第70回 和の影響を受けているNYの新しい食文化・レストランを見る。
和の影響を受けている NYの新しい食文化・レストランを見る ニューヨークの食文化はこの2、3年、目をみはるものがあります。例えば、お寿司を食べることが当たり前になりました。お刺身を盛り沢山オーダーする若者達や、「わさびがきかない」と別注文する人など、私などとても足下にも及ばない和食通のような感じなので、驚いています。 最近は、TV番組『料理の鉄人』の影響か、(番組のアメリカ版があり、現在も放送されています)より名シェフの、オリジナル料理に人気があるようです。また、味や雰囲気を好む居酒屋風が流行しており、日本酒を各種そろえた本格的な通のレストランと、エンターテイメント化して大型の演出で楽しませてくれます。 エンターテーメントがレストランの重要な要素 58丁目にある“TAOレストラン”もそのひとつ。大仏のもとで鯉が泳いでいる池が店内中央にあり、天井にはビックリするような大きな書が張り巡らされています。食事のサーブは、細長いお皿に料理がカラフルに盛りつけられてきます。味は、日本人にはちょっと・・・という感じですが、演出が盛りだくさんなのでレストランはいつも満員です。 このレストランで使用されている食器の一部は、日本でも活躍しているIzabel Lamのデザインです。家具や食器、漆器などが、アジアスタイルとして5~6年前からはやりはじめたのも、これらの前ぶれだったのだと思います。 最近の有名レストランは、各種雑誌などで取り上げられ一般に知られていますが、59丁目のタイム・ワーナービルの上にある“NMASA寿司”は、高いことで有名になりました。ダウンタウンには“NOBU”、“メグ・レストラン”、チェルシーには“祭りレストラン”、“アジア風のスパイシーマーケット”・・・。1カ月ほど前には、“ONOレストラン”というものもオープンしました。 食器や盛り付けに、神経を使って和を生かす 若手名シェフたちは、ヴィレッジやノリータに、こじんまりした凝ったレストランを次々と開いています。 デザートのフルコースを出す専門店として初めてオープンした“チカリシャス”は、オーナーの一人が日本人女性です。おしゃれな盛りつけ、濃すぎない味付けでフルコースが食べることができるメニューになっています。この店は、ニューヨークの沢山のメディアに取り上げられました。 その先生や仲間といったシェフ達が、NY Timesにも取り上げられている“クリントン71”の28才の話題のシェフ。 半熟卵の黄身がイカスミで作られた皮に包まれた料理があり、シェフがお客の目の前で温かいソースをかけるとイカスミがとけて、中の黄身が出てくる演出でお客を喜ばせています。他に、ウニのデザートや和の食材を使って、いろいろ工夫をしています。 和を意識したレストランが次々とオープン ビレッジには、“重箱”をもじった“Jewel Bako”という名前のレストランがあり、アメリカ人が和を取りいれた、と話題になっています。インテリアやテーブル・コーディネイトはシンプルにまとめられています。ここと同じオーナーが経営するオイスターバーも、和を意識しているそうです。 ノリータのレストラン“WD50”でも、有名なシェフが日本を意識したメニューを展開しています。食器にこだわり、枝豆のアイスクリーム、みそアイスクリームなどのオリジナルに挑戦しています。 「日本酒ブームを作ろう」「日本茶をもっと」といった、日本からの応援もあると思いますが、ケチャップを山のようにかけて食べていた、アメリカの昔の味気ない食文化が、健康志向も手伝ってこうも変わってきたかと思うと、感無量です。 ※表示あるものを除き、写真は全て海老原嘉子撮影