特別編(2) WTCビル崩壊に寄せて

特別編: WTCビル崩壊に寄せて (2001/10/03) 事件の16日前、8月26日撮影 Green StreetとGrand Street。爆音を聞き、直ぐ横の道から写した。(9:20頃) West BroadwayとCanal Street(9:30頃) WTC(世界貿易センター)ビルは個人的にとても深い意味のある建物です。今回は、事件に対して個人的な角度からまとめてみました。 毎年、我が家の年賀状は、NYのスカイスクレーパーをバックに写して30年続いています。8月26日はとても良いお天気でした。この日はめずらしく、(観光でもないのに)最近発展してきているというニュージャージーサイドまで、フェリーで見に行きました。今年の年賀状の景色はこれにしようと決めた船上で写した写真が、WTCビル崩壊から16日前の、最後の写真になってしまいました。 WTCビルには、他にも縁があります。 WTCビルが、日系人ミノル・ヤマザキ氏によって設計されたことは有名です。実は、1964年、最初に渡米した時、伯父の家で、彼が子供の時の写真を見せてもらいました。 私の母方の親戚は、1887年にアメリカに渡り、その後、シアトルで最初の日系人教会をサクラメントに建てました。伯父は、写真を見せ、その教会の前に並ぶ10才前後の生徒達の中に写った、ミノル・ヤマザキ、ジョージ・ナカジマ等を自慢気に教えてくれました。 この年は、ちょうどミノル・ヤマザキがWTCビルのコンペで、この仕事を取った年でしたので、伯父が誇りに思い、私に教えてくれたのでした。 毎日の報道では、映画のシーンを見ているようで、実感がないと思います。ですが、私の仕事場でもある住居は、WTCビルから15ブロック、約1km先の場所にあります。WTCビルの2度目の爆音を身体で感じ、大きな交通事故でも起きたのかと思い、外を見て、TVの画面を見たところ、WTCビルに炎があがったところでした。 実際に私の友人は、11日の朝早く、WTC第1ビル45階で1人で勤務についていました。爆音の後、誘導され、皆と45階から逃げ降りたそうです。階下のスプリンクラーでびしょぬれになり、外に出てWTCビルの火事と破片の散乱状況から大事を知ったそうです。そして、逃げろ逃げろの声と、後ろからの爆風と白煙から夢中で逃げ延び、私共の所へ助けを求めてきました。TVの実況と涙ながらの彼女の恐怖の体験談を聞き、もしも避難があと5分遅かったら、と彼女の無事を喜びました。ですが、階段をどんどん上がっていく消防団員やレスキュー隊員と大勢すれ違った、と涙ぐむ彼女に、会社の上司との連絡、領事館への連絡など、やらなければならない事も次々に頭に浮かび、彼女と一緒にオロオロと慌ててしまうばかりでした。 1歩出たGreene Streetから毎日見えていたWTCビルが、消えてしまいました。全く信じられない出来事が起きてしまいました。 Green Street とCanal Streetから9:25頃 左写真と同じ場所で夕方 WTC第7タワーがまだ燃えている9月16日 運び出された車 消防士 警備員 9月14日のキャンドル・サ-ビス 9月14日のキャンドル・サ-ビス 9月14日のキャンドル・サ-ビス   事件直後、Canal Street以下は立ち入り禁止地域で、入ることが出来きませんでした。 しかし、1週間目の月曜から職場の証明をみせて入れるようになり、グランド・ゼロの近くまで、行くチャンスがありました。 行く途中には、まだ道に置き去りのままの車の残骸などがありました。TVで見た光景と同じ現場を現実に目にすると、やはり身につまされました。しかし、現場はTVで見たよりもさらにひどいものでした。とても高い10階ほどもあるツインタワーの鉄枠や、まだ5階分位は残っているのではないかと思われる、崩れた建物のコンクリートや鉄くずの中で働く人たちが小さく見えました。大きな鋼鉄をひとつつずつ切り、運ぶ作業が行われていました。建設用のトラクターや器械類は、建設の為に出来ているので、壊す道具としては向いてないようでした。   消防署の前の学生寮に張り出された、消防士へのお見舞いと感謝の手紙 また、デリケートな作業なので、皆神経をつかいながらの24時間作業をしていました。街にはアメリカン・フラッグがあふれていました。アメリカン・フラッグは、この大惨事にまけまいとする活力のささえになっています。しかし、その反面、私達はこの大惨事に負けまいと、アメリカン・フラッグにすがっている様な気もします。 消防署の前におかれた沢山の花とCandle 様々なアメリカ国旗が>ウインドウに飾られる 様々なアメリカ国旗が>ウインドウに飾られる 星条旗を飾るウィンドウ-SOHO ベルヴュー・ホスピタルの壁一面に貼られた行方不明の方達の写真 ベルヴュー・ホスピタルの壁一面に貼られた行方不明の方達の写真 グランド・ゼロの瓦礫の山 グランド・ゼロにて1本ずつ鋼鉄くずを運ぶ 今、3週間がたち、いろいろな現実問題も出てきています。団結して立ち上がった、この活力を平和のエネルギーへとつなげてほしいと祈るばかりです。 __ 海老原嘉子

