第65回 2月に続き20周年を祝うAccent on Design

20周年を迎えたAccent on Design 慣例のAccent on Designが、8月15日~19日の期間、ジェイコブ・ジャビッツ・コンベンションセンターで開催されました。 今年は20周年ということで、NYのBloomberg市長がこの期間を「Accent on Design week」と名付けて祝うなど、2月に続いて大きな行事がいろいろと行われました。 16日にはAccent賞の発表・授賞式と、同じく20周年を迎えるDIFFA(Design Industries Foundation Fighting AIDS)の基金集めを目的に [20/20] とうたった、大がかりなパーティーがチェルシー・ミュージアムで行われました。 業界の出展社多数が参加している豪華な商品が当選するくじ引きもあり、この売り上げもDIFFAの基金集めになるため、18日に発表されるまで毎日勧誘していました。 Accent on Design Award 開催 今回のショーは、初日が台風接近による雨という天気予報で出足が気になりましたが、どうにかもちこたえ、人出は多かったように思います。前回の会場から模様替えをしたため、「すっきり広くなり、ゆったりした気分で見て周ることができる」と、来場者からは好評の声が聞かれました。 2月に引き続き、癒し系の商品が人気のようですが、色彩は落ち着いたトーンと極端にカラフルなカラーのブースのどちらかに分かれています。 Accent on Design Award決定前に目に付いたブースのいくつかを撮影しましたが、Accentの中で、イギリスのセクションとイタリーセクションがまとめて新しい商品群を出していました。イギリスは、フェルトをまったく新しい使い方でクッションなどにしているのが素晴らしかったのと、紙のノートブックをグラフィックで新しい形でまとめた、Darrell & Julia Gibbsデザインの「SUKIE」は新鮮でした。 入り口すぐにあるVITRAが人口草のようなものをカーテンにしていましたが、これは「Algues」というデザイナーErwanとRonan Bouroullecの商品だそうで、人気のようでした。 3社がベスト・ニュープロダクト賞に決定 ショーの終了時間6時以降にジャビッツ・センター前からバスが出るので、それに乗ってチェルシー21丁目にあるチェルシー・ミュージアムに向かいました。ミュージアム会場は昔からのパーティー用銀テープで全館が覆われていました。Accentの出展者や業界関係者が300人ほど集まり、飲んだり食べたりお寿司も出るなどパーティーは大変盛り上がり、受賞式のスピーチを開始するのに苦労するくらいでした。 受賞式はアラン・スティール代表のスピーチに始まり、2月の受賞者が次々とKarimデザインの新しいトロフィーを受け取り、その後、今回の受賞者発表と続きました。 今回は3社がベスト・ニュープロダクト賞に決定しました。 一つは、私も選んだイギリスのフェルト「Anne Kyyro Quinn」、二つ目はZoloの「Kushies」。やわらかでカラフルなBaby Toy(新作著作権の問題でいっさい写真を撮らせないとの事)です。三つ目は新出品者の「Walter」。Fold Bedding と言う名の木を好きな色に塗り、置き換えて飾れる斬新なアイディアの壁の装飾用品です。他には、継続して良い展示とコレクションを出品していることが評価され受賞したのは「LAFCO」でした。 Best Booth賞には2社が選ばれました。一つは「Built New York」。金沢のKIDIで教えていたArron Lownの会社です。ヒット商品を沢山出していますが、洒落たクールなモダンディスプレイが評価されました。もう一つは「Variegated」。寝室の雰囲気をブースにそのまま再現し、パジャマ姿でセールスをするという徹底ぶりでした。 ショーの後半は人出が少なく、皆大変心配していましたが、新しい客層で、入れ替わりつつあるのを感じました。次のギフトショーは2005年1月30日~2月3日に行われます。 ∵ Accent on Design Award 受賞社 ∵ ※表示あるものを除き、写真は全て海老原嘉子撮影

