第14回: ガラス展で凉しさ漂うNY 2000/7/12


2000年6月は世界ガラス会議が行われたので、会議の盛り上げと協力ということもあり、NYではあちこちのギャラリーがガラス展を行いました。

●2000個のオブジェ展 PART 3 「ガラス」展

SohoのGallery91でも2000年ニューミレニアムに向けて『2000個のオブジェ展 PART 3 「ガラス」展』が6月1日~7月15日まで行われています。夏らしい涼し気な装いで、今回は日本から多数のガラス作家の出展もあり、40人以上200点余りの作品が集まりました。

また、NY注目のプロダクト・デザイナー、カリム・ラシッドの新作ガラス作品、若手イタリアのチアラ・グリゴッティ等ほかの作品が展示されています。日本からのデザイナーでは日本クラフト賞の受賞者、三宅道子の“光の四角柱”というペーパーウェイトを展示。素材に網入板ガラスを使い、何層にも重ね、網目の微妙なずらし方で、美しい光の拡散、屈折、反射を実現しています。ビルディングのようにも見えるペーパー・ウェイト。大小取り混ぜた作品群は、都市の風景を思い起こさせます。

光の四角柱

Gallery91「ガラス展」全景

小石のようなガラス一輪挿し

 

辻和美は、日本の伝統的なスタイルの食器をガラスで作りあげています。そして渡瀬和恵、安次富隆の手による小石のようにも見える不思議な色あいのガラス一輪指し。メタルや様々な素材をガラスに混ぜ、微妙な模様を作り出しています。ブローグラスの伝統的な技術を使って、ひとつひとつ作品の色や形の違う手つくりのよさをだしています。

 

2000個のオブジェ展 PART 3 「ガラス」展


PABLO POSADA PERNIKOFF

秋野ヨーコ

三宅道子

辻和美

松岡洋二

大高冷香

松崎隆

 

CHIARA GREGOTI

安次富隆

近岡令

TERRENCE MAIN

 

Heller Gallery

オーナーのダグラス

●Sohoからチェルシーに移った、
ガラス専門の老舗ギャラリーHeller Gallery
ガラスといえばHeller Galleryが専門の老舗です。Heller Galleryは、Sohoからチェルシーにいち早く移って話題になったのですが、広くなった会場では、1970年の大阪万博でも展示された色を使わないガラスの大きな作品で展覧会も行われました。

現在は、大御所のLibansky夫妻の現在までの回顧展をし、このオープニングにガラス会議の参加者を招待して行われました。Heller Galleryオーナー・ダグラスに、チェルシーに移った事情なども聞いてみましたが、「Sohoの土地の値上がりと、ファッションや家具、インテリアの店がどんどん入り込んで、本来のギャラリーのお客でない人達が増えて、対応が困難になっていた時で。ちょうど契約が切れるので、少し早い時期だったが、思い切ってチェルシー移りました」とのこと。

周囲には、まだミートマーケットなど倉庫街が並び、ちょうどSohoの始まりの時のような所にHeller Galleryがあり、一歩入るとミニマムで格調のある静かな空間です。
外との対照がクライアントに驚きと楽しさを与え、オーナー好みのガラスの作品を鑑賞してもらえるので成功だった、とのこと。ただ、近々GapShopが店を出すそうで「あまり早く開発してほしくない」とも話しています。

 

3人展

ウィンドーギャラリー

●日本のガラス作品『3人展』
Sohoでもう一つ、アートとしての日本のガラス作品『3人展』がISEギャラリーで行われていますが、チェルシーでも充分取り上げられそうな、日本の現代作家の力強い作品が展示されています。

●24時間営業のウィンドーギャラリー
ガラスではないのですが、いつも車で通ると気になっている24時間オープンのウインドーギャラリーが、クリスタルのような気になる作品を並べていたので、紹介します。このウインドーギャラリーは、1984年からニューヨーク大学(NYU)のギャラリーの一つとして開いていて、いろいろ実験的な展覧会をしています。

今回はNorman J. Mercerの「Refractions and Refractions」という題で、倉俣史朗を思わせるカラフルなアクリルの彫刻が、5つのウインドーに分けて展示され、通る人の目を引きとめています。

 

 

暑い夏、これらの涼し気な作品群を鑑賞して、クールになってください。
※Gallery91の次のスケジュール、パート4「ユニバーサル・デザイン」展は、現在作品受け付け中です。7月20日から9月2日まで展示されます。 興味のある方はご連絡下さい。g91@gallery91.com 海老原嘉子