第25回(1)Ecco DesignのEric Chan(2)国際現代家具展(ICFF)とOFF Siteパーティー

第25回:  (1) Ecco DesignのEric Chan (2001/6/13)   エリック・チャンは78年に香港より渡米しました。 89年にミシガンのクランブルク・アカデミー・オブ・アート、デザイン修士課程を修了後、ヘンリー・ドレフュイスや、エミリオ・アンバース等の事務所を経て、89年に独立し、工業デザイン・アンド・プロダクト・デベロプメント(ECCO Design)を設立しました。 彼のデザイン・コンセプトは「より人間的なデザイン」です。それを実現するために、テクノロジーを駆使して、製品をつくりあげています。 日々テクノロジーが進化し続ける中、複雑なテクノロジーをシンプルで使い易い形に表現し、テクノロジーと人間、自然、社会との調和をもたらすことがデザイナーの仕事だと、彼は言います。こんな時代だからこそコストや技術の制約に捕らわれず、その意味や感覚の探究がデザインの役割になりつつある。ここに業界の人々から、彼がイノベーターと呼ばれているゆえんがあるのではないかと思います。 物静かで、おだやかな彼の視野は広く、デザインに留まることなく、経済、政治、地球環境、芸術文化哲学に及びます。こうした彼の意識の高さが、デザインにも表れています。 デザインを考える上で、彼はまず、簡単なスケッチをします。それは、非常に抽象的で感覚的なもので、その段階ではコンピューターは使いません。人間としてのコンセプト、感覚を大切にしている彼ならではの表現のスケッチです。そして手作りのモデルをつくり、徐々ににその抽象的なコンセプトをテクノロジーとコラボレートさせてゆくのです。こうして注意深く作られた製品は、世界中で愛されていますが、彼はこうも言っています。 「私はたくさんの消耗品を作っているが、段々その価値が低くなっているような気がする。これから先は、資源を使って意味のない商品を作る必要が無くなってくると思う。資源はどんどん無くなる。最後に人の中に残るのは、経験と記憶。だから私は経験を作るのに興味をもっています。」彼の作ったものを経験してみたいと思わずにはいられなくなるのです。 ◊  →↓ ECCO Designのオフィス ECCO Designのオフィス   パーテーション (ハ-マン・ミラ-社)  パーテーション (ハ-マン・ミラ-社)  ニューヨークにある彼の事務所は、彼のコンセプト通り機能的でシンプルです。しかも使い手のニーズが熟慮されていて、訪問者が必ず感激してしまうデザイン・オフィスです。 個人個人のデスクは、紗のようなニューメタルで作られたパーテーション(ハ-マン・ミラ-社の為にデザインされたもの)で区切られていていますが、空間全体の一体感を失うことはなく、圧迫感も感じさせません。しかも各自のプライバシーは働く場として適度に保たれています。また、必要に応じて簡単に移動させることができます。   デスクは、有機的な造形で角張った角はなく、どの方向からも人が集う事ができます。個人で使う時には中央のくぼみにスッキリと体が納まります。また、電気製品などのコードを中央の穴に入れてしまえば、机の上がコードだらけになる心配もありません。また、そこに卓上のパーテーションを取り付けることが可能です。もう一つのデスクはスライド式のサイドテーブル付きです。そして何より、愛らしいのがその足の形です。(すべてEcoo Designによるハ-マン・ミラ-社の新製品事務用具) Ecoo Designによるハ-マン・ミラ-社のデスク   卓上のパーテーションを取り付けたデスク スライド式のサイドテーブル付きデスク 廊下におかれた長椅子 廊下におかれた長椅子 背もたれを付けた長椅子 長椅子 廊下には、快適な座り心地を考慮して、座面が微妙なカーブになっている長椅子が置いてあります。アートピースにも思えるこの長椅子にはオプションで背もたれを取り付けることができます。 彼がデザインしたプロダクトのショーケース棚 電話機など 普段彼が会議室として使っている部屋には、これまで彼がデザインしたプロダクトのショーケース棚があり、電話から文房具まであらゆるものが並んでいます。これらはどの作品も彼のコンセプト通り、人とデザインの関わりを大切にしています。 一世を風靡した、あのユニークな形をした電話は、女性と男性の体の曲線をモチーフにしているそうです。 文房具類では、ステンレスのビジネス・カード・ホルダー、ブックマーク/ルーペ、ものさし、ペーパーナイフのシリーズが最近商品化されました。これらは、使い易さとシンプルなデザインが好評で、世界中から注目を浴びています。また、日常的に何気なく使っているステープラーは、縦にも立てることができて、彼のこうした気の利いたプロダクトに、「人に優しいデザイン」というコンセプトが一貫して感じられます。 電話 SOFT EDGE – RULER ビジネス・カード・ホルダー ステープラー   「折り紙建築展」展示風景 最新のプロジェクトでは、MoMAの向かいにあるアメリカン・クラフト美術館で行なわれている、「折り紙建築展」の展示デザインを手がけています。 私が、この展覧会のゲスト・キューレーターを依頼された時から、重厚な美術館に、小さな紙の軽い作品をすっきりと見せてくれるデザインをしてくれるのは、彼ではと思い美術館にお願いして、協力して頂きました。彼は会場構成を全て紙で統一しようと、新素材の様々な紙をリサーチしました。しっかりとして、フレキシブルなコルゲ-ト紙を探すために、私自身もインターネットで、世界中を探しました。結局最初に彼が手に入れたサンプルのモノと同じ素材をドイツから取り寄せました。 ダイナミックで立体的な流れを、彼特有の曲線で会場全体に表現する事で、我々の案は決まったのですが、古いしきたりの美術館の説得や設置に、大変骨を折る事になりました。それでも、エリックの空中展示の折り紙建築展は、大変な反響を呼んで、企画展では今迄にない美術館来館者の記録を作りました。こうした彼の多方面での活躍はNYのプロダクト・デザイナーの先輩スターとして、ますます、若者達のあこがれを集めています。 「折り紙建築展」開催の詳しい情報はこちら     (2) ICFFとOFF Siteパーティー オランダのブース デザイン・スクールのブース 2001年のICFF(International Contemporary Furniture Fair)

第18回 (1)カリム・ラシッドのアート展 (2)ハロウィン・パレード2000年 (3)ブラックタイ・パーティー (4)ワールドデザインコンペ・JAN KEN PON授賞式、受賞者発