第63回 SOFA New York 2004

Sculpture Objects & Functional Art 展 「SOFA New York 2004」 国際美術工芸品エキスポ、SOFA(スカラプチャー・オブジェクト・ファンクショナル・アート)2004が、パークアヴェニューのアーモリーで、6月2日~8日まで行われました。Culture Incの社長だったMark Lymanが創立者であり現在の社長で、今回がNYで7回目、世界中からディーラー・コレクターが集まります。 他のトレードショーとは違い、Museumでは買うことができない、手に入らないレベルの一品ものを買うことができます。アンティックからコンテンポラリーまで、質の高い作品、Galleryがブースを出しています。 3年ほど前からSOFAとアート&デザイン美術館MAD(元アメリカン・クラフト美術館)のオーガナイズでContemporary Decorative Arts Week(CDAW)が同時期催され、Bloomberg市長も、アート・クラフトを活性化すると協力。NYの美術館、ギャラリーがCraft、Designの展示で、スケジュールを組み、今年は30軒ほどが名を連ねました。 → SOFA 公式HP → MAD 公式HP イサム・ノグチから若手作家まで、幅広いコレクションを展示 SOFAは、MADをサポートする為に、ギャラ・オープニング・パーティ、サイレント・オークションを実施し、その売り上げをMADに寄付するという大きな催しでもあります。ギャラ・ナイトは華やかなユニークに着飾ったコレクターが多く集まり、オークションに熱中したりと盛り上がります。 会期中メトロポリタン美術館やMADのキューレーター、著名アーティストのレクチャーも毎日行われ、勉強にもなります。今回は50の出展があり、内容は陶磁器、ガラス、布、木工、ジュエリー等でした。イサム・ノグチ、ジョージ・ナカシマとその娘ミラ・ナカシマから、若手のコンテンポラリー・ジュエリーまで幅広いコレクションが展示されています。 大量商品よりもクオリティーを重視 出展者は「NYは洗練された、良識あるコレクターが多く、真剣なお客が多く、良く売れるので、出品する方も質の良い恥ずかしくないものを持ってくるようにしている」と口をそろえる。ヨーロッパの著名な陶磁器や、ガラスの作家もの、ギャラリーも出展していて、アメリカのイメージが食の世界でも高級化しているように、大量商品からクオリティーを望む人達が確かに増えているのを感じます。 このSOFAはシカゴで先に始まり、この秋10月で12回目を迎えます。来年はフロリダのPalm Beach SOFA が International Fine Art Expositions(IFAE)と同時に2005年1月13~17日に行われることも決まり、ますます発展していきそうです。 イサム・ノグチの芸術作品の永久保存の場所 6月12日土曜日、ニューヨークのロングアイランド市のイサム・ノグチ・ガーデン・ミュージアムが、正午のリボンのカット・セレモニーと共にリオープンしました。 およそ2年10カ月の改築工事によりビルの安全性が強化され、車椅子でのアクセスも可能となり、エレベーターやエデュケーション・センターなども新設されました。美術館の名前はシンプルに「ノグチミュージアム」に変わり、ライブラリーのあるカフェとミュージアム・ショップが新設され、暖房や空調設備も一新し年間を通しての開館が可能となりました。 今年はイサム・ノグチ(1904~1988)の生誕100周年にあたり、アメリカ国内用37セント記念切手も発行されていて、郵便局で買うことも同時に楽しめ記念になります。 ノグチ・ミュージアムは、彫刻家イサム・ノグチの芸術作品の包括的コレクションの永久保存の場所であり、改造にあたっては、オリジナルの建物のローテクな要素は彼の作品の為の展示場所としての雰囲気が壊されないないよう特別なケアをして残されています。再開記念の「イサム・ノグチ:彫刻デザイン」展は、劇的演出効果の前衛オペラの鬼才、ロバート・ウィルソンがインスタレーションを手掛けた展示(自然の光りを抜け2階に上がると真っ暗な空間に影を演出する照明など)で、今まであまり見るチャンスのなかったマーサ・グラハム舞踊団の為の舞台装置の作品等、Videoでの動く画像も展示に加えられていて、イサム・ノグチの違った作品郡が見る事ができて新鮮です。 総計13のギャラリーに240点を超える作品を展示 明かりランプの展示会場は、わらぶきに中央の窓から田舎の田んぼが見える演出で、楽しませてくれています。続く2階の企画展示会場は、彫刻とデザインが混在する、飛び石を渡りながら彫刻や公共プロジェクトのモデルなど一点ずつ鑑賞を楽しめるドラマティックな展示で静かな空間を演出。対して1階の常設展示は、石、メタル、ウッド、クレー(粘土)等の力強い素材の彫刻作品が並んでいます。2階の企画展と1階の常設展あわせて13のギャラリーに、計 240点を超える作品が展示されています。 庭園の彫刻はイサム・ノグチの代表作でもある花コウ岩や玄武岩の作品がゆったりと静かに自然と調和して、そこ、ここに展示されていて、イサム・ノグチのオーラ溢れ、永遠の時を刻んでいるようで、アートに無関心な人でさえ心休まる空間をつくっています。 これからは彼の作品ばかりでなく、彼の作品のコンテキストの拡張および作品の遺産継承、また、彼の革新的アートの発掘精神を受け継いで他のアーティストやデザイナーの展覧会も開催されることになっているようです。ヴィトラ・デザイン美術館のオーガナイズでロバート・ウイルソンがその構成デザインを手掛けた今回の展覧会は2004年10月3日(日)まで開催されます。 ※表示あるものを除き、写真は全て海老原嘉子撮影

