第2回: ナショナル・デサイン美術館 第6回オークション/ギャラパーティー      1999 /7


ニューヨークのソーシャルな催しものが多いのは5、6月と11、12月頃ですが、この頃チャリティやファンドレイジング(資金調達)の為のパーティがあちこちで開かれています。パーティというと“ホテル”といった感覚の日本人には、想像を絶するようなところを会場にしてパーティは開かれます。たとえば、美術館全部を借り切ったり、大駐車場にテントを張り巡らし大ディナー会場を作ったり、あるいは倉庫を一大ダイニングルームに変えてしまったり。それぞれがそれなりに趣向をこらしていて、そのパーティの企画自体が“アート”といった感じです。

 

食空間(テーブル・セット)のオークション

6月14日、スミスソニアン・クーパーヒュイット・ナショナル・デサイン美術館のファンドレイジングの為のオークション/ギャラパーティーが、5番街のロックフェラーセンタービル内に移ったクリスティーズで行われました。 毎年NYの著名デザイナーやショップが商品の寄付する商品がサイレント・オークションにかけられます。第6回目となる今回のメインは恒例のテーブル・セット。毎年15~20人位のデザイナーや有名店が3メートル四方の食空間を提供します。これがオークションにかけられるのですが、絵画のオークションと違って生活用品なので、初めての方でも身近な感じで楽しめて、エキサイティングな経験なのです。

 

Gallery 91「和の間」

今年は日本人として初めて、私のGallery 91も御指名を頂き、テーブルをセットアップして寄付することになりました。Gallery 91では、今ニューヨークで求められているモダンな和風のスペースをつくり、「和の間」と名して出展しました。
*写真 1)Galley91 クリスティーズに展示した「和の間:モダン・ジャパニーズ・スタイル」/セット:橋本有紀夫、テーブルトップ:禎子スミス、AD:海老原嘉子

 

写真 2)展示全景、3)Molyneux#202 インテリア・デコレーターJuau Pablo Molyneux の「II Banchetto Silvestre」と題された豪華な展示、4)Walker#201 インテリア・デコレーターkenneth B. Walkerの「Rita Morenoの夫妻の1999ニューイヤーズ・イブ」題された作品、5)Hempel#200 Hotel等を手がけるインテリア・デコレーターAnouska Hempelの「All Plaid Out: New York Country Scene」題された作品.

 

クリステイーズの広い会場で、今年は17のテーブルトップの出展があり、入場券は一人$300で、出品者も品物の寄付とは別にミュージアム・サポートのために6枚以上のチケットを買い基金集めに貢献します。

夕方6時の会場には正装した大勢のゲストが集まり、洗練されたボーイさん達がオードブル、カクテルを絶え間なくふるまう中、パーティは始まります。著名デザイナーや中には女優さん達といったニューヨーク・ソサエティーが集まり、17点のテーブルトップを見て回り、オークションの下見をします。

17点の内、5テーブルが箸をおき、アジアの文化を取り入れようとしています。 ニューヨークも今では、素材とシンプルさを重視し、感謝できるまでに至りまし た。コンピュータ・インターネット時代で忙しくなったと共に、複雑なものやくどい食事ではなく、もっとシンプルな生活空間が望まれてきているのです。私どもの「和の間」は、そんな中で、大変な興味をひき評判を得ました。

写真 6)パーティー風景 クリスティーズ内のロビーのパーティ風景、7)会場に来た建築家リチャード・メイヤー、禎子スミス、海老原嘉子、8)リタモレノ会場に来ていた女優 Rita Morenoとデコレーターkenneth B. Walker

 

 

 

 

 

 

 

本当の意味でのチャリティオークション

8時になると2階にあるオークション会場に移ります。スクリーンに映し出されたテーブ ルトップを見ながら、大変な早口でオークショニアが金額をどんどんはりあげていくわけですが、いずれにしてもチャリテイということで、普段のオークションに比べたら大変和やかな雰囲気です。購入された方達もミュージアム関係者や友人が多く、やはり市民が美術館を強くサポートしているなあという感じが見受けられました。

購入代金のほとんどが、その年の税金免除にもなります。ミュージアムや美術関係のサポーターになることは、自分の地位のアピールにもなり、芸術文化社会への貢献ということを皆さん当然のこととして考えているから、こういった純粋なチャリティができるのでしょう。

なかなか日本では、スマートにボランティアやチャリティができないようです。アメリカには税金対策という事情もありますが、自分を文化的にアピールすることが下手な日本人の性質も原因の一つではないでしょうか。ニューヨーク・ソサエティの社交、生活、文化と芸術界が切っても切れない関係にあるということの一つのあらわれが今回のようなチャリティなのでしょう。

日本の美術館に本当の意味でのパーマネントコレクシュンが育たないというのはやはり本当のサポーターがいないのと、権力で政治的な器だけのミュージアムが多いからのような気がします。

海老原嘉子

写真 9)2階のオークション会場での風景、10)Garden Party、Cooper-Hewitt National Design Museumがクリスティーズ・オークションの一週間前に行ったメンバーのための、毎年開かれる庭開きガーデン・パーティ風景