第56回: 切手のデザイン (2004/1/14)
クリスマスやお正月など、シーズンものの切手デザイン
暖かいクリスマスとお正月が過ぎ、NYは突然刺すような寒さの日々となりました。昨年も紹介しましたが、この時期のNYの特徴的な風景として、道端に捨てられたクリスマスツリーを交差点ごとに見ることができます。近くを歩くと、まだ新鮮なツリーの良い香りが立ちのぼり、お正月を感じさせます [ 1 , 2 ] 。
さて、今回はNYで発売されている切手の話をしようと思います。毎年、日本のお正月に合わせてなにか気のきいた切手はないかと探してみるのですが、国内用の37セント切手はバラエティ豊かにも関わらず、海外に向けた切手を探すとなかなか見つかりません。
12年前から毎年、お正月も過ぎた1月中頃に、中国の旧正月に向けて干支の切手が発売されています [ 3 , 4 ] 。これには、アメリカでのチャイニーズパワーを再認識させられます。
今年は13日から猿の切手が発売され、これで12支全ての切手が揃いました。12支全てが揃った記念として、来年の1月には12支の切手がワンシートになって発売されるそうです。
NYでは、クリスマスカード用の切手も毎年新しく発売されています [ 5 , 6 ] 。前の年のものも同時に手に入るので、8種類程の切手をクリスマス間近の郵便局で見ることができます。また、ユダヤ教のハヌカの祭りに合わせて、ハヌカ用の切手も発売されます [ 7 ] 。
* images 3 ~ 7 (c) USPS (United States Postal Service)
バラエティ豊かな37セント切手
少し振り返って、最近発売となった切手の中で、面白いものを紹介します。2001年に発売されたのは、「アメリカンフォトグラフィ」といって、アメリカを代表する20人のカメラマンの作品がワンシートになったもの [ 8 ] 。切手の裏にはそれぞれのカメラマンの経歴も書かれていて、アメリカの巨匠カメラマンの豆辞典のようです [ 9 ] 。2002年に発売されたのは、「グリーティング・フロムアメリカ」という、アメリカ50州の切手。それぞれの州を象徴する絵柄でデザインされています [ 10 ] 。また、「アメリカン・フィルムメーカー」という映画の切手も発売されています [ 11 ] 。社会的な動向も切手の絵柄となっています。「ヒーローズアメリカ」というタイトルで、9月11日を象徴するような、消防士がアメリカ国旗を掲揚しようとする様子を描いた切手が発売されています [ 12 ] 。Stop Family Violenceという家庭内暴力防止をうたった切手も発売されています [ 13 ] 。
ところで、いつも混雑して待たされることの多いNYの郵便局では [ 14 ] 、日本人デザイナーによるデザインを目にすることができます。現在使われている郵便局のロゴは、藤井禎史というNY在住の日本人デザイナーによるものです [ 15 ] 。鷲をデザイン化したこのマークは、アメリカの郵政公社の民営化に合わせて、1993年より使用されています。各州の18歳から70歳までの人々に調査し、300を超える公募デザインの中から選ばれたこのデザインは、末永く使用されることを想定し、力強い印象を与えるデザインとして選ばれました。
以前に使われていたロゴのデザインが、レイモンド・ロイによってデザインされ、1970年代のニクソン大統領の時代から使われていたものであることを考えると、現在のこのデザインが日本人デザイナーの手によるものであることを、とても誇らしく思います。
※表示あるものを除き、写真は全て海老原嘉子撮影
[10] それぞれの州を象徴する絵柄でデザインされたアメリカ
50州の切手「グリーティング・フロムアメリカ」
[12] 消防士が描かれた9月11日を象徴するような切手
「ヒーローズアメリカ」
[14] いつも混雑して待たされることの多いNYの郵便局
[16] 映画スターの切手、オードリーヘップバーン
[18] これから発売されるバレンタインの絵柄「キャンディハート」