第135回 NY Art Week : マンハッタン街中でにぎわったアートウイーク

  今年で12回目を迎えるThe Armory Showが3月2日から7日まで、Piers 92と94を会場に開催されました。5日間で6万人という集客数は過去最大となり、売上総金額も過去最高となりました。また、この期間アカデミー賞が開催されていたこともあり、俳優、モデル、デザイナーなどが目につき、華やかな街の様子でした。 The Armory Showの他にもミッドタウン34丁目では「VOLTA」、リンカーンセンターの敷地内のテントで毎年行われる「Scoop」、ダウンタウンでは「PULSE,」、そして、今年は28丁目のウェストサイドのイベント会場を使って、初めての「Korean Art」が開かれました。こちらは自前のシャトル・バスで他会場とをつなげ、ビッグ・イベントの旗揚げとなりました。 【 1 】 Armory ア-トショー入り口 【 2 】Armory ワークショップ講演の一つ 【 3 】Armory 会場風景(写真3~5) 【 4 】 【 5 】 【 6 】Jim Dine Alan Cristea Gallery London 【 7 】julianOpie Allan Cristea Gallery 【 8 】CarlosCruzDiez 【 9 】Chagall Gallery Thomos(Munich) 【 10 】AndyWarhol Gallery Thomas     今年のThe Armory Showは天候にも恵まれ、どのブースも満員の大盛況ぶりでした。著名なギャラリーも数多く名を連ね、オークションハウスにも出る程の名画が展示され、見応えがありました。 アムステルダムから出展のUpstream Galleryは、オープン日開始35分で個展の作家作品が完売したそうです。また、Lower East Sideから初めて出展したギャラリーでも、2時間で作品を完売したとのこと。全体の90%のギャラリーが最終日までに作品を売り切り、不況を感じさせないNYのアートビジネス事情を実感しました。 【 11 】SamFrancis. Gallery Thomas 【

第134回 MoMAのパーマネント・コレクション「Action Design over Time」展

  新しく入れ替わったMoMAのパーマネント・コレクションの「Action Design Over Time」と題した展示が、2月5日からMoMAの3階で始まりました。それに合わせて「A+D Circleメンバー」募集を兼ねたキューレターツアーも行われました。 A+D Circleとは普通のメンバーシップとは別に、MoMAの建築・デザイン愛好家のためのメンバーシップで、さまざまなシンポジウムやキューレターツアー、建築事務所などへのツアー、話題になっている建物のガイド付きツアーなどが常時行われるというものです。   今回のパーマネントコレクションに追加された作品は、MoMAらしく今の時代を反映し、過去にあり得なかったような、映像や素材、新しいテクノロジーが増えています。 オーガナイズをしたのは、シニア・キューレーターのPaola AntonelliをはじめとするPatricia Juncosa-VecchieriniとKate CarmodyやMoMA 建築・デザイン部のアシスタント・キューレーターで、コンテンポラリー・コレクションの中から85点を選び、展示しています。   入って右手がモダンのセクションで最近のコレクションを。中央が家具、奥の壁には映像や素材などをメインに展示しています。展示作品は、現代のアートやデザインの傾向にもある、自然の進化や環境の変化を受け入れており、表現方法も自由で、現代をより深く理解してもらおうとしています。   展示対象のオブジェのいくつかは、その瞬間の静の部分で見せていますが、制作過程や人々との関係のプロセスなど時代を反映し、そこで止まっている美の物体として捉えています。例えば、インゴマウラーの、壊れた食器で作られたシャンデリア(1994) 【 写真 4、5 】 や、Libertiny Studioの「Honeycomb Vase」などがあります。「Honeycomb Vase」は、4万匹のミツバチが1週間かかってつくった花瓶です。 【 写真 20 】 【 1 】 入って右手のモダンセクション(写真1~3) 【 2 】 【 3 】 【 4 】左手の作品はStack D:A&D Shay Alkalay, Israeli、上からはインゴ・マーラのシャンデリア 【 5 】吉岡徳仁:Honet-Pop Armchair(写真5、6) 【 6 】 【 7 】Corallo Armchair Steel:Campanaブラザー、ブラジル 【 8 】シンデレラ・テーブルD:Jeroen Verhoeven, Dutch 【 9 】 Cabbegeチェア:nendo 【 10 】CoReFab#116_25 D

