第50回:  SOFA New York 2003 (2003/7/9)


 

SOFA の会場風景

Sculpture Objects & Functional Art 展「SOFA New York 2003」

今回で第6回目となる「SOFA New York 2003」が5月28日から6月1日まで、Park Avenuの67th. StreetにあるARMORY(兵器庫)で開催されました。一般客も対象としており、毎年、高級工芸品、骨董品などのギャラリー、個人作家までが、現代工芸でブースを出して、コレクターなどがマークしているレベルの高いショーとして定着しつつあります。
オーガナイザーはExpressions of Culture-NY Inc.のMark Lyman。オープニングにはいつもAmerican Craft Museum(現Museum of Art & Design「MAD」)をサポートするためのギャラ・パーティーが催され、アメリカ中からコレクターが集まり盛大に行われます。
このSOFAショー、毎年5月がニューヨーク、10月がシカゴで開催され、今秋のシカゴは10月17から19日です。

SOFA の会場風景

SOFA の会場の中央に Museum of Art & Design の展示

SOFA の会場風景

全景よりCharon Kransenのジュエリー・ブースを見る

SOFA の会場の中央に Museum of Art & Design の展示

 

Dai Ichi Arts Gallery

今年は日本や日系アジア作家の作品も増えたSOFA

アメリカのクラフトは、個人の独創的、アート的なクラフトといった傾向が強く、マンネリ化していたように思いますが、ここにきて皆、そのことに気がついているようです。今年は、日本の作家や日系アジア作家の作品なども増えて、きめの細かい質の良い作品が目につきました。
また、ニューヨークでは少なかったクラフト・アートのギャラリーが、認知されてきている様子も頼もしいかぎりです。また、SOFAは、現代陶芸、ガラス、テキスタイル、家具などの専門ギャラリーのディーラーが、世界中から出展する数少ない専門的なショーであり、厳しい選択があることも特徴です。

www.sofaexpo.comで全体のパノラマ写真も見ることができます。

 

Museum of Art and Design 「MAD」


 

 

MADのバーナー(旗)

American Craft Museum がMuseum of Art & Designに

 

1956年に創立されたAmerican Craft Museumが、2002年10月1日よりネーミングを変えるということで、反対の意見が出たりと、馴染むまでしばらく時間がかかりましたが、Logoも決まり正式に“Museum of Art and Design”と認知されはじめました。目に見える変化としては、Museumの外に掛かっている大きな旗も新しい名前に変更されています。
「創立当時のクラフト=Craftmanshipとして継続してきましたが、現在、新しい素材やテクノロジーが当たり前になった時代の中では、クラフトの定義が変わりつつあります。機械やコンピュータによって制作された一品ものや大量生産されない試作品なども、デザイナーやアーティストの一品制作品として受け入れ、ミュージアムの対象を『クラフトを含むアートとデザイン』として時代に対応したい」というのが、MuseumのチーフキューレーターであるDavid McFadden氏の説明です。 陶芸、ガラス、テキスタイル、建築、ファッション、パフォーマンスも含む幅広い定義になりそうです。
この1、2年の展覧会でも、CAD/CAM コンピュータを駆使したメタルワークや、建築家Frank Gehryの家具作品や、コンピューターでジャガード織りした山口英夫のタペストリーの一品ものなどがコレクションに加えられており、こういった動きの布石だったようです。

MADの入り口

2階展示風景

2階展示風景

「USDesign 1975-2000」展の2階展示風景

 

 

地下への階段と展示風景

 

MADで開催中の「USDesign 1975-2000」展

MADでは、6月19日から11月2日まで「USDesign 1975-2000」展が開催されています。この展覧会はDenver Art Museumで企画された展覧会の巡回展です。10年以上前から、NYのデザイナーリストや情報をDenver Art MuseumのキューレーターのCraig Miller氏の依頼で提供・協力していましたが、今回の展覧会に私のGallery 91で1986年に行った「UPS展」の時の創作、プールチェアーの展示や、「Interia Objects1991」展のゴムのSpine Chairの作品が出品されていたり、1975年~2000年に活躍したデザイナーの作品が沢山並んでいて、懐かしい思いがしました。
Museumのネーミングがクラフトからデザインに変化したことによって、スポンサーになる企業が増えたことがMuseum側のうれしい驚きでもあるようです。今回の展覧会もターゲットがスポンサーになり、お土産と盛大なオープニング・パーティーで賑わいました。

Spine Chair 折りたためるゴムの椅子.デザイン:Henner Kuckuck Interior Objects 1991 Gallery 91展出品作品

1階会場展示

Bubble Chaise Longue 1979-82 , デザイン:Frank O. Gehry

 

EC II Telephone 1991, デザイン:Eric Chan Interior Objects 1991 Gallery 91展出品作品

2階と1階展示風景

現在のMuseum Shop

Pool Arm Chair, デザイン:Lisa Krohn, Steven Holt, Tucker Viemeister 1985 , Gallery 91 UPS 展出品作品

2階と1階展示風景

Issei Miyake Gift Bags 1997, デザイン:Karim Rashid

 

 

1964年 Edward Durell Stoneの話題作の建物で
「Huntington Hartford ‘s Gallery of Modern Art」
現在は使われていない建物

2006年にはMoMAとMADの2大Design MuseumがNYに

目下2006年に改築終了予定の MAD New Building。59丁目の2 Columbus Circleにある、史跡保存建築物の9階建のビルを買いとり、基金募集を含め、活発に動き初めています。
当初、この建物は1964年に建築家Edward Durell Stoneの話題作の建物で、「Huntington Hartford ‘s Gallery of Modern Art」としてオープンしました。当時NYに一時いた私は、この話題のMuseumの展覧会を見ているので、この9年近く放置されていたこの建物の中を先日見たときは感慨深いものがありました。
この建物を手にいれるまでも、トランプと競ったり、保存建築協会の沢山の規制など困難がありました。コンペの建築家もZaha Hadid、森俊子、Smith-Millerを押さえて選ばれたのはAllied Works ArchitectureのBrad Cloepfil(ブラッド・クラップフィル、46才)氏で、彼は現在、シアトルArt Museumも手掛けていて、伝統と現代をうまく取り入れ、これから何度か行われる公聴会での意見を採り入れながら、今年いっぱいかけて最終案をまとめ、来年3月から改築工事に入るようです。
最上階は360度見渡せる展望レストラン、地下には劇場もあり、いろいろな規制を乗り越えてすばらしいMuseumができるのを期待します。2006年にはMoMAも改築工事を終了してマンハッタンに戻ってきますし、NYに世界最大規模のDesign Museumが二つできることになります。

このような大きな文化事業に日本は今まで参加していませんが、これからの国際的な文化活動をするためにもぜひとも検討すべきと思っています。すでにアジアの国が動きはじめているようですが、せっかくの伝統工芸や質の高い現代工芸、テクノロジー・アートを世界に見せていこうというのであれば、タレントやスポーツ選手のスポンサーをする予算をまわして、アーティストやデザイナーが動けるような場のために使い、国際舞台に立つ仕組みを整備して欲しいと願います。

レンダリングAllied Works Architecture

ギャラリーレンダリングAllied Works Architecture

夜景レンダリングAllied Works Architecture

ロビーレンダリングAllied Works Architecture

                                                                                                                                                                            ※表示あるものを除き、写真は全て海老原嘉子撮影