第18回:(1)カリム・ラシッドのアート展  2000/11/22 ●カリム・ラシッドのアート展 NYのホットなプロダクト・デザイナー、カリム・ラシッドの2度目のアート展がソーホーのSandra Gering Galleryで行われました。カリム・ラシッドがコンピュータで描く流線形の型に、特長のある蛍光色を中に塗った白いオブジェを組合わせたものが床一面に設置されて、作品が部屋いっぱいに展示されています。 壁には、紙やキャンバスの代わりにコンピュータで描かれた彼のスケッチが2つの壁に展示されています。一つは静止画像をいくつかつなげてフィルムに印刷したものを薄い光の板をバックにして投影し、コンピューター上の画像で見るのと同じような効果を出しています。もう一つは、動きのあるスケッチをピクセルを荒らくしてゆっくりと動かしたものをコンピュータからビデオに移して、それを壁に映写していますが、壁に描かれた顕微鏡の描写のごとく不思議なアートになっています。 何よりも、彼の周りに集まる今風でファッショナブルなNY Peopleの仲間たちに囲まれて、適材適所を得た現代アートとしての存在を感じさせています。       第18回:(2)ハロウィン・パレード2000年  2000/11/22 ●ハロウィン・パレード2000年 今年もニュ-ヨ-カーが楽しみにしているハロウィンがやってきました。仮装コスチュームを売る店では、盛大に売り出しに力を入れていましたし、お客も入っていたので、さぞかしパレードはすごいのではと期待しましたが、思ったほどではなく、例年のごとく今年も個人的パーティーが多く、そちらの方で盛り上がったようです。 それでも毎年、オリジナル・アイディアの仮装には感心させられます。今年のアイディアでは優雅な透明人間カップルが目をひきました。   地下鉄内にもあふれる仮装   コーヒーショップで休む一行 アルミホイルを利用した衣装 透明人間 ハロウィン行列     第18回:(3)ブラックタイ・パーティー  2000/11/22     ●ブラックタイ・パーティー ハロウィンが終わって、11、12月のNYは、オフィシャルなパーティーがめじろ押しで、各美術館は、これでもかこれでもかと企画(作戦)のためのパ-ティ-を開きます。 メトロポリタン美術館からは毎週のごとく、一人最低$500のパーティー招待状が届きますし、MoMA、グッゲンハイム美術館、アメリカン・クラフト美術館など他の美術館も‘ギャラ・パーティー’と称していろいろなアイディアで基金集めのパーティーをします。 だいたいは、ギャラ・パーティーというとアーティストやデザイナーの著名人の名をあげて賞をあげるとうたったものが多く「ブラックタイと正装で」と服装制限をして、それぞれのソサイティの人たちが、自分達がミュージアムやアーティストをサポート、後援しているのだという満足感と楽しみのために参加し、お洒落と会話を.楽しみます。 メトロポリタンは、いくつもある広大なスペースの空間の中庭を使って、メンバーランク別に分けてのオープニングから、ホリデイパーティーまで。美術館主催のパーティーを次々と月2~3回は行っていますが、他にもサポートメンバー等のためには個別なパーティー会場も提供し、基金集めをします。これらの会場には、いつでも日本の企業の姿が見えないのですが、その割にはミュージアムの方達にアポをとりたがったり、会いたがる人達もしばしばいます。 ミュージアムとつながりたかったら、まずメンバーになるのが最初のおつき合いの常識のような気がします。こういった文化的でソーシャルなおつきあいができるようにならないと文化人とはいえず、NYで肩身のせまい思いをします。     第18回:(4)ワールドデザインコンペ・JAN KEN PON授賞式、受賞者発表パーティー  2000/11/22 ●岐阜ワールドデザインコンペ・JAN KEN PONの授賞式、受賞者発表のパーティー 岐阜県が主催し、IDNFが2年かけて行った「岐阜ワールドデザインコンペ・JAN KEN PON」の授賞式、受賞者発表のパーティーが行われました 受賞者全員と関係者が舞台に、バックには2等の作品スライド 審査風景 デザインコンテスト審査員   「ワールドデザインコンペ・JAN KEN PON」は、ジャンケンポンという国際的に通用する遊びをタイトルとして、岐阜の地場産業の紙、刃物、陶磁器、木工等で作ることができる、若く新しいアイディアやデザインを募集した国際コンペで、19カ国から110名の応募がありました。その中から2等2名、3等1名、佳作3名、企業賞4名が選ばれ、54丁目とレキシントン・アベニューの角にそびえる超モダンなマシモ・ヴィニアリのデザインした教会を授賞式の会場にして行われました。はるばる各国からの受賞者10名と岐阜県から6人が出席し、お互いに親睦を深め盛り上がりました。こういったパーティーも参加者それぞれにとって、将来につながる大切なデザイン界の出会いとなり、大切なことだと思います。   2位受賞者 井田志乃と作品 2位受賞者 Melonie Higashiと作品 3位の賞状を受けるFleur Grenier   ♦受賞作品 受賞作品2位 [Knitting Bag] 井田志乃/日本 受賞作品2位