第133回 アクセント・オン・デザインにアクセント・オン・ジャパン出現

1月31日から2月4日までの間、年2回開催される北米最大規模のNYインターナショナル・ギフトフェアがジャビッツ・コンベンション・センターで開催されました。世界85カ国2,700社が出展するうち、審査によって高いデザイン性を評価されたブースだけが出展可能となる「アクセント・オン・デザイン」部門の中に、今回初めて「アクセント・オン・ジャパン」という名称で、日本の商品群をまとめたブロックができました。従来出展していたブースの撤退などもあり、一箇所にまとまることで、よりパワフルに日本の商品を発信するのが狙い。主催者側からも日本の新しい良質な製品の出展が望まれており、協力を要請されました。 今回出展したのは23年連続出展のGallery 91、20年のINATOMEと若手のMORIHATA International。そして、日本からはじめて出展したFUNFAMの4社でした。 【 1 】 ジャビッツ・コンベンション・センター外景と中(写真1~4) 撮影:K.稲留 【 2 】 【 3 】 【 4 】 【 5 】初日の人と行列(写真5~7) 【 6 】 【 7 】 【 8 】アクセント・オン・デザイン入り口エスカレーター(写真8、9) 【 9 】 天気予報は雪でしたが、当日は天気にも恵まれ、大変な混雑で9時の開始にはドッと人がなだれこみ、久しぶりに人の多さに圧倒されました。来場者は世界85カ国、50州からの31,000人のとのこと。 景気が上向いてきたのでしょうか、買い渋っていた在庫が底をついたのでしょうか、それとも何か新しい商品を探して彼等も活気を取り戻したいと願うのでしょうか、初日の人出は本当に期待したくなるほどの混雑でした。 今回の企画に、ミュージアムやハイデザインショップのバイヤーも、あちこち探さずに、続けて見れる良さを喜んで、もっと日本のものを集めてほしいと話していました。新聞やニュースでも取り上げられ、次が期待されています。 http://www.accentonjapan.net 【 10 】 アクセント・オン・デザインのサイン 【 11 】 上からの全景 【 12 】アクセント・オン・ジャパンのサイン 【 13 】アクセント・オン・ジャパンの列 【 14 】Gallery 91のブース(アクセント・オン・ジャパン)(写真14~18) 【 15 】  【 16 】 【 17 】 【 18 】 今年のアクセント・オン・デザイン賞の受賞者は Excellence in Product

第132回 SOHO MEWS

SOHOのグランド・ホテルの前に出来た新しいコンドミニアム「SOHO MEWS」は、建築家・ Gwathmey SiegelとLandscape ArchitectのPeter Walkerよって建てられ、ウェスト・ブロードウェイとウースター通りまでの2つの建物を中庭を作ってつなげ、タウンハウス・ペンタハウス、そしてロフトの良さを活かした住居として建てられました。 建築家・Gwathmey Siegel社は、国際的な大きなプロジェクトを手がけていますが、パートナーCharles Gwathmeyが、71才で亡くなったという知らせが入りました。NYのコンドミニアムが今迄の短期、少数旅行者用から、家族での長期滞在者向けに、建てられているのが最近の傾向で、今回の2つのプロジェクトにも見られると思います。 そして、普通の不動産セールスとは違い、雑誌社と組むという、なかなかおしゃれで上手な方法で、この不景気でも話題になっています。 【 1 】 SOHO MEWS 玄関 【 2 】ロビー 【 3 】SOHO MEWS コンドミニアム・ショーケース・ルーム(写真3、4) 【 4 】 【 5 】2つのビルをつなぐ中庭 【 6 】ESQUIRE誌のプロジェクト『バチュラー・ペンタハウス』(写真6~9) 【 7 】  【 8 】提供:ESQUIREマガジン 【 9 】 【 10 】デジタル・インタラクティヴ・プールテーブル(写真10、11) Todays Newsで動きが見えます。>リンク参照 【 11 】 雑誌社が選んだインテリア・デザイナーが、映画をテーマにデザインした部屋です。ESQUIRE誌のプロジェクトは7回目。「バチュラーペンタハウス」と云うテーマで、贅沢なペンタハウスをつくりあげました。2つのペンタハウスを一緒にした大きな部屋、デジタル・プールテーブルのあるリビング・ルーム。9200SQの所に11ルームと9バスルーム、2つのファイヤープレース、2つのスパ。レコーディング・ルームはミキシングやレコーディングが出来、そのまま放送も出来るというものです。 ここでは色々なイベントが行われ、ニュースや雑誌でも取り上げられました。フィルム・フェスティバルの基金集めイベント等も開催されました。 【 12 】 ESQUIREマガジンのプロジェクト『バチュラー・ペンタハウス』(写真12~25) 【 13 】 【 14 】 【 15 】 【 16 】 【 17

