第40回: インターナショナル・ギフト・フェアー、1年たちNYの景気は?(2002/9/11)


会場入り口の受付、万国旗が並ぶ

外光豊かなジャコブ・ジャビッツ・コンベンションセンターのロビー

143回をむかえたインターナショナル・ギフト・フェアー

慣例のニューヨーク・インターナショナル・ギフト・フェアーの143回目が、8月10日から15日までジャコブ・ジャビッツ・コンベンションセンターで行われました。

主催者側の数字では来場者数72,687人、アテンドしたバイヤー数42,427人ということで、かなりの動員数ですが、出展社数2,573社( Accent On Design だけでは185社)の中の1社として出展した我々の感想は「まだNYは9月11日の影響から抜け出せていない」ということでした。顧客が来ないので来場者は見るからに減っていて、ショーは大きく打撃を受けているように感じました。
各部門に目を向けると、全体に癒し系の商品が目立っていました。自然の素材を用いた商品、クッション(ピロー)、キャンドル関係、フレームなどは評判も良かったようです。色ではオレンジ色が目を引いて、明るい季節感を演出し際立っていました。

部門毎のピクトグラム、右が Accent On Design

暮れかかると暖色系の明かりがさらに目立つ

並ぶスキッピー・スツール

Accent On Design 今昔


今回の Accent On Design 部門では、14社が入れ代わり、若いデザイナーや会社が新たに入りました。

1984年に始まった Accent On Design に最初から出展している人達も大分減ってきました。そんな中の一人、イタリーのアレッシの商品や有名デザイナーブランドの新商品を紹介し続けていた Markuse Corp.、今は Projects と言っておりますが、その社長の Jack Markuse 氏と今昔の話をしました。

アメリカにマーケットのない商品を色々とプロモートして全米に広げ、ビジネスになるようになると、皆、直接参入し、自分で商売を始めてしまったり…。と、この世界は厳しいという話とか、常に忙しくて、若い世代と交代するべきなのかなぁと思いつつも、つい好きなことなので、続けてしまっている…。など、まったく同感してしまいました。

他にはUmbra、Sassafras Enterprises,Inc.、CITYLIMIT、Creative Candles、Eigen Arts、TAG-Trade Associates Group、Textillery、Walker、Zelco Industries, Inc. などが第1回から残っている出展者です。

Projects(Markuse Corp.)社長の Jack Markuse

Umbra社

Sassafras Enterprises,Inc.

 

Gallery 91

Gallery 91

今年のGallery 91


Gallery 91 は5回目から出展していますが、今回は明るい蛍光色に近いグリーンと白に統一して、同じ商品を数多く並べて見せる展示と、半円に設置したスクリーンにプロジェクタ-・クロックを投影して、演出効果をねらいました。

 

Accent On Design Award


今回の Accent On Design Award は、新しく出展した若手のデザイナー達の受賞が多かったようです。

 

「Candela」

♦ベストプロダクト賞 – Vessel Inc . 初出展

Duane Smith と Stefane Barbeau によってデザインされたロウソクのようなランプ「Candela」。このポリ・カーボネイト・プラスティックで作られた照明は、チャージ用のプレートの上に載せておくとチャージされ、はずすとランプがつき、どこにでも置けるもの。
新しいテクノロジーを駆使したことが評価されたました。北米生まれで、ドイツのバウハウスで学んだ Smith とオランダの Philips 社からのテクノロジーを生かした Barbeau が、現在はマサチューセッツ州で Vessel Inc. を設立、新しいデザインを発表しています。

 

♦ベストコレクション賞 – Modus Design.  初出展

Modus Design(自分のブースでこの会社名でだすのは始めて)。パーソンズ・スクールのセラミッククラスで沢山の教え子に影響を与えてきたアーティストの Marek Cecula の量産品の為に作った会社

Modus Design

 

Gusブース

♦ベストコレクション賞
カナダ、トロント(Toronto)、オンタリオ(Ontario)のGusブース

ピエール・ハンプシャー(Pierre Hampshire)、デイビッド・ ポドシアドロ(David Podsiadlo)とキャスリン・ウォルター(Kathryn Walter)等、数人のグループで、家具、照明とホーム・アクセサリーラインを製作しているスタジオ。

 

♦ベストコレクション賞 – 初出展
giig & iggi design Co.