第62回 国際現代家具見本市(ICFF) Off Site イベント

Off Site イベントの中でも話題、Eric Chan and Karim RashidによるVIBRANT VISIONS展 Eric Chan and Karim RashidによるVIBRANT VISIONS展が、ニューヨークのMuseum of Arts & Design (旧 American Craft Museum)で、5月13日~15日まで行われました。 国際現代家具見本市(ICFF) のオープニングに先駆けるOff Siteのイベントとして、12日にOpening partyが開催。IDNFとMADの共同主催、トヨタ自動車の後援で車のコンセプトである“Vibrant Clarity「活き活き・明快」、L-finesse「先鋭 ― 精妙の美」”をプロダクト・デザイナーが形にし、その作品デビューとして初めて一般公開されたものです。 Karim Rashidは、カラフルで有機的なフォルムの座れるオブジェ“Meta-Objects”を発表。温度センサーのついた発光塗料のものや勝手に色の変わるランプなど、30個のすべて違う表現、触感、塗りの作品です。 Eric Chanの制作した“Personal Pond”は、多目的でインタラクティブなワークステーションです。中央のテーブルの上にある2つのまるい大理石が、マウスのような役目で、音楽の選択や電話などチャンネルを変化できるようになっています。Pondの上で手を手前においでおいでとすると音量が大きくなり、外へむけて手をふると小さく、強くNoとふると音がストップするものです。 ただ見るだけでなく実際に体験して、座って触って、このアート・サイエンス展のような新しい試みに、皆大喜びをしました。 NY Timesをはじめいろいろなプレスにもとりあげられ、ICFFのOff Siteの中でも、話題の展覧会として噂され、見られなかった人達に「幻の展覧会」の印象を与える大きな反響をよびました。 チェルシーホテルで行われたDesign Downtown 昨年のOff Siteで実験的に始めたこの催しが、今回は大々的に青空に上に向いた矢印のDowntownのロゴで開催。実験的な作品や売れっ子若手が多数出品していて、面白いイベントでした。 なによりも会場が、23丁目の7thと8thの間のChelsea HOTEL。今のチェルシーが流行るずっと以前の60年代当時、流行のアーティスト、ミュージシャン達の長期滞在HOTELとして有名で、よく事件を起こしたミュージシャン等のニュ-スがこのHOTEL前から写されたものですが、普段なかなか各階までは見れません。しかし今回、8階、6階、3階、1階が会場で、各部屋を見てまわれて、そのおもしさも加わったように思えます。HOTELの古い建物の螺旋階段や、昔からの壁画も斬新に見えて、それぞれのお部屋に案内されたような雰囲気で、このユニークな展示は大変好評でした。 HOTEL周辺のコミュニティーのサポートも多く、斜前の映画にも出て来る有名なドーナッツやさんのKrispy Kremeが毎朝無料で振る舞われたり、説明の小册子カタログも良く出来ていて、若手ががんばったこのDowntownは、今回の Off Siteイベントのヒットだと思いました。 何しろ沢山のイベントが同時に行われるので、大分見てまわったのですが、BrooklynのWiliamsbergは見れなかったのが残念でした。 Sample Content Sample Content Sample Content Sample Content Visionaire Galleryでの kid robot展 ※表示あるものを除き、写真は全て海老原嘉子撮影

第61回 国際現代家具見本市(ICFF)

第61回:  ICFF Off-Site イベント ― SoHo (2004/6/2) ICFF 全景 国際現代家具見本市(ICFF) 今年の国際現代家具見本市(ICFF)では、イタリー館が凝ったつくりとレストラン並みの試食をさせるキッチン用品のブースなど華やかに出展していたこと、スペインの長いブースがすっきりして目新しく見えたこと、イギリスのブースに活気がみえたことが特徴的でした。写真レポートです。 ICFF イタリアブース IQ light Pratt Institute 3form (material) Designer: Richard Schultz vitra Knollのテキスタイル Liora Manne AARONSON NOON LTD. (UK) 北館への通路 Raw Next Generationのブース ICFF イタリアブース Parsons School of Design Pratt Institute 3form(material) OFFI (Karim Rashid’s chair) Dakota Jacksonの家具 Liora Manne Modiss Illumination(スペイン) John Angelo Benson (UK) 椅子に座る Bruce Hanna Raw Next Generationのブース ICFF イタリアブース Parsons School of Design umbra

