第56回 切手のデザイン

第56回:  切手のデザイン (2004/1/14)   [1] 道端に捨てられたクリスマスツリー [2] 新鮮なツリーの良い香りが立ちのぼる クリスマスやお正月など、シーズンものの切手デザイン 暖かいクリスマスとお正月が過ぎ、NYは突然刺すような寒さの日々となりました。昨年も紹介しましたが、この時期のNYの特徴的な風景として、道端に捨てられたクリスマスツリーを交差点ごとに見ることができます。近くを歩くと、まだ新鮮なツリーの良い香りが立ちのぼり、お正月を感じさせます [ 1 , 2 ] 。 さて、今回はNYで発売されている切手の話をしようと思います。毎年、日本のお正月に合わせてなにか気のきいた切手はないかと探してみるのですが、国内用の37セント切手はバラエティ豊かにも関わらず、海外に向けた切手を探すとなかなか見つかりません。 12年前から毎年、お正月も過ぎた1月中頃に、中国の旧正月に向けて干支の切手が発売されています [ 3 , 4 ] 。これには、アメリカでのチャイニーズパワーを再認識させられます。 今年は13日から猿の切手が発売され、これで12支全ての切手が揃いました。12支全てが揃った記念として、来年の1月には12支の切手がワンシートになって発売されるそうです。 NYでは、クリスマスカード用の切手も毎年新しく発売されています [ 5 , 6 ] 。前の年のものも同時に手に入るので、8種類程の切手をクリスマス間近の郵便局で見ることができます。また、ユダヤ教のハヌカの祭りに合わせて、ハヌカ用の切手も発売されます [ 7 ] 。 * images 3 ~ 7 (c) USPS (United States Postal Service)   [5] 「Holiday Music Maker」10/22/2003 [6] 「Snowmen」10/22/2002 [3] 中国の旧正月に合わせて1月13日に発売される干支の切手(猿) [7] ユダヤ教のハヌカの祭りに合わせて、ハヌカ用の切手 10/10/2002 [4] 12支全てが揃った記念として来年発売予定の切手シート 01/2005       [8] アメリカを代表する20人のカメラマンの 作品を集めた「アメリカンフォトグラフィ」 [9] 切手の裏にはそれぞれのカメラマンの経歴 バラエティ豊かな37セント切手 少し振り返って、最近発売となった切手の中で、面白いものを紹介します。2001年に発売されたのは、「アメリカンフォトグラフィ」といって、アメリカを代表する20人のカメラマンの作品がワンシートになったもの [ 8 ] 。切手の裏にはそれぞれのカメラマンの経歴も書かれていて、アメリカの巨匠カメラマンの豆辞典のようです [ 9 ] 。2002年に発売されたのは、「グリーティング・フロムアメリカ」という、アメリカ50州の切手。それぞれの州を象徴する絵柄でデザインされています [ 10 ] 。また、「アメリカン・フィルムメーカー」という映画の切手も発売されています [ 11 ] 。社会的な動向も切手の絵柄となっています。「ヒーローズアメリカ」というタイトルで、9月11日を象徴するような、消防士がアメリカ国旗を掲揚しようとする様子を描いた切手が発売されています [ 12 ] 。Stop Family Violenceという家庭内暴力防止をうたった切手も発売されています [ 13 ] 。 ところで、いつも混雑して待たされることの多いNYの郵便局では [ 14 ] 、日本人デザイナーによるデザインを目にすることができます。現在使われている郵便局のロゴは、藤井禎史というNY在住の日本人デザイナーによるものです [ 15 ] 。鷲をデザイン化したこのマークは、アメリカの郵政公社の民営化に合わせて、1993年より使用されています。各州の18歳から70歳までの人々に調査し、300を超える公募デザインの中から選ばれたこのデザインは、末永く使用されることを想定し、力強い印象を与えるデザインとして選ばれました。 以前に使われていたロゴのデザインが、レイモンド・ロイによってデザインされ、1970年代のニクソン大統領の時代から使われていたものであることを考えると、現在のこのデザインが日本人デザイナーの手によるものであることを、とても誇らしく思います。 ※表示あるものを除き、写真は全て海老原嘉子撮影  

