第92回 現代日本陶磁器展とハモンド美術館「オリガミ建築展」

現代日本陶磁器展 9月29日から2007年1月21日まで、41名の日本人陶芸家による作品94点を集めた「現代日本陶磁器展」が、国連の近く333East 47丁目のジャパン・ソサエティー・ギャラリーにて開催されています。 日本と東アジアの伝統美術及び現代美術を扱うジャパン・ソサエティー・ギャラリーの展覧会の中でも、今回のずば抜けた作品の選択が、全て西洋のコレクターによるものであることに感銘を受けました。 元々この展覧会は、ボストン美術館の企画によるもので昨年10月から本年7月まで同美術館にて開催されました。ニューヨークで行われるにあたって、同美術館及び個人のコレクションの作品が大幅に追加されました。キューレーションは、同美術館アジア・オセアニア・アフリカ美術館部長ジョー・アール氏です。 ジョー・アール氏は、ボストン美術館の前は1983年から1987年までビクトリア&アルバート美術館(ロンドン)の東洋美術部長として、同美術館内の東芝ギャラリーにて日本工芸美術の展示に携わりました。また、日本美術・文化に関する多数の本を執筆・翻訳等も行なっている、日本文化の専門家です。 ここまで日本を理解してくれている西洋のコレクターが存在するということに深い感銘を受けると同時に、今だに一昔前の日本をニューヨークに持って来ようとしている人(日本の伝統文化の理解不足)が多くいる事に、恥ずかしさを感じました。 6つのセクションによる作家紹介 展覧会は6セクションに分かれており、以下作家の作品を紹介しています。 その多くが古来から陶作活動が続く窯場で、作陶を行う作家、または前衛陶芸集団・走泥社に影響を受けた作家の作品です。ヘンリー・コーネル氏は、ファイバー・オプティックの照明を設営するにあたり寄付をされたそうですが、今回の展示デザインは、ペリー・フーが担当しました。また、照明の調整は外部のアート・ハンドラー氏が担当したそうです。 ジャパン・ソサエティーは次のように述べています。 『本展では日本の陶芸伝統に深く根ざした陶芸家に焦点があてられていますが、展示される作品は著しく近代的、革新的でありながらも本質的には非常に日本的な芸術作品といえます。』 セクション1:先駆者たち 八木一夫(MOMAより出品)、鈴木治、山田光、林康夫、栗木達介 セクション2:古窯再訪 伊勢崎淳、隠崎隆一、加藤康景、西端正、森陶岳、大谷司郎、金重晃介、兼田昌尚、辻村史郎 セクション3:自然の形 神山易久、小池頌子、崎山隆之 セクション4:形を変えた磁器 加藤清之、3代・宮永東山、近藤高弘、竹中浩、吉川正道、深見陶治、川瀬忍、長江重和、八木明、加藤康景 セクション5:個々の表現 鯉江良二、三島喜美代、松田百合子、和太守卑良 セクション6:土を祝して 秋山陽、勝間田千恵子、北村純子、8代・清水六兵衛、宮下善爾、滝口和男、小川待子、岸映子、清水九兵衛、近藤豊、森野泰明 等 ノース夫妻のコレクション この展示作品約100点のうち64点は、コレクターのハールズィーとアリス・ノース御夫妻によるもので、最も多く出品しています。 夫妻の邸宅は作品が出張して空のようになり、しばらくの間寂しいです、とおっしゃていました。 夫妻のコレクションは、1986年に結婚15周年の記念として初めて日本を訪れた時から始まったそうです。アリス夫人はそれより以前に交換留学生として、仙台の宮城学園、東京の早稲田大学に通った経験のある日本通です。 また、株式会社ノースグループの会長、社長であると同時に、アメリカの非営利団体のパフォーミング・アーツ・センターを運営から資金集めもして支援されています。 現代日本陶芸のコレクターとしては1989年ジャパン・ソサエティーの日本陶芸ツアーを企画して以来、91年、95年、99年と引率者をしたり、ボストン美術館とニューヨーク大学等で講演もしています。 日本の現代陶芸作家達の良き理解者で有力なパトロンですが、夫妻の楽しみは作家の工房を訪ねること。人間関係を築いて作品の愛着を深めていくために、時間のある限り、日本全国で旧交を温めているそうです。 日本にもこんな理解ある企業家がいて欲しいと願わずにはいられません。 しばらく空いていたジャパン・ソサエティーの理事長の席に、新しくRichard J. Wood氏が決まり、来年は100周年を迎えるとあって、ますます、日本の本物を世界に広める活動をして欲しいと思いました。 ハモンド美術館で行われている「オリガミ建築展」 10月14日から11月18日まで、日本庭園で有名なハモンド美術館にて「オリガミ建築展」が開催されています。マンハッタンから電車で約1時間20分、Up Stateのセーラムにあるこの美術館は、蓮の池があり、日本をイメージさせる庭園で有名です。 この展覧会のオープニング・レセプションには、オリガミ建築展の他に、秋のたたずまいを見せる美術館の日本庭園散策のほか、日、米、伊、韓の5人のアーティストによる野外作品展、テーマに合わせたジャズコンサート、表千家師匠によるお茶のお点前などが行なわれました。また、教育プログラムとしてオリガミ建築のデモンストレーションやワークショップが行われ、子供から大人まで楽しめるような盛り沢山のプログラムが企画されました。 誰でも楽しめるアート展 同展は、2001年にMuseum of Arts & Designで行われ大成功をした茶谷正洋、中沢圭子、木原隆明等の作品で構成されています。 現在、美術館はその財政困難から、作品レンタル料や送料のかからない展覧会を求めており、このオリガミ建築展がぴったりという話で、私に依頼がありました。 また、美術館のボランティアをしている宮崎さんのおかげで、要領の良いインスタレーションができたり、フォローもして頂きました。 基金募集ハモンド美術館 オープニング当日の入場者数は250人を超えていたようで、ハモンド美術館の50年の歴史の中でも、記録的ナンバーだったそうです。 アートを特別な人達に見せるのではなく、一般の人達に何か機会を与えてコミュニケーションしてもらうという主旨での今回のイベントは、かなり成功したと主催者側は喜んでいます。 日本庭園を目玉とうたっているハモンド美術館ですが、これまで日本からの援助はなく、近隣の日本愛好家の援助で成り立ってきました。しかし現在、この日本庭園をもつ美術館は助けを必要としています。何とか応援してあげたいものです。 ※表示あるものを除き、写真は全て海老原嘉子撮影

