第7回: バルドリアのWebショップ/イッセイの展覧会 1 9 9 9/12/8


● バルドリア Baldoria

北イタリー、レイク・コモの伝統ある上質のシルク、そのハンドメイドのシルクアクセサリーデザイン工房として、4代続くことで知られている(Pianezza)ピアネツァ・ファミリー。曾御祖父さんのコレジオーネ・ピアネツァ(Collezione Pianezza)の時代から、現在のパオロ・ピアネツァが引き継いで、高級ネクタイ・スカーフを手がけています。ミレニアムの終わりのこの時期に、新しいビジネス手法として、世界への情報発信を目指しオン・ラインでWebストアを開設。11月9日、NYのそうそうたる人々を招待してのお披露目パーティーが、素晴らしい眺めの会場で行われました。このバルドリア・ドット・コムの特徴は、仲買人や中間業社が入ることによりコストが上昇や、末端客の好みが作り手には伝わらないなどのビジネス形態の煩わしさをなくしたこと。顧客が好きなものを選び好きなメセージを入れてオーダーすると2週間後に直接送られるシステムになっています。

 

ウエブサイトを見せるMr. Paolo Pianezza

会場から見るマンハッタンの夜景

ウェブ・デザインを担当したのが、E-Commerce のスペシャリストで有名なウオーターズデザイン・ドット・コム(Watersdesign.com)で、エレガントなベスト・サイトを作り上げたと評判です。このショップにはもうひとつ特徴があり、ショッピング客の為に「アンドリア」という名のiconが、パーソナル・サービス・アシスタントとしてお客を誘導してくれます。2000柄のパターンから好みのネクタイ又はスカーフを試着して、気に入ったものをショッピング・カートに入れる。最終的に決定した商品以外も顧客データベースに記憶してくれるので、次回の買物でアドバイスが得られるなど、とても便利にできています。また、70種類のメッセージから好みを選んで、ネクタイやスカーフの端に織り込み、パーソナル・メッセージを添えて特別の贈り物に仕立て上げることもできます。バルドリア・ドット・コム のカラフルで、エレガントなストアー。お利口さんなiconの助人とユニークな発想が、新しい2000年のNYストアーや5番街、マデソン・アヴェニューに新風を巻き起こすかもしれないと思いました。

Baldoria President and Designer

Baldoria.com screen

Demonstration at the party

 

● Issey Miyake – Making Things

三宅一生の過去30年にわたる作品が昇華された展覧会が、ニューヨークのエース・ギャラリーで開かれました。11月13日から2000年の2月29日迄行われています。この展覧会の知らせは、あまり前触れもなく、2週間位前になってNYソサエティのISSEYファンが知ったという形で、静かに進行されていたのですが、そのオープニング当日は、大きな7部屋の会場に世界中から著名アーティストやデザイナー、美術館関係者、ISSEY崇拝者等が集まり、まさに身動きできないほどの盛況でした。どの雑誌や新聞を見ても、“20世紀において最も影響を及ぼし、革新的で魅力に富んだデザイナー三宅一生”と絶賛していますが、ほんとうにすばらしい展覧会でした。ファッションだけにとどまらず、現代の情報と素材を駆使し、それを人体の空間と動きで表現したアートとして、ニューヨーカーに感銘を与えたようです。ソーホーのエース・ギャラリー近くまで行くと皆が「ISSEY」「一生」とささやいているのが聞こえてきました。11月と12月のNYソサエティでの会話は、必ずISSEY展の話題ではじまります。昨年パリのカルティエ現代美術財団で公開された展示を、NYでは美術館でなく、このエース・ギャラリーでするということも、大変な魅力です。

上3点:ルーム1の展示より

 

上2点;ルーム3ルーム4

展示のようす

ルーム1のテーマは「ジャンピング」。鑑賞者がギャラリーに入っていくと、展示空間の服全体についたセンサーに反応して、過去10年のISSEYの作品25点からなるインスタレーションが動きだします。ルーム2は「ザ・ラボラトリー」。製造と創造のプロセスに焦点あてたセクションで「ISSEY MIYAKE MAKING THINGS」展の核心を見せる場。コンピューターを駆使したインスタレーションと展示が新鮮です。ルーム3 は「プリーツプリーズ・ゲストアーティスト・シリーズ」。他の芸術と交流しながら衣服デザインへの新たなアプローチの探求を展示。ルーム4は1枚の布を略して命名された「A-POC(エイ・ポック)」。ニットチューブが連続するロールで生み出され、その中には編み込まれた境界線に沿って切り取るだけという斬新なコンセプトの服「A-POC」。ここでは「A-POC」に覆われたマネキンが何体も繋がって展示され、そのまま大きなニットチューブにもどる光景を見せ、圧巻でした。

この展覧会では、アソシエイトとして滝沢直己氏など若手にも発表の場を与え、将来の担い手を育てている一生の姿勢も、さすがといった感じです。20世紀、世界中に知れ渡った日本のブランドに、SONYとISSEY の名があがりますが、NYに住む日本人の一人として、大変誇りに思います。

サンクスギビング・パレードの後、NYの12月の街並みはいっせいに、クリスマス・デコレーションに入ります。日本ではあまり知られていないことのようですが、NYでは誰にでも「メリークリスマス」は使いません。通常「Happy Holiday」をつかいますが、これはいくつもの宗教があることからきています。特にユダヤ人の多いNYでは「ハッピー・ハヌカ」などの方が多いような気がします。それでも一年中で一番皆が買い物をするクスマス・プレゼントの習慣は世界共通で、ショップやデパートはこの時期の売上げで年間の景気を判断するようです。今年のNYは元気が良さそうです。

*写真は、クリスマスデコレーションのデパート(メイシーズ)