Armory Arts Weekレポートの後編は、Armory Arts Week会期中に開催された様々なサテライト・アートフェアをご紹介します。また、7ページからはジャパン・ソサエティー(JS)ギャラリーで開催中のイベント「バイバイキティ!! 天国と地獄の狭間で ─ 日本現代アートの今」をご紹介します。

■ ボルタ(Volta)
確立したギャラリー中心のアーモリーショーに対比して、ボルタ(Volta)は新しい才能の発掘に主眼をおいたスピンオフアートフェアです。アーモリーショーのピアから、ミッドタウンのペンステーション近くのボルタ会場をつなぐシャトルバスが運行されるなど、アーモリーショーのスポンサーの恩恵を最大限に受けています。一番の目玉は、ソロプロジェクトという選抜した個人の作家を紹介するセクションの「ソロプロジェクト」。幾つものサテライトフェアがある中、よりクリエイティブなアートフェアを提案しようと適度に新しい素材とテクノロジーがあり、これが次世代のアートをうたっているように思いました。

 

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■ パルス(Pulse)
パルス(Pulse)の新ディレクターは、コンテンポラリーアートギャラリーの経験もあるため、出展ギャラリーのセールスやプロモート効果が高く、ギャラリーの立場から望まれるアートフェアとなっています。主な出展者はオープンしてから5年~10年のギャラリーが多いです。ソロプロジェクトのセクションでも、ディーラーやキュレーターがそれぞれ1人の作家をプロデュースする形をとっていて、今年からロスアンジェスでも開催予定とのことです。まだまだ新しい展開のありそうなアートフェア。

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■ インディペンダント(Independent)
インディペンダント(Independent)はNew York Armory Arts Weekの中で最も新しいサテライト・アートフェアです。チェルシーのど真ん中、ディアセンター(Dia Center for the Arts)の跡地のギャラリービルで、3つのフロアーと屋根(Roof)にテントを貼って開催されています。屋根までを展示スペースにしたビルの使い方もユニークですが、展示、展示デザインや空間プロデュースにクリエイティブなものが目立ちました。ブースの壁全体を一枚の作品にしたジオメトリックの壁画、ブースの壁に凹凸をつけたレリーフ彫刻、仕切られていない空間。ブースで仕切った形のアートフェアが通常せすが、ブースという媒体のプロデュースがアートになってきているのを予兆しているようです。出展者は、コマーシャルギャラリー、非営利ギャラリー、キュレーターに、海外のギャラリーで、幅広いジャンルの作品が出ています。新しいアートを予感させるものから、既出のアイディアのものまであります。アートフェアのモデルとしてハイブリッドフォーラムと謳っていますが、キュレーション、選抜の基準はまだ未知の部分が多いと思いました。
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■ ムービングイメージ(Moving Image)
ムービングイメージ(Moving Image)は、コンテンポラリービデオアートに特化したアートフェアである。ビデオアートの展示という命題に若いディーラーが挑戦して、チェルシーの倉庫ビル(その昔のトンネル)を貸し切り、35台のスクリーンが左右に配置、左側を見ながら進み、右側で戻りながら見れるようにセットされてる他、床、壁、空間、を使った大きなスクリーンでも、映像が投影されており、気になる映像の前には動かないで見入る人で 人だかりがしている、新しい試みのアートフェアとなっていました。
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■ レッドドット(Red Dot)
日の丸を彷彿させるロゴですが、実はWest Harlem art Fund , NY市のパブリック・アートをプロモーションしている団体で、いくつものギャラリーが出展、半分のスペースは韓国の美術展が出展、共同で、ソーホーのビルのスペースを上手会場にして行なわれました。
韓国の美術展(Korean Art Show)は、 Red Dotの、白地に赤のロゴとは対照的に、会場内は黒の基調にライムグリーンがアクセントカラーとなっておしゃれな雰囲気で、ポスト村上/奈良的なものから、現代抽象まで、アジア人特有の器用さと丁寧さ、繊細さが生かされた作品が多く。白いブースの壁に作品を掛けるという、全体的にお行儀のいい展示となっていました。
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■ スコープ(Scope)
スコープ(Scope)は、サテライトアートフェアの先駆けとして、マイアミ、バゼルを始めとして世界7カ所で開催されています。インスタレーション、ビデオアート、パフォーマンス、写真、絵画、版画、彫刻と幅広いジャンルで、ニューヨーク進出を画策した海外からの出展者が多い展示です。特に、アジア系、中でも韓国系が増えていて、全体的に統一感のあるアートフェアになっています。
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■ バイバイキティ!! 天国と地獄の狭間で ─ 日本現代アートの今
「バイバイキティ!!」は、ジャパン・ソサエティー(JS)ギャラリーで3月18日より6月12日まで開催中です。展覧会タイトルやバイバイキティ!の案内状に多少抵抗を感じながらでかけました。最近の日本のポップカルチャー、マンガ、アニメにさよならし、NYでは、まだ馴染みのないアーティスト27才から45才までの若手作家16名の絵画、彫刻、インスタレーション、ビデオ、写真等の作品を一堂に会した展覧会です。日本の現状に対する作家達の、鋭く多様な視点が提示されました。Armory Arts Weekでは見ることが出来なかった、「これからの日本の現代アート、ここにあり」の感がしたので、Armory Arts Weekの最後に付け加える形で紹介したいと思います。
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 キューレーターは日本の森美術館(六本木)の初代館長を務めた、デヴィッド・エリオット(David Elliott)氏です。