第89回 現代建築家ザハ・ハディド30年の業績

現代建築家ザハ・ハディド30年の業績 NYのグッゲンハイム美術館で、革新的な現代建築家「ザハ・ハディドの30年の仕事」の展覧会が10月25日まで開催されています。これまでニューヨーカーが見る事のできなかった作品を見るチャンスが出来ました。 ザハ・ハディドの建築は、NYに一度も建てられたことがないため、長い間「ペーパー・アーキテクト」と言われていました。しかし、この10年で建築中の作品、世界中に広がる彼女のパワーのすべて、巨大絵画から模型、実物の写真、車、家具、テーブルウェアーまで見せる迫力のある展覧会で、夏休み中の観光客などで美術館は満員で、大変賑わっています。 ザハ・ハディドは1950年にバグダッドで生まれ、当時国づくりに必要な人材教育を受けた一人と言われています。バグダッドで最初にバウハウスのデザインを取り入れた邸宅で育ちました。その後、政変の為、スイス、レバノンの学校に移り、のちロンドンで教育を受けた他、ニューヨーク、モスクワ、ベイルート、ベルリンと多様な都市に住みました。それらの都市での生活で世界的な価値感を吸収していきました。現在はロンドンに事務所を構えて世界を飛び回っています。 ザハ・ハディド自身による、グッゲンハイムの円形建築の形を器用に生かした展示 展覧会は、1976年の絵画「再解釈」、ザハ・ハディドの大学院の卒業論文にまで遡って展示されています(サンフランシスコ現代美術館では、ザハ・ハディドがオリジナルを貸すのを断ったというエピソード付き)。 重複する幾何学上フォームがスペースを通って浮かぶ断片化している都市を提案するという彼女の抽象建築絵画。鳥瞰図を作成するために、彼女は何百もの抽象的な建築をインクのスケッチから、始めました。 次に、それらをキャンバスに取り付けられた紙に移し、抽象的な建物を、それぞれの表面は異なった色で塗り、表現しています。ザハ・ハディドの革新的な思想は建築図面を使わずに、建築を環境の一部としてとらえ、空から地上を眺める鳥瞰図で描く抽象建築絵画、その手法は周りの環境を同時に見せる効果を表現し、これはソビエトのコンスタンチン・マレーヴィチ(Konstantin Malevich)の“Tektonics”の影響を受けているそうです。 現在のコンピューターを駆使したイメージドローイングでは即座になされそうな、失われつつある、手のかかる手法の幾何学的な形態を描く、彼女のエネルギーのかたまりのような作品群が時代を追って展示されています。 また、彼女の展覧会の構成でグッゲンハイムの円形建築の形を器用に生かし、傾斜路の流動の、リズムをとりいれた起伏のある展示が、疲れる事なく、それでいて刺激のある展覧会にしています。 女性で初めてプリッカー賞を授章 1983年、香港のカントリークラブPeak:ピークのための設計で、彼女は若くしてスターの座を得たプロジェクトに遭遇します。次の「世界(89度)」の作品では、私たちが現在、当然のことと思う、電子時代の革命の開発であるネットワークを顕著に予期させます、各建物がより大きい都市視野の片として想像される流れを都市としての表現しているドローイングです。 ザハ・ハディドの建築を最初に実現に踏み切ったプロジェクトは、1990年から94年までの4年間を費やした、ドイツのVitraの消防署(Vitra Fire Station)です。この頃からコンピューターによるレンダリングが取り入れられています。このプロジェクトを皮切りに、アメリカではオハイオ州のシンシナティ現代美術館が1997年に、その後、ドイツのPhaeno Science Centerが1999-2005、そしてBMWの Plant Central Buildingが、ドイツのLeipzigに2001-05と、今や建設中のプロジェクトは世界中で行われています。 最新では国際コンペで選ばれた、ドバイ(アラブ諸国)の「ビジネス・ベイ・タワー」があります。 2004年には偉才の建築家に与えられるプリッカー賞(PritzkerArchitecture Prize)を、女性で初めて受賞しました。 ザハ・ハディドの建築が欧米とアラブの架け橋となる グッゲンハイムの円形建築の上段に達するまでに、彼女の建築マジックのすべて、絵画、スケッチ、建築デッサン、都市計画、モデル、家具および設計目的など年代順に展覧会はのぼりつめ、ザハ・ハディドの世界に到達します。 彼女の目的は興味を設計によって発生させ、社会的な、文化的な相互作用を促進することだそうで、彼女の建築が欧米とアラブの架け橋になり、平和の日が来る事を祈るばかりです。 実現しそうもなかった、ソファー、ベンチ、台所、車まで、サイエンス映画の一場面のような作品を実物にさせたZaha、80年代から、時々NYのパーティー・シーンで、オーラを感じさせながら、闊歩し、笑顔で挨拶してくれた彼女を思い、ザハ・ハディドの30年を堪能しました。 ※表示あるものを除き、写真は全て海老原嘉子撮影

