを主張して見せているところが興味をひいていたのと、デザイン学校のブースがやはり新鮮でおもしろかったです。また、出版物のスペースが大きくとられていたのが、目につきました。 今年初めて展示された、その場で買えるデザイン土産マート : DESIGNBOOMの会場がフレッシュで人気を集めていました。 http://www.designboom.com http://www.designboom.com/mart.html インターネット時代のデザイナーに人気のサイトが出展、ICFFと協力して、選んだ32Boothでほとんどが手作り作品で、$10-$100までの在庫を100個までと制限した商品群で、デザイン・スーベニールとして買ってもらい、この売上金を世界中のあちこちからDesignboom ICFF Mart 05に参加した費用に代えるというものでした。 第3回 デザインダウンタウン 開催 デザインイベントの中でも注目度の高いもののひとつで、今年で第3回目を迎える「デザインダウンタウン」が、アート・トレンドの発信地、チェルシーにあるガレージを改装したフォトスタジオ Drive-in Studioを舞台に、世界中から集まる若手デザイナーのインテリア・トレンドを発表しました。 その中でも、2階に突然現れたようなTOYOTA / Caltyのコンセプト・カーSciont2B車の「走るラウンジ空間」の新しい展示には、度肝を抜かれ、皆驚喜していました。 世界に一つしかないコンセプト・カー Sciont2B この展示は、非営利財団IDNF(国際デザイン交流財団)のプロデュースで企画されましたが、世界に一つしかないコンセプト・カーSciont2Bは、Subtlet / Honesty / Ironyのテーマで、トヨタの米国デザインスタジオ・カルティ・デザイン・リサーチ・インク(本社カリフォルニア州ニューポートビーチ、蛭田社長)がデザインした新作コンセプト・カーです。昨年リサーチ段階でNYのデザインスタジオが関わり、3月の自動車ショーではすでに発表されましたが、デザイン・ウィークに集まる異なった層の人々の関心をよんでいました。 インパクトがあるのは車の形だけではありません。ドアーパネルにジッパーのついたポケット、座席はデザインされた2層の椅子張り地、内部の天井には動く光の色の変化を楽しめるデコレーション・ストライプや後のガラス窓がVideoスクリーンとしてファンクションし、外でピクニックをしながらVIDEOを楽しめるといったアイディアが盛りこまれています。車の後の壁にはコンピューターから映し出される著名人のQuartが、白いボードの説明とはまた違った、新鮮な興味をひいていました。 Sample Content 毎晩遅くまで、凝ったパーティーを開催 デザイン・ウィーク中は、あちこちのショールーム、ギャラリー、イベント会場で凝ったパーティーが毎晩10~20も開かれるため、これを選んでハシゴするには相当なエネルギーが必要とされます。 14日の晩は、5千人が出席したと言われる2つの大きなパーティーがありました。 ひとつは、マンハッタンにはまだない、赤い輪がマークのターゲット社がSOHO空き地に大きなテントでパーティー会場をつくり、凝ったケータリングとお土産も沢山あり。もうひとつは、ACE Galleryの広いスペースでDwellマガジンとDune社の、新しい家具の発表のユニークな見せ方が話題になっていました。New York デザインウィーク、ますますオフ・サイトの方が、大きく発展していくように感じました。

第74回 Tribeca Film Festival(トライベッカ映画祭)