展覧会場を入るとすぐ左手に、会田誠の「Ash Color Mountains」の繊細画の様な大きな山の絵のキャンバス 【 写真 121、122 】 。近づいてみるとなんと、サラリーマンの死体とOA機器が積み重なる巨大な山でした。右手の壁には、やなぎみわがモデルになる女性達と対話を重ねて作り上げた、「理想の老婆」を表現する写真作品 【 写真 123 】 、次の部屋には池田学の精密描写の作品。テクニックのすばらしさで見せる作品で、瓦礫の山か津波の構図にも重なる感じがします。 【 写真 124~126 】

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 山口晃「成田国際空港」は、江戸時代の「都名所図会」を連想させる画法を用いて、現代の環境破壊の様子、化学スモッグとわかる金色のかすんだ雲を表現、その間から日本の現代風俗画が垣間見えます 【 写真 127 】 。今回、私が楽しみにしていた名和晃平の「Pixcell Deer」は、剥製の鹿を大小の球形ビーズで覆った作品で、思っていたより大きく、すばらしい輝きと存在感がありました 【 写真 129、130 】 。その横には、塩保朋子の作品が。大きなトレーシングペーパーに切り絵の様な流線連続模様を刻んだ大規模なインスタレーションで、光りを上手くあて、その影絵のスペースを活かして写しだしていました 【 写真 131~133 】 。Museumでの紙の作品展に何度か関わっているのですが、この作品を早く見つけだしていればと感じました。 【写真121】
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 町田久美が見せる日本画の新しい表現、大胆でスムースな線で見せる不思議な幼児が、不安定な現代と関係の深い思慮を混めた作品として訴えます 【 写真 134、135 】 。最年少の荒神明香は、色彩豊かな日本の造花の花弁を貼りあわせて、広い空間に浮かばせ、反射して見せる不思議なインスタレーション 【 写真 137、138 】 。他にも樫木知子、川内倫子、小谷元彦、さわひらき、塩田千春、米田知子等の作品など。最後に、動物供養墓に捧げられた1体のハローキティーを撮影した奈良美智のカラー写真が展示されていました。

この企画は、東北地方太平洋沖地震が起きる前に考えられた企画ですが、まるでこの震災を予言するような内容の作品が多く、惹き付けずにはいられない展覧会でした。若い人達が震災支援に動き始めていますが、この若い作家達の、テクニック、発想、エネルギーで、これからの日本も大丈夫、頑張れる元気をもらった気がしました。

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