第87回 モバイル・リビング展/移動する暮らし SOFA New York 2006

モバイル・リビング展/移動する暮らし 「モバイル・リビング」展は、5月21日から23日の期間、ニューヨーク市内、ソーホー西側にある1,700平方メートルの壮大なスペースを持つスカイライト・スタジオ・ギャラリーにて開催されました。 同展では、現代の移動式生活をテーマにエアストリーム・トレーラーやコンテナからボタンひとつで開く、Adam Kalkinの移動住宅など、様々な「移動する暮らし」が提示されました。 「SOHO Evening of Design」を1990年頃から企画してきた業界のプロ同士である、David Shearer(Exhibitions International:元TOTEM)とIDNFの海老原嘉子(Gallery91)が、かかわり、IDNFとEIの2つのNPOが主催しました。毎年5月に行われている、国際近代家具見本市(ICFF)のオフサイト・イベントとし、今年はこの大型「モバイル・リビング」展が最も話題を集めたようです。 トヨタのコンセプトカーF3Rなど、総計21点を展示 “Mobile”は、イタリー語で“家具”を表す単語で、本来は「移動可能」という意味から派生したそうです。今や我々の経済を動かすツールである、ラップトップコンピューターや携帯電話というテクノロジーの発達が、「常に情報を交わす」「どこにいても仕事をする」といった新しい移動式生活をサポートしています。現在人々は、移動中の車や飛行機の中、そしてホテルの部屋などで多くの時間を過ごしています。これらのテーマに沿って、いろいろな作品が集められ、大型トレーラーの中はシアター、コンフェランスの出来る車だったり、トヨタのコンセプトカーF3Rは中のイスが移動してリビング・ルームになるなど、総計21点が集めてられ展示されました。 ○シャトルカー ZipCarによるシャトルカーが「モバイルリビング」展会場と他のプログラム会場とを会期中無料で運行しました。 ○IDNF 91 Grand St. NY, NY 10013 t:212.966.3722 / f:212.966.1684 idnf@designnet.org / www.designnet.org Mobile Living Exhibition Party May 21st 2006 at Sky Light 8:00 pm Mobile Living : Panel Discussion May 22nd at Tribeca Grand Hotel Mobile Livingのパネルディスカッションがトライベカ・グランド・ホテルで行われました。IDNFの社長、Rockwell GroupのTucker Viemeisterがパネラーを努め、MOMAのキューレーター、Paola Antonelli、MAD MuseumのDavid McFadden、デザイナーのKarim Rashid、Adam Kalkin、トヨタ Caltyの副社長Kevin Hunterなどが参加しました。 SOFA New York 2006 第9回SOFA(スカラプチャー・オブジェクト・ファンクショナル・アート)国際美術工芸品・高級クラフトの展示会が、6月1日~4日の期間、慣例のパークアヴェニューのアーモリーにて開催されました。 毎年前日には、Museum of Arts &

第85回 国際アジア・アート・フェアー

国際アジア・アート・フェアー 国際アジア・アート・フェアー「The International Asian Art Fair」は1996年に創立され、今年で11回目を迎えます。3月31日から4月5日の期間、NYのパークアベニュー67丁目のアーモリーで開催されました。 同期間、今年で15回目を迎える「Arts of Pacific Asia Show」も行なわれました。共に世界一流のアジアの芸術をニューヨーク市で楽しむことができるアジア・ウィークで、年次行事となっています。 今までは、世界の有名骨董店やギャラリーが展示していたのですが、昨今は作品内容が変化してきて、日本の現代作家が増えました。特にヨーロッパのディーラーが、多くの日本作家を扱っていたのに驚かされました。 高級品を扱うショーの中で、毎年高値で話題を呼ぶ骨董品が出るのですが、ここに日本の漆器、象眼細工、陶器など若い作家の品が出始めました。それもヨーロッパのディーラーから、というのも不思議な気がしました。 このショーは、インド、ヒマラヤ、チベット、東南アジア及び極東の芸術品、旧式青銅の骨董品から現代的な絵画、工芸までを扱います。 オーガナイザーであるブライアン及びアナHaughton夫妻は、このショーを新鮮で興味のあるものに保つ為、特に今年は、現代的な素材や作品へと幅を広げたとのことです。 また、数千ドルから数百万ドル単位の値が付けられる物なので、独立した専門家や博物館のキューレーターを含んだ審査員による審査委員会を設け、注意深く検査してコレクターやバイヤーが安心して取引できるように支援しています。 2006年のショーは、58人のディーラーの展示の中で、今までで最も国際的に幅広い参加だったそうです。ニューヨーク、カリフォルニア、ボストン、シカゴ、ミシガン州、サンタフェ及びシアトルを含むアメリカ大陸、そしてイギリス、日本、香港、タイ、オーストラリア、フランス、イタリア、ドイツ及びオランダから展示がありました。特に新しく中国のギャラリー、製陶等がいくつも出展され、タイの進出も含め、アジ ア勢の勢いを感じました。 オープニング・ナイトは、1956年ジョン・D・ロックフェラー3世の創立したAsia Socieryの50周年を祝って、基金集めのギャラ・パーティーが盛大に行なわれました。 せめて日本の本物の工芸は、日本人がきちんと伝えなければと、切に感じました。私自身、協力しなければと感じます。皆様からのご連絡をお待ちしています。  Gallery91. Elle Deco / DIFFA Table for Design 3月11日、第9回目のElle Decor / DIFFA Table for Designが、27丁目西端の元トンネル・ディスコとしてならした大きなイベント会場で行われました。 実行委員長は、David RockwellとElle Design誌チーフ・エディターのMargaret Russell、役員はDIFFA、ゲストは有名・デザイナーのTodd Oldham、Thom Filicia、Ted Allen、Johnathan Adler。その他総勢60以上のテーブルが創作されました。 今回は、11フィート×11フィートの空間を昨年よりも多く、Calvin Klein Home、Jamie Drake for Bergamo、Ralph Lauren Home、Skidmore、B & B Italia、ValentinoなどのテーブルからNewYorkTimes迄デザイナーをサポートしての出展。そして、ちょっと雰囲気を変えたLEXUSサポートによるクールな空間と幅広いテーブルが出展していました。 最も古く大きなHIV/AIDSのサービス団体の基金集めが目的で、巡回イベントをして、各イベント会場で、このTableで食事をするディナー・チケットが売りだされます。他にも、会期中に各デザイン・ショップ等から寄付を募って集めた商品の当たるラッフル・チケットも売り出され、インテリア・デザイン業界のセレブ達との協力で、大きな収益をあげているDIFFAのイベントです。 ※表示あるものを除き、写真は全て海老原嘉子撮影