Tribeca Film Festival(トライベッカ映画祭) 今年で4年目を迎えるTribeca Film Festival(トライベッカ映画祭)が、4月19日から5月1日の期間、開催されました。このフェスティバルは、9・11から一年経った2002年に、グランド・ゼロ近くのダウンタウンの地域の活性化を目的に、映画俳優のRobert De Niroが中心になってJane RosenthalとCraig Hatkoffを交えて始まりました。 250作以上の短編、ドキュメンタリー・フィルム、インディペンデント・フィルムなど海外から60作品の未公開フィルム等も上映されました。アカデミーとはひと味違った初日のGala Premieres、2005年度受賞式、講演、フリー・プログラム等々、盛り沢山のプログラムが組まれました。 * Tribeca … Triangle Below Canal Street 街がポップ・コーンマシンや垂れ幕で映画館のイメージに 案内所がダウンタウン7カ所に設けられ、映画の上映スケジュールや細かい説明のプログラムと、何処で見ることができるのかがわかる首から下げるおしゃれなMAPが配られました。近くには映画館につきもののポップ・コーンマシンが設置され、これもアメリカン・エクスプレスのスポンサーで誰でも無料で食べることができるなど、いやでも映画館のイメージを盛り上げます。また、ダウンタウンの映画館をあちこち回るフリー・シャトル・バスも出て、この2階立て観光バスで、グランド・ゼロ近辺の復興ぶりを久しぶりに見せてもらいました。 全てにTribeca Film Festivalのロゴが入っていて、劇場前にはカラフルな垂れ幕がかかったり、分かりやすいスケジュールが張り出されていました。 過去3年のフェスティバルの総動員数は100万人 皆、多少の行列も苦にせず楽しんでいるようでした。混乱を避けるため「ファミリー・フェスティバル」も企画されました。これは家族で楽しめるプログラムとガイドになっています。4月30日には終日ストリートをブロックしてのストリート・フェアーも催されました。過去3年のフェスティバルの総動員数は100万人に達し、そのおかげでロアーマンハッタンに$125ミリオンの経済の動きが出来たそうで、着実に発展し、拡大してきていること感じました。 IMC Expo (Interactive Multimedia Culture Expo) Tribeca Film Festivalが開催される少し前、4月14日から4月23日の期間、Chaelsea Art MuseumにてIMC Expo (Interactive Multimedia Culture Expo)が開催されました。本展は、最近のサイエンス映画のテクニックを見せてくれる作品展です。 映画「マイノリティー・レポート」や他の映画に影響されて作ったという大画面のインタラクティブ・空想マンハッタンなど迫力のある作品。作品の制作者は、CINE(Collaborative Immersive Networked Environment)グループで、Studio IMCの3人Miro Kirov, Houston Riley, James Tunickの競作です。 目の形をしたSTUNT DUMMIESはインタラクティブ・マルチメディアゲームです。7つの部屋と1つのメインメニューがインターフェイスになっていて、そこからそれぞれのプログラムが始まる空想の世界。作品のデザインとディレクターを担当したKathleen Ruiz(Rensselaer Polytechnic Institute (RPI)コネティカットにある学校の教授)が、生徒達とグループで制作した作品です。 ※表示あるものを除き、写真は全て海老原嘉子撮影

第70回 和の影響を受けているNYの新しい食文化・レストランを見る。

和の影響を受けている NYの新しい食文化・レストランを見る ニューヨークの食文化はこの2、3年、目をみはるものがあります。例えば、お寿司を食べることが当たり前になりました。お刺身を盛り沢山オーダーする若者達や、「わさびがきかない」と別注文する人など、私などとても足下にも及ばない和食通のような感じなので、驚いています。 最近は、TV番組『料理の鉄人』の影響か、(番組のアメリカ版があり、現在も放送されています)より名シェフの、オリジナル料理に人気があるようです。また、味や雰囲気を好む居酒屋風が流行しており、日本酒を各種そろえた本格的な通のレストランと、エンターテイメント化して大型の演出で楽しませてくれます。 エンターテーメントがレストランの重要な要素 58丁目にある“TAOレストラン”もそのひとつ。大仏のもとで鯉が泳いでいる池が店内中央にあり、天井にはビックリするような大きな書が張り巡らされています。食事のサーブは、細長いお皿に料理がカラフルに盛りつけられてきます。味は、日本人にはちょっと・・・という感じですが、演出が盛りだくさんなのでレストランはいつも満員です。 このレストランで使用されている食器の一部は、日本でも活躍しているIzabel Lamのデザインです。家具や食器、漆器などが、アジアスタイルとして5~6年前からはやりはじめたのも、これらの前ぶれだったのだと思います。 最近の有名レストランは、各種雑誌などで取り上げられ一般に知られていますが、59丁目のタイム・ワーナービルの上にある“NMASA寿司”は、高いことで有名になりました。ダウンタウンには“NOBU”、“メグ・レストラン”、チェルシーには“祭りレストラン”、“アジア風のスパイシーマーケット”・・・。1カ月ほど前には、“ONOレストラン”というものもオープンしました。 食器や盛り付けに、神経を使って和を生かす 若手名シェフたちは、ヴィレッジやノリータに、こじんまりした凝ったレストランを次々と開いています。 デザートのフルコースを出す専門店として初めてオープンした“チカリシャス”は、オーナーの一人が日本人女性です。おしゃれな盛りつけ、濃すぎない味付けでフルコースが食べることができるメニューになっています。この店は、ニューヨークの沢山のメディアに取り上げられました。 その先生や仲間といったシェフ達が、NY Timesにも取り上げられている“クリントン71”の28才の話題のシェフ。 半熟卵の黄身がイカスミで作られた皮に包まれた料理があり、シェフがお客の目の前で温かいソースをかけるとイカスミがとけて、中の黄身が出てくる演出でお客を喜ばせています。他に、ウニのデザートや和の食材を使って、いろいろ工夫をしています。 和を意識したレストランが次々とオープン ビレッジには、“重箱”をもじった“Jewel Bako”という名前のレストランがあり、アメリカ人が和を取りいれた、と話題になっています。インテリアやテーブル・コーディネイトはシンプルにまとめられています。ここと同じオーナーが経営するオイスターバーも、和を意識しているそうです。 ノリータのレストラン“WD50”でも、有名なシェフが日本を意識したメニューを展開しています。食器にこだわり、枝豆のアイスクリーム、みそアイスクリームなどのオリジナルに挑戦しています。 「日本酒ブームを作ろう」「日本茶をもっと」といった、日本からの応援もあると思いますが、ケチャップを山のようにかけて食べていた、アメリカの昔の味気ない食文化が、健康志向も手伝ってこうも変わってきたかと思うと、感無量です。   ※表示あるものを除き、写真は全て海老原嘉子撮影

