第36回: ミラノ・サローネが終わりニューヨークのICFFが始まります (2002/5/15)
『ABITARE』。会期中毎日発行された
(左)ミラノ市街のイベント「INTERNI」のパンフ、(上中)同じようなイベント「ddn」、(右)ミラノ・サローネのパンフ
(左)「INTERNI」やサローネのプレビューを紹介する『INTERNI International-King Size』、これもフリーペーパー、(右)『ABITARE』5号
『ABITARE』3号の吉岡徳仁の記事、イタリア語を黒、英語をブルーで書いていてわかりやすい。話題の日本人デザイナーの彼は、Top 10の展示にも入っていて、うれしいですね
使えるフリーペーパー『ABITARE』の特別版
ミラノ・サローネが終わってニューヨークのICFF(国際現代家具見本市)が始まろうとしています。
今年のサローネの情報やレポートは皆様あちこちですでに見られていることでしょう。そこで今回は、NY、ミラノ、日本を比較して違う角度から見本市を見てみたいと思います。
国際的な見本市のように大きなイベントでは、自分が見たいものをいかに効率良く、時間をかけずに見て回ることができるかが鍵ですが、公式のプログラムは電話帳のように厚く、イタリア語・英語と全てを理解する暇もなく、また外部からの情報も山のようにあり、結局、友人や知人の話や、評判が高いイベントを耳にして出かけることになります。
サローネのプログラムや、同時期に市内で開催されるイベント案内も写真のように何冊かありましたが、イタリア語主体の資料が圧倒的に多く、わかりにくかったのですが、その中で、会場内や地下鉄の入り口に山積みされ、会場に向かう道すがら配られていた『ABITARE』が出しているカラー・30ページに要訳されたダイジェスト版新聞(イタリア語と英語)が面白いと思いました。
これが毎朝、会期中出版され、前日会場に現れた有名人、デザイナーの話、パーティー会場の様子などが紹介されます。また最後の5号では『ABITARE』が選んだTOP 10のデザイン(日本人では、8位に吉岡徳仁の「Tokyo-Pop」、10位に藤原敬介の「Lamp 01」)、TOP 10 のデザイナーも紹介されていて、行かなかったパーティーにも参加したような気にさせてくれます。ページの後ろにはミラノ市内の地図に各イベントの場所が記してあり、ちょっとタブロイド版的ですが、てっとり早く見ることができるように工夫された力の入った編集は、毎日では大変だろうと感心しました。
左)『ABITARE』がファーストインプレッションで選んだというデザインのTop Ten、1位はedra社の「BOA」
8位に吉岡徳仁の「Tokyo-Pop」(ドリアデ)、10位に藤原敬介の「Lamp 01」、藤原はサテライトでの出展。
NYにも東京にもない意気込み
イタリアがデザインの国として、このサローネにファッション界のトレンド・ブランド志向のプロモートと同じように力を入れていると感じました。
たとえば、家具のメーカーをブランド名とし、デザイナーをスターに仕立て上げ、政府やミラノ市がそれをサポートし大がかりな催しとなっている、というような。ここがNYの見本市との大きな違いです。
イタリアのメーカー、企業はサローネ期間だけのために大変な労力と経費をつぎ込み、毎年ショールームを変え、趣向を凝らしたパーティーを開催し、などと、とてもファッショナブルに発表しているようです。しかし本来のビジネスは輸出が主で、それぞれの個人の生活レベルでは古いものを大事に同じものを使い続ける傾向のようで、サローネで発表される新しい家具や器具を普段の彼等の生活の中で見ることはあまりないようです。
トレードショーだけではないサローネ
今年のサローネのビッグイベントは、9号館の「10人の建築家による、世界の都市のホテルルーム(Grand Hotel Salone)」の展示。これもミュージアムで行われるレベルの展覧会で、商売とは関係ないのにも関わらず、これにスポンサーがつくミラノが羨ましい限りで、いかにデザインを大事に考えているかを知らされたイベントでした。
この9号館は、業界関係者でない誰もが登録なし・入場無料で入館できるシステムになっています。2階のサテライト・ドームの出展(Satelite)は全て商品ではなく、世界のデザイン学校の展覧会や、個々またはスタジオのプロトタイプなどで、AからZまでのブースがあります。ここはデザイナーが企業へのアプローチ、マニュファクチャーへの売り込みに利用できる、登竜門の場として提供されているのです。