第54回 メトロポリタン美術館の「織部 ― 転換期の日本美術」展

第54回:  メトロポリタン美術館の「織部 ― 転換期の日本美術」展 (2003/11/12)   桃山時代の伊賀焼きで直接古田織部と関わ って残っているものの代表作「破れ袋」 梶原拓 岐阜県知事 メトロポリタン美術館の「織部 ― 転換期の日本美術」展は、 本物志向の内容で構成 ニューヨーク市のメトロポリタン美術館で「織部 ― 転換期の日本美術」展が始まりました(2003年10月21日から2004年1月11日まで)。岐阜県美術館と共同企画で、5年の歳月を経て実現されたこの展覧会は、桃山時代の茶人、古田織部(1544-1615年)が、サイズ、形式などにこだわっていたそれまでの茶道、茶器に、ひと味違う新しいスタイル、革命を起こした部分に焦点をしぼって、注意深く構成されています。 Museum企画のシンポジウムでは東京芸術大学美術館館長の竹内順一氏、東京国立博物館陶磁器担当の伊藤嘉章氏、インディアナ大学名誉教授のJ.エリソナス氏、共立女子大学教授の長崎巌氏、国立民族学博物館教授の熊倉功夫氏、大阪大学教授の奥平俊六氏等が出席し、マイケル・カニングハム氏の司会で開催されました。 「茶道具とは」「織部焼の技術と意匠」「南蛮人の文化遺産」「織部焼の文様と辻が花の関連」「茶道史における古田織部の位置」「路上の歌舞伎もの」といったテーマのもと、専門家の分析や織部に関する分かりやすいレクチャーがありました。メトロポリタン美術館の講堂(オーディトリウム)は、ほとんど満員で(日本人以外の人で)した。 観客はみな本物・プロ志向の熱心な人たちで、すばらしいシンポジウムでした。それだけに、現在どれほどの日本人が織部についての知識を持ち、彼の茶道を理解しているのか、と心配になるくらいでした。 わび茶を大成した利休の茶碗 利休の後継者のひとり、織部の茶碗 オープン前日、メトロポリタン美術館でのパーティー デンドゥール神殿で開かれた大掛かりなオープ ニングレセプションの準備風景。吉野の茶会を イメージしたセットでの記念茶会(NY 裏千家) 26日にメトロポリタン美術館で行われた織部シン ポジウム  / 左から:東京国立博物館陶磁器担当の 伊藤嘉章氏、大阪大学教授の奥平俊六氏、国立民族 学博物館教授の熊倉功夫氏、共立女子大学教授の 長崎巌氏、東京芸術大学美術館館長の竹内順一氏、 右端はインディアナ大学名誉教授のJ.エリソナス氏 ※表示あるものを除き、写真は全て海老原嘉子撮影   NY裏千家のお点前で知事が一服、前夜祭パーティーで Japan Societyでの内田繁のお茶会も好評 Japan Societyを借りてのお茶会は、岐阜から各派の茶道関係者が100人近く訪れて大盛況だったようですが、内田繁の茶室の中で実際にお茶会を体験でき、初めてのJapan Society メンバーの人にはなかなか好評だったようです。 内田繁の茶室 メトロポリタン美術館のオープニングでも太鼓、 書道を披露した、無形文化財保持者、大倉正之助 (左)と書道家 矢萩春恵(右)中央は内田繁 滝村弘美(漆塗職人)の作品 岐阜の陶芸家、吉田喜彦の作品   グランドセントラル駅構内では「クラフト展・観光展」が開催 メトロポリタン美術館での織部文化のサポートはすばらしかったのですが、岐阜県はこの他にも「織部の精神を世界に発進」と、文化観光イベントを立ち上げました。 「オリベ2003 in NY」事業の「クラフト展・観光展」は、10月28日から11月2日までグランドセントラル駅構内のバンダービルトホールで行われ、飛騨高山の木工、美濃陶磁器、美濃和紙他、岐阜県の広報と愛知万博の広報をしていました。しかし、織部的という解釈の勘違い(?)パフォーマンスなども披露しており、大変な労力とお金を使ったようですが、NYにいるプロの協力をどうして得られなかったのか、不思議でした。 岐阜のクラフトでは、世界中に広まっている関の刃物やハサミは出品されていませんでしたし、今迄に何年もかけて国際コンペを実施した成果や、NYのデザイナーが岐阜に住み込み地場と協同で開発したすばらしいプロダクトが、すでにMoMAや他のミュージアム・ショップで紹介されている、といった国際的な動きは展示していませんでした。 こうした展開があれば、NYで知名度のあるデザイナーのPR力で、今回得られなかった現地メディアのパブリシティー他、地元のアドバイスも得られたのではないかと思いました。 行政や大企業のNY駐在を2~3年ずつ入れ替える勤務体制、「世界に発進」と言いながら日本に向けてだけの運営姿勢など、いつまでたっても60年代、70年代と変わらない思考では、アジア各国のインターナショナルなビジネスマインドに負けてしまうのではないかと案じます。 何でも自由に受け入れるNYの寛容さには、個々が批評家であるという厳しく真剣なビジネスマインドがバックグランドにあります。これらをきちんと受け止めずにお金を使っただけであっては、日本向けの成功物語にしかならないのではないか、と心配にもなります。 旧来の考え方を打ち破った、織部の精神に立ち戻ることも必要なのではないでしょうか。     Museum of Art & Designのギャラ・パーティー   MADのロゴ