第58回 Japan Societyでのシンポジウム / Louis Vuitton展 / スタルクの新作時計

第58回:  Japan Societyでのシンポジウム (2004/3/10)   槇文彦氏 Fumihiko Maki (槇文彦氏作品) Fumihiko Maki (槇文彦氏作品) 「現代日本建築における技術と伝統」をテーマに大反響の3日間 ジャパン・ソサエティーで「現代日本建築における技術と伝統」というシンポジウムが2月26日、27日、28日の3日間に渡り開催され、大変な反響でした。 切符は早くに売り切れて、初日の槇文彦氏の講演は満員の為、別部屋にエキストラモニターを設置しての聴講となるほどの人気でした。 リチャード・マイヤー、Jack Larsen、NY Timesなど、著名建築家から建築記者まで毎日数多くの関係者が聴講していました。 主催はジャパン・ソサエティーでしたが、Architecture Record誌との共催だったこともあり、NYの建築、デザイン関係者がこんなに集まったのは、初めてなのではないでしょうか。 それに加えて、アカデミー賞にノミネートされたLost in TranslationやLast Samuraiブームも影響して、日本を本質的に知りたい知識人が増えていることも、この日本建築人気の一つのように思います。 また、海外での学生生活の後、帰国して日本で活躍している若手デザイナーや、日本で生活している日本語ぺらぺら外国人デザイナーなどが紹介する日本は、今までに見えなかった日本が見えるようになってきているようにも思え、本当にグローバルになってきているような気がして、大変興味深いシンポジウムでした。 夕方6時から始まった初日は、Architecture Record誌のロバート・アイビー氏が、Pritzker賞受賞の建築家であり、国連Headquarterを手掛ける槇文彦氏を紹介。講演では、今までの数々の素晴らしい作品のスライドが次から次ぎへと映され、日本の最初の国際派建築家の第一人者で、今最も話題の六本木ヒルズにも関わり、2008年のUN完成の新しいプロジェクトの夢を語られ、現役で張り切っておられるのには、ほんとうに感激しました。 ※表示あるものを除き、写真は全て海老原嘉子撮影   「現代日本建築における技術と伝統」をテーマに大反響の3日間 2日目には、基調講演として東京大学教授で建築史家の鈴木博之氏による「日本建築の過去、現在、未来」。 午後3時からは、LouisVuittonを手掛けた青木淳氏(建築家)、NYのNew Museum を手掛ける妹島和世氏(建築家)、Richard Gluckman氏(建築家)をパネラーに、コロンビア大学教授で批評家のKennth Frampton氏が進行役のパネルディスカッション。 3日目は、午前に2回、午後に3回のパネルディスカッションと盛り沢山でした。 最初のパネリストはライス大学建築学科教授のSanford Kwinter氏、岸和郎氏(建築家)、進行はコロンビア大学講師・ケン・ただし・大島氏、その次のセッションは「職人技と新旧素材の活用」をテーマに、パネラーは、隈研吾氏(建築家)、藤森照信氏(東京大学教授・建築史家)、進行はArchitecture Record誌のClifford Pearson氏。 午後の1番目が建築家の坂茂氏と建築構造家の新谷真人氏、進行はカリフォルニア・バークレー大学建築学部教授のDana Buntrock氏。坂茂さんの分かり易く説得力のあるレクチャー・質疑応答はダイナミックに感じました。 そしてMark Dytham氏、John C. Jay氏(UNICLO,RoppongiHillsプロデュサー)、青木淳氏、司会にNaomi Pollock氏(Architecture Record誌Tokyo.)。以前、NYのブルーミング・デパートが一番華やかだった頃のディレクターだったJohn Jayが、今は日本のユニクロや六本木ヒルズをプロデュースして東京を動かしてるのかと納得したり、最後のパネラーは手塚貴晴氏と由比氏、遠藤秀平氏、阿部仁史氏、司会にMoMAのパオラ・アントネリ氏と本当に華やかな顔ぶれで、新しい日本の動きが次から次と紹介され目を見はるものがありました。東京がおもしろいという意味が大部分かってきました。   左から、Tim Carther氏、槇文彦氏、海老原嘉子 左から、坂茂氏、海老原嘉子 左から、Dana Buntrock氏、坂茂氏、新谷真人氏 左から、Naomi Pollock氏、Mark Dythan氏、John C.Jay氏、青木淳氏 左から、手塚貴晴氏、遠藤秀平氏、阿部仁史氏   MILK Gallery でのLouis Vuitton展 2004/3/10 Milk Galleryでは、世界中のLouis Vuitton建築をテーマに展覧会が開催