第84回 チェルシー10番街に出現した安藤忠雄デザインのレストラン「MORIMOTO」

安藤忠雄デザインのレストラン「MORIMOTO」 続々と新しいお店が出現しているミートパッキング地区のチェルシーにまた、話題のレストランが1月31日に開店しました。ニューヨークでもお馴染みになってきたTV番組「料理の鉄人」のモリモト(森本正治シェフ)がニューヨークで初めての第一号店を開きました。 13,000スクエア・フィートのスペースをデザインしたのは安藤忠雄氏。安藤氏の実物のデザインを見れる、ニューヨークで初めてのインテリア作品です。目をひくのは、天井は砂のガーデンのイメージで作ったという、固めた布地で出来た波打つ白地。壁もこの柔らかいうねりでできており、天井に対して床は黒地で、だんだん上に向かって白くなるグラデーションになっています。このグラデーションがモリモトの名刺等のカラーにも使用されています。 もう一人はプロダクト・デザイナーで世界的に活躍しているRoss Lovegroveで、安藤忠雄氏のイメージを入れてデザインしたという椅子や、彼の有名な自然型のウォーター・ボトルを17,400本使って作られたクリスタルの“光の間仕切り”も壮観です。 このプロジェクトのクリエイティヴ・ディレクター、プロデューサーを務めたのはニューヨークのGOTODESIGN GROUPのステファニー後藤氏です。後藤氏はコーネル大学を卒業後、Rafael Vinolyの後David Rockwellにいて独立した日本女性です。地下のバーも木の葉が埋め込まれた透明アクリルのカウンターがあったり、トイレの奥の壁には四季の花が延々と続く仕掛けのパフォーマンスだったり、お料理だけでなく、盛り沢山のエンターテイメントが含まれていて、ニューヨーカーを楽しませそうです。 オーナーのステファン・スターは、フィラデルフィアにいくつかのレストランを経営しています。フィラデルフィアのモリモトは、Karim Rashidのデザインです。「いつかニューヨークに・・・」という2人の夢が、今回実ったそうです。 入口には営業時に、縦122フィート、幅14フィートもある世界で一番大きい真っ赤なのれんが下がります。 オープン時はちょうどファッション・ウィークで、ニューヨークのレストランは毎晩ファッション・ショー後の貸し切り接待パーティーの会場となります。モリモトは話題のレストランとして、NY Timesでも大きく取り上げられました。 今、ニューヨークの西の外れ、10番街が開拓され、大型レストランが次々と出現しており、まだ寒いニューヨークにホットな話題を提供してくれています。 「CC+for MoMA」 デンマーク・クラフト・コレクション ソーホー MoMAデザイン・ストアーが、デンマーク・クラフト・コレクションの特設コーナーを設け、そのお披露目パーティーがあり、NYのデザイン関係者が一同に集まりました。デンマーク・クラフトの中からMoMAが選定した商品を「CC+for MoMA」と銘打って、デンマーク領事館の後押しもあり、MoMAデザイン・ストアーで売り出そうというものです。 デンマーク・クラフトは1999年にデンマークの文化庁の後押しで出来た独立組織で、25~30人のクラフトマンの作品を、今までと違った方法で世界に出そうとしているようです。日本と同じようなクラフトの状況を感じますが、スマートなNY進出です。 出席したデザイナーや関係者が一段と背が高く、見上げる人の多いのが目につきました。マリメッコが今年から卸しを始めたので、MOMAなどのあちこちの店で特徴のある大きな花柄を見かけます。 今年は久しぶりに、スカンジナビア旋風になるのかもしれないと感じました。 ※表示あるものを除き、写真は全て海老原嘉子撮影