第53回 ロックフェラーセンターで村上隆の大インスタレーション

第53回: ロックフェラーセンターで村上隆の大インスタレーション (2003/10/8)     ロックフェラーセンターの展示会場風景 高さ7メートルのとんがりくん 昨年のナム・ジュン・パイクやIBMでの森万里子展と同じPublic Art Fundのプロジェクトで、今回、村上隆「Reverse Double Helix」(二重螺旋逆転)という高さ7メートルの現代仏像風作品が、ロックフェラーセンターで9月9日から10月12日まで展示されています。Public Art FundとTishman Speyer Propertiesがオーガナイザーで、TARGETがスポンサーをしており、9月9日にはスケートリンク場を会場に盛大なオープニグ・パーティーが行われました。 最近のアートアニメのきっかけを作った村上隆は、プロデューサーもできるアーティストとしてアメリカで認められ、世界のトップアーティストになりつつあります。NY Timesが「アンディー・ウオーホールの次に出てきたポップカルチャー・アーティスト」とまで言っているほどです。 私には良くわからないのですが、最近のアートのおどろおどろしいものや、けばけばしく刺激的なだけでピンとこないものよりは、誰にでもわかりやすく、明るくて良いのではないでしょうか? 彼の歩みをふりかえると、1996年頃NYでローカル新聞の表紙を飾っていたり、アニメフィギュアーのアーティストの展覧会を企画したり、アニメオタク、Japanポップカルチャーを早くからアメリカに紹介していました。 2000年のパルコでのポップカルチャーショー(SUPERFLAT)の成功を、MOCAで2001年に発表したり、NYグランドセントラルでのWINKのショーが海外でのデビューで、それをきっかけに現在のように知れ渡った存在になったと思います。時代の読みとビジネスセンスに長けたアーティストではないでしょうか。 作品はこのところオークションに出品されているようで、Miss KO2(KOKOちゃん)はコレクターに莫大な金額でコレクトされています。 今回のような現代彫刻は六本木ヒルズにもあるそうで、ロックフェラーセンターではとんがりくんを中央に4体のカラフルな四天王像が囲み、周囲にはキノコ型のベンチが配されています。そして、このベンチにもスマイル・マークを思わせるようなカラフルな顔、顔、顔。さらに、周囲のビルから張り巡らせたコードでとめた、超巨大な目玉のバルーンが2個空に浮かんでいます。 目下、NYを訪れる観光客の格好の撮影場になっていて、毎日人だかりがしており、近辺のビジネスマンも思わず足を止め見上げています。     初日には盛大なオープニグ・パーティーが開催 スケートリンク・パーティー会場 展示夜景 オープニングにくりだしたキャラクター 展示夜景 パーティー会場風景 村上隆とJohn Remington(Targetの副社長) 村上隆 オープニングにくりだしたキャラクター 展示夜景 村上隆   FelissimoとFirstop     展示会場風景 Fiberglass “Ori” table by Douglas Fanning Sylvia Nagy (陶芸家と*岐阜Talkで作った作品) porcelain pieces “River” 「Made in Brooklyn」をテーマに開催されたFelissimo フェリッシモ・デザイン・ハウスがポートフォリオを見て選んだ38名のファッション、家具、プロダクト・デザインのプロトタイプから製品までの新しい作品の展覧会が9月8日~10月25日まで開催されています。最近のブルックリン・パワーをキャッチして「Made in Brooklyn」をテーマに、Brooklynをベースに活躍するデザイナーばかりを集めての新しいNYパワーの紹介となりました。展示デザインは知名度のあるAli Tayarに依頼、彼の作品展も4階で行われています。 オープニングにはデザイン界の人々で満員という盛況ぶりでした。 Brooklynでも、大きく分けてWilliamburg とDANBO の2つの地域が、アーティスト・コロニーとしてソーホーやチェルシーに次ぎ活発なアートメッカとなっています。ちょうどWilliamburg で第2回目のDESIGN WEEKENDイベント、Firstopが9月28日、29日に行われました。 Felissimoにも参加した多数のデザイナーが関わり、スタジオをオープンしたり、レストランやショップも参加して若い活気のある催しになっていました。 Felissimo