第131回 芹沢けい介-型絵染の巨匠

ジャパン・ソサエティー・ギャラリーで「芹沢銈介-型絵染の巨匠」展を2010年1月17日まで開催中です。 芹沢銈介(1895~1984) ― 1956年に人間国宝の認定された芹沢銈介の作品は染色の枠組にとらわれない比類なき美しさと表現力をたたえています。それまでの伝統的な型染は、型紙を制作する型彫師と染物師に分業化されていたのに対し、芹沢は下絵を描き型紙を彫り、糊置きをして色を挿し、水洗いをして干すという一連の工程に自ら一貫して取り組みました。芹沢はこの手法を用いて、着物や帯地のみならず、本の装幀、挿絵、軸、カレンダー、屏風、のれんへと作品の幅を広げていきます。 私自身が女子美の工芸の学生だった頃、何度かお目にかかり指導を受けた事があったので、これだけ網羅した芹沢銈介展をニューヨークで見れることに感激と感慨深い思いで、改めてその偉大な功績を学びました。 【 1 】 芹沢銈介展案内状 【 2 】第1室 【 3 】第1室 【 4 】第1室 【 5 】第2室 【 6 】第2室 【 7 】第2室 【 8 】第2室 芹沢銈介先生は1927年に柳宗悦と出会い、民芸思想に共感し、また、沖縄の紅型に接した事で、沖縄紅型の精密で明快な図案と輝く色彩に魅了され、作品に影響を与えています。第1室では、初期の植物繊維の作品や古事記からの図柄、最初の頃の「工芸」の表紙などが展示され、2室ではヨーロッパの影響を受けた動物の絵柄を型染めで表現したり、初期の「いろは」の型染め、そして3室には最初の「カレンダー」柚木紗弥郎氏制作の作品が展示されています。 【 9 】 第4室 カレンダー他 【 10 】第4室 カレンダー他 【 11 】第4室 のれん 【 12 】第4室 のれん 【 13 】第4室 のれん 【 14 】第4室 のれん 【 15 】第4室 のれん 【 16 】第4室 のれん 【 17 】第4室 のれん 【 18 】第5室 春夏秋冬 芹沢先生は日本の民芸、伝統に精通しながらも朝鮮や沖縄など他の文化から、鮮やかで明快なモチーフを使った大胆なデザインと色彩で自身の作品に反映し、技術の向上を飽くこと無く追求して行った作家だったのでしょうと、ディレクターのジョー・アール氏が言うのがうなづけます。 第4室の縄のれんと、数々の「のれん」に見る、気持ちがよいまでにすっきりと、無駄をはぶいたリズミカルに見えるデザイン。型紙掘りの制限をいかして、ここまですっきりとした表現が出来る芹沢作品のすばらしさを満喫します。第5室では春夏秋冬の文字の展示、第6室は写真のような描写の民具の屏風や現代的になった「いろは」の変化など多彩な作品が展示されています。第7室、本の装幀、第8室で着物、反物と続きます。 【 19 】 第5室 春夏秋冬 【 20

