第58回:  Japan Societyでのシンポジウム (2004/3/10)


 

槇文彦氏

Fumihiko Maki (槇文彦氏作品)

Fumihiko Maki (槇文彦氏作品)

「現代日本建築における技術と伝統」をテーマに大反響の3日間

ジャパン・ソサエティーで「現代日本建築における技術と伝統」というシンポジウムが2月26日、27日、28日の3日間に渡り開催され、大変な反響でした。

切符は早くに売り切れて、初日の槇文彦氏の講演は満員の為、別部屋にエキストラモニターを設置しての聴講となるほどの人気でした。
リチャード・マイヤー、Jack Larsen、NY Timesなど、著名建築家から建築記者まで毎日数多くの関係者が聴講していました。
主催はジャパン・ソサエティーでしたが、Architecture Record誌との共催だったこともあり、NYの建築、デザイン関係者がこんなに集まったのは、初めてなのではないでしょうか。

それに加えて、アカデミー賞にノミネートされたLost in TranslationやLast Samuraiブームも影響して、日本を本質的に知りたい知識人が増えていることも、この日本建築人気の一つのように思います。
また、海外での学生生活の後、帰国して日本で活躍している若手デザイナーや、日本で生活している日本語ぺらぺら外国人デザイナーなどが紹介する日本は、今までに見えなかった日本が見えるようになってきているようにも思え、本当にグローバルになってきているような気がして、大変興味深いシンポジウムでした。

夕方6時から始まった初日は、Architecture Record誌のロバート・アイビー氏が、Pritzker賞受賞の建築家であり、国連Headquarterを手掛ける槇文彦氏を紹介。講演では、今までの数々の素晴らしい作品のスライドが次から次ぎへと映され、日本の最初の国際派建築家の第一人者で、今最も話題の六本木ヒルズにも関わり、2008年のUN完成の新しいプロジェクトの夢を語られ、現役で張り切っておられるのには、ほんとうに感激しました。

※表示あるものを除き、写真は全て海老原嘉子撮影

 

「現代日本建築における技術と伝統」をテーマに大反響の3日間

2日目には、基調講演として東京大学教授で建築史家の鈴木博之氏による「日本建築の過去、現在、未来」。
午後3時からは、LouisVuittonを手掛けた青木淳氏(建築家)、NYのNew Museum を手掛ける妹島和世氏(建築家)、Richard Gluckman氏(建築家)をパネラーに、コロンビア大学教授で批評家のKennth Frampton氏が進行役のパネルディスカッション。

3日目は、午前に2回、午後に3回のパネルディスカッションと盛り沢山でした。
最初のパネリストはライス大学建築学科教授のSanford Kwinter氏、岸和郎氏(建築家)、進行はコロンビア大学講師・ケン・ただし・大島氏、その次のセッションは「職人技と新旧素材の活用」をテーマに、パネラーは、隈研吾氏(建築家)、藤森照信氏(東京大学教授・建築史家)、進行はArchitecture Record誌のClifford Pearson氏。
午後の1番目が建築家の坂茂氏と建築構造家の新谷真人氏、進行はカリフォルニア・バークレー大学建築学部教授のDana Buntrock氏。坂茂さんの分かり易く説得力のあるレクチャー・質疑応答はダイナミックに感じました。
そしてMark Dytham氏、John C. Jay氏(UNICLO,RoppongiHillsプロデュサー)、青木淳氏、司会にNaomi Pollock氏(Architecture Record誌Tokyo.)。以前、NYのブルーミング・デパートが一番華やかだった頃のディレクターだったJohn Jayが、今は日本のユニクロや六本木ヒルズをプロデュースして東京を動かしてるのかと納得したり、最後のパネラーは手塚貴晴氏と由比氏、遠藤秀平氏、阿部仁史氏、司会にMoMAのパオラ・アントネリ氏と本当に華やかな顔ぶれで、新しい日本の動きが次から次と紹介され目を見はるものがありました。東京がおもしろいという意味が大部分かってきました。

 

左から、Tim Carther氏、槇文彦氏、海老原嘉子

左から、坂茂氏、海老原嘉子

左から、Dana Buntrock氏、坂茂氏、新谷真人氏

左から、Naomi Pollock氏、Mark Dythan氏、John C.Jay氏、青木淳氏

左から、手塚貴晴氏、遠藤秀平氏、阿部仁史氏


 

MILK Gallery でのLouis Vuitton展 2004/3/10

Milk Galleryでは、世界中のLouis Vuitton建築をテーマに展覧会が開催

シンポジウム終了後の会話で青木淳氏に教えられたチェルシーのクールな空間Milk GalleryでのLouis Vuitton展も見に行きました。このスペースは普段はフィリップ・コレクションなどに使ったりのマルチ・スペースで、このような展覧会をしたのは昨年オープンして以来初めてということでした。
5番街に新しくできたLouis Vuittonのオープニングにあわせて企画されたこの展覧会ですが、チェルシーの15丁目ハドソン川沿いにあるこのGalleryで、世界中のLouis Vuittonの模型と、その素材を使ってプロトタイプの展示パネルをつくり、広いスペースにすっきりと展示されていて、知る人ぞ知る、もったいないような大変興味深い展覧会最後の日でした。現代日本を勉強した素晴らしい3日間でした。

※表示あるものを除き、写真は全て海老原嘉子撮影