第37回: ICFF国際現代家具見本市とOff Siteイベント (2002/6/12)


 

『メトロポリス』誌のICFFオフィシャル・カタログ

9.11後、初となるICFF

2002年の第14回ICFF(International Contemporary Furniture Fair)国際現代家具見本市は5月18日~21日まで慣例のジャコブ・ジャビッツ・コンベンションセンター(Jacob K.Javits Convention Center)で行われました。
10,000平米の展示スペースに425社が出展。出展国はカナダ、フランス、ドイツ、オランダ、香港、イタリー、日本、メキシコ、ブラジル、ニュージーランド、オーストリア、スエーデン、デンマーク、ペルー、英国、そしてアメリカ合衆国の16カ国でした。例年のごとく国のサポートがある、イタリアとオランダのブースは力が入っています。

今年のイタリア館は、ローマ通り、ベニス通り、トリノ通り等とイタリア各地域の名前を展示会場の通りにつけて、特色を出そうと試みた様子でした。
ミラノ・サローネに比べると9.11の影響もあり、少し元気がない感じですが、4日間で17,000人という入場者数とアフターアワーのOff Siteプログラム(期間中行われる街中のイベント)には活気がありNYのパワーを感じました。今年のオフィシャル・カタログは『メトロポリス』誌が出版しています。
昨年に続いてミラノもカバーしていた『INTERNI』誌は、日毎に分けた「OFF Site」の案内小冊子を発行。反対側はNYデザイン・ショップ情報になっていて、とても便利です。

もう一つ『Interior Design』誌の「Prospects」も会社別の案内がわかりやすくできていて、ICFFの「OFF Site」も定着してきた感があります。   ICFF.com >>

関連情報を紹介する『INTERNI』誌、『Interior Design』誌の「Prospects」

地域別に分けてトリノ通り(corso Torino)、ベニス、ローマなどと表示していたイタリアエリア

ハンドメイド・ナイフも展示していたイタリア企業 

TOTEM社ブース

ICFF会場の様子

Kartel社ブース ミラノ・サローネと同じ出展内容だったが、展示方法が違った設定になっていてアメリカ市場へ向けての売る姿勢が感じられた

Eric Janssen Design リサイクルや環境を考えた材料を使った作品群

左はガラスビンをならべて作った椅子、右はコインをならべて作った椅子

 

楽しみなNYのデザイン学校の展示

デザイン・スクールのブースが毎年フレッシュなアイディアで、楽しみです。ちょうどミラノ・サローネのサテライトと同じようなアイディアでしょうか。
今年もアート・センター・カレッジ・オブ・デザイン(Art Center College of Design)やクランブルック・アカデミー・オブ・アート(Cranbrook Academy of Art)、ロードアイランド・スクール・オブ・デザイン(Rhode Island School of Design )、プラット・インステテュート(Pratt Institute)等の学生の作品が出品されていました。

 

Cranbrook Academy of Art

Art Center College of Design

Rhode Island School of Design

Pratt Institute

 

 

 

「アメリカに貢献しているイタリアデザイン」と題しての パネルディスカッションにて
左から、Jerry Hellingジェリー・ヘリング(米)、Ayse Berselアイシェ・バーセル(米), Antonio Citterioアントニオ・チッテリオ(伊)、Rodorigo Rodriquezロドリゴ・ロドリゲス(伊)

アメリカとイタリアの – デザイン的関係とは?

ICFFの企画会社GLMと今年のスポンサーである『メトロポリス』誌の共催で、セミナーなど教育的なプログラムが毎日行われていました。
19日に行われた「アメリカに貢献したイタリアン・デザイン」を聴講したのですが、結論は‘アメリカはイタリアン・デザインから多くを学び、イタリアはアメリカから沢山の仕事をもらってお互いに助け合ってデザイン業界をリードしあった’というもの。
パネラーの一人Federlegno-Arredoの会長のロドリゴ・ロドリゲス氏によると、ミラノ・サローネで発表される新作も、80%は輸出向けビジネスで成り立っていて、その半分がアメリカ合衆国で残りがヨーロッパ。最近は中国が大きな輸出国になっているそうで、上海などのホテルやビル建築ラッシュに、なるほどと思いました。

 

数多いOff Siteのイベントで賑わうNY

ICFFのGLM社と『House & Gerden』誌が主催の、3回目になるMoMA借り切りのオープニング・ナイト・パーティ-は、18日の土曜の夜7時から行われました。

Off Siteプログラムも盛りだくさん。今年はオランダ政府バックアップの「Dutch Design New York」という大きなイベントが話題になっていたのと、Karim Rashidがいくつかの会社でパーティーを行うのですが、自分の移動時間を考えてずらした時間帯で行われていて、スターぶりを発揮。
別項でも触れる「Core 77」のコンペ発表展示パーティーも話題[詳細へ]でした。
「イタリアン・デザインUp Town, Down Town」というイベントでは、リストアップされたPartyをはしごして、各店のスタンプを集めると賞金が当たるというスタンプラリーも慣例になっています。

オープニング前日の17日は「Double Dutch 2:D/3:D」のパーティーではじまり、18、19、20日とマンハッタン内で毎日20店前後のオープニングパーティーがあります。
MoMA SohoShopもイサムノグチのRe-Productionした作品をショーウィンドウに飾り、パーティーをしました。
「Cappellini Modernage」「Moss」「Troy」「100 Watt Design Store」「I.Dot Gallery」「Boffi Soho」「Kartel」「Dakota Jackson.」などなど。これらの店をはしごする人々で街中もにぎわいます。

