第11回:(1)クーパーウイット・ナショナルデザイン・ミュージアム・スミソニアン『デザイン・カルチャー・ナウ展』 2000/4/12


クーパーウイット・ナショナルデザイン・ミュージアム・スミソニアンで、3年に一度の総合デザイン展「デザイン・カルチャー・ナウ展」第1回が、3月7日から8月6日まで開催されています。

 

Cooper-Hewitt National Design Museum正面入口

2階ロビーと展示風景

「ここ3年のいろいろな開発は、過去3世紀分に値する変化」と言われる現在。今までのデザイン展のように「歴史展」とか「グッドデザイン」といった簡単なカテゴリーに分けで展示をすることが適当ではなくなっているようです。この展覧会に限らない傾向としても、アメリカン・デザインのいろいろな分野──グラフィック、ファッション、インダストリアル・プロダクト、建築、インテリア、ファニチャー、おもちゃ、劇場、映画、コンピューター・アニメーションなど──の要素が絡みあい、混ぜ合わされた展示が主流になってきています。

今回が初めてとなる、アメリカン・デザインの大イベント「デザイン・カルチャー・ナウ展」は、過去3年間に紹介された83のデザイナーと会社の作品・製品を展示し、これからの生きたデザインの未来を考えようというもので、クーパーウイット・ナショナル・デザイン・ミュージアムの2人のキューレーターDonald Albrecht、Ellen Luptonと、ゲスト・キューレーターとしてシリコン・バレー・サンフランシスコのFrog DesignのSteven Skov Holtが起用され、3人で企画しまとめられた展覧会です。

*Cooper-Hewitt Musuem “Design Culture Now”

「カラー」「光」「形」「イメージ」「動き」「素材」「テクノロジー」を重視。「今までにない、キャラクター性ある8つのテーマでまとめた」そうですが、日本語としては訳しにくい、FLUID(流れ、形にとらわれない)、PHYSICAL(身体の)、MINIMAL(ミニマル)、RECLAIMED(言いなおし、利用再生)、LOCAL(近所の)、BRANDED(銘柄)、NARRATIVE(説明、物語体)、UNBELIEVABLE(信じ難い)という8つの単語によるテーマでした。

 

FLUID(流れ、形にとらわれない):
コンピューターを使って作られた3次元的なカーブやオーガニックな形、流れるイメージをとりあげていています。
アップル・コンピューターのiMacやSony HMD-A100、FDトリニトロン・コンピューターモニター、フランク・ゲーリーによる実現しなかったタイムズ・スクエアーのビルの模型、カリム・ラシッドによるカナダのUmbraのボールやOHの椅子、ロスアンジェルスのGreg Lynnデザインの展示パビリヨン・モデルHYDROGEN HOUSE他が出品されています。

カリフォルニア州・ロスアンジェルスのGreg Lynnデザインの展示パビリヨン・モデルHYDROGEN HOUSE

Karim Rashidデザインの椅子、ボール他


 

PHYSICAL(身体の):
映像のフィルムで、話題のタイトル・デザインをつくったImaginary Forces/Kyle Cooperとそのチーム、女性デザイナーとして有名になってきているAyse BirselのZoeウォッシュレット・トイレ・シートカバーやMiro Poleオフィス・システム、建築家のBillie TsienとTod Williamsnのアメリカン・フォークアート・ミュージアムの模型と素材見本は圧巻です。

  • (A) – MIT Residence 2001スポンジを元にコンセプトを組んで、自然の穴空間を作り出している建築、ドローイングから建築模型まで Design;Steven Hollとそのチーム
  • (B) -Zoeウォッシュレット・トイレ・シートカバー Design;Ayse Birsel
  • (C) -Museumのビルの間に見える古い建物等のサイトを消して、コンピューターで描き出した美しい布地のインストレーションが素晴しい空間処理 Design;Raveevarn Choksombatchai,Ralph Nelson
  • (D) -ロタンダに飾られたバイスクルGo-Go Bicycle Design;Robert Eggerとそのチーム

A

B

C

D


 

MINIMAL(ミニマル):
Michael Gabelliniの建築模型とジョン・前田の2000年カレンダー。素晴しいと思いましたが、ジェフリー・ビーンズの服や、Kate Spadeのバッグまで入れてるわりに、ミニマムのデザインにもっと素晴らしいものがあるように思います。


 

RECLAIMED(言いなおし、利用再生):
2階の会場にあるJulie Bargmannの“Testing the Waters reclamation landscape project”や、Boris Bally Constantin Boymによる車のホイルを利用した表示サインとlaurene Leonの木のBreuerの椅子に梱包用プラスティックのひもを巻つけた家具などの作品が展示されています。