第51回 Museum Mile

第51回:  Museum Mile (2003/8/6)   Museum Mileの標識 メトロポリタン美術館前   大人も子供も楽しめるアートイベント Museum Mile は、‘アートを支援する’という公共の意識を高める手段として、1978年に始められました。5番街の104丁目からMuseumが並んでいる1マイルの間を特別に Museum Mile と名付けたそうです。この区間には 5th Avenue のサインにMuseum Mileという道路標識もついているのですが、普段気づかずに過ごしているニューヨーカーも多いと思います。 今年で25周年を向かえるこの Museum Mile フェスティバルは、6月10日の 午後6時から9時までという、わずか3時間のイベントですが、5番街の82丁目から104丁目が人で埋め尽くされる、最大規模のアートイベントです。NY市の最も重要な文化事業として、モデル的役割を果たしているそうですが、私も参加してみたところ、いつも静かな高級住宅地の5番街が、人で埋め尽くされていることにびっくりしました。 どのMuseumも順番待ちの列が幾重にも並んでいて、各ブロックにはプログラムとして、大道芸人が出ています。ミュージックあり、ダンスあり、手品等の実演あり、そのまわりに人だかりしているのも混雑の原因のようです。 メトロポリタン美術館の前の5番街はキャンバスとなり、大人も子供もチョークで絵を描いて楽しんでいます。50,000人の人出だそうですが、アートを支援するイベントで、これだけの人が興味を持って集まる文化レベルに、改めてNYを感じました。 公式には以下の9つのMuseumが今回のMuseum Mileプログラムです。 * 104St. El Museo del Barrio (212) 831-7272 www.elmuseo.org * 103rdSt. Museum of the City of New York (212) 534-1672 www.mcny.org * 92nd St. The Jewish Museum (212) 423-3200 www.thejewishmuseum.org * 91s St. Cooper-Hewitt, National Design Museum, Smithsonian Institution (212) 849-8400  www.si.edu/ndm/ * 89th St. National Academy of Design (212)

第50回 SOFA New York 2003

第50回:  SOFA New York 2003 (2003/7/9)   SOFA の会場風景 Sculpture Objects & Functional Art 展「SOFA New York 2003」 今回で第6回目となる「SOFA New York 2003」が5月28日から6月1日まで、Park Avenuの67th. StreetにあるARMORY(兵器庫)で開催されました。一般客も対象としており、毎年、高級工芸品、骨董品などのギャラリー、個人作家までが、現代工芸でブースを出して、コレクターなどがマークしているレベルの高いショーとして定着しつつあります。 オーガナイザーはExpressions of Culture-NY Inc.のMark Lyman。オープニングにはいつもAmerican Craft Museum(現Museum of Art & Design「MAD」)をサポートするためのギャラ・パーティーが催され、アメリカ中からコレクターが集まり盛大に行われます。 このSOFAショー、毎年5月がニューヨーク、10月がシカゴで開催され、今秋のシカゴは10月17から19日です。 SOFA の会場風景 SOFA の会場の中央に Museum of Art & Design の展示 SOFA の会場風景 全景よりCharon Kransenのジュエリー・ブースを見る SOFA の会場の中央に Museum of Art & Design の展示   Dai Ichi Arts Gallery 今年は日本や日系アジア作家の作品も増えたSOFA アメリカのクラフトは、個人の独創的、アート的なクラフトといった傾向が強く、マンネリ化していたように思いますが、ここにきて皆、そのことに気がついているようです。今年は、日本の作家や日系アジア作家の作品なども増えて、きめの細かい質の良い作品が目につきました。 また、ニューヨークでは少なかったクラフト・アートのギャラリーが、認知されてきている様子も頼もしいかぎりです。また、SOFAは、現代陶芸、ガラス、テキスタイル、家具などの専門ギャラリーのディーラーが、世界中から出展する数少ない専門的なショーであり、厳しい選択があることも特徴です。 www.sofaexpo.comで全体のパノラマ写真も見ることができます。   Museum of