第57回 Accent on Design

第57回: Accent On Design®(2004/2/10)   会場入り口風景 20周年記念、新改装のAccent On Design® NY恒例のイベント、インターナショナル・ギフトショーAccent on Designが2月1~5日まで開催されました。今回はAccent on Design 20周年ということで、会場も拡大し、ロゴデザインから改装まで、売れっ子デザイナーのKarim Rashidに依頼。入り口、新しいダブルデッカー・ラウンジの設営から、カーペットまで、全体をリフレッシュしました。 インターナショナル・ギフトショーのAccent on Design部門は、1984年の2月に始まりました。以来、現在まで続けて出展している会社は10社だけです。 Accent on Designが始まる84年以前、アメリカの一般市場では、モダンなデザインは特に注目されていませんでした。この運営会社GEORGE LITTLE MANAGEMENTの副社長のAlan Steel氏も「Accent on Designがアメリカのデザイン市場を拡大し、貢献したと思う」と話しています。 確かにそれまでは、個人デザイナーやデザインスクール卒の学生達の発表の場は少なく、Gallery 91が1983年にオープンした当初、発表する場を求めるデザイナーのエネルギーを感じました。 その後、Accent on Designに、デザイナーそれぞれが1、2個のデザイン商品を持ちより、ボリュームを持たせて展示し、ビジネスにして成功していく例もいくつか目にするようになりました。 会場入り口風景 Accent on Design のAとDをInfinity Spiral にした新しいKarim Rashid デザインのロゴ 会場風景 会場よりダブルデッカー・ラウンジを見る 会場内よりエスカレータートンネルを見る 実際の形でも作られて飾っている 会場風景 ダブルデッカー・ラウンジより全景を見る     新しく設営されたダブルデッカー・ラウンジ ダブルデッカー・ラウンジの下、スライド映写 20周年記念、新改装のAccent on Design 20年の経過で、価格競争やら大型化、癒し商品への移行など、いろいろな変化がみられます。今回は、こうした出展企業やデザイナー、商品の変化を、ダブルデッカー・ラウンジ下のスクリーンで繰り返し見せていました。 見晴らし台のような上層のラウンジでは、会場を上から眺めながら休めるようになっています。初日のショーがオープンした10時半から、副社長Alan Steel氏やKarim Rashidのスピーチがあり、ケーキカットもあって、20周年を盛り上げていました。 新しいロゴはAccent on Design のAとDをInfinity Spriral(無限大の螺旋)にしたそうで、ネオングリーンで会場のロゴ、受賞のトロフィーにも使われています。そして、このダブルデッカー・ラウンジは次回の授賞式などにも使われていくそうです。 大規模な模様替えということで、皆どうなることやらと案じたり期待したりしていましたが、前面には大型ブースが出てきて、今までの同じ区画のブース割りではなく、それぞれ違う形のブロックがブースになっています。古参の出展者は一瞬とまどったようですが、カーペットの蛍光色グリーンにピンクの柄が目を引いて、リフレッシュ、明るい未来を演出しているようでもありました。 初日の会場は結構混み合っていたようにみえたのですが、回復したように思えたアメリカの景気も、先週までの零下の寒さの影響か、暖かくなったショウの期間中も、思ったほどの購買客が集まらず、不調の会話がしきりでした。癒しの製品、特殊な商品で景気が良かったというブースもあり、商品次第のようでもあります。   新しく設営されたダブルデッカー・ラウンジ ケーキカット 新設Karim Rashid