第82回 屋外世界最大のクリスタル・シャンデリアと室内最大のスター・イルミネーション飾り

屋外世界最大のクリスタル・シャンデリア 毎年、ニューヨークのホリデーシーズンに57丁目と5番街ティファニー前の交差点に高く浮くクリスタル・シャンデリアは、ロックフェラーのクリスマスツリーと同じくらい、欠かせないものです。これがデザイナーのIngo Maurerによる、というのは意外と知られていないのではないでしょうか。今年で2回目の、Ingo Maurerによる世界最大のクリスタル・スノー・フレ-クが、11月28日から点灯されました。 点灯式はグラミー賞受賞者であるミュ-ジシャンのQuincy Jonesによって行われ、それと共に、UNICEFがWaldorf-Astoriaホテルにて2年目となるクリスタル・スノーフレーク・ボールを開催し盛大に祝いました。 この仕事は昨年に続きUNICEFからの依頼で、子供達の希望、平和と思いやりの気持ちを込めたIngo Maurerのチャリティーによる新作で、ステンレス鋼製のクリスタル・プリズム照明になっています。 総重量1,500kg、総電力7,520ワット 今回のUNICEFクリスタル・スノーフレークは、総重量1,500kg(3,300ポンド以上)、直径7メートル(23フィート)で、昨年と比較すると約40%も大きいスノーフレークとのことです。2004年、Ingo Maurerとスタッフは、Baccarat社製造の16,000ものクリスタルをフレームに取り付ける作業を行ったということです。総電力7,520ワットの光は、16のハロゲンのスポットと、84のハロゲン・スポット、そして、24のストロボスコープ及び300の鉛のブリンカーによって作り出されました。 Ingo Maurerは次のように述べています。 「昨年私は、UNICEFからニュ-ヨークのホリデーシーズンの象徴としてのこの照明の再デザインの依頼を受けました。それは私達の大きな喜びであり、そして驚きでした。私は、救助構成で非営利であるUNICEFの、このような仕事を継続出来ることにほんとうに感謝しており、幸せです。昨年と同様、フランスの有名な製造業者baccaratにクリスタルを提供してもらうように提案しましたが、会社は非常に積極的に、すぐにUNICEFのためにスノーフレーク作成を開始してくれました。デザインから離れて、技術的な認識は私のチーム、私にとって最も大きなチャレンジの1つでした。私のデザインのほとんどは、One-Offsを含んで、小さなスケールの、屋内使用のためにデザインされています。私達の最初のスノークリスタルは停電することなく、180km/hの風速に破損されることも無く、強風に耐えられたことを誇りに思いました」 1回目のスノーフレークは昨年夏、Beverly Hillsの丘の上のRodeoドライブにあるRegent Beverly Wilshireホテルに取付けられたそうです。 室内最大のスター・イルミネーション飾り 今年初めて、コロンバス・サークル59丁目の新しい名所、TIME Warner Centerのロビーに室内最大のスター・イルミネーションが取り付けられ、1月8日まで楽しめました。夕方4時から夜10時まで、15分おきにスター・イルミネーションの色が音楽と共に変わり、忙しい暮れの一時、ショッピングの合間の息抜きに見とれていました。このイルミネーションのデザインは、ブルックリンのHoliday Image Incを経営しているMatthew SchwamとSteven Wilburnで、デザインと制作、設営を担当しました。 長さ14Foot(12.85m)、重さ987ポンド(447.6Kg)、8640個ものColor Ledsが設置され、優れたコントロール・システムにより1495チャンネルがプログラムされ、個々のスターが16.7Millionの色の変化を可能にしているそうです。 他に、11,304fiber optic pointsの光に156のストロボ・ライトという新しい試みもなされている12個のスター達が、ロビーを舞台にNYのホリデー・シーンを輝かせていました。 ※表示あるものを除き、写真は全て海老原嘉子撮影

第80回 SAFE:Design Takes on Risk (リスクに挑戦するデザイン)