車のホイルを利用した表示サイン
Design;Boris Bally

TV-Tank輸送梱包ファイバーグラスのコンテナをいかして、そのままTV/Videoのスクリーニング・ルームのインストレーションにしたてたもの Design;Giuseppe


 

LOCAL(近所の):
土地の素材を生かして建てた建築模型他。


 

BRANDED(銘柄):
Air Jordanのスニーカーや、Martha Stewartの環境にやさしいガーデンプロダクトのカラフルな種袋がシンボル化されたラベルでパワフルに展示されています。が、今日の沢山の銘柄の中から選び出されたいくつかのデザインが展示されていて、「どうしてラルフ・ローレンでないわけ?」の質問にも「キューレーター達の独断で決めました」という答え。いかにもアメリカらしい様子です。

ブランドがテーマの展示ルーム


 

NARRATIVE(説明、物語体):
最近改築の終わった国立歴史博物館がそのまま建築模型として展示されていたり、話題のレストランやコマーシャルスペースのデザイナーDavid Rockwellの模型やスケッチも出品されていて、興味深い。

ライオン・キング舞台用マスク
Design: Julie Taymor

国立歴史博物館の建築模型
Design: Ralph Appelbaum


 

UNBELIEVABLE(信じ難い):
何といっても、ハリウッド映画に見られるアメリカの最先端技術を紹介するこのセクションには、おもしろい見応えのある作品が沢山展示されています。展覧会全体に統一性はなく‘2000年にこれからのデザインを皆に問う’形式が、この展覧会からもうかがえました。

バウンド・ポケットコンピューター Design;ゲーリー夏目繁

 

映画Virus、Hauntingの為のスペシャルエフェクト・クリエーチャー Design;Tippett Studdio/Phil Tippett,Craig Haaayesとそのチーム

ピカソ・インターネット・ラジオ Design;  Thomson Consumer Electronics/PaulPierce,Dennis Erberとそのチーム

 

 

第11回:(2)インターネットで行われた米・英デザイン・スクールの 共同プロジェクト授業  『パーソンズ・スクール・オブ・デザイン』 2000/4/12


昨年、パーソンズ・スクール・オブ・デザイン(以下、PSoD)に、イギリスのバッキンガムシャイヤ・チルターズ大学(以下、BC)から「2000年に学生がNYを訪問するので、その時に共同プロザェクトをしたい」という申し出があったそうです。
その後、PSoDのプロダクト学科のロバート・スコルニック、リン・ゴードリー、魚住早智子の先生3人と、BCの先生ネイル・オースティン氏とのやりとりから、「それならばNYに来るまでに、プロジェクトを組んて、訪問時に発表会にしよう」ということになり、インターネットとFaxを駆使して同じテーマで同時進行の授業を開始することになりました。

 

発表後PSoDの前で歓談する米・英学生達

オーディトリウムで発表する米・英学生チーム

 

テーマは「仕事場で使うもの」。2つのパーツからできるもので、組み合わせると一つの機能を持つもの、という設定。これをアイディア・ドローイング、模型などで見せるというコラボレーションです。

PSoDから2名とBCから1名の3人が一組で、合計18チーム。最後の仕上げはPSoDで行われました。作品発表は、BCのファニチャー学科2年生18人がNYを訪れた3月10日に、5番街13丁目のPSoDのオーディトリウムで行われました。

PSoDのプロダクト学科2年生36人と先生方と学部長のトニー・ウイットフィールド氏が見守る中、「オフィスの中で簡単にプラントをそだてるシステム」「ランチボックス」「出勤パンチングカードのタイマークロック」「ジャーのオープナー」「飛行機内用のトレイの新工夫」などなど、何度もE-MailやFaxでコミニケーションしていながら、この日初めて会ったもの同士が前に出て、発表しました。

見た目には、まるで同じクラスの生徒同士で、見分けがつかない様に見えました。自己紹介となまりで、少し分かる程度でした。

 

これからの教育方法の一端を見ましたが、知らない者同士のコミニケーション、海外のインターネットシステムの違いなど、先生方は教育方法のお手本があるわけでなく、手探りで行われました。インターネット、FAXなどのテクニカル・プロブレムが続出したのが大変だったようです。

 

前段のデザイン・カルチャー・ナウ展でもチームワークが多く、これからは世界中とリンクしてチームワークで仕事をすることになるわけで、一足早い訓練を受けている学生たちの先が楽しみなレポートを見学しました。