第54回 メトロポリタン美術館の「織部 ― 転換期の日本美術」展

第54回:  メトロポリタン美術館の「織部 ― 転換期の日本美術」展 (2003/11/12)   桃山時代の伊賀焼きで直接古田織部と関わ って残っているものの代表作「破れ袋」 梶原拓 岐阜県知事 メトロポリタン美術館の「織部 ― 転換期の日本美術」展は、 本物志向の内容で構成 ニューヨーク市のメトロポリタン美術館で「織部 ― 転換期の日本美術」展が始まりました(2003年10月21日から2004年1月11日まで)。岐阜県美術館と共同企画で、5年の歳月を経て実現されたこの展覧会は、桃山時代の茶人、古田織部(1544-1615年)が、サイズ、形式などにこだわっていたそれまでの茶道、茶器に、ひと味違う新しいスタイル、革命を起こした部分に焦点をしぼって、注意深く構成されています。 Museum企画のシンポジウムでは東京芸術大学美術館館長の竹内順一氏、東京国立博物館陶磁器担当の伊藤嘉章氏、インディアナ大学名誉教授のJ.エリソナス氏、共立女子大学教授の長崎巌氏、国立民族学博物館教授の熊倉功夫氏、大阪大学教授の奥平俊六氏等が出席し、マイケル・カニングハム氏の司会で開催されました。 「茶道具とは」「織部焼の技術と意匠」「南蛮人の文化遺産」「織部焼の文様と辻が花の関連」「茶道史における古田織部の位置」「路上の歌舞伎もの」といったテーマのもと、専門家の分析や織部に関する分かりやすいレクチャーがありました。メトロポリタン美術館の講堂(オーディトリウム)は、ほとんど満員で(日本人以外の人で)した。 観客はみな本物・プロ志向の熱心な人たちで、すばらしいシンポジウムでした。それだけに、現在どれほどの日本人が織部についての知識を持ち、彼の茶道を理解しているのか、と心配になるくらいでした。 わび茶を大成した利休の茶碗 利休の後継者のひとり、織部の茶碗 オープン前日、メトロポリタン美術館でのパーティー デンドゥール神殿で開かれた大掛かりなオープ ニングレセプションの準備風景。吉野の茶会を イメージしたセットでの記念茶会(NY 裏千家) 26日にメトロポリタン美術館で行われた織部シン ポジウム  / 左から:東京国立博物館陶磁器担当の 伊藤嘉章氏、大阪大学教授の奥平俊六氏、国立民族 学博物館教授の熊倉功夫氏、共立女子大学教授の 長崎巌氏、東京芸術大学美術館館長の竹内順一氏、 右端はインディアナ大学名誉教授のJ.エリソナス氏 ※表示あるものを除き、写真は全て海老原嘉子撮影   NY裏千家のお点前で知事が一服、前夜祭パーティーで Japan Societyでの内田繁のお茶会も好評 Japan Societyを借りてのお茶会は、岐阜から各派の茶道関係者が100人近く訪れて大盛況だったようですが、内田繁の茶室の中で実際にお茶会を体験でき、初めてのJapan Society メンバーの人にはなかなか好評だったようです。 内田繁の茶室 メトロポリタン美術館のオープニングでも太鼓、 書道を披露した、無形文化財保持者、大倉正之助 (左)と書道家 矢萩春恵(右)中央は内田繁 滝村弘美(漆塗職人)の作品 岐阜の陶芸家、吉田喜彦の作品   グランドセントラル駅構内では「クラフト展・観光展」が開催 メトロポリタン美術館での織部文化のサポートはすばらしかったのですが、岐阜県はこの他にも「織部の精神を世界に発進」と、文化観光イベントを立ち上げました。 「オリベ2003 in NY」事業の「クラフト展・観光展」は、10月28日から11月2日までグランドセントラル駅構内のバンダービルトホールで行われ、飛騨高山の木工、美濃陶磁器、美濃和紙他、岐阜県の広報と愛知万博の広報をしていました。しかし、織部的という解釈の勘違い(?)パフォーマンスなども披露しており、大変な労力とお金を使ったようですが、NYにいるプロの協力をどうして得られなかったのか、不思議でした。 岐阜のクラフトでは、世界中に広まっている関の刃物やハサミは出品されていませんでしたし、今迄に何年もかけて国際コンペを実施した成果や、NYのデザイナーが岐阜に住み込み地場と協同で開発したすばらしいプロダクトが、すでにMoMAや他のミュージアム・ショップで紹介されている、といった国際的な動きは展示していませんでした。 こうした展開があれば、NYで知名度のあるデザイナーのPR力で、今回得られなかった現地メディアのパブリシティー他、地元のアドバイスも得られたのではないかと思いました。 行政や大企業のNY駐在を2~3年ずつ入れ替える勤務体制、「世界に発進」と言いながら日本に向けてだけの運営姿勢など、いつまでたっても60年代、70年代と変わらない思考では、アジア各国のインターナショナルなビジネスマインドに負けてしまうのではないかと案じます。 何でも自由に受け入れるNYの寛容さには、個々が批評家であるという厳しく真剣なビジネスマインドがバックグランドにあります。これらをきちんと受け止めずにお金を使っただけであっては、日本向けの成功物語にしかならないのではないか、と心配にもなります。 旧来の考え方を打ち破った、織部の精神に立ち戻ることも必要なのではないでしょうか。     Museum of Art & Designのギャラ・パーティー   MADのロゴ