現代の「安全なデザイン」を考える “SAFE: Design Takes on Risk”は、MOMAが昨年11月にリオープンして以来、初めての大規模な企画展覧会で、2005年10月16日から2006年1月2日まで開催されています。 現代の日常生活において、この「安全」というタイムリーなテーマは、皆の最大の関心事の一つです。心と身体をストレスに陥りやすく危険な環境から守り、緊急時に応え、情報の明瞭性を保証し、安らぎと安全性を提供する世界中のコンテンポラリー・デザインのプロダクトやプロトタイプが300点以上が展示されています。 川崎和男、深澤直人ら、日本からの出展も多数 MOMAのキューレーターは、2年以上前からこの展覧会の為に、関係者に声をかけていました。私のところにも、Gallery 91のデザイナーの中でSafe展に合う作品があったら紹介して欲しいという連絡があり、何人かのデザイナーや作品の情報を提供しました。 身近なところでは、たまたま、あるミュージアムのキューレーターが主人の剣道のデモンストレーションを見て、その面の美しさをMOMAのキューレーターに伝えたのがきっかけで、今現在、展示されています。今回は面がねの部分だけを貸してほしいという事で私が間に入り、その手配だけでも、3~4ケ月を費やすことになりました。 また、紙技の木原隆明さんからお聞きした、昨年、豊口協氏が審査し受賞した作品、紙の担架「Rescue Board (安達紙器)」もMOMAに紹介し、展示されていました。 オリジナルは1987年にGallery91で展示した作品、川崎和男さんの鋏や鉛筆削りなどが展示されており、とても懐かしく拝見しました。 こういった個人的な思い入れと興味もあり、この展覧会には大きな期待を持ち、オープニングに出かけました。オープニング・パーティーは4日間行なわれました。 300点以上のありとあらゆる作品群に科学博物館のような錯覚も・・・ この展示会は、デザインのあらゆる形、商品化されたプロダクトから、建築情報まで、を網羅し、難民シェルター、地雷解除装置、ベービーストローラー、そして保護性のあるスポーツギアーなどを含んで取り上げています。 「今、「安全」ということに、今までの固定観念以上に焦点が当てられている。安全は人間が本能的に必要とするものだが、その一方で、リスク、危険は人類の推進燃料である。どんなにリスクを負っても我々は、新しいもの、今迄とは違ったもの、そしてインスピレーションを懇願する。デザイナーは、それらのリスクを負いながらも、変化と規定の中で、保護性のバランスをとるよう、訓練されている。良いデザインとは、改革や発明が、個人の用途に重点を置く事の妨げになることなく、犠牲になる事なく、安全性を与えてくれるものである。」と、カタログの中で述べられています。カタログの中のタイトルだけを取り上げても、 【Grace Under Pressure- 圧力の下の優美】 【Safety Nests – 安全な巣】 【Design for destruction – 破壊のためのデザイン】 【Material for a Safe World – 安全な世界のための材料】 と、かなりコンセプト寄りですが、300点以上のありとあらゆる作品群は、どちらかというと、サイエンスMuseumのような錯覚を感じます。あまりの巾の広さと作品量で、よくぞこんなに集めたと思う一方、それぞれを理解するのには、かなりの時間を要します。 分類別には 【Shelter – 避難所】 【Armor – 装甲】 【Property – 特性】 【Everyday – 毎日】 【Emergency – 緊急事態】 【Awareness – 意識】 に別れています。日本からかなりの作品が出展されていて、見慣れたプロダクト等、見応えのある展覧会だと思う一方、初日オープニングの招待客の多さ、製造業者からデザイナー、関係者と今までにない巾の広さに、この展覧会の広がり過ぎた内容が反映されていると思いました。 Web カタログが楽しく出来ています。 http://www.moma.org/exhibitions/2005/safe/ SOHOのMoMAストアーで、キュレーターPaola AntonelliのSAFEカタログサイン会を開催 SOHOのMoMAストアーでは5時半には一般客を締め出し、6時から8時まで、MoMA建築デザインのキューレターPaola Antonelliが出した新しい本新本2冊の出版記念サイン会が行なわれました。 一つは、始まったばかりの展覧会「SAFE」のカタログ、もう一つは改築前のQUEENSで行われたデザイン展「humble masterpieces – EVERYDAY MARVELES OF DESIGN」の、サイズ18cmx18cmの真四角にまとめられたコンパクトな本です。この本は、まだどこにも出ていなく、出来たてとの事でした。 もう一冊、3年位前に出した大き目の本「Objects

第79回 The International Art+Design Fair 1900-2005

The International Art+Design Fair 1900-2005 The International Art+Design Fair 1900-2005 が、2005年10月7日~11日の期間、パークアベニュー67丁目の7th Armoryで行われました。NYの中では比較的歴史の浅いこのショーも今回で7回目を迎え、50社以上のニューヨーク及びロンドンの一流のディーラー、20の専門学校やスペシャリスト、21のアートやデザインのショップが参加し、展示即売されました。 この別名Haughton International Fairと呼ばれるショーは、他の骨董市やオーガナイザーでもあるAnna and Brian Haughtonの名からとられています。このショーの前夜祭には「The Bard Graduate Center(BGC)」の為の基金集めのギャラパーティーが6時から9時まで行われました。パーティーの企画実行は、Dr.Susan Weber SorosとBGCのスタッフです。 選定された家具、絵画、彫刻などを展示即売 The Bard Graduate Center: for Studies in the Decorative Arts, Design,And Culture(BGC)は、文化装飾的な応用芸術の歴史のすべての面で、大学院レベルの教育を提供する施設として1993年に創設され、展覧会用のギャラリーを持ち(マリメッコー展)、M.A.及びPh.D.プログラム成人教育の学校で18West86丁目に位置しています。 今回のショーでは選定委員によって選ばれた家具、絵画、彫刻、写真、宝石類、織物、ガラス、陶器および磁器、銀、本、腕時計、 およびアジア芸術、等がそれぞれのブースで展示即売されました。 特別展示として「現代スウェーデンの銀: 伝統への新しいクラフトとデザインのアプローチ」と題されたBGCの会場があり、キューレーターはInger Claesson Wastberg。Bodil Karlssonが担当した、紙の折り目を生かした素晴らしい展示設計は、真っ白い空間が目をひきました。 日本人作家の作品も積極的に紹介 あまり日本では馴染みのないこういった装飾アート・工芸のショーが毎年いくつも行なわれ、SOFAにも出展していたブースも見受けられました。アメリカのコレクターの好みが反映していて、実際のビジネスにつながっている様です。 ヨーロッパ経由で日本の作家ものや古美術のスペシャリスト・オーストリアのLesley Kehoe GalliesやドイツのErik Thomsen Asian Art、そして、新井淳一のテキスタイルや日本の竹細工の作家等を扱っているTai Gallery/Textile Artsなど、日本のシンプルな良さや繊細な工芸を見せて、日本の工芸家を支持してくれているのはうれしい事です。 改築、建築ラッシュのニューヨーク NYは、夏から秋にかけて、あちらこちらで改装工事や建築ラッシュでしたが、金利が安く不動産のバブルだそうです。そんな中、珍しくメトロポリタン美術館が全館紗に覆われているのを見て、これもアートかと一瞬驚きました。グッゲンハイム美術館も工事を補うファサードが出来ていました。また、SOHOではBoradwayとMercer Street、Grand Streetに面して4月頃から工事が始まりました。現在進行中で、1階がショップ、上階はアパートになるようです。Hotel Mercerと同じオーナーとか。 半ブロック下のMercer StとCrosby Broadwayに面して、緑色のカバーがされたビルもショップとアパートとして改築され始めました。いずれ、出来上がりをリポートするのが楽しみです。 ※表示あるものを除き、写真は全て海老原嘉子撮影