第16回 慣例NYのインターナショナル・ギフトショーあれこれと この夏NYをわかせたCow Paradeのこと

第16回: 慣例NYのインターナショナル・ギフトショーあれこれとこの夏NYをわかせたCow Paradeのこと   2000/9/13 ●今夏、NYでもっとも話題を集めたCow Parade ニューヨーク市、夏休み観光キャンペーンとして、ジュリアーニNY市長の協力と各企業、地元レストランなどのスポンサーがついて、約500のデザインされたグラスファイバー製の実物大の牛が、NYのあちこちに6月15日から展示されています。 観光客はもとより、仕事の行き帰りの人たちにも、微笑みを誘うこの楽しい催し。ことの起こりは1998年の夏、スイスのチューリッヒでした。 地元アーティストの手によってペイントされた牛400頭が並ぶイベントに、スポンサーが付き寄付金が集まり、イベント終了時には800頭に増える大反響を得ました。そのとき、出張でアテンドしていたシカゴの小売店協会の会長が、この企画に魅せられ、1999年の夏にはシカゴでCowParadeが実現しました。シカゴ市全体で5億ドル近くのお金が動き経済活性化に貢献したそうです。 主催者のカウパレード・ホールディング・コーポレーションが「やはり世界の中心、ここNYで」と話を持ち込み、NY市、市公園局の許可を得てこの夏のイベントとなったわけです。 今年の初め『牛にペイントしたいアーティスト募集』の告知が行われ、約1200のデザイン画の中から、スポンサーは1頭に付き7500ドルを払い好きな牛(デザイン画)を選び、それぞれの広告スペースに展示しました。 独自のデザインをすることもできますが、‘ずばり宣伝’は許されず、あくまでも芸術的、創造的な方法でビジネスにつなげることのみ許可されました。 人通りのあるような場所、たとえば、グランド・セントラル駅構内、バス停、5番街、貿易センター近辺、ミッドタウンのオフィス街からVillage、Sohoと外を歩くと必ずどれかにあたり、楽しくなるこのパレード。牛たちは9月4日に取り払われて、9月28日にオークション・ハウスでオークションにかけられ、その売り上げは芸術、教育福祉団体に寄付されることになっているそうです。 「なぜNYで牛なの?」ということはあまり気にせず、何にしろ、作る人、見る人、町全体が明るく活気がでて、楽しいこのイベントに、気持ちよくスポンサーになり、すんなり許可を上げたNY市をさすがと思います。 これが日本ではと思うと、まず前例がないにはじまり、会社の利益につながらないスポンサーが、はたしてつくのかなと考えてしまいます。皆が自分で感じ、楽しめる文化に投資をする日が近いことを祈ります。 今回のアクセント・アワードで4社が受賞。ベストコレクションで受賞したGallery91のブース ベストコレクションの中のD-Brosのステーショナリー・グッズ   ペストプロダクトに選ばれたサンフランシスコのPablo のデスクランプ 総合ですぐれた商品揃えとして2社が受賞、一つがVITRAのMuseum Qualityプロダクトが受賞 もう一つはテーブル、ベッドまわりのリネンで受賞したNYのAREA社 1月の受賞者と今回を一緒に受賞パーティーが開かれ、新しくAlan Hellerがデザインしたトロフィ ーを手にするEastern Accent 村松氏夫妻(1月受賞)とGallery 91海老原嘉子   このギフト・ショー、『アクセント・オン・デザイン』以外は今まであまり紹介していませんが、今回はハンドメイドなどで個人作家の面白いものが出てきているように思いました。『インターナショナル・ハンドメイド』のおおがかりなテントの展示会場は、玉石混合のところもありますが、中には優れた作家もいて、がんばっています。 海外からのHand Madeをまとめたテント張りのおおきなブース 毎年日本から出品しているMittskoのオリジナル手作りフェルト   アメリカ人による紙の手作りランプ ドイツ政府が力を入れて後援しているハンドメイド特別展示会場の中の陶芸家 Gallery91も毎回出展しているのですが、今回、特に印象に残っているのは、NYで活躍しているハイ・デザイン・ジュエリーの石山れいこさんと、日本から出品しているMittskoのオリジナル手作りフェルトの垂井三津子さんなどの作品が、際立っていたことです。 他に、今年は『MuseumSoures』部門が力を入れて、ジャビッツ・コンベンション・センターのガラス張り天井のクリスタル・ルームの下に大がかりな特別展示を行いました。 メトロポリタン・ミュージアム、グッゲンハイム、アメリカンクラフト、ウイットニー、自然博物館…、と各美術館のミュージアム・ショップの特徴が表れた品々を並べて演出していました。 日本にはなかなか浸透していないMuseumShopですが、アメリカでは長い歴史があり、生活に密着しています。日本ではこれからなのでしょうか。生活がほんとうに文化的になったとき、定着するように思います。実際の『MuseumSoures』のブースは、案外に地味で小物が多く、『KidsStaff』と隣り合せのブースになっていて今ひとつの感はあります。   (1)メトロポリタン・ミュージアム (2)アメリカン・クラフト・ミュージアム (3)ウイットニー・ミュージアム (4)グッゲンハイム・ミュージアム (5)アメリカン歴史博物館   ●今夏、NYでもっとも話題を集めたCow Parade ニューヨーク市、夏休み観光キャンペーンとして、ジュリアーニNY市長の協力と各企業、地元レストランなどのスポンサーがついて、約500のデザインされたグラスファイバー製の実物大の牛が、NYのあちこちに6月15日から展示されています。 観光客はもとより、仕事の行き帰りの人たちにも、微笑みを誘うこの楽しい催し。ことの起こりは1998年の夏、スイスのチューリッヒでした。地元アーティストの手によってペイントされた牛400頭が並ぶイベントに、スポンサーが付き寄付金が集まり、イベント終了時には800頭に増える大反響を得ました。そのとき、出張でアテンドしていたシカゴの小売店協会の会長が、この企画に魅せられ、1999年の夏にはシカゴでCowParadeが実現しました。シカゴ市全体で5億ドル近くのお金が動き経済活性化に貢献したそうです。主催者のカウパレード・ホールディング・コーポレーションが「やはり世界の中心、ここNYで」と話を持ち込み、NY市、市公園局の許可を得てこの夏のイベントとなったわけです。 今年の初め『牛にペイントしたいアーティスト募集』の告知が行われ、約1200のデザイン画の中から、スポンサーは1頭に付き7500ドルを払い好きな牛(デザイン画)を選び、それぞれの広告スペースに展示しました。独自のデザインをすることもできますが、‘ずばり宣伝’は許されず、あくまでも芸術的、創造的な方法でビジネスにつなげることのみ許可されました。人通りのあるような場所、たとえば、グランド・セントラル駅構内、バス停、5番街、貿易センター近辺、ミッドタウンのオフィス街からVillage、Sohoと外を歩くと必ずどれかにあたり、楽しくなるこのパレード。牛たちは9月4日に取り払われて、9月28日にオークション・ハウスでオークションにかけられ、その売り上げは芸術、教育福祉団体に寄付されることになっているそうです。 「なぜNYで牛なの?」ということはあまり気にせず、何にしろ、作る人、見る人、町全体が明るく活気がでて、楽しいこのイベントに、気持ちよくスポンサーになり、すんなり許可を上げたNY市をさすがと思います。これが日本ではと思うと、まず前例がないにはじまり、会社の利益につながらないスポンサーが、はたしてつくのかなと考えてしまいます。皆が自分で感じ、楽しめる文化に投資をする日が近いことを祈ります。 ロックフェラーセンター前 メトロポリタン・ミュージアム裏セントラルパーク 59丁目ゼネラルモーター広場のエンジェルCow 大人気の5番街プラザホテル前のパーティーで踊り狂う2頭 9丁目ゼネラルモーター広場のガウンにカールの牛 タイムズ・スクエアー

