ニューヨーク近代美術館(MoMA)では2月24日から5月12日まで、デザインにおける過去6年の進化と、今後予想される次の6年に向けられたデザイン200点あまりの作品が展示され、話題になりました。
キューレーターPaola Antonelliのオーガナイズで、NYのデザイン業界、展示関係者等一同が集まり、オープニング・パーティーは、人で埋め尽くされ通路も見えないほどの混雑ぶりでした。
25年以上に渡り人々は、無線技術の進化やインターネット等による時間、空間などの劇的な変化を体験し、乗り切ってきました。Design and the Elastic Mind展は、その人間の限界や習慣、そして願望を細心に考慮した先端の科学研究と結合したデザインのオブジェクトとコンセプトを共にまとめることにより、現代においての科学とデザインの相互関係を探っています。この作品展は、デザインの最新の進歩の概観であり、そしてテクノロジー科学と社会的習慣の中で微妙で極めて重大な変化をキャッチするデザイナーの能力に重点をおいた作品展示です。
作品は世界中からのデザイナー、科学者、そしてエンジニアのチーム等により出展された原子単位から宇宙的なスケールのオブジェクト、プロトタイプやコンセプトなどの作品が展示されています。また、ウェブサイトではギャラリーで展示されていないプロジェクトを含む300以上の作品も紹介しています。
「あなたは、末期病状ですか? 蜂に聞いて下さい。」というSusana Soarsの作品(写真28)は、美しい球体の「診断ツール」。グラスの中に息を吹きかけ、蜂に判断してもらうというコンセプトで蜂は驚くべき匂いのセンスがあり、病気か排卵期であるか蜂が知らせてくれるという作品だったり、Chuck Hobermanの「変わり続ける壁」は、彫刻的な大きい動く壁で、彼の名付けた「適応建物の新世代」と言われる新作で、「皮膚」パネル部分の構造は、コンピュータによりコントロールされ、光と熱のレベルや雨などを感知して、そのスペースに対応し形を変えて行くというもの。
Rapidのマニファクチャー「3D-Printing」(写真29~32)は、VIDEOスクリーンで映し出されているのを見ると、夢の実現のような空間に太いチョークのようなもので描いたフリーハンドの形が、そのまま実在の3Dの形で、椅子や彫刻になっていくというもの。
Toma Gabzdil(Slovacデザイナー)の「蜂が作った花瓶」(写真34)は40,000匹の蜂が1週間かけて作った花瓶。あらかじめ作っておいた足場の周りに蜂が巣を作りはじめ、作り終えた後、足場を取り外した蜂の巣で作られた花瓶の作品。
一つ一つサイエンス・ミュージアムのデザイン展といった理解を超えるものも沢山ですが、未来の夢を感じさせる大規模な展覧会です。ニューヨーク・タイムズは1934年の近代美術館での「マシン・アート」展覧会と同じくらい革命的で、2004年のMOMA改装・再開以来の建築とデザインの最高のショーと讃え、我々にまた未来の夢を見させてくれたと絶賛しています。
デンマーク生まれのアーティストOlafur Eliassonは、1995年のベニス・ビエンナーレでのデビュー以後、写真、彫刻、映像、光りのマルチ作家として、ヨーロッパ、PS1、MOMA、Paula Cooper、Guggenheimや日本でも発表している国際的に活躍するアーティストです。今回のMOMAとPS1の展覧会は彼の作品をすべて知る事のできる最初の総合的な展覧会で、4月20日から6月30日までMOMAとPS1で行われています。
MOMAの最初のフロアーでは、Marron Atriumの高い天井から吊るされた扇風機が頭に当たりそうで、人を追いかけるようにまわりながら振り子のように動いています。(写真40)
3階の会場では、Mono Bulbを使っていて歩く観客のカラーは黄色だけになり、黒の影だけ変化します。(写真41)
360度のドームの部屋は、柔らかく自然に変化するカラーを実際に自分で味わう事ができ、色の変化によって気分が変化するような気がしました。(写真44~46)
レインボールームのようなプリズムで変化させていくカラーストライプの壁の展示は、素直にきれいと声を出す観客が多いのもうなづけます。(写真47~48)
光学的現象を最新のテクニックとカラーバルブ、ガラス、アルミニウム、ステンレス等を使って、シンプルで美しいアートにしてしまうのですが、科学っぽさを感じず誰にでも驚きを与え、自然の要素を採り入れたような淡い色の移り変わりで、心を癒してくれる美しい作品です。北欧で生まれ育った彼の生い立ちが反映しているのでしょう。
http://media.moma.org/subsites/2008/olafureliasson/
http://www.ps1.org
※表示あるものを除き、写真は全て海老原嘉子撮影