第45回: インターナショナル・ギフトフェアー Accent On DesignとHandmade (2003/2/12)
Accent on Design賞
慣例のインターナショナル・ギフトフェアーが、今年も2月1日から6日までジャビッツ・コンベンションセンターで行われました。20周年、40回を迎えたAccent on Design。今回のアクセント・アワードは以下の出展者に授与されました。
今年のAccent on Design賞
- Best Product:
Icons of Design アリゾナ・フェニックスから出展、Braniのベルト - Best Booth:
サンフランシスコ・ベースのBy Mazeのブース
NYブルックリンのFred Flareのピンクのブース - Best Collection:
イタリア、ミラノのNavamilano社 - Overall Excellence:
メイン州のAngela Adams - Creative Collaboration:
フィラデルフィアのBozart
以上、6社です。
ギフトショーの各ブース
アメリカの景気もなかなか回復せず、今回も皆冷え切った購買客に、いつまでこの不況が続くのかと不安の会話がしきりにされていました。しかし、癒しの製品を扱っている店は景気がよかったということなので、購買客のテイストが変わってきているような気がします。初日の会場は結構混み合っていたようでした。
日本のデリケートな商品をセンス良く見せているボストンのEastern Accentが、前面にブースを拡張して、フレッシュなイメージを与えていました。その2ブロック先がGallery 91で、壁側は日系のINATOMEと日系勢が続きます。4200番台のブースの列は、ますます拡張していく陶芸のJonathan Adlerが先頭にUNBLAと続きます。
Accent on Design® Section at the NYIGF
Handmade
今回、岐阜県がHandmadeの部門でIDNFのプロデュースにより、試作品などを出展しました。ブースの名前は「GIFU CRAFT」で、出品したのは岐阜県が地場産業活性化の為に行っているAIRのプロジェクトの商品。
ミラノのドムス、ロンドンのRCA、ヘルシンキのデザイン・スクール、そしてNYのIDNFに人選を依頼し、2~5ヶ月岐阜に住み、地場産業と協力開発したデザインの試作品を含む商品群です。 Handmadeの中では少し毛色の変わった雰囲気のブースで、展示デザインに関しても素材のおもしろさに興味を持った人が何人かいました。商品はそれぞれ好評でしたが、欲しくても価格の問題で買えないという物が多く、これからの日本製品の身軽な輸出入方法、アメリカ市場の価格の設定など研究が必要なようです。それでも価格がマッチするものに関してはオーダーも入り、幸先は明るい感じがします。
このハンドメイド・セクションには、ロンドンのCraft Councilと産業界、商工会議所などがオーガナイザーという、いわば国のサポートによる、すっきりと整った区画に60社も出展しているエリアがあったり、発展途上エリアの地場産業開発をオーガナイズしている団体AID TO Artisans(ATA)のブースが民族色豊かに出展していて、Jonathan AdlerやRhia Alexsandra / DIGS などのスター達も参加し商品作りをしていたりします。
このように国や組織の大きなバックアップがあり、実際の運営はプロに任せているスタイルなので、とてもスマートにまとまっているのを感じました。
日本のJetroや東京都などが今まで行っている展示会を見ていると、その辺がお役所仕事で、国際的に大きく飛躍できない理由なのではないのはでしょうか?