第10回 新しいアートの動きをアメリカン・クラフト美術館と SoHoのアートギャラリーから見る

第10回: 新しいアートの動きをアメリカン・クラフト美術館と SOHOのアートギャラリーから見る 2000/3/8   ● アメリカン・クラフト美術館『クラフトの定義:ニューミリニアムのコレクション』 NY近代美術館の前にあるアメリカン・クラフト美術館。昔から立派な空間で、アメリカの工芸を専門に展示していますが、今また新しい動きを盛んにしています。以前、クーパーウイット・ナショナル・デザイン・ミュージアムのキューレーターだったデビット・マックファダン(David McFadden)氏が、ここのチーフ・キューレーターとして呼ばれて、常に「クラフト」「アート」「デザイン」の定義の問いかけをしています。 アメリカン・クラフト美術館外景 ジャヴアメリカン・クラフト美術館入口 ミュージアムにも、今までの工芸愛好に偏った層に加えて、デザイン寄りのファンも増えてきて、建物も来年着工で改装されることもあり、今後が楽しみ€ネ美術館です。ここで行われている『クラフトの定義:ニューミリニアムのコレクション』という展覧会。25年のコレクションからガラス、陶芸、金属、ファイバー、木工作品など150点あまりの、これまで見せていなかった作品を4つの部屋に分けて展示しています(2月9日~5月7日)。出品作家も大御所のPeter Voulkos(陶芸)、Jack Lenor Larsen(織物)、 Lenore Tawney(ファイバー)、 Robert Arneson(陶芸)から、木工のWendell Castle、 ガラスのDale Chihuly 。日本のガラス工芸の大家である藤田喬平など。他にもFrank GehryやGaetano Pesceの家具があったり、三宅一生の服、Toshiko Takaezu(陶芸)や、Dakota Jackson、Thomas Loeser、Wendy Maruyamaの家具。James D. Makinsの陶磁器等、幅広い作家達の作品のコレクションが各部屋に分かれて飾られています。そして‘チャレンジング’の部屋では、テクノロジーや新しい素材も「これからのクラフトの課題」として取り組み一品ものから量産も手がける若手の作家達が紹介されています。Marek Cecula(陶芸)、Stanley Lechtzin(CAD/CAMを使って作る金属工芸)、スキャンして織りあげるジャガードという日本の山口英夫の作品は、すばらしい舞台に飾られて、ひときわ輝いて見えます。プラスティックに皺寄せを入れた「クリンクル」ランプのLyn Godley 、ロシア生まれのConstantine Boymなど。 他にも、新世紀の幕開けにミュージアムのコレクションをご披露しながら「これからのクラフトの定義について皆で考える展覧会」といった感じがしました。 内部展示風景 フランク・ゲーリーの家具 Wendell CastleのMusic Rack アメリカン・クラフト・ミュージアムのショップ全景 Philip Moulthrop の白松のモザイク細工のボール1996年作(写真撮影:Eva Heyd) 山口英夫のコンピューター・スキャンした「しだの葉」のジャガード     ● 今、話題のCRG Gallery ギャラリーCRGのオーナーの一人リチャード.デスロッシュ(RICHARD DESROCHE)とアーティストのロバート・ベック(ROBERT BECK) Sohoでは、Galley 91の隣りに、マデソン・アベニューから移ってきたCRG Gallery(Carla Chammas, Ricchard Desroche, Glenn McMillanの頭文字)が、センセーショナルな展覧会を開き2月19日オープンしました。このギャラリーの若いオーナー3人ですが、アップタウンでのコレクターとコネクションを持っているらしく、最初の頃から話題展を開催しています。今回の”Robert Beck”の『Nature Morte』(自然死とでも訳すのでしょうか)と題された個展は、オープニング時にギャラリーの前に山のように花束がつまれ、それを見て皆、昨年のジョン・ケネディー・ジュニアを思い起こしました。その後も毎日花束がつまれ、隣りのGallery 91には毎日「誰が亡くなったのか?」と人が尋ねに入ってきます。 Robert Beckはぴんぴんしていて、彼の作品は幼児期の思い出や、生い立ちを作品にしているもので、外の花束もそのメモリーの一つの作品とのこと。3月25日まで行われますが、センセーションを死んだ気でやっているのですから話題になるのは当然でしょうか?  

第8回 ニューミレニアムに向けての2000個のオブジェ展

第8回: ニューミレニアムに向けての2000個のオブジェ展 2 0 0 0/1/2 6 ● 2000年を迎えたNYの素顔 NYのNew Millinniumは、タイムズ・スクエアーの年越し騒ぎのイベントにエネルギーを消耗仕切ったのか、とても静かで、ほとんど普段の土・日といった感じで年が明けてしまいました。 NYの新年は普通1月1日だけが休みなので、日本のお正月のイメージはありません。ですが面白いことに、毎年1月4~8日の間、Xmasツリーをあちこちの通りに捨てる行事(?)があります。 これが毎年のことなので、何か日本の門松を連想させ、私にはお正月っぽさを感じさせます。SoHoや、倉庫ばかりのように見えるチェルシーあたりでも、本物のもみの木のクリスマス・ツリーがたくさん捨ててあって、その香りが漂っています。もちろん、皆さんこれを飾っていたわけで、まだまだニューヨーカーもクリスチャンなのか伝統が残っていることを感じます。 捨てられたツリー /Soho 捨てられたツリー /チェルシー     ● Gallery91の2000年 SoHoのGallery 91で「ニューミレニアムに向けての2000個のオブジェ展、パート1」が1月12日より3月11日まで開かれています。この展覧会では‘紙製品’をテーマに、カレンダー、時計、ポスター、グラフィックを中心におよそ300点の作品が展示されています。世界中のそうそうたるグラフィックデザイナーのオリジナルカレンダーやペーパー・グッズが多数出品されており、たとえば、松永真氏のテーマポスター*1を皮切りに、プッシュピンスタジオ、レーザーフィッシュのカレンダー、松本高明のワールド・コンペ・ポスター、日本から田中一光、黒田征太郎/K2、小島良平のカレンダー、内田繁のムーンライト、茶谷正洋のカード他多数の作品が展示されています。素材を生かしてるだけではなく、それらの多様性と繊細な表現の作品群は、ニューヨーカーに感激を与えています。 ニューミレニアムに向けての2000個のオブジェ展 ニューミレニアムに向けての2000個のオブジェ展 *1;松永真作のGallery 91「2000 Objects for New Millennium」ポスター   この2000個オブジェ展パート1の作品には、日本の左合ひとみによる通産大臣賞受賞のポップアップカレンダー*2。D-BROSの渡辺良重の楽しいプロダクトの一つ、食事が楽しくなりそうなプレイス・マット ── 紙のランチョンマットは動物の形のキリコミがあり、そこを立てることではし立てになる ── *3。もう一つD-BROSの植原亮輔の「A Path to the Future」と題した線路とハイウエイがデザインされたパッキングテープ*4など日本人デザイナーの作品も展示されています。NYのJOY NAGYが紙で作った鮮やかな色の花器と花、Teaセットと靴*5。ソーホーの住人NAGYの靴や花と花器は、日本の繊細なアイディアとはまた一味違い、とても明るく楽しい作品です。 建築家 茶谷正洋の有名なオリガミ建築ポップアップ・カードは、全コレクションを見ることができます。そして、彼の秘蔵コレクションとして、それぞれのオリジナル建築家のサイン入りカードや、クリントン・ブッシュ・レーガン各大統領のサイン入りホワイトハウス・カードなどが展示されています*6。この紙展、ユニークな展示構成と展覧会でNYのメトロポリス・マガジン やIDマガジンにも紹介され話題を呼んでいます。   *3;動物ランチョンマット *2;ポップアップカレンダー *4;パッキング・テープ *5;花器 *6;オリガミ建築   「ニューミレニアムに向けての2000個のオブジェ展」では、続く4・5月には‘Future Design’をテーマにして新しい素材やアイデアを展示。6月のテーマは‘ガラス’で、NYで行われる世界ガラス会議に協力しガラス作品の色々を紹介します。いずれも各界の著名デザイナーが世界中から参加します。7月からも12月までは‘環境問題’‘ニューメディア’‘日常生活用品’などのテーマに分けて、2000年の一年間を通してGallery91で2000点を展示即売します。 興味のある方は、ぜひ参加してください。 オープニングパーティにて

