第30回: Tokyo Designers Block, Designer’s WeekとNYのDesigner week イタリア編 (2001/11/14)
Zero First 外からの全景
Miguelの飛騨高山、日進のユニット式棚
ウィンドーに飾られたMiguel Calvoの作品とクレジット
Miguelのデザイン、飛騨高山の日進製花器で取りはずしの出来る丸いトレイ
代官山のZero Firstにおいて、NYデザイン2001展と、その中の1人、Miguel Calvo(ミグル・カルボ)の展覧会が開催されました。この展覧会は、Miguel Calvoが2ヶ月間岐阜で、飛騨高山の家具や美濃和紙のランプ、土岐の陶器など、地元との共同作業でできた作品群が中心です。岐阜県と飛騨高山をプロデュースする佐戸川氏/Zero Firstの協力で実現しました。NYデザイン2001展は、この夏岐阜で開催した展覧会を東京でも見てもらうため、開催されました。
Miguel Calvoの岐阜制作は、NYからのアーティスト・レジデンス岐阜プロジェクトの一環で、彼で2人目になります。NYからの作家は、1人目がGaston(ガストン)で、彼は5月から6月にかけて岐阜に住み、‘林工芸’との共同作品で、たくさんのランプができています。Miguelは今回、7月、8月と岐阜に住み、椅子・トレイ・花器・ランプ・カップなどのサンプルを短い間に産地と県の協力で発表しました。特に飛騨高山の‘日進’が、家具をサンプル制作まで仕上げ、このTDBでの発表になりました。
一方、New Yorkでは毎年9月末から10月にかけて行われる従来のデザイナーサタデイが、9月11日の惨事の為に延期になり、全体としての大がかりな催しは今年はやらないことになりましたが、11月5日をUptown、11月7日がDowntownと分けて、イタリー系のショールーム8軒ずつが6時から9時までパーティーとともに新商品発表の会を開催しました。
それぞれショールームの入口で、カードにスタンプを捺してくれます。3軒以上のショールームをまわってスタンプを集めて、そこの抽選箱に入れると、ミラノ・サローネご招待が当たるというおまけつきでした。
あくまでもビジネス目的の催しで、有名ブランドの家具ショールームが、広いスペースで商品の家具を展示しているので、日本の若い学生やデザイナー達の盛り上がりとは大分ちがいます。
日本のTDW・TDBのノリは5月のNY ICFFのオフ・サイト以上の盛況で、それぞれのエネルギーの使い様に感心してしまいました。家具もまるでトレンディーなファッション関係のイベントのようで、出展者もビジターもビジネスを全然考えていない様子だったことにも感心しました。
Tokyo Designers Block・Designer’s Weekにて
NYのDesigner weekにて
イサム・ノグチ庭園美術館
マンハッタンから少し離れて、Queensロングアイランド・シティにあるイサム・ノグチ庭園美術館は1985年に一般公開されるようになりましたが、今年は2階のギャラリーのあかりの彫刻の50周年にあたり、日本から20点あまりのアメリカ初公開のイサム・ノグチ作品を含め、展示していました。
この美術館は、毎年11月から3月までは閉館してしまうのですが、来春から2年間は改築工事があり、テンポラリーで近くに出来るギャラリーへ移ってしまうため、今が最後のチャンスということで、IDNF主催で10月27日ツアーを企画しました。
NY近代美術館MoMAも改築工事に入ると、イサム・ノグチ・テンポラリーMuseumの近くである同じQueens地域に移ってくるので、現在、Weekendには、MoMAの前からP.S.1(※)、イサム・ノグチ庭園美術館とシャトル・バスが循環していて、とても便利にArts散策が出来るように配慮されています。
イサム・ノグチ氏がマンハッタンから石屋の近くにスタジオを構えるために、Queensにある現在の美術館の向かい側にあるビルに初めて移り住んだのが、1960年代初期でした。その後1975年に手に入れた工業ビルが現在の美術館の基盤となっています。ノグチ氏は放置されて荒れていた庭をオフィス、スタジオ、そして収納スペースに造り替えました。もともとは実際に彼が家として住んでもいたのですが、彼の作品が次第に増えてゆき、そのコレクションの多さが、後に家に美術館を造ってしまおう、というアイデアにつながったのです。ということもあり、やはり美術館としては不都合な点もあったため、今回の全面的な改装工事ということのようです。
庭園には配置良く彼を代表する作品が置かれていて、1階のギャラリー・スペースに導かれ、そこには石の彫刻、木の彫刻と、時代を追って見ることができます。2階に上がると、すぐにあかりの代表、シンプルなランプが、天井一杯に灯され(写真右上)、次の間にはあかりの商品が、現在は制作されていないものも含み一堂に展示されています(写真右下)。
3、4段のステップで広いギャラリースペースになり、穏やかな光と雰囲気のある空間には、イサム・ノグチ代表作の大きなあかりの彫刻が置かれていました。
2階奥のギャラリースペースでは、今回「ライト・ランドスケープ」と題して、金沢国際デザイン研究所(KIDI)の学生達による、イサム・ノグチの影響を受けた照明の試作品展が行われました。
KIDIは1991年にNYのパーソンズ・スクール・オブ・デザインと提携してできた学校で、金沢から2年後にNYのパーソンズに移籍できるデザイン学校です。今年が10年目にあたる記念の催しとして、岐阜のイサム・ノグチのあかりを作っている’尾関’を見学し、作り方・素材の協力を得て、1年生と2年生100人が授業としてグループで作った作品、その他卒業生の2人の作品が飾られていました。
今までイサム・ノグチ庭園美術館では、イサム・ノグチの作品だけを見せていたので、このような形で学生の作品を発表できるのは、とてもラッキーで、産地やMuseumの協力のたまもの、ぜひともイサム・ノグチの影響ですばらしいデザイナー達が育ってほしいものと思いました。