第130回 Slash: Paper Under The Knife「紙を斬る:ナイフを下に」

10月7日から2010年4月4日まで、MAD Museumの企画・素材・行程をテーマにしたシリーズ展の第3弾として、Slash: Paper Under The Knife「紙を斬る:ナイフを下(もと)に」が開催されています。MADの第1回の「ニッティング」、第2回の「レース・刺繍」に続くもので、第3回の紙をテーマのこの展覧会はナイフ、レーザー、新テクノロジー等を駆使し、イタリア、ドイツ、オーストリア、日本、中国、カナダ他16カ国のアーティスト52人が挑戦した紙の作品の展示です。紙がこの何年か大変注目されていて、今回MAD Museumが取り上げた作品の一部を紹介すると、まずロビーにはAndrea MastrovitoのColumbus Circleを意識した「Columbus’s Ship」を天井から展示した作品(写真1)があり、海の波が紙で表現された天井にまず目をうばわれます。3階にはChris Gilmourの「Triumph of Good and Evil」があり、イタリアで街中にある銅像を見ながら、段ボール箱のリサイクルで糊付しながらイタリアで作りあげた作品で、すでにNY市のコレクターが自分の館に飾るために買い上げた2メートル以上ある大きな作品(写真2)です。Andreas Kocks PaperworkはドイツのミューヘンとNYで制作していて、水彩で黒く塗った紙を切って、空間に合わせ重ねて構成していく作品(写真3、4)が迫力でせまり、Tom Friedmanの朝食のオートミールで有名なQuakerの箱35個を切り裂き、ラベルを水に付けてはがして用意し、コンピュータでのばした画像を見本にまた原型の円柱の箱に貼りなおしたというユーモアが際立つ細く長い彫刻の作品(写真5)もあります。紙を切って、こんなにも表現豊かな沢山の作品に、日本にももっと違う紙を見せたい夢がひろがりました。6階のワークショップのフロアーでは、12月5日2時から、女子美同窓会NY支部の有志2、3人がデザイナーの太田恵子さんを中心に、クリスマス・ラッピングとホリディ・カード制作のワークショップをする事が決まりました。はじめての日本人によるワークショップで今後、日本からの匠の技を見せるきっかけになればと願っています。 http://www.madmuseum.org/DO/Calendar/200912/think%20global.aspx 【 1 】 ロビーにAndrea MastrovitoのColumbus Circleを意識した「Columbus’s Ship」を天井から展示した作品 【 2 】 Chris Gilmour「Triumph of Good and Evil」 段ボール箱のリサイクルで糊付した銅像の紙作品 【 3 】Andreas Kocks Paperwork PHOTO CREDIT: Christoph Knoch 【 4 】Andreas Kocks Paperwork 【 5 】Tom Friedman「Quaker Oats」2009 Photo: Justin Kemp 【 6 】Ferry Staverman, Exhibition a Space Odesey in 2007, Weekendgallery Photo:

第129回 NYのArt & Fashion シーズンのはじまり。

ニューヨークは、毎年、夏のバケーションから、レーバーデイ(今年は9月7日)が過ぎると、とたんに秋の行事が動きはじめます。今年のアートシーンのはじまりは、9月2週目の木曜日である10日。シーズン最初のオープニングで、沢山のギャラリーで同時にパーティーが行われました。アートシーンがソーホーからチェルシーに移ってから久しく、この混雑は何事かと思うようなオープニング・シーンに出くわしました。 【 1 】 チェルシー25,26,27丁目ギャラリーが一斉にオープンした通りの賑わい。(写真1、2) 【 2 】 【 3 】Tria Gallery, (531 W. 25th St.) 【 4 】Doosan Gallery New York (533 W. 25th St.)(写真4、5) 【 5 】 【 6 】Doosan Gallery New York Artist- Myeongbeom Kim solo show “ONE”(写真6、7) 【 7 】 【 8 】Stux Gallery 前の混雑(25st.) この不景気に…と思うような、道を横切れないほどの混雑ぶりで、どうしてこんなに人気なのだろう、と同行した友人と首をかしげつつ、ウェストサイド川沿いに近い、27丁目、26丁目、25丁目の10番街と11番街の間に、軒なみ並ぶギャラリーのはしごをしました。 まず初めの、25丁目のチェルシー・アート・タワー1階のMarlborough Gallery(写真9~14)は超満員で、ペーパーマッシェのような素材でつくられた大きな花「A New Beginning」のWill Rymanとおめでとうの挨拶を交わしました。この通りは「Gagosian Gallery」等もある通りで、大変な人気でした。韓国のギャラリーのパワーも素晴らしく、大きなスペースを贅沢に使ったギャラリー続出でした。その一つ、「Arario Gallery」ではOsang Gwonという作家の、写真のプリントを一度分解したものをまた貼付けて人体をつくっている彫刻の展覧会がありました(写真15~18)。並びの26丁目の、銀座にもある「一穂堂ギャラリー」では、青木良太の陶器の作品展が開催されており、内田繁が内装を手掛けた茶室の前にも、青木良太の別の作品が並べてありました。(写真19、20) 【 9 】 チェルシー・アート・タワーとMarlborough Gsllrty(写真9~13) 【 10 】 【 11 】 【