第53回 ロックフェラーセンターで村上隆の大インスタレーション

第53回: ロックフェラーセンターで村上隆の大インスタレーション (2003/10/8)     ロックフェラーセンターの展示会場風景 高さ7メートルのとんがりくん 昨年のナム・ジュン・パイクやIBMでの森万里子展と同じPublic Art Fundのプロジェクトで、今回、村上隆「Reverse Double Helix」(二重螺旋逆転)という高さ7メートルの現代仏像風作品が、ロックフェラーセンターで9月9日から10月12日まで展示されています。Public Art FundとTishman Speyer Propertiesがオーガナイザーで、TARGETがスポンサーをしており、9月9日にはスケートリンク場を会場に盛大なオープニグ・パーティーが行われました。 最近のアートアニメのきっかけを作った村上隆は、プロデューサーもできるアーティストとしてアメリカで認められ、世界のトップアーティストになりつつあります。NY Timesが「アンディー・ウオーホールの次に出てきたポップカルチャー・アーティスト」とまで言っているほどです。 私には良くわからないのですが、最近のアートのおどろおどろしいものや、けばけばしく刺激的なだけでピンとこないものよりは、誰にでもわかりやすく、明るくて良いのではないでしょうか? 彼の歩みをふりかえると、1996年頃NYでローカル新聞の表紙を飾っていたり、アニメフィギュアーのアーティストの展覧会を企画したり、アニメオタク、Japanポップカルチャーを早くからアメリカに紹介していました。 2000年のパルコでのポップカルチャーショー(SUPERFLAT)の成功を、MOCAで2001年に発表したり、NYグランドセントラルでのWINKのショーが海外でのデビューで、それをきっかけに現在のように知れ渡った存在になったと思います。時代の読みとビジネスセンスに長けたアーティストではないでしょうか。 作品はこのところオークションに出品されているようで、Miss KO2(KOKOちゃん)はコレクターに莫大な金額でコレクトされています。 今回のような現代彫刻は六本木ヒルズにもあるそうで、ロックフェラーセンターではとんがりくんを中央に4体のカラフルな四天王像が囲み、周囲にはキノコ型のベンチが配されています。そして、このベンチにもスマイル・マークを思わせるようなカラフルな顔、顔、顔。さらに、周囲のビルから張り巡らせたコードでとめた、超巨大な目玉のバルーンが2個空に浮かんでいます。 目下、NYを訪れる観光客の格好の撮影場になっていて、毎日人だかりがしており、近辺のビジネスマンも思わず足を止め見上げています。     初日には盛大なオープニグ・パーティーが開催 スケートリンク・パーティー会場 展示夜景 オープニングにくりだしたキャラクター 展示夜景 パーティー会場風景 村上隆とJohn Remington(Targetの副社長) 村上隆 オープニングにくりだしたキャラクター 展示夜景 村上隆   FelissimoとFirstop     展示会場風景 Fiberglass “Ori” table by Douglas Fanning Sylvia Nagy (陶芸家と*岐阜Talkで作った作品) porcelain pieces “River” 「Made in Brooklyn」をテーマに開催されたFelissimo フェリッシモ・デザイン・ハウスがポートフォリオを見て選んだ38名のファッション、家具、プロダクト・デザインのプロトタイプから製品までの新しい作品の展覧会が9月8日~10月25日まで開催されています。最近のブルックリン・パワーをキャッチして「Made in Brooklyn」をテーマに、Brooklynをベースに活躍するデザイナーばかりを集めての新しいNYパワーの紹介となりました。展示デザインは知名度のあるAli Tayarに依頼、彼の作品展も4階で行われています。 オープニングにはデザイン界の人々で満員という盛況ぶりでした。 Brooklynでも、大きく分けてWilliamburg とDANBO の2つの地域が、アーティスト・コロニーとしてソーホーやチェルシーに次ぎ活発なアートメッカとなっています。ちょうどWilliamburg で第2回目のDESIGN WEEKENDイベント、Firstopが9月28日、29日に行われました。 Felissimoにも参加した多数のデザイナーが関わり、スタジオをオープンしたり、レストランやショップも参加して若い活気のある催しになっていました。 Felissimo