それだけに、いろいろな面白いものが見受けられ、活気がありました。
ミラノ、ニューヨーク、東京
それぞれの見本市・デザインウィーク
アメリカの見本市では展示する企業側の条件として、展示品は売れるもの、つまり商品であり、自分たちのビジネスとしても、訪れるバイヤーにも、満足をして買ってもらえるものである、ということが展示の条件となっています。
展示側としては「一日どのくらいオーダーが取れたか」という会話が、会期中の話題の中心に自然となってしまうくらいです。ここにお国柄の違いがうかがえます。最近、アメリカでもヨーロッパの影響で、関連イベントをいろいろ開催していますが、スポンサーの考え方が根本的に違うので、派手にデビューできるのはヨーロッパ企業がスポンサーになっているケースに限られるようです。
昨年の日本のTDW(東京デザイナーズウィーク)、TDB(東京デザイナーズブロック)を見る限り、このミラノ・サローネをまるっきり取り入れているのが良くわかりました。
ただ、ミラノの場合は国や市が大きく関わって、デザインを輸出しようとして、ビジネスに力をいれていますが、東京ではあくまでも個々の負担で、デザイナーや学生相手に行っている感じがしました。NYの見本市は、世界中からそれぞれの国の思惑でやって来ているので様々ですが、企画側はかなり地に足をつけてビジネスとして見ているので、良くも悪くもクールです。
NYではICFF(国際現代家具見本市)が、5月18日~23日の日程で始まろうとしています。
すでにあちこちからの招待状が来ていますが、間に合う方は、是非、NYに実際に見に来てください。
アルマーニ・カーサの家具展示室。洋服と同じように、ソファーや生地の仕立てがカチっと出来ていて、さすがと思いました
ともにARMANI
アルマーニ・カーサの家具展示室。洋服と同じように、ソファーや生地の仕立てがカチっと出来ていて、さすがと思いました
ともにARMANI
[ICFFパーティ・スケジュール]
NY国際現代家具見本市(ICFF)第14回は、5月18日から21日までJacob K.Javits Convention Centerでおこなわれます。ICFFのオープニング・パーティーはMOMAを借り切って7~9pmまで、有料のパーティーです。Convention Centerでは展示の他では、今年はGreen Design他いろいろんなテーマのレクチャーやパネルが毎日催されています。Off Siteでも催し物がめじろおしで、毎日案内が入ってきていますが、以下現在わかったものだけList Up してみます。
(毎年スケジュールリストを作る『INTERNI』のNY編はまだのようなので、原稿執筆時点で、案内状が来ている分についてお知らせします)
5月17日
* Interieurs (Store) 149-151 Franklin St.
* Totem Soho 6-9pm 83 Grand St.
* T.A.G. Team 2002 26 Wooster St.
* Conran Shop 59St.
5月18日
* Made in Japan 吉岡徳仁、黒崎輝男、Ayse Birsel, Paola Antonelliによるパネルディスカッション。Japan Society 3pm (チケット必要)
* Core 77 コンペ優賞作品展示・パーティー Gallery 91
* Ingo Maurer
* ICFF パーティー MoMA
* Moss 150 Greene St.
5月19日
* Totem Tribeca 71Franklin St.
5月20日
* Karim Rashid ICF Showroom 920 Broardway
* Karim’s “Plomb & Superblob” at Dietch Projects, 18 Wooster St.
* “Love at First Sight” at Dakota Design 43 Mercer St.
他にオランダ政府がバックアップして、Dutch Design NYという案内状で、あちこちのオランダ関係デザインをリストアップして、パーティも行われています。
また、Up Townの
NY Design Center 200 Lexington Ave.
A & D Building 58St. 3rd/Lexington
D & D Building 3rd Ave. 58 st./59st.
のそれぞれのビルでも、同時にいくつものショールームのパーティが開催されます。