第7回 バルドリアのWebショップ/イッセイの展覧会

第7回: バルドリアのWebショップ/イッセイの展覧会 1 9 9 9/12/8 ● バルドリア Baldoria 北イタリー、レイク・コモの伝統ある上質のシルク、そのハンドメイドのシルクアクセサリーデザイン工房として、4代続くことで知られている(Pianezza)ピアネツァ・ファミリー。曾御祖父さんのコレジオーネ・ピアネツァ(Collezione Pianezza)の時代から、現在のパオロ・ピアネツァが引き継いで、高級ネクタイ・スカーフを手がけています。ミレニアムの終わりのこの時期に、新しいビジネス手法として、世界への情報発信を目指しオン・ラインでWebストアを開設。11月9日、NYのそうそうたる人々を招待してのお披露目パーティーが、素晴らしい眺めの会場で行われました。このバルドリア・ドット・コムの特徴は、仲買人や中間業社が入ることによりコストが上昇や、末端客の好みが作り手には伝わらないなどのビジネス形態の煩わしさをなくしたこと。顧客が好きなものを選び好きなメセージを入れてオーダーすると2週間後に直接送られるシステムになっています。   ウエブサイトを見せるMr. Paolo Pianezza 会場から見るマンハッタンの夜景 ウェブ・デザインを担当したのが、E-Commerce のスペシャリストで有名なウオーターズデザイン・ドット・コム(Watersdesign.com)で、エレガントなベスト・サイトを作り上げたと評判です。このショップにはもうひとつ特徴があり、ショッピング客の為に「アンドリア」という名のiconが、パーソナル・サービス・アシスタントとしてお客を誘導してくれます。2000柄のパターンから好みのネクタイ又はスカーフを試着して、気に入ったものをショッピング・カートに入れる。最終的に決定した商品以外も顧客データベースに記憶してくれるので、次回の買物でアドバイスが得られるなど、とても便利にできています。また、70種類のメッセージから好みを選んで、ネクタイやスカーフの端に織り込み、パーソナル・メッセージを添えて特別の贈り物に仕立て上げることもできます。バルドリア・ドット・コム のカラフルで、エレガントなストアー。お利口さんなiconの助人とユニークな発想が、新しい2000年のNYストアーや5番街、マデソン・アヴェニューに新風を巻き起こすかもしれないと思いました。 Baldoria President and Designer Baldoria.com screen Demonstration at the party   ● Issey Miyake – Making Things 三宅一生の過去30年にわたる作品が昇華された展覧会が、ニューヨークのエース・ギャラリーで開かれました。11月13日から2000年の2月29日迄行われています。この展覧会の知らせは、あまり前触れもなく、2週間位前になってNYソサエティのISSEYファンが知ったという形で、静かに進行されていたのですが、そのオープニング当日は、大きな7部屋の会場に世界中から著名アーティストやデザイナー、美術館関係者、ISSEY崇拝者等が集まり、まさに身動きできないほどの盛況でした。どの雑誌や新聞を見ても、“20世紀において最も影響を及ぼし、革新的で魅力に富んだデザイナー三宅一生”と絶賛していますが、ほんとうにすばらしい展覧会でした。ファッションだけにとどまらず、現代の情報と素材を駆使し、それを人体の空間と動きで表現したアートとして、ニューヨーカーに感銘を与えたようです。ソーホーのエース・ギャラリー近くまで行くと皆が「ISSEY」「一生」とささやいているのが聞こえてきました。11月と12月のNYソサエティでの会話は、必ずISSEY展の話題ではじまります。昨年パリのカルティエ現代美術財団で公開された展示を、NYでは美術館でなく、このエース・ギャラリーでするということも、大変な魅力です。 上3点:ルーム1の展示より   上2点;ルーム3ルーム4 展示のようす ルーム1のテーマは「ジャンピング」。鑑賞者がギャラリーに入っていくと、展示空間の服全体についたセンサーに反応して、過去10年のISSEYの作品25点からなるインスタレーションが動きだします。ルーム2は「ザ・ラボラトリー」。製造と創造のプロセスに焦点あてたセクションで「ISSEY MIYAKE MAKING THINGS」展の核心を見せる場。コンピューターを駆使したインスタレーションと展示が新鮮です。ルーム3 は「プリーツプリーズ・ゲストアーティスト・シリーズ」。他の芸術と交流しながら衣服デザインへの新たなアプローチの探求を展示。ルーム4は1枚の布を略して命名された「A-POC(エイ・ポック)」。ニットチューブが連続するロールで生み出され、その中には編み込まれた境界線に沿って切り取るだけという斬新なコンセプトの服「A-POC」。ここでは「A-POC」に覆われたマネキンが何体も繋がって展示され、そのまま大きなニットチューブにもどる光景を見せ、圧巻でした。 この展覧会では、アソシエイトとして滝沢直己氏など若手にも発表の場を与え、将来の担い手を育てている一生の姿勢も、さすがといった感じです。20世紀、世界中に知れ渡った日本のブランドに、SONYとISSEY の名があがりますが、NYに住む日本人の一人として、大変誇りに思います。 サンクスギビング・パレードの後、NYの12月の街並みはいっせいに、クリスマス・デコレーションに入ります。日本ではあまり知られていないことのようですが、NYでは誰にでも「メリークリスマス」は使いません。通常「Happy Holiday」をつかいますが、これはいくつもの宗教があることからきています。特にユダヤ人の多いNYでは「ハッピー・ハヌカ」などの方が多いような気がします。それでも一年中で一番皆が買い物をするクスマス・プレゼントの習慣は世界共通で、ショップやデパートはこの時期の売上げで年間の景気を判断するようです。今年のNYは元気が良さそうです。 *写真は、クリスマスデコレーションのデパート(メイシーズ)