第52回 NYのBlackoutに影響を受けた2つの大きなイベント

第52回:  NYのBlackoutに影響を受けた2つの大きなイベント (2003/9/10)   ジャビッツ・センター   好評だったAccent on Design NYのインターナショナル・ギフトショーAccent on Designが8月10日~14日に開催されました。年2回開催されるのこのショーのことは、毎回このコーナーでご案内しています。今回はここしばらく低迷していた景気に、皆どうなることかと思って出展しましたが、2、3年ぶりに景気が上向いたようで、初日から好調な人出で、結果が良かったというBoothが多かったようです。Gallery 91も継続して出展しているおかげで、世界中の大手Museum Storeからのオーダーがさらに増えました。 今回もAccent on Design Awardを4社が受賞し、初日のショーの後には、2月の受賞者と一緒に表彰式・パーティーがありました。 このAccent on Designですが、オリジナリティーや魅力が減ってきているということで、次回のショー(2004年2月1日~5日)から模様替えをする計画があり、Karim Rashidにアクセント・イメージ・会場デザインを依頼しているそうです。Booth替えも行われるようで、皆どうなることやらと案じたり期待したりしています。   Award Ceremony Award Ceremony         Award Winner Best Product「Eastern Accent」 Eastern Accent のオーナー村松正幸さん 気になるアワードの結果は 今年のベストプロダクトを受賞したのは、「Eastern Accent」のNestin Glass Collection(ボストン)。Excellence in Contemporary Everyday Functional Objectsは、「BENZA」(ブルックリンNYの商品群)が受賞し、今年は若手有名デザイナーにグラフィックを依頼したオリジナル時計を発表しています。Excellence in Multi-lineは「Keena New York」が受賞。Overall Excellenceを受賞した「Michael Aram」は、長い間Lewis DolinのBoothで発表していたのですが、今回は独立してオリジナルの大きなBoothでのデビューとなりました。   搬出時にBlackout 例年より30分早く始まり、30分早く終わった今年のギフト・ショー。最終日は12時で終了し、我々は片付けを終わり、車で荷物を送り戻した直後の大停電でした。 ジャビッツ・センターでユニオン(組合)を使ったり、時間をかけて搬出していた人達は、Blackout の影響を受けたそうです。ジャビッツ・センターは自家発電に切り替えてくれたそうで、内部は問題なかったそうですが、外の渋滞やガソリンの列など帰宅に何時間もかかったそうです。 私の所では6人のアシスタントのうち、一人は友人の所へ、一人は我が家へ泊まり、後の人は歩きで何時間もかけてなんとか帰宅できたようで無事でした。NYのビルは電気がないと外の明るさとは反対に真っ暗になり、すぐに緊急のフラッシュ・ライト付きラジオを買ってきて、キャンドルの明かりで停電の情況を聞きましたが、NYではもう何が起きても皆落ち着いていて慌てないという感じがしました。ただ、友人の中にはアップタウンのオフィス49階から暗い階段を懐中電灯で歩いて降りた人や、エレベーターの中に9時間閉じ込められたという災難にあった人もいたようです。 電気が復旧した後も、コンピューター化されたNYオフィスは、時計やクーラーをはじめいろいろな調整が必要で、正常なオフィスワークには2、3日かかったようです。 Excellence in Contemporary Everyday Functional Objects Award

第51回 Museum Mile

第51回:  Museum Mile (2003/8/6)   Museum Mileの標識 メトロポリタン美術館前   大人も子供も楽しめるアートイベント Museum Mile は、‘アートを支援する’という公共の意識を高める手段として、1978年に始められました。5番街の104丁目からMuseumが並んでいる1マイルの間を特別に Museum Mile と名付けたそうです。この区間には 5th Avenue のサインにMuseum Mileという道路標識もついているのですが、普段気づかずに過ごしているニューヨーカーも多いと思います。 今年で25周年を向かえるこの Museum Mile フェスティバルは、6月10日の 午後6時から9時までという、わずか3時間のイベントですが、5番街の82丁目から104丁目が人で埋め尽くされる、最大規模のアートイベントです。NY市の最も重要な文化事業として、モデル的役割を果たしているそうですが、私も参加してみたところ、いつも静かな高級住宅地の5番街が、人で埋め尽くされていることにびっくりしました。 どのMuseumも順番待ちの列が幾重にも並んでいて、各ブロックにはプログラムとして、大道芸人が出ています。ミュージックあり、ダンスあり、手品等の実演あり、そのまわりに人だかりしているのも混雑の原因のようです。 メトロポリタン美術館の前の5番街はキャンバスとなり、大人も子供もチョークで絵を描いて楽しんでいます。50,000人の人出だそうですが、アートを支援するイベントで、これだけの人が興味を持って集まる文化レベルに、改めてNYを感じました。 公式には以下の9つのMuseumが今回のMuseum Mileプログラムです。 * 104St. El Museo del Barrio (212) 831-7272 www.elmuseo.org * 103rdSt. Museum of the City of New York (212) 534-1672 www.mcny.org * 92nd St. The Jewish Museum (212) 423-3200 www.thejewishmuseum.org * 91s St. Cooper-Hewitt, National Design Museum, Smithsonian Institution (212) 849-8400  www.si.edu/ndm/ * 89th St. National Academy of Design (212)