第49回 ICFF 国際現代家具見本市 Off Siteプログラム

第49回: ICFF 国際現代家具見本市 Off Siteプログラム (2003/6/11)   Gallery 91 Opening 今年も活気のあったOff Site 慣例の国際現代家具見本市 / ICFF(International Contemporary Furniture Fair)が、2003年5月17日~20日までジャコブ・ジャビッツ・コンベンションセンター(Jacob K.Javits Convention Center)で行われました。 今年も『INTERNI』誌が、昨年と同じようにプログラム小冊子を発行。冊子の半分はNYデザイン情報保存版、もう半分は日毎に分けたOff Siteプログラム(期間中行われる街中のイベント)で、今年もOff Siteプログラムの方により活気があったようです。 私は19日より出張の為、Off Siteの一部を見ただけなので、全体をレポートできませんが、Sohoで行われた17日のオープニング・パーティーからいくつかを紹介します。 Soho のストアーCITI Soho のストアーCITI         Gallery 91の展示 まず、Gallery 91のスペースで昨年も行った、Core 77のメンバー・サイトCoroflotの展覧会「Canary in a Coalmine (炭坑の中のカナリア)The 2003 Corofllot Members Show」のオープニングが、6時から11時までありました。 この展覧会は、Coroflotメンバー1万3千人の中から、今までのデザイン展では選ばないような、あらゆる角度から眠っている才能を発掘するものです。作品が実際の形になっているもので、ICFFにちなんだ、なるべく家具よりの32点だけを展示しました。 Pratt Institute卒のプロダクトとインタラクティブ・デザインのグループでできた、この若いCore 77のサイトは今やプロの間で世界一活発な動きがあるようです。今回の展覧会はCore 77主催のEric Ludlumがキューレーターを担当し、あっという間に今までのGallery 91のスペースを一変させて、テンポラリーな材料を使いながら、しっかりとしたインスタレーションで展示ができあがりました。     ウインドーに飾られた「aircraftcarrier」 デザイン:Chad Vermeulen カナダ 1:152 スケールのCVA-31のモデルで、 8000個以上のLegoを使ってつくったもの。     「Single Flat Panel Folding Table」 デザイン:Ramon Villamarin