第6回 ハロウィン、ハロウィン

第6回: ハロウィン、ハロウィン 1 9 9 9/11/10 11月になると、NYはホリデイ・シーズンのはじまりです。10月最後の日のハロウィンから始まり、続いてサンクスギビングの飾りに入り、その後がクリスマス、とショーウインドーも一変します。そのあわただしくなる時期の前に、いくつかの会社では、ハロウィン・パーティーをかねて社員感謝の‘はめはずしパーティー’が開かれます。 * 左より;パレードの仮装、街角のホットドッグ屋のお兄さんもこの日は仮装してサービス、店の飾りもハロウィン一色、人間がマネキンになってこれもハロウィン化粧     ● 注目のWebデザインスタジオ「オーヴン」 先日出かけたのは、Webデザイン・スタジオとしてどんどん大きくなってきているオーヴン・スタジオのハロウィン・パーティー。新しい地域として変わりつつあるノリータ地域の東寄りにできたエンターテイメント用スペースを借りきって、皆仮装をして行われました。社員の家族、クライアント、友人を呼んで、はめをはずしましたが、社長のヘンリー・バーレヴァブは、自らバーテンダーを勤めてゲストを接待していました。 Oven オーヴン 初期のチャンネル13やMOMAのページで有名なWebデザイン事務所 右上;Oven/President(Webデザイン・スタジオ・オーヴンの社長/ヘンリー・バーレヴァブ自ら社員の為に、この日はバーテンダーを勤める) 右下;Oven/Arian(オーヴン社のパーティーで、コーナーに飾れたエリアン)     ● Webマガジン「ママメディア」 同じ日、こちらは5歳から13歳を対象としたウエブ・マガジンで有名なママメディアも、Sohoの大きくなったスタジオで、大家族とクラアイアントを招いてのパーティーがありました。 MaMaMedia ママメディア MITメディアラボの最初の卒業生のイディット・ハレル女史が1995年に設立。MIT卒業生をアドバイサー等に多数かかえて、見た目の派手さの奥にある優れたテクニックでWeb業界でも一目おかれるサイト制作運営と出版で有名。 Idit Harel、ママメディアの社長 *左から;ママメディアのマガジン、ネットワーク・マップ、オフィス風景1・2     ● ミレニアム最後の超特大パレード   なんといってもハロウィン当日の10月31日。実際のハロウィン・パレードの盛り上がりは、世紀末ということもあって、大変な賑わいで大盛況でした。このハロウィン・パレードのいわれですが、2千年前からのアイルランドの夏の終りの収穫日(これから訪れる暗い冬の到来の意味)の伝統的なお祭りが、西暦43年にローマの勢力によりキリスト教が公認された記念日と結びつき「All Saints’ Day Eve」 ── 全ての魂、死者に対して名誉を与えて賛える日の前夜祭 ── となったのが起源とのこと。たき火をつくり、聖人や天使、悪魔の仮想をしてパレードを行っていたようです。この「All Saints’ Day」の意味を持つ英語が「Alholowmesse」で、前夜を「All-hallows Eve」と呼んでいました。パレード初期のヴィレッジのゲイ・ピープルの豪華絢爛な仮想パーティーから、一般のお祭り好きにまで参加者は拡がり、それぞれのコミニティーが団結し交通地獄も我慢して年々大きな催しになってきています。     大きな山車は前もってコミッティーに申し込むようですが、一般の仮装参加者はソーホーのスプリングストリートと6thアベニューからのスタート地点に続々と集まって、ひきもきらずです。毎年このヴィレッジ・ハロウィン・パレードの為に一年かけて衣装を作りあげたり、暖めたアイディアを披露しようと、NY一年分のストレスを解消するかのような熱がこめられています。なによりも本人が楽しみ、家族、グループ、老いも若きも皆で心から楽しんで、はめをはずしているのが、まわりにも伝わってくるパレード。それと、この日の為に約25億ドルがアメリカで消費されるそうで、今年のパーティーショップの売り上げも好景気だったのではないでしょうか。   ソーホー、ヴィレッジにすむアーテスト、デザイナーも多く、台所用品を身につけるだけでも、さすがて思わせる変身、素材の選び方に毎年感心させられます 「Y2K Bug」今年の多かったテーマの中でも抜群。2000年のコンピューター問題とバグをひっかけて、フォルクスワーゲンをコンピューター・チップで多い隠し、本人達もそのデコレーションで素晴らしかった 中華料理のテイクアウトに使うBoxに身を包み、写真には入らなかったが、長い箸まで持っている  

第5回 NYの秋、デザイン・ショップに新風が起こっています。

第5回: NYの秋、デザイン・ショップに新風が起こっています   1 9 9 9/10/1 2     ● デザイン・ショップのオープニングに華やぐNY 10月、デザイン・ショップのオープニングが次々とあり、NYは華やいでいます。SoHoでは、アーティストの住んでいたロフトが、コンピューター時代の新しいライフスタイルを求める若い世代に人気の空間として脚光を浴び、需要が増えていることも、その要因の一つです。このロフトスペースに合うような家具の店、ファッションの店等がどんどん増えてきて、今まで主流だったアートギャラリーは追いやられ、チェルシーに引っ越しています。Gallery 91の隣りのグランド・ストリート89番地に、ドイツの照明作家インゴ・マーラー(Ingo Maurer)が、世界で初めての自らのショールーム兼ストアーをオープンして話題を呼びました。4ヵ月ほど内装に時間をかけていましたが、アナウンスしたオープニング当日は, 大変な台風の9月16日の夜。それでも皆集まって、パーティー用の真っ赤な紙の3Dグラスをかけて盛り上がりました。             ingo-maurer.com   Ingo Maurerストア Ingo Maurerストア Ingo Maurerストア Ingo Maurerストア   このグランド・ストリートと交わるグリーン・ストリートでも、道沿いに次々と新しい動きが起こっています。インゴ・マーラーより前からある照明具店アルティミデ(Artemide)も常に明るく目に€ツきますが、その正面には5月にオープンしたカーテル(Kartell)が、カラフルなアラン・ラッド等の家具等を展示していて人目を引きます。 Kartell(中から外を見る) Kartell(入り口から中を見る)     ● Design Day NY 10月6、7、8日と、従来の「デザイナーサタデー」を引き継いだ今年2回目のオーガナイザーが「DESIGN DAY NY」と改称したので、それに合わせたレセプションもたくさんありました。ハウストン・ストリートの近くに5年前に開けたMossストアーが、隣りの敷地も借り4倍に拡張して10月6日オープニングイベントをしました。今までNYになかったようなミュージアムみたいなストアーになり、デザイン関係者がつめかけました。     MossのオーナーMarry Moss氏 ガエタノ・ペッシェ作品 Mossストア Mossストア-地下の飾り     ● リニュアルしたMoMAストアー 翌日は6週間休んでいたMoMAデザイン・デザイン・ストアーの再開店オープニングがあり、同じ顔触れプラスMoMA関係者でにぎわい、新しくなって広くなったストアーで歓談しました。MoMAは今までのスペースから10%広がっただけということですが、最近注目されているNYの若手建築事務所1100 Architectのリニューアルでリフレッシュ。天井から壁に設置されたショウ・ウインドウに家具が展示され、メッシュのスクリーン越しに照明が照らされる時だけ見える、という作品の展示方法は圧巻です。アメリカの「ニュージェネレーションお金持ち」、多分ヤッピーの次なる言葉で呼ばれているのかも知れませんが、コンピューターや株で儲けて羽振りを効かせている若い人達が、ロフトのスタジオを月4千ドル~1万ドル(40万から100万円)の家賃を平気で払って住みはじめているので、この活気が出ているのだと思います。   MoMA新ショップのデザインをした1100 Archirectのパートナーの1人David PiscuskasとMoMAキューレーターのPaola Antonelli MoMA新ショップ・オープニング・パーティー風景 MoMA新ショップ・飾り棚