第128回 NY恒例の夏期Accent on Design

NY恒例、8月のインターナショナル・ギフト・ショー「Accent on Design」が、今回は8月16日~20日にジャビッツ・コンベンション・センターで開催されました。今年は天気にも恵まれ、初日2日目の会場は結構混み合い、前回の冬の時期より回復したように思えたのですが、全体的にはオーダーの数が少ないなど、まだアメリカの景気は回復せず、今回も忍耐のショーとなりました。作年同様「Accent on Design」へのアプローチとエントランス・ロビーには、今年も注目される「Sustainability」の特別展示スペースが設けられ、主催者側が選んだ175の点の環境にやさしい、これからの社会を考えたギフト、パーソナルケアー商品から家庭用品などのプロダクトが展示されました。この展示を見てブースを尋ねる人達も多く、展示参加者には大きな助けになっているようです。「Accent on Design」のTOPが変わり、ドロシー・ベルシャウ(NYIGFディレクターとGLM副社長)は「25年間 『Accent on Design』 は、ギフトとライフスタイルの現代のデザイン製品規格をつくりあげてきました。」「そして今回の 『Accent on Design』 賞を受賞した3つの会社とそれらの製品は、混雑している今の業界の中でも『Accent on Design』を特徴付けるエネルギーと巧みさを例示し、輝いています。」と言っています。 【 1 】 慣例になった北コンコースの「サスティナビリティー」展示風景(写真1~4) 【 2 】 【 3 】「サスティナビリティー」上からの全景 【 4 】 【 5 】Accent on Design上からの全景(写真5~7) 【 6 】 【 7 】 【 8 】Accent on Designn会場の入ったすぐの景色、作年迄の ALESSIが降りて、Jonathan Adlerが移動し正面に展示。 【 9 】Accent on Design 賞の発表パネル アワードの選考委員は革新、機能、独創性を評価基準で判断し、今年は以下3社を選びました。□最優秀プロダクト賞は、ブルックリンの「Desu Design」のドアーノッカーで、コートハンガーがミニマルの彫刻としても認識されました。□もう一つのベスト・プロダクトデザインは「Design House Stockholm」(スエーデン)の昔ながらのファミリーチェアーが受賞。新しくて美しいどこにでもある伝統的なスウェーデン人のstickbackチェアー。□Best Overall Collectionを受賞したのは、ブルックリンの「neo-Rtility」。アプローチと共にさまざまな実用的な範囲のカテゴリを提供する、管理選択における素晴らしさが認められました。このboothには日本では知られている「IDEA」が初めて出展しています。 【 10 】 【 11 】 【 12 】もう一つの最優秀プロダクト賞はDesign House