GIFU CRAFT 撮影:Tomi Nevin
GIFU CRAFT
裏返すとキーボードの形の陶器「カンパイカップ」 Miguel Calvo
製造:カネコ小兵 撮影:Tomi Nevin
GIFU CRAFT 撮影:Tomi Nevin
GIFU CRAFT 撮影:Tomi Nevin
撮影:Tomi Nevin
GIFU CRAFTブース付近
Rhia Alexsandra / DIGS
GIFU CRAFT 作品
紙ランプ・・Gaston Marticorena. 製造: 林工芸
ペーパーナフキン・・Liza Niles, Sami Ruotsalalinen 製造: 東海紙工
ユニットシェルフ棚・・Miguel Calvo 、 製造:飛騨Nissin
陶器・・デザイン:Camilla Groth, 製造: Masters Craft(花柄陶器)
陶器・・デザイン:Camilla Groth, 製造: 市原精陶(手前の大きなカップなど)
禅クッション・・Liza Niles, 製造:飛騨フォーレスト
紙時計・・Dennis Fong, 製造:紙Ing
ペーパーナイフ・ペーパーウェイト・・Fleur Grenier 製造: 関市刃物産業連合会
WTCデザインコンペ経過
7つの建築家・デザイナーグループによるグランド・ゼロの再開発案が、2月2日までワールドファイナンシャルセンターのウィンターガーデンに展示されていました。その中から最終案が、一般の投票も含めて発表されるというので、3日のTVは一部選挙の開票の様な空気で、皆見守っていました。
グランド・ゼロのプランはパタキ州知事とジュリアーニ前市長を中心に、州と市のジョイント組織として設立されたLMDC(Lower Manhattan Develop-ment Corp.)が中心となって運営されています。LMDCはグランド・ゼロだけではなく、チャイナタウンを含むハウストンストリート以南の広い地域の再開発をも視野に入れ、ダウンタウン全体の復興と活性化を目指しています。
最初の6案が昨年7月に発表されたときは、建築家や公共の意見が反映されていないと大変な議論が巻き起こりました。その後1周年のセレモニーを挟んで、何度もヒアリングやディベートが繰り返され、「メモリアル」と「発展」という2つの要素を軸に「辛苦を乗り越え、過去を真摯に振り返りながら未来へ向かって歩む」ローワー・マンハッタンの象徴としてふさわしいプランを求めて、新たに世界中のクリエイターに案を募り、16エーカーの再開発406案の中からLMDCのボード、コミッティー、コンサルタント(この中にはハーバードの建築学部長の森俊子氏も含まれている。)が7グループ、9案のプランを選出しました。
このような経緯から、今回選出された9案のほとんどは、ツインタワーが建っていた2つの正方形の跡(フットプリント)を何らかの形で視覚的に表現するプランとなっています。
2月4日の記者会見発表を前に、3日には上記のLMDC、ポートオーソリティー、ガバナー・Pataki、メイヤー・Bliimberg、コミッティー、コンサルタント等の展示会場での投票、 WEBサイトで寄せられた投票、12,000のコメントを含む意見を採り入れ、非公開の4時間に及ぶミーティングの結果2点に絞られたそうです。
発表されたのはDaniel Libinskindの”Garden of the World”とThink(坂茂氏を含む)の “World Culture”の2つの作品でした。
ベルリンのニュー・ジュイッシュ・ミュージアムで知られているドイツの建築家Libinskindは、今回の”Garden of the World”でWTCより300フィート高い、世界一高いタワーのガラスばりの世界の庭を、そして低い位置にオフィスビルを考えています。
Thinkは”Sky Park”、”Great Hall” そして”World Culture”の3つの案を提案していましたが、その中から”World Culture”が選出されました。代表の建築家Fred Schwartz、Rafael VignolyはTVのインタビューで「工事は2年半少しを考えている」と答えていて、そんなに早く?と感じましたが、エッフェル塔の様な骨組ですし、可能性がありそうに思いました。
この2案は最終案を選ぶ為に再度2月7日から3週間ウィンターガーデンに展示され、一般からのコメント、投票を募集、それらの意見を受け入れて最終案を絞り込むそうです。今回の投票は2つの案のどちらかを選ぶという方法で、WEBでも受け付けています。
昨年7月の案ではオフィス・スぺースが多すぎると問題になったのですが、今回の最終2案には地主のLarry Silverstein氏はオフィス・スペースが不足なのではという手紙をLMDCに出したそうです。
今までにない大がかりな公共建築の国際コンペのように世界中が注目していますが、実際のオーナーシップは民間、個人会社のLarry Silverstein氏が地主です。世界中のパワフルで個性豊かな建築家達が、7つのグループの中で協力・共同作業をしたり、世界中の莫大な数のコメント、意見、アドバイスを聞き入れたりと、WTCの出来事の影響ははかりしれませんが、アメリカらしい民主主義の良さを見せるのは、他の国ではありえない事なのではないでしょうか?
一つ一つの作業の中のパワフルなエネルギー、それぞれ選ばれたずば抜けた人達の7案もLibinskindとThinkの2案に絞りこまれ、最終案の投票がカウントダウンし始めました。
Think はコンセプトで、「単にあの出来事を振り返るだけでなく、その記憶を未来へのインスピレーションに転化させ、この施設で世界中の人々が商品やサービスではなく、創造性や文化を交換し、平和的共存の中で文化の多様性を尊重し合う真のグローバルセンターを目指す」と言っています。世界が注目する建物が、何年か後にこの目で見れると思うと楽しみです。
※表示あるものを除き、写真は全て海老原嘉子撮影