第77回 唐津焼の技術と伝統を共有する日米陶芸家の唐津焼陶芸展

日米陶芸家の唐津焼陶芸展 唐津焼13代目 陶芸作家の中里 隆を中心に、アメリカの陶芸界の代表的作家のマルコム・ライト、中里太亀、中里花子の4人の唐津焼陶芸展が7月11日から30日迄、フェリシモ・デザイン・ハウスで開催されました。 レキシントン・アべニューの専門店SARAの上村直樹氏の企画にフェリシモが協力して実現したこの企画は、唐津焼という共通の陶芸技術を背景に、それぞれの個性を展覧会で見せるというものです。特別企画に、初日は中里 隆と花子親子のろくろなどのデモンストレーション、2週目はパネラーにマルコム・ライトと中里花子そしてモデレーターに日本文化ジャーナリストのハリス・サラット氏をむかえてのパネル・ディスカッション、3週目は唐津焼を使ってのティーセレモニーのデモンストレーションが4回行われるなど、充実した内容の展覧会で好評でした。 作品も見るだけでなく、価格にも幅があり買う事が出来るというのも魅力的で、NYのコレクター達が大変喜び、又展示側にも収益があって、大変成功した展覧会でした。 今迄の日本の伝統工芸をNYでという展覧会では、なかなか受けいれられなかったり、成功する例が少ない中で、NYのビジネスを知っている人達、そして、本物のわかるアメリカ人を参加させた事などが成功したのではないかと思います。又、確かに時代も日本食ブームもひろがって、食器などにもこだわり、ニューヨーカーのレベルがあがってきて、一般の人でも理解するようになってきているのも事実です。 昔から日本の陶芸には、みな興味を持っていますが、ワークショップでも熱心に専門的な質問が出ていました。 「人が使える壷や茶わん」手頃な価格も人気 マルコム・ライトは唐津で勉強して1970年にアメリカに戻り、バーモントにTURNPIKEという工房を開きました。アメリカでのアートとしての工芸でなく、日本で学んだという「人が使える壷や茶わん」などに粘土を考えたり、釉薬を使わずに独特の味をだす工夫をしています。また、彼は日本のとてつもなく高い値のつく巨匠価格を嫌い、作品が手頃な価格であることで知られています。量産の商品ではないのですが茶人が喜びそうな作品で、日本での作家価格から見ると、ほんとうに手頃で皆に喜ばれます。 中里 隆の娘、中里花子は唐津生まれ。マサチュ-セッツ州の名門スミス・カレッジを卒業後、唐津に戻り、中里 隆に2年間師事します。その後はデンマークのロイヤル・スカンジナビア社他でも経験を積んでいる国際派の作家です。現在はマルコム・ライトのスタジオに席をおき、独特の作品を制作しています。ワーク・ショップでの質疑応答も国際感覚でとても頼もしく、こういった人材が今後の日本のあらゆる伝統工芸に必要なのでは、とつくづく感じました。 NY茶人による茶の湯のデモンストレーション 4週目の唐津焼茶わんを使っての、茶の湯のデモンストレーションでは、25年位の茶人、NY裏千家の生徒さんでもあるグレッグ・キンゼイ氏の見事な薄茶のお点前で、やはりNY裏千家で修業中のピエール・セルネ氏が半東を勤めて、日本文化を披露して下さいました。 グレッグ・キンゼイ氏は茶道具のコレクターとしても知られていますが、最近の日本人にはない、もの静かな本物の茶人を感じさせます。 最近のアニメやおたく文化日本で浮いている日本のニュースの多い中、本物の日本をきちんと理解し、広めてくれる人々がいる事は、嬉しい事です。 ※表示あるものを除き、写真は全て海老原嘉子撮影