20日には「Dutch Design NY」のパーティーが、チェルシーのClub, Lot 61で招待客のみ対象で行われ、著名デザイナー、デザイン関係者が大勢集まりました。
主催のJeanne Wikler(オランダの在NY領事館ディレクター)が、このプロジェクトをサポートした魚住早智子さんに花束をあげるシーンもあり、今年も大変活気のあるICFFweekでした。

 

Cappellini Modernage 182 Wooster St. 地下に並ぶ大きな植木鉢

MoMA Soho shopのWindow

MoMA Soho shop 地下にはお馴染みのイサムノグチのデザインが並ぶ

今回のビッグイベントの一つ「Dutch Design NY(オランダ・デザインNY)」の仕掛け人、Jeanne Wikler(左)と魚住早智子(右)さん

MoMA Soho shop こちらもイサムノグチのディスプレイ

今回の為だけに設置された「I.Dot Gallery」
Ferruccio Lavianiの展示デザインによるイタリア・デザインの巡回展、半透明の円筒に椅子などを飾る展示

同じく「I.Dot Gallery」
半透明の円筒に椅子などを飾る展示

 

Deifch Projects Karim Rashid (18 Wooster Street.)
カリムが新しく発表したポリスチレン・パールを中に入れたファブリック・バッグの家具、ミラノでも発表したもの


私の撮影の為に並んでくれたカリム・ラシッド夫妻

ラシッドと海老原

100 Watt Design Store イタリー系のランプ・ストア

100 Watt Design Store イタリー系のランプ・ストア

Boffi Soho イタリアの家具店 地下のテーブル・セッティング

Dakota Jackson Soho 新作の真っ赤な塗りの「OK Table」

Dakota Jackson Soho ナチュラルな木のベンチ、手前は「OK Table」

Dakota Jackson Soho 白い椅子「Arc Chair」フレームは木でできている

 

Core 77の「need」展~Off Siteイベント


-「Core 77」コンペ作品展示・発表パーティー Gallery 91にて開催

Core 77は、Pratt Instituteの卒業生が1995年に作ったマルチ・タレント・デザイン・スタジオ。
早い時期からWebサイトのデザインからCR-ROMの製作も始め、グラフィック、プロダクト、展示設計、その他デザインに関するあらゆる分野で、非営利財団からIT企業の仕事までこなしています。また、若い人を教育する目的のデザイン・イベントも3カ月に1回程度開催するなどNYでは話題のグループです。
core77 competition 2002
http://www.core77.com/competition2002/default.asp

今回の彼等主催の「NEED」は、Off Siteイベントの一つで、‘個人に必要なもの’‘家庭で、会社で、屋外で、使いやすく、安全を考え社会が必要なもの’というテーマで行ったコンペでした。

私が関わることになったのは、「受賞作品展をしたい」と協力を頼まれたことが発端で、私としてもコンピューター上で作られた応募作品をどのように展覧会として見せるのか、展示方法に興味を持ち、最終的には、IDNFが協力しGallery 91のスペースを提供することになりました。

コンペの応募者は60カ国におよびました。バラバラなフォーマットで届く応募作品データは、Core 77のパートナーがいるインドに一度送られ、彼等がハイクオリティのレンダリングに書き直し、それをまた別のパートナーがいるカリフォルニアに送り、ステレオリトグラフィー(Stereolithogrphy、光造形)で樹脂モデルに仕上げてもらい、NYに送ってもらったという経緯があります。このモデル制作も本当は1個1,000ドル位かかるのですが、スポンサーとして協力してもらうことができたようです。

コンペの特賞に選ばれたのは「Blood Pen」。鋭いペン先で自分の血を採り、インク代わりに使いサインをする、日本の血判のようなもの。契約書などの書類へのサインに、他の人には絶対真似のできない印しとして使える、というコンセプトです。デザイナーはDavid Tsai。クランブルック・アカデミー・オブ・アートの学生で、賞金の2,000ドルをパーティー会場で受賞し大喜びでした。

core77 design magazine and resource
http://www.core77.com

期間中の「need」バナー、Gallery 91にて

外の道にまで溢れる賑わい

特賞「Blood Pen」のデザイナーDavid Tsai

Core 77の代表2人、左からStuart Constantine, Eric Ludlum、とMoMAのPaola Antonelli

超満員のパーティーの様子、Gallery 91にて

ステレオリトグラフィー(光造形)で作った樹脂モデルと、壁面に描かれた特賞に選ばれた「Blood Pen」

光造形の樹脂モデル

展示全景

この展覧会のために5日前から準備にかかりました。
PCの画像をプロジェクタで壁に拡大投影して、位置を決め、鉛筆で下書きをし、できた順にCore 77のデザイナーやPratt Instituteの学生が次から次と変わりばんこにペイントしていく作業。
中央のスクリーン設営や、投影の調整にも時間がかかり、毎晩12時、1時までと作業が続きました。

会場であるGallery 91の2階に私のオフィスがあるので、ときどき、様子を見に降りていきました。今の学生は描く太さによって何本も筆も揃えていて、私たちが学生の頃のように烏口の書き方や溝引きで線を引くことは、習わないそうで、横から見ていると余計時間がかかるような気がします。

パーティーは18と19日にあり、18日は午後6時から12時まででしたが、最初から最後までいっぱいの人で、DJも入ってディスコ・クラブのような賑わいでした。最近のNYのパーティーのスポンサーで多いのはジンのBOMBAY SAPPHIREです。ICFFのパーティーほとんどをスポンサーしていて、今年は彼らが提供したオシャレなサファイヤ色のマドラーと短いオリーブ楊枝が人気でした。

プロジェクタ-の位置合わせ

鉛筆で下書きの作業

皆で書き込む壁

皆で書き込む壁

皆で書き込む壁

フィニッシュも近づく

クラブのような賑わい

パーティ終了時間になり明かりをつけてもなかなか帰らない人々