第127回 ブリキのアメ車:田中翼コレクション

7月9日から8月16日まで、ジャパン・ソサエティー(JS)ギャラリーは、第二次世界大戦後の作られた日本製ブリキ模型自動車の展覧会「ブリキのアメ車:田中翼コレクション」を開催しています。これまで未公開だった田中翼コレクションの秘蔵品を集めたこの展覧会は、ちょうど皮肉にもアメリカ車の相次ぐ倒産などのタイミングですが、アメ車の黄金期をミニチュア世界で再現していて、コレクターや懐かしがる熱心な観客からは、良い反省の勉強になるはずという言葉も交えて、好評でした。 私自身もその時代、車狂でいろいろな車を乗り回したり、レースに出場した経過から、とても興味のある展覧会でした。     JSギャラリー・ディレクターのJoe Earie氏の企画で、「黄金時代のデトロイト産自動車の小さなパーツまで精巧に再現した玩具の車は、日本の産業界が軍需から平和時代の生産へと移行する助けになりました。また、当時の貧しい日本のみならず、新しい富裕国となったアメリカでの美しいものに対する欲望を満たす役目を果たしたのです」 「占領下日本製」と表示されたキャデラックからはじまるこの展覧会、戦後日本における玩具産業の創始期に製造された初歩的で小型な作品から、高級志向のアメリカ市場向けに作られた後期の精巧な作品まで、多岐にわたる70点の乗り物が展示されています。 セダン型自動車、オープンカー、ステーションワゴン、配送用ワゴン、バス、トレーラー、レーシングカーほか、1950~60年代にアメリカ人の心をとらえたモーターショーの出品車(コンセプトカー)なども含まれています。その他当時のブリキ玩具産業で製造された幅広い製品を網羅するため、ジェット機、ヘリコプター、快速艇なども数点展示されています。 ブリキの語源はオランダ語のBLIKに由来するそうです。この展覧会では作り手と日本の製造業の背景にもふれています。玩具業マルサン商店が、製造工程が模索段階であったブリキ玩具産業に早くから参画し、創意工夫に富んだ第一人者的立場となり、業界で初めてプレス加工したブリキに座席用布地の模様を石版印刷することを発案、より実物に近い仕上げを実現したそうです。また、アサヒ玩具製造による全長40cmの「1962年型クライスラー・インペリアル」は本展のハイライトの一つで、日本製ブリキ車のコレクター間では大変な価値で垂涎の的になっているそうです。 「ブリキのアメ車」展は60年代中頃までの日本製のブリキ模型自動車に焦点をあてていますが、これ以降は到来したプラスティックとのシェア争いに敗れ、ブリキ玩具業者のおよそ12社が5~10年という瞬く間に倒産したそうです。 コレクターの田中翼氏は1944年東京生まれ、16才頃からアンティーク収集に興味を持ち、玩具、ポスター、着物など幅広くコレクションしていて、海外のほうが知られているのではと思われますが、以前The Bard Graduate CenterのWearing PROPAGANDA展でも、彼の着物コレクションの一部が展示されました。 この展覧会のオープニングには、JSで日本人はじめてとなる、元NY日本領事館大使だった櫻井元篤理事やスタッフ一同は浴衣の夏衣装で出迎えてくださり、リフレッシュしたJSのイメージでした。 日本で行われるとしたら、デパートの催事展になると思うので、ここまですばらしくまとめるJSのJoe Earie氏の日本通に感心し、田中氏も幸せ者だと思いました。 