Helene Ige と Jennifer Gibbs によってデザインされた家具とホーム・アクセサリーグッズ。パーソンズ・スクール在籍時に出展した経験から卒業後、フィラデルフィア(Philadelphia)にスタジオを設立、ビジネスにしていったフレッシュなコレクションのブース。

giig & iggi design Co.

 

Pablo Pardo

♦継続して良いデザインを見せている賞
Pablo

Lamp等のオリジナル・デザインが評価されました。

 

♦慣例により、1月の受賞者と8月の受賞者の表彰式が、日曜のフェア-終了後、ジャコブ・ジャビッツ・コンベンションセンターの地下ロビーで開かれ、一同が集まり新旧交友を深めました。

出展した側の話では、新しく出展した人達には、この巨大なトレードショーは興奮と刺激のショーとして、とらえられていましたが、古くからの人達には「やはりNYの景気は宣伝しているより、実際には厳しい」という認識になり、実際それが現実で「いつまで」というのが見えず、皆が抱えるフラストレーションのように思えました。

表彰式にて

 

9月11日から一年をむかえるNY近況報告


 

グランドゼロ 2001年10月 ※衛星写真

グランドゼロ 2002年3月5日の状態

あれから一年

NYは9月に入って、カウントダウンのようにTVや新聞、広報で9月11日のことが報道されている毎日です。
その報道の為か、いつもより多い上空のヘリコプターの音やジェット機の音、そしてカラッと晴れた青空は、嫌でも昨年のことを思い起こし、あまり落ち着いた気分になれない毎日です。

友人達も憂鬱症になる者、ついTVにくぎづけで、何もできないとこぼす者、9月11日を休みにするか、仕事をするかなど、混乱しています。
NYのミュージカルは9月11日当日は、犠牲者に哀悼を示す為、大部分が休演し、代わりに翌日2公演する予定とか。警察博物館での特別展は「Stronger Than Ever」テロでなくなった警察官を慎み、大惨事時のNY市警の活躍ぶりを写真やビデオ、遺族から貸し出された遺品、グランドゼロで見つかった発掘品などを通して紹介します。

ロワ-・マンハッタンの復興を願い、East RiverからHudson Riverまで、1500人のアーティストの500のイベントが5ヶ月以上にわたって開催される「Downtown New York River to River Festival 2002」(*river to river festival)  他、あちこちで、特別展やイベントがおこなわれています。

グランドゼロ3月5日の状態

グランドゼロ4月 遺体が発見されて運びだされるのを両サイドで見送り、黙とうする働く人達

4月ライトアップの設置場所

ライトアップ「Tribute in Light」は3月11日の11時PMから32日間照らされていました

 

 

Here is New Yorkオーガニゼーションの展示ギャラリー内

Here is New Yorkオーガニゼーションの展示ギャラリー前のウインドーを見る人

Here is New York

昨年9月26日に始めてから、この1年を通して写真を集め展示をおこなっている「Here is New Yoek」 www.hereisnewyork.org。
この非営利団体が主催する展示の写真はものすごい量で、9月11日を前にして、これまでの写真をまとめた写真集(864ページ)を、寄付を兼ねて買えるようにしています。中身も実際も重厚でまさに記念の本です。