第44回 VitraがNY に本格的ショールームをオープン

第44回: VitraがNY に本格的ショールームをオープン (2003/1/15)   チェルシーの元肉問屋だった14丁目の変化を物語る店が、Vitraの近所にいくつもオープンしました。 上写真は、14丁目に出店した最初のファッション系ブティック NYの今話題のチェルシー地区にVitraがオープン NYで今話題のチェルシー地区。その9番街29番地に昨年の11月、Vitraがオープンしました。 建築、インテリア、展覧会場、ストアーそしてグラフィック等といったデザインを通して‘全ての人達に刺激や喜びを与える場を提供する’というふれ込みです。スイスに本部を持つVitraが、グローバル企業として、重要なマーケットとリソースの場であるアメリカにますます力を入れ始めました。 Vitraの名前は、1950年代に創立されたガラス製造業者(Glass Vitrines)が由来です。現会長のWilli Fehlbaumの父親であるRolf Fehlbaumが、ヨーロッパでイームズの椅子と出会い、ヨーロッパで製造をするための交渉の翻訳に、16歳だった息子のWilliをアメリカのハーマン・ミラーへ行かせたのが50年代中頃です。 Vitraの創立と成功には、アメリカの偉大なデザイナー、チャールズ&レイ・イームズ(Charles & Ray Eames)とジョージ・ネルソン(George Nelson)が大きな役割を担っているのです。 Vitraは1990年からフィラデルフィアのアレンタウンで家具を製造していましたが、アメリカに3つの店とショールームをオープンしたのは、この2年のことです。 2000年にはサンフランシスコ。2002年にロスアンジェルス。そしてNY、このチェルシーの一角にショールームのオープンです。 このあたりウエストサイド14丁目は、2、3年前までミートマーケットだったところで、朝は市場として賑わっていました。ミートの臭い残る地域にアーティスト達が住み始め、ギャラリーが移り、そして最近は高級ブティックの出店…、と考えられないような変化をしています。 外観 1F Retail ショップ 2F ショールーム 地下 展示会場 最近出来たブティックStella McCartney Alexander McQueenも最近オープン   Vitra Opening Party の様子 コンスタンティン・ボイム(左)とカリム・ラシッド(右) …       1Fのショップスペース アメリカで最大規模 3階建て、12,100平方フィート(約1124平米)のこのショールームは、Vitraアメリカで最も大規模なショールームとして、オフィス・住居の為の家具や椅子、ミニ・チェアーそして本やアクセサリー等を展示しています。1階はショップ、地下は展示会場、2階はオフィス・スペース兼ショールームになっています。 建物はRoy Design StudioのLindy Royが設計を担当しています。彼女は2001年夏のMoMA Young Architects Competitionで25人の中から選ばれて、様々な出版物でとりあげられ、最近もCooper Hewitt National Design Museumの「New Hotel for Global Nomads」に出展し、NYタイムズ等に取り上げられている若手建築家のリーダーです。 … … … … … 地下へ降りる 地下の展示会場 地下の展示会場

第43回 Xmasを迎える準備に忙しいNYと変わり行くSoHoマップ続編

第43回: Xmasを迎える準備に忙しいNYと変わり行くSoHoマップ続編 (2002/12/11)     ロックフェラーセンター・ツリー点灯式 撮影:林幸恵 ロックフェラーセンター・ツリー点灯式 撮影:林幸恵   Xmasを迎える準備に忙しいNY 例年より早いXmas飾りのような気がするのですが、年間の売り上げを決める一番大事な時で、活気を出そうと早くから飾り付けが始まっています。普通はThanksgiving(感謝祭)の後からがいっせいにXmasですが、今年はそのかなり前から飾り付けが始まっています。人出は多いのですが、皆買うのを絞っているのか、まだビジネス的には思わしくなく、店の人は皆心配しています。 アメリカだけの大イベントThanksgivingは、毎年11月最後の木曜日で、今年は11月28日でした。最初のアメリカ開拓移民が、ターキー、ハム、ポテト、コーン、Yam(Sweet Potato)等の収穫を祝ったしきたりから、家族そろってこれらの食材で食卓を飾ります。ちょうど、日本のお盆のような感じで皆里帰りをします。私の所でも年に一回の大ごちそうを作って、親元に帰れなかったスタッフや友人を招待しました。 NYでは、朝9時からメーシーズのThanksgivingパレードを、毎年1番寒い日に見に行ったり、TVの中継を見ながら料理作りをしたり(これは、日本の大晦日のような光景でしょうか?)。そして、パレードの最後にサンタクロースが出てきて「これからあと何日でXmas」と数え始めると、街は一斉にXmas商戦に入ります。Xmasと言っていますが、アメリカでは“Merry Xmas”はキリスト教徒が使い、ユダヤ教徒は“ハッピーハヌカ*”と、それぞれ宗教によって違うので、日本の様に誰も彼も“Merry Xmas”のカードは送りません。皆に通用する“Happy Holiday”や“Peace”等を使っています。 いつもイベントを行うArmory(兵器庫)のスペースで、12月中頃に年末クラフトバザーが企画されていましたが、テロの予告と警備の準備に使用するためと、キャンセルになって、クラフト作家達が打撃を受けてなげいています。 *ユダヤ教の祭日。ヘブライ暦に従っておよそ11月から12月に毎年行われ、8日間かけて祝われる。Happy ハヌカ >>>>   チェルシーマーケットの八百屋さん。この間までのハローインパンプキンがターキーとXmasに向けての飾りに Cut Turkey ターキーカット 撮影:林幸恵 Crate & Barrelのオープニング オープニングのチケットは1人$50で、DIFFA(Design Industries Foundation Fighting AIDS)に寄付されます。数日前から売り切れで締切られるほどでしたが、当日はビルのまわりをぐるりとまわる入場者で賑わっていました。 Pikachu-Thanksgiving パレードの今年新登場ピカチュー 撮影:林幸恵 Crate & Barrelのオープニング その他の料理 撮影:Tomi Nevin     6番街のビル群もみなXmasの飾り ロックフェラー・センター前の飾り Xmasを迎える準備に忙しいNY SoHoのウィンドーもクリスマス・デコレーションが増えてきていますが、移り変わりの速さも目をみはるものがあります。最近まで、Grand Street とGreen Street にあったウエディング・ドレス専門店があっという間に家具店に変わり、一度店を出したカルティエやイブ・サンローランがほんの短い間で閉じたり、シャネルも近いうちSoHoの店を閉じるそうです。 それでもイタリア勢の家具、インテリアの店、有名ブランド・ブティック、そして、最近多いのにびっくりするのは靴屋とアイグラス・ストアー、そしてメイキャップ・ストアーもSoHoを変えてきています。 SoHoにはいくつかの有名ブランドのメイキャップ・ストアーがあります。大きなスペースだから作れるサウナ、スティーム・バスなどのある高級スパ。まだ倉庫街の様子を残すロフトへ、リムジンで乗り付けるセレブリティー達がスパの利用者のようです。   5番街Cartieのビルごと贈り物? 6番街53丁目バーリントンミル社前の飾り Radio City ケーキ屋さんのウィンドウもクリスマス一色 Sacks 5th Ave. Sacks 5th Ave. 動く人形のウィンドー チェルシーマーケットの中のアーチの飾り Sacks 5th Ave.