ニューヨーク近代美術館(MoMA)で、ロン・アラッドの米国、最初の回顧展「Ron Arad:No Discipline」が、8月2日から始まり、2009年10月19日まで開催されます。 1951年イスラエル生まれのイギリス人のロン・アラッドは、現存するデザイナーの中で、今日最もパワフル。フォーム、設計、テクノロジー、素材に対するその既成概念を打ち破る、大胆なアプローチで際立っていますが、その作品は工業デザイン、彫刻、建築そしてミックス・メディアのインスタレーションにも及んでいます。鉄鋼、アルミニウム、青銅からターモ・プラスティック、クリスタル、光ファイバーそしてLEDまで、あらゆる種類の材料を駆使した弛み無い彼の実験と、これまでの固定概念の家具、掛け椅子やロッキングチェアから、電気スタンドやシャンデリアなどへの彼の新たな解釈、過去30年間の建築家/デザイナー/芸術家としての概念が、彼をコンテンポラリー・デザインの先駆者に伸しあげたのです。 この展覧会ではデザイン・オブジェと建築模型を含む約140点の作品と60点のビデオを展示しています。 ほとんどの展示作品は、彼自身のデザインによるインスタレーション、「ボーダーのないケイジ」と名付けられた巨大な構造の中で展示されています。コルテン・スティールとステンレスで施されているこの設計は、モマ特別展示会場6階の全長を使い尽くした、38.5メーター、高さ5メーターもの大胆な創りで、今までに見た事のない展示空間をつくりだしています。この展覧会のキューレーター、MoMA建築とデザイン部門のパオラ・アントネリは次の様に述べています。 「デザイナーはクリエーターですが、すべてをこなすのは一人では無理、彼はあらゆるマテリアルに挑戦、工場や作り手と協力し良く話しを聞きます。そして今までにない概念で挑戦し、フレキシブルに対応する事の出来る素晴らしいデザイナー。アラッドは一貫性というものに対し重きを置かず、偶像破壊的な事で知られていますが、彼は今日のデザインの全貌をはっきりとさせ、既成の型にとらわれない突然変異的デザイン~内部と表面に始まり、インタフェースから家具、靴まで、近代デザインの枠を超えるような柔軟性のある~を試行する世代に影響を与えているのです。」 Frontieと#768 「ボーダーのないケイジ」は、アラッドのデザインを、マイケル・カステヤーナと共に設計し、ロベルト・トラバリアの指示のもと、イタリアのマルツォラティ・ロンチェッティによって制作、設置されました。その構造は、ひねった輪のような形の中に、240のステンレスで仕切られた正方形の枠が、展示台として使われる仕組みになっています。片面は、半透明の弾力性のある膜として機能する灰色のガーゼの織物で全体が覆われ、裏側の作品もシルエットで見えるようになっています。この織物は、Maharam社というテキスタイルの会社から寄贈され、この展示会のスポンサーでもあるジーンズの製造社、Notifyによって縫製されたそうです。このインスタレーションのあちらこちらに設置されたモニターでは、最新技術を駆使したアニメーションで、彼の作品と生産過程、建築プロジェクトを見る事ができ、観客の目を引きつけ、作品をより理解できるように工夫されています。 この展示会オープニング・パーティーには、超満員の人出。さすがはMoMA、キューレーターのパオラ、そしてロン・アラッド自身も姿を見せ、この不景気を吹き飛ばすような、桁外れのインスタレーションと彼の相変わらずの個性と盛大な個展に、暑さを吹き飛ばされた思いで楽しみました。  