第2回 「ナショナル・デサイン美術館 第6回オークション/ギャラパーティー

第2回: ナショナル・デサイン美術館 第6回オークション/ギャラパーティー      1999 /7 ニューヨークのソーシャルな催しものが多いのは5、6月と11、12月頃ですが、この頃チャリティやファンドレイジング(資金調達)の為のパーティがあちこちで開かれています。パーティというと“ホテル”といった感覚の日本人には、想像を絶するようなところを会場にしてパーティは開かれます。たとえば、美術館全部を借り切ったり、大駐車場にテントを張り巡らし大ディナー会場を作ったり、あるいは倉庫を一大ダイニングルームに変えてしまったり。それぞれがそれなりに趣向をこらしていて、そのパーティの企画自体が“アート”といった感じです。   食空間(テーブル・セット)のオークション 6月14日、スミスソニアン・クーパーヒュイット・ナショナル・デサイン美術館のファンドレイジングの為のオークション/ギャラパーティーが、5番街のロックフェラーセンタービル内に移ったクリスティーズで行われました。 毎年NYの著名デザイナーやショップが商品の寄付する商品がサイレント・オークションにかけられます。第6回目となる今回のメインは恒例のテーブル・セット。毎年15~20人位のデザイナーや有名店が3メートル四方の食空間を提供します。これがオークションにかけられるのですが、絵画のオークションと違って生活用品なので、初めての方でも身近な感じで楽しめて、エキサイティングな経験なのです。   Gallery 91「和の間」 今年は日本人として初めて、私のGallery 91も御指名を頂き、テーブルをセットアップして寄付することになりました。Gallery 91では、今ニューヨークで求められているモダンな和風のスペースをつくり、「和の間」と名して出展しました。 *写真 1)Galley91 クリスティーズに展示した「和の間:モダン・ジャパニーズ・スタイル」/セット:橋本有紀夫、テーブルトップ:禎子スミス、AD:海老原嘉子   写真 2)展示全景、3)Molyneux#202 インテリア・デコレーターJuau Pablo Molyneux の「II Banchetto Silvestre」と題された豪華な展示、4)Walker#201 インテリア・デコレーターkenneth B. Walkerの「Rita Morenoの夫妻の1999ニューイヤーズ・イブ」題された作品、5)Hempel#200 Hotel等を手がけるインテリア・デコレーターAnouska Hempelの「All Plaid Out: New York Country Scene」題された作品.   クリステイーズの広い会場で、今年は17のテーブルトップの出展があり、入場券は一人$300で、出品者も品物の寄付とは別にミュージアム・サポートのために6枚以上のチケットを買い基金集めに貢献します。 夕方6時の会場には正装した大勢のゲストが集まり、洗練されたボーイさん達がオードブル、カクテルを絶え間なくふるまう中、パーティは始まります。著名デザイナーや中には女優さん達といったニューヨーク・ソサエティーが集まり、17点のテーブルトップを見て回り、オークションの下見をします。 17点の内、5テーブルが箸をおき、アジアの文化を取り入れようとしています。 ニューヨークも今では、素材とシンプルさを重視し、感謝できるまでに至りまし た。コンピュータ・インターネット時代で忙しくなったと共に、複雑なものやくどい食事ではなく、もっとシンプルな生活空間が望まれてきているのです。私どもの「和の間」は、そんな中で、大変な興味をひき評判を得ました。 写真 6)パーティー風景 クリスティーズ内のロビーのパーティ風景、7)会場に来た建築家リチャード・メイヤー、禎子スミス、海老原嘉子、8)リタモレノ会場に来ていた女優 Rita Morenoとデコレーターkenneth B. Walker               本当の意味でのチャリティオークション 8時になると2階にあるオークション会場に移ります。スクリーンに映し出されたテーブ ルトップを見ながら、大変な早口でオークショニアが金額をどんどんはりあげていくわけですが、いずれにしてもチャリテイということで、普段のオークションに比べたら大変和やかな雰囲気です。購入された方達もミュージアム関係者や友人が多く、やはり市民が美術館を強くサポートしているなあという感じが見受けられました。 購入代金のほとんどが、その年の税金免除にもなります。ミュージアムや美術関係のサポーターになることは、自分の地位のアピールにもなり、芸術文化社会への貢献ということを皆さん当然のこととして考えているから、こういった純粋なチャリティができるのでしょう。 なかなか日本では、スマートにボランティアやチャリティができないようです。アメリカには税金対策という事情もありますが、自分を文化的にアピールすることが下手な日本人の性質も原因の一つではないでしょうか。ニューヨーク・ソサエティの社交、生活、文化と芸術界が切っても切れない関係にあるということの一つのあらわれが今回のようなチャリティなのでしょう。 日本の美術館に本当の意味でのパーマネントコレクシュンが育たないというのはやはり本当のサポーターがいないのと、権力で政治的な器だけのミュージアムが多いからのような気がします。 海老原嘉子 写真 9)2階のオークション会場での風景、10)Garden