第41回 Williamsburgのデザイン・イベント「FIRSTOP」

Williamsburgのデザイン・イベント「FIRSTOP」 今回の為のMapと参加リスト 表示されているイベントの地図 マンハッタンから一駅「ウイリアムスバーグ」 マンハッタンから地下鉄に乗り一つ目の駅で降りると、ウイリアムスバーグ(Williamsburg)に着きます。この一つ目の駅(first stop)から「Firstop」とタイトルをつけて、 Williamsburg 地区のショップ、ギャラリー、デザイナーなどが参加した初のデザイン・イベントが9月28日(土)、29日(日)に開かれました。参加したのは、67軒のショップ、スタジオ、ワークショップなど。今回はその様子と Williamsburg を紹介します。   Williamsburg は1905年にローアー(下の方)・マンハッタンから橋が渡され、工場地帯、倉庫、労働者階級、移民の街として発展。ラテン系、ヨーロッパ、ノースアメリカ、アジア、アフリカなど世界各地からの移民家族が住む地域でした。 80年頃まではまだ、麻薬や射撃事件等が発生する危ない感じの地域でしたが、この数年で家賃が$400から$2000ドルと上昇し、新しく移り住む人達も増えて、アーティスト・コロニーへと変化してきて、若者の賑わう街にかわってきています。 SoHoやチェルシーとも違って、小さいスケールの店などが多く、グリニッジ・ビレッジを思わせる雰囲気です。 今でも残っている壊されたままのビル(4、5年前まではこのイメージがあった) ウイリアムスバーグ・ブリッジの橋を渡ったすぐの所グラフィティー   ウイリアムスバーグ・ブリッジの橋を渡ったすぐの所にあるジョージ・ワシントンの銅像   この Williamsburg の発展に一役買っている女性に日本人のアーティストでディレクターの二居祐子さんがいます。 彼女は1996年に基金を集め、ビルディングを購入して「Williamsburg Art & Historical Center」を作りました。1999年からはWilliamsburg Art Cuture Festivalを開催。アーティスト、ギャラリー等と一緒に地域発展のイベントを実施して、外部からの注目を集めるようになりました。その頃からギャラリー、レストラン、ショップなどが、 Williamsburg に移り始めたようです。 Firstopに参加してない店でも若者の街の感じをにおわせる CDなどを扱う音楽店のファサード   おどろくような変わりっぷり 4年くらい前、Galapagos というクラブで、インテリア・デザイナーのバースデイ・パーティーがありました。かなり怖い感じの会場をやっと探し当てて、入って見たら、水をひたしたファサードに不思議な空間のクラブで「こんな所に!」と感心して以来、雑誌や新聞でちらほら記事を見て気にはなっていましたが、今回この「Firstop」に出かけて、ここまで発展してたのかとびっくりしました。 「FIRSTOP」の企画は、プロダクト・デザイナーの Klaus Resbury(SONIC Design Studio)とグラフィック・デザイナー&ライターの中国系女性 Cindy Hsiao、そして NY Design Room のGgrippo が世話人になって、オーガナイズされました。 今回のFirstop主催者(3人)の一人ジャーマン・デザイナーKlaus Rosburg とそのSONIC Design展示場 NYDesign Room オーナーデザイナー、今回の Firstop 主催者の一人でもある Ggrippo … NY Design Room Klaus Rosburg SONIC Design スタジオの仕事紹介、今はやりの緑(中身も緑)のケチャップ・ボトルもこのスタジオのデザイン