第68回 Karim Rashid がNYで最初に手がけたレストラン「Nooch」 / Karim Rashid Shop

Karim Rashid が手がけたレストラン「Nooch」 04年10月4日、Karim Rashidのオフィスの並び、17丁目9番街角に、Karim RashidがNYで最初に手掛けたレストラン・バー「Nooch」がオープンしました。 インテリア、家具、床、壁や、食器、ガラス器、ナプキン、名刺まで、すべてKarim Rashidのテイストでデザインされています。04年の1月、このレストランのオーナーが経営する、シンガポールにあるレストラン4つのうちの一つを、彼がデザインしたのがきっかけで、タイ料理/寿司が売り物のレストラン「Nooch」がオープンになったようです。 「Nooch」入り口は、ファッションモデル・マーサ・ミランの顔の巨大な写真が、緑の光によって浮かび上がっていますが、この光を使った外観が、遠くから見てもすぐ、Karim Rashidのデザインとわかることで話題を呼んでいます。 あまりの人気にデザインショップもオープン Karim Rashidがデザインしたテーブルは2人用ユニットになっていて、4人、6人、8人と、間を空ければどのような組み合わせにも対応し、今流行りの細長いテーブルとしても使うことができます。 同じく彼がデザインしたワイングラスや他のガラス器は、見た目はデザインが良くても使いにくいのでは、と疑問を感じながら使ってみましたが、思ったよりも飲みやすく、とても生きた使い方をしていました。メニューにお茶やデザートはないのですが、味の良いタイ料理、寿司が、学生食堂並の価格でサーブされているので、気楽に寄ることができるレストランです。またDJを入れ、ミュージックもKarim自身がプロデュースするという徹底ぶりです。 月に2~3回、彼が関わるオープニングのお知らせが皆に送られてきますが、最近のおしらせでは、売れっ子のKarim Rashidは、とうとうショップをオープンしてしまいました。 Karim Rashid Shop 04年10月27日、19丁目の6番街と7番街の間に、karim Rashidのデザイングッズ全てを売るショップを、彼自らがオープンさせました。 ショップは、チェルシー地区の角にある大きなコンテナーショップを西に曲がった所にあります。あまり大きくはないのですが、Karim Rashidのショップ、とすぐにわかるガラス張りの外観です。店長は、karim Rashidの妹さんが務めています。 400点以上ある商品は、街のどこかで見かけた事のあるものが多く「これも、あれも、karimのデザインしたものだったのか」と、商品の幅の広さに彼の売れっ子ぶりを感じました。 家具、花瓶、食器、デスクアクセサリー、ガラス器、陶器、コンピューター・ケース、ハンドバッグ、靴まで、すべて彼のデザイン・グッズで、あらゆる会社と関わっていることが分かります。 思い付いたら実行、今を生きるデザイナー ここは、Karim Rashidのショールームを兼ねたショップで、他で手に入らない限定版のコレクターズ・アイテムもいくつか置いてあるそうです。 思い付いたら実行、今を生きるデザイナーのKarim Rashid。最も旬な時にオープンしたKarim Rashidのショップ、という感じがしました。 あちこち探すことなく、Karim Rashidの商品全てを見ることができるので、彼のファンにとっては大変嬉しいショップだと思います。 ※表示あるものを除き、写真は全て海老原嘉子撮影