日米陶芸家の唐津焼陶芸展

唐津焼13代目 陶芸作家の中里 隆を中心に、アメリカの陶芸界の代表的作家のマルコム・ライト、中里太亀、中里花子の4人の唐津焼陶芸展が7月11日から30日迄、フェリシモ・デザイン・ハウスで開催されました。
レキシントン・アべニューの専門店SARAの上村直樹氏の企画にフェリシモが協力して実現したこの企画は、唐津焼という共通の陶芸技術を背景に、それぞれの個性を展覧会で見せるというものです。特別企画に、初日は中里 隆と花子親子のろくろなどのデモンストレーション、2週目はパネラーにマルコム・ライトと中里花子そしてモデレーターに日本文化ジャーナリストのハリス・サラット氏をむかえてのパネル・ディスカッション、3週目は唐津焼を使ってのティーセレモニーのデモンストレーションが4回行われるなど、充実した内容の展覧会で好評でした。
作品も見るだけでなく、価格にも幅があり買う事が出来るというのも魅力的で、NYのコレクター達が大変喜び、又展示側にも収益があって、大変成功した展覧会でした。
今迄の日本の伝統工芸をNYでという展覧会では、なかなか受けいれられなかったり、成功する例が少ない中で、NYのビジネスを知っている人達、そして、本物のわかるアメリカ人を参加させた事などが成功したのではないかと思います。又、確かに時代も日本食ブームもひろがって、食器などにもこだわり、ニューヨーカーのレベルがあがってきて、一般の人でも理解するようになってきているのも事実です。
昔から日本の陶芸には、みな興味を持っていますが、ワークショップでも熱心に専門的な質問が出ていました。

【 1 】 展覧会タイトルと中里 隆の唐津焼作品
【 2 】 展示風景
【 3 】 展示風景(写真3~5)
【 4 】 手前はマルコム・ライト、その後は中里太亀
【 5 】 マルコム・ライト 作品
【 6 】 中里 隆 作品(写真6~8)
【 7 】 マルコム・ライト 作品
【 8 】 マルコム・ライト 作品

「人が使える壷や茶わん」手頃な価格も人気

マルコム・ライトは唐津で勉強して1970年にアメリカに戻り、バーモントにTURNPIKEという工房を開きました。アメリカでのアートとしての工芸でなく、日本で学んだという「人が使える壷や茶わん」などに粘土を考えたり、釉薬を使わずに独特の味をだす工夫をしています。また、彼は日本のとてつもなく高い値のつく巨匠価格を嫌い、作品が手頃な価格であることで知られています。量産の商品ではないのですが茶人が喜びそうな作品で、日本での作家価格から見ると、ほんとうに手頃で皆に喜ばれます。
中里 隆の娘、中里花子は唐津生まれ。マサチュ-セッツ州の名門スミス・カレッジを卒業後、唐津に戻り、中里 隆に2年間師事します。その後はデンマークのロイヤル・スカンジナビア社他でも経験を積んでいる国際派の作家です。現在はマルコム・ライトのスタジオに席をおき、独特の作品を制作しています。ワーク・ショップでの質疑応答も国際感覚でとても頼もしく、こういった人材が今後の日本のあらゆる伝統工芸に必要なのでは、とつくづく感じました。

【 9 】 マルコム・ライト 作品
【 10 】 中里 隆 中里太亀、中里花子 マルコム・ライト 作品
【 11 】 展示作品(写真11~13)
【 12 】 前列 中里 隆、後列 中里太亀
【 13 】 中里太亀 作品 右の火入れは中里 隆
【 14 】 中里 隆、花子親子のワークショップ・デモンストレーション(写真14~15)
【 15 】

NY茶人による茶の湯のデモンストレーション

4週目の唐津焼茶わんを使っての、茶の湯のデモンストレーションでは、25年位の茶人、NY裏千家の生徒さんでもあるグレッグ・キンゼイ氏の見事な薄茶のお点前で、やはりNY裏千家で修業中のピエール・セルネ氏が半東を勤めて、日本文化を披露して下さいました。
グレッグ・キンゼイ氏は茶道具のコレクターとしても知られていますが、最近の日本人にはない、もの静かな本物の茶人を感じさせます。
最近のアニメやおたく文化日本で浮いている日本のニュースの多い中、本物の日本をきちんと理解し、広めてくれる人々がいる事は、嬉しい事です。

【 16 】 2週目のパネルディスカッションに集まる人々
【 17 】 マルコム・ライトと中里花子(写真17~18)
【 18 】
【 19 】 3週目の唐津焼を使っての茶事 グレッグ・キンゼイ氏とピエール・セルネ氏(写真19~20)
【 20 】
【 21 】 Sara ストアー
【 22 】 Sara ストアー内
【 23 】 NY裏千家茶の湯センター入り口(写真23~24)
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※表示あるものを除き、写真は全て海老原嘉子撮影