第126回 NYの新名所・High Line「高架線道路公園」オープン

実現するのか、夢の話なのか。ずっと追い続けてきたHigh Lineが6月10日に一般公開になり、オープン最初の日曜日である6月14日に行ってきました。 ミートパッキングエリアは混雑しており、最初の入り口のあるGansevoort通りには長い行列が出来ていましたが、案外スムースに進んでいるので見てみると、係の人が次々に腕輪の紙テープを渡し、これを付けた人は上って良いと言う事でした。数の統計にもなっていたようです。階段を上がって、出来上がった高架線上の公園から見るニューヨークの風景は、今まで知ってるものとはまた違った目線で、とても新鮮な景色でした。 High Lineの残された線路の間を上手に使って植えられた緑もとても自然で、実用的でこそありませんが、Friend of High Line(FHL)グループの自然体のアイディアが生き、素敵な都会のオアシスになっています。   私も2004年のコンペの発表会を見に行ったり、2006年の鍬入れ式に参加したり、待ちに待っていたので、とてもわくわくしながら地上30Feet(9.14m)の新しい公園散歩道を歩いていたところ、High LineオープンのニュースでTVインタヴューされていたFriend of High LineのJoshuaが、混雑の中、ニコニコしながら歩いて見てまわっているのに出くわし、思わず、おめでとうと握手をしてしまいました。 この一般公開では、22Blockが最初の区間として公開され、通常朝7時から10時までオープンしています。階段はGansevoort通り、W16th, W18th. W20th ストリートにあり、そのうち14と16通りのはエレベーターでも上がれるようになっています。 http://thehighline.org/ ダウンタウンの最初の入り口の階段を上がると、まず新しいスタンダード・ホテルに目を奪われます。この建物の中を通り抜けると、すぐの東側に14丁目のミートパッキング・エリアのメイン・ストリートを見渡すことが出来ます。いつも現代アートやデザインのオークションをしているオークション・ハウス、PHILLIPS de Puryの4階のGalleryも目の前に見えます。 反対側のハドソン・リバーでは、別の日の夕方出かけた際に、夕焼けを撮る事が出来ました。 建築家チームのディラー・スコフィディオ+レンフロ(Diller Scofidio+Renfro)がコンペを勝ちとり、このHigh Lineのデザインを担当。10年かかったプロジェクトで、オープン最初の週には70,000人の来場(またはビジター)を記録したそうです。2010年には20ストリートから30ストリートが続いてオープンを予定しています。今後もより一層すばらしい公共施設、緑の公園をめざし、次の30年で個人の寄付を$4ミリオン、投資家、CITYからは$900ミリオンを予定しており、プロジェクトは続きます。 線路を活かしたディテールがあちこち伺えるデザインは、水回りが考えられていたり、木の大きなベンチを線路の上で動かす事ができたり、また10番街の真上では正面から劇場のように道路を見下ろせる一角があったりして、作ったものを見せるのではなく、自然の都会の生活をゆっくり休んで見るのも良いのでは? と言われているように感じました。     High Lineの近辺には、著名建築家のビルやコンドミニアムなどが続々と建築中ですが、まず目に入るのは、18丁目のウエスト側の話題のフランク・ゲリー(Frank Gehry)のIAC(Inter Active Corp)のビル、そして、その隣りには建設中のジョン・ヌベル(Jean Nouvel)のNouvel Chelseaが見えます。2012年オープン予定とされるレンゾ・ピアノ(Renzo Piano)のWhitney Museumダウンタウンも今から話題になっています。 大手投資不動産会社のコンドミニアムも建築ラッシュで、この近辺が、今ニューヨークで最もホットな場所のようです。 東側にはエンパイヤーステート・ビルディングも見え、現在はここまで20丁目の出口が出来ています。 High Lineのオープンと時を同じくして話題になっている、スタンダード・ホテル。 High Lineにまたがって突然現れたようなこのスタンダード・ホテル、そのホテルからのHigh Lineの眺めも是非みたいと、中を見学させてもらいました。 まだ全館オープンではありませんが、ミートパッキング・エリアのイベントの要望に合わせて、建設中のまま、昨年12月に一部がオープン。話題を呼ぶきっかけとなったのが、春のファッション・ウイークや、ICFF国際家具ショーのオフ・サイト・イベント、そして、このHigh Lineのオープニングです。 開発業者のAndré Balazsがオーナーで、ハリウッドとロス、そしてマイアミにも同じ名前のホテルを持っており、若いセレブに今、人気のホテルとのこと。 4つ目の、ニューヨーク初進出であるスタンダード・ホテルは、建築をTodd Schliemann of Polshek Partnershipが、デザインをニューヨークのインテリア・デザイナーRoman and Williamsが担当。入り口、ロビーを通り、エレベーターの中にはVideoの動画が映し出されており、上り下りのエンターテインメントを見せてくれます。今現在は12階までということで、その角部屋の東側と西側のスウイートの部屋を見せてもらいました。どの部屋も天井から床までガラスで、カーテンを閉めないと宙に浮いているようです。寝ぼけてべッドから落ちたら、都会の真ん中かハドソンリバーの中にいるのでは、と夢に見そうな、怖いくらい素晴らしい眺めです。 バスルームもトイレも同じ状況で、周りに何もないので、解放感を独占できますが、私はカーテンを引くのをお薦めしたいです。 各ドアに部屋のナンバーが大きくデザインされていて、まだ見ることが出来なかったトップ・フロアの18階にはダイニング、パーティー・ルーム、スパなど素晴らしい眺めの豪華な施設が出来る予定との事。一階のグリルが最近オープンし、人気のようです。337ルームのこのホテル、目下建築続行のままなので、割安との事。 最新のニューヨークを体験するにはもってこいかもしれません。 ※表示あるものを除き、写真は全て海老原嘉子撮影