第40回 インターナショナル・ギフト・フェアー、1年たちNYの景気は?

第40回: インターナショナル・ギフト・フェアー、1年たちNYの景気は?(2002/9/11) 会場入り口の受付、万国旗が並ぶ 外光豊かなジャコブ・ジャビッツ・コンベンションセンターのロビー 143回をむかえたインターナショナル・ギフト・フェアー 慣例のニューヨーク・インターナショナル・ギフト・フェアーの143回目が、8月10日から15日までジャコブ・ジャビッツ・コンベンションセンターで行われました。 主催者側の数字では来場者数72,687人、アテンドしたバイヤー数42,427人ということで、かなりの動員数ですが、出展社数2,573社( Accent On Design だけでは185社)の中の1社として出展した我々の感想は「まだNYは9月11日の影響から抜け出せていない」ということでした。顧客が来ないので来場者は見るからに減っていて、ショーは大きく打撃を受けているように感じました。 各部門に目を向けると、全体に癒し系の商品が目立っていました。自然の素材を用いた商品、クッション(ピロー)、キャンドル関係、フレームなどは評判も良かったようです。色ではオレンジ色が目を引いて、明るい季節感を演出し際立っていました。 部門毎のピクトグラム、右が Accent On Design 暮れかかると暖色系の明かりがさらに目立つ 並ぶスキッピー・スツール Accent On Design 今昔 今回の Accent On Design 部門では、14社が入れ代わり、若いデザイナーや会社が新たに入りました。 1984年に始まった Accent On Design に最初から出展している人達も大分減ってきました。そんな中の一人、イタリーのアレッシの商品や有名デザイナーブランドの新商品を紹介し続けていた Markuse Corp.、今は Projects と言っておりますが、その社長の Jack Markuse 氏と今昔の話をしました。 アメリカにマーケットのない商品を色々とプロモートして全米に広げ、ビジネスになるようになると、皆、直接参入し、自分で商売を始めてしまったり…。と、この世界は厳しいという話とか、常に忙しくて、若い世代と交代するべきなのかなぁと思いつつも、つい好きなことなので、続けてしまっている…。など、まったく同感してしまいました。 他にはUmbra、Sassafras Enterprises,Inc.、CITYLIMIT、Creative Candles、Eigen Arts、TAG-Trade Associates Group、Textillery、Walker、Zelco Industries, Inc. などが第1回から残っている出展者です。 Projects(Markuse Corp.)社長の Jack Markuse Umbra社 Sassafras Enterprises,Inc.   Gallery 91 Gallery 91 今年のGallery 91 Gallery 91 は5回目から出展していますが、今回は明るい蛍光色に近いグリーンと白に統一して、同じ商品を数多く並べて見せる展示と、半円に設置したスクリーンにプロジェクタ-・クロックを投影して、演出効果をねらいました。   Accent On Design