第76回 SOFA New York 2005

国際美術工芸品・高級クラフトの展示会・SOFA 6月2日~5日、パークアヴェニューのアーモリーにて、第8回目の国際美術工芸品・高級クラフトの展示会・SOFA(スカラプチャー・オブジェクト・ファンクショナル・アート)が行なわれました。毎年オープニングには、アメリカン・クラフト美術館主催の基金集めのギャラパーティが開催されます。会場内にはおしゃれなケータリングが出て、オークションもあり、飲んだり、つまんだりしながら鑑賞できます。世界中から集まったディーラー、Museum、ギャラリー、コレクター等が、Museumでは買うことができない、手に入らないレベルの一品もの、アンティークからコンテンポラリー家具、ジュエリー、ファインアートまで、質の高い作品を鑑賞しながら買っていきます。 → SOFA 公式HP → SOFA New York 2004のリポート → SOFA New York 2003のリポート SOFAはMark Lyman社長とディレクターのAnne Meszkoがオーガナイズしており、他のMuseumにも協力を得て、特別展示やレクチャー・シリーズの講演など、盛りだくさんのプログラムを用意していました。 毎回、日本の陶芸家やファイバーアート、ジュエリー・デザイナーの名前が増えており、全体の品質を上げているように感じました。NYではSOFAの会期中、クラフト・アンティック・ウィークとして、あちこちでショーが催されるようになりました。その中でSOFAは、ブランド化の傾向が見え始め、発掘する作家や作品のおもしろみがなくなり、高すぎる、の声も聞こえていました。 チェゼン夫妻のコレクション展 Dual Vision 5月26日からMAD(Museum Of Arts & Design)にて、シモナ、ジェローム・チェゼン夫妻のコレクション展、初のプレミアショーDual Visionが開催されています。このDual Vision展は、チェゼン夫妻のコレクション98点に及ぶ世界中の近・現代芸術のマスターピース、絵画、ドローイング、具象から抽象ガラス彫刻や絵画、セラミック・ブロンズ・繊維・ミックスメディア等の3次元の作品も包含し、20世紀を代表するアーティスト達の作品によって構成されています。 今回、この展覧会で展示された作品の中から50点に及ぶ陶芸、ガラス作品がMADに寄贈されました。展覧会は9月11日まで開催され、この芸術コレクションは20世紀最大の個人芸術コレクションの一つとして数えられるであろう、と云われています。 ウィリアム・モリスなど、超有名な作家の作品群 夫妻のコレクションには、ロバート・アーネサン、デール・チフリ、スタニソロフ・リベンスキー、ウィリアム・モーリス、メアリー・シャファー、リノ・タグリアペネトラ、といった超有名な作家の作品群が含まれています。 ○ ガラス : デール・チフリー、ハーヴェイ・リトルトン、クラウス・モヘ、アーウィン/エイシュ、リノ・タグリアペネトラ、ウィリアム・モリス、メアリー・シェーファーのグラス作品。 ○ 絵画 : ジーン・デュビュッフェ、ロバート・マザーウェル、ロイ・リヒテンシュタイン、ハンス・ホフマン、ラリー・リバース、リチャード・ポセッダート、アレキサンダー・カルダーニの絵画群。 ○ 陶芸 : 粘度やブロンズによるロバート/アーネソン、アレキサンダー・アーチペンコ、サー・アンソニー・カロ、ジャック・リップチッツ、ルーディ-・オーショ、アキコ・タカモリ、サージェイ・イスポフ等の彫刻群。 シモナ、ジェローム・チャゼン御夫妻の実際のコレクションは、『約500点の絵画、ドローイング、ガラス彫刻、土、金属の約200点以上の近・現代作家の作品を包含している。コレクションの範囲は、コレクターの最も興味をそそる人間の身体を賞賛した具象作品から、力強い幾何学的な抽象作品まで幅広く、卓越したクオリティー、広範囲に及ぶ、様々なジャンルを超越した作品を包含し、境界線を超えた、多種多様な分野のプライベートコレクション』 とPress Releaseに書かれています。 MADのチーフキュレーターのデヴィッド・マクファーデン氏は、「この展覧会では、20世紀芸術作家の多種多様な視点から作り上げられた重要な大作郡を一挙に観覧出来る、というとてもユニークな展覧会です。ここでは、普段絶対に同じコンテクストの下に比較される事の無い作品を一緒に観覧する事が出来ます。また、個々作品特有の視覚的、本能的なクオリティーに感謝出来る場を提供してくれる展覧会です」と述べています。 「絵画も彫刻も、クラフトと呼ばれるものは全て同様のクリエイティブな精神の賜物」 講演会での説明によると、夫妻のコレクション蒐集は、40年前、結婚祝いのお金を記念にと、ロイ・リヒテンシュタインの木版画リトグラフ購入した事がきっかけで始まったそうです。その事によって、MUSEUMのコレクター・サークルに参加、1970年代後半から1980年代には現代のガラスアートへと没頭し、アメリカン・スタジオ・ガラスムーヴメントに先導されて、ハーヴェイ・リトルトンとデール・チフリの作品を知り、益々ガラス作品への関心が高まっていったそうです。それに加えて様々な作家達との交流が生まれ現在も続いており、チェゼンコレクションには、約270点ものガラス作品が含まれているそうです。 ジェローム・チェゼンは、「絵画も彫刻も、クラフトと呼ばれるものは全て同様のクリエイティブな精神の賜物で、全ての作品が調和してこそはじめて作品はハッピーなのです。私達は、広範囲に渡る素材から想像されたこれらの美しい作品を包含するこの展覧会を通して、芸術へ対する信条を伝える事はとても大切であると思っています。」と述べていました。 夫妻は、コレクターであり博愛主義者でもある他に、MADの重要なボードメンバー、コロンバスサークルに移転される新MADの発展支部の議長でもあります。 今回の展覧会からは、いつもいろいろな展覧会を見て、自分の好みや一環したクオリティーで、単純に物事を判断していたのが、アメリカの良い意味での若さ、幅の広さ、寛容さというものが違う価値観を生んでいて、MUSEUMやアートを支えているのだという事を学びました。 ※表示あるものを除き、写真は全て海老原嘉子撮影