プロ・アマだれでも9月11日に関する写真を提供して、プロの審査員の目で選ばれ常時展示されていた写真が元になっています。
このオーガニゼーションは会場になっている2つのGalleryがあるビルのオーナーで筆執家のMichael Shulanと、The New Yorkerの写真家でもあるGilles Peress、キューレ-タ-・編集者でもあるAlice Rose George、そして写真家でもありSchool of Visual Arts(SVA)の学部長でもあるCharles Traubと、SVAのスタッフ、学生によって運営されています。

今年の2月28日にMoMAでも行われて反響をよびましたが、その後4月にはタイムズスクエアーにも「Here is New York」の展示場ができて、大がかりになってきています。

この展覧会は同時に世界中で開催される予定で、日本でも9月10日-17日まで日本橋三越で開催され、他にはシカゴ、ヒューストン、タンパ(フロリダ州)、オハイオ、ルイスビル(ケンタッキー州)、サンディエゴ、ワシントンDC、ベルリン、ドレスデン、デュセルドルフ、スタットガルト(ドイツ)、アイルランド、チューリッヒが決まっており、今後の予定としてロンドンとパリが予定されているそうです。

Here is New Yorkオーガニゼーションの広報のStephanie Schenppeさん

Here is New York内Videoで見せている体験者の話しをイヤホーンで聞く来場者

写真集、3800gほどある ※「Here is New York」提供

Here is New Yorkオーガニゼーションの展示ギャラリー内

 

 

 

グランドゼロの近くの教会のまわりには幾重にも置かれる花束や探し続ける人の写真、励ましのカードなどこの1年途絶える事なく、積み重ねられていった

グランドゼロ9月6日の工事現場状況、ファイナンシャル・センター側、ハドソンリバーを見る

グランドゼロの今

なんどか訪れたWTC(ワールド・トレード・センター)の前にあるリバティー・プラザのビルの47階から工事現場を見ましたが、急ピッチで工事が行われている様子がうかがわれました。
ただ9月11日の式典会場らしきセットアップの様子は見えませんでしたが、世界中からのグランドゼロを訪れる慰問者の為に、立ち入り禁止地区を囲む壁の一部を「ビューイングウォール」とし、公開される予定のファイナンシャル・センタービルまでの通路は通ることができました。1年ぶりでウインター・ガーデンサイドの方に行ってみましたが、復旧作業がめざましく、NY市のパワーは感じましたが、1人1人の心は、時間と共に、どこかむなしさも感じているのではないかと思います。

9月11日の当日は、NY市5地区の各々のポイントから警察、消防などの代表者がグランドゼロへ向って行進し、8時頃グランドゼロに集合、8時46分飛行機がツインタワーに飛び込んだ時間、全市民による黙祷。全市の教会の鐘が140秒間ならされるそうです。
その後、パタキ州知事によるゲティースバーグ宣言の朗読、ジュリヤーニ前市長による犠牲者の名前の朗読開始。2番目のタワーが崩壊をはじめた時間再び全市の教会の鐘が鳴らされ、記念式典が終了する予定です。

これからの世界の平和と繁栄を祈るばかりです。

リバティープラザのビル47階から見た、グランドゼロ9月6日の左手、自由の女神よりの景色

グランドゼロ9月6日の工事現場状況から少し右手、チャーチ・ストリートとアップタウン側を見る

ファイナンシャル・センタービルからグランドゼロ9月6日の工事現場状況を見る

その右手にある一際高く見えるOneリバティープラザのビル、この47階の岐阜県大垣銀行、岐阜県NY事務所の好意で写真を撮らせて頂いた

ファイナンシャル・センタービルから見る建物が残って、改装されオープンしたセンチュリー21他のビル群

頭上では取材のヘリコプターの音がひっきりなしで、あちこちでTVクルーなどの取材もされている

急ピッチで進めている作業に大勢の工事現場の人達を見受けたが、お昼やすみにくつろぐ人達

4月までガラスが壊れてみるかげもなかったウインターガーデンも急ピッチで工事が進められ、9月末にはオープンの予定


※表示あるものを除き、